荒奴サキュバス   作:明城

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第1話

 かつて僕の同級生だった荒奴嘉村 《あらどかむら》が最初に怪異に出会ったのは、二、三年前、彼は当時、直江津高校でオカルト研究会に所属しており、怪異譚の収集や検証を部員としていた。

 

 一年生から二年生になる前の春休み。

 『この町に吸血鬼がいる』という不確かな噂を、羽川翼が調査し『この町は吸血鬼が13人いて、そのうち一人退治された』という羽川翼の話が本当なのかを検証するために、他の部員と共に探していたらしい。

 この町に僕と忍以外に吸血鬼が13人もいたことも。

 オカルト研究会と羽川翼が交流があったことも。

 そもそも、羽川翼が何故、あの日の春休みに吸血鬼を探していた理由も初めて知った。まぁ、今更知ったところでどうでも良かったが。

 

 そんな彼は『退治された吸血鬼』がいた証拠を探しに夢中になり、部員とはぐれ迷子になったその時出会ったのが吸血鬼ではなく、彼にとってもっとも魅力的な姿をしたサキュバスだった。彼はその姿に魅了され淫らな夢をみせられ、気が付いたらサキュバスに、自分の首筋を噛まれて抱き憑かれ精力を吸われてしまった。彼は助けを呼ぼうにも上手く声一つ出すことも出来ず、抵抗しようとしても力が入らず、下を向くと地面には自分の血溜まりが広がっていた。

 彼は死を覚悟したその時、見知らぬアロハ服を来た胡散臭いおっさん、というか怪異の専門家である忍野メメによってサキュバスから引き剥がし、助けられその場を逃げ、意識が朦朧とする中歩いていたら、たまたま通りがかった直江津警察官に保護されたのだった。

 それ以来、彼の首筋にはサキュバスに噛まれた跡や後遺症が残り、その原因を作ったサキュバスを正体を掴む為に怪異の知識を身に着け、アマチュアの式神使いとなった今もなお、追っているという。

 「私はどうも、あれ以降怪異を引き寄せるというか、いつの間にかよくないものが体に取り憑かれる体質になりましてね。これもサキュバスにかけられた呪いだとは思いますが」

 首筋を見ると、今先ほど噛まれたかの如くぽっかりと歯型がくっきり残っており、見ていると自分の首筋が痛く感じるほど痛々しい。

 「しかし、まさかこんな形で会うとは思いませんでしたよ。阿良々木さん。あなたの噂は色々聞いていますよ。阿良々木ハーレムを率いて裏で街を支配していたとか」

 「いや、そんな悪趣味な組織を率いた事もなければ街を支配したことなんてないよ」

 少なくとも僕が率先して作った覚えなんてねぇよ。

 「ご謙遜を。あなたが昔、最もおぞましい直江津高校伝説の怪異を派遣して我々オカルト研究会のメンバーを助けて頂いたではないですか。もしかして、忘れちゃいました?それともおメメさんみたく『助けたわけじゃない、君たちが勝手に助かっただけだよ』という事か、又は彼女単独で動いていたのかな?」

 と彼は僕に質問をしたが、何のことを指してるのかさっぱり分からない。

 直江津高校伝説の怪異?オカルト研究会のメンバーを助けた?僕には身に覚えのない話だった。そもそも、この直江津高校にオカルト研究会なる部活があることなんて知らない。

 彼女?

 「本当に知らないのです?…ほら、部長の霊沢零華(ぜろさわれいか)の件で、羽川さんを派遣したのはあなたじゃないですか?阿良々木さん」

 

 『うつろねじり』に関わった紅口孔雀(べにくじくじゃく)の件が解決してからだいぶ経ったある日

 

 「ここだけの話なんですけれども」

 休日の早朝、日傘星雨(ひがさほしあめ)が、また僕の自室のベッドに勝手に上がり込み噂話をこさえてやってきた。

 これまで何度も僕のベッドにやってきては注意をしてももはや意味はなかった。どころか日に日にエスカレートしていき、この前はポテトチップスを僕のベッドにゴロゴロしながらほおばっているのを注意したばかりだ。

 

 だが今度は、ベッドの上でぬいぐるみを装った死体人形をかかええているである。

 「全く、お前らは何をやってんだよ。しかも僕のベッドの上で!!」

 「いやぁ、まさか阿良々木先輩が、こんなマニアックな空気嫁を持っていたなんて、いったいどんな妄想で自分を癒して貰っていたんですか?この童女のお人形に」

 「断じて違うぞ日傘ちゃん。この人形はそんな用途で使うためのものじゃない。これは知り合いから預かった人形だ」

 「阿良々木先輩、誤魔化さなくたって良いんです。気持ちはわかります。一人でムラムラしてどうしようもない時は誰にだってそういう時があるじゃないですかシコ々木先輩」

 「僕の名前を、赤塚不二夫生誕80周年を記念したアニメの三男の非常に残念なあだ名のように言うな。というかそれは僕の中の人をネタにするな」

 「失礼、噛みました」

 「いや、これはもうわざとだろ」

 「噛みまいっちんぐ」

 「自分のスカートめくってまいっちんぐポーズすんな!というか、その芸風八九寺の奴だろパクるな」

 スカートの中はスパッツでかろうじてパンツは見えないが、あの神原駿河のベストフレンドだから不安だ。主に今後の将来が。

 「あれ?ムラムラしてきました?自家発電三郎先輩。食べてもいいですよ」

 「それはチョロ松のあだ名であって僕のあだ名じゃない!興奮してるのは怒ってるのであって、後輩の親友のチラリズムで興奮してるんじゃないからな」

「あーそうですよね。先輩って小学生の幼女くらいが好みでしたね。それを隠す為にあえて戦場ヶ原先輩と付き合っているんでしたね」

 「そんなくだらない理由で戦場ヶ原ひたぎと付き合ってねぇよ。ちゃんと自分の彼女を愛して付きあってるぞ。違うって言うなら証拠を出せ」

 「へーじゃあ、この人形はなんですかー?」

 「で、今度はどんな噂話を持ってきたんだよ」

 「あ、露骨に話題そらした」

 「今度は都市伝説?街談巷説?道聴塗説?それともお前たちの流行ってる下らないBL談義?」

 「『ねぇ、誤魔化さないでよ。毎日毎日私をあんなことやこんなことに使ってたじゃないですかーご主人様♡』へーそうなんだそうなんだー阿良々木先輩てそんな趣味あったんですか。ルガーや戦場ヶ原先輩に言っちゃおーかなー」

 「やめろ!腹話術で勝手に事実を捏造するなよ。これまで僕が気付いてきたパーソナルイメージが崩壊するじゃねぇかよ」

 「「『そんなに崩壊しないと思う』」よ」

 こいつ、絶妙に腹話術うまいじゃないか。一瞬あの人形童女が喋ったと思ったじゃないか。残念ながらそんないかがわしい用途で斧乃木余接を使ったら、忍やひたぎに養豚場の豚を見るような目で見られるし、所有者である影縫さんに退治されてしまうのは目に見えているはずだ。

 というか、日傘の腹話術に合わせて斧乃木余接の声も聞こえたような…。

 僕のパーソナルイメージてそんな酷いものか?どうも金髪の幼女とか蝸牛の少女神様、死体童女と遊んで、紅孔雀ちゃんを救ってからロリコンのイメージが定着してしまったような。

 「話は戻しますが、今回はバスケ部の件も私の友達の友達の件でもないです。」

 神原駿河と日傘星雨のカリスマ性を失った後のバスケットボールの部のドロドロとした内情とも、友達の友達と妹の複雑で重く思い家庭事情とも関係のない話となると一安心する一方。

 それ以外の話を日傘から持ち掛けたという事はそれと同等か、それ以上の気の重い話を聞くことになる可能性があると思うと、一概に安心できるとは限らない。

 僕がこれまで知ってよかったと言えるものよりは、知りたくもなかったと言えるものが多い。

 高校時代の怪異譚も、大学で体験した『木乃伊事件』『紅口孔雀の誘拐事件』も比べることも出来ない程に、どれもく同じ思い出すとどれも笑えない思い出である。

 これからも、重く笑えない物語を経験することになろうとも、人間として、元吸血鬼として一度関与したら解決の為に身を粉にすると誓い続けるだろう。

 だが、もしかしたら解決した事にして、やり残し忘れた問題に気付かず勝手に終わった事にしているのかもしれない。

 勝手に終わった事にして。

 

 「実は、『阿良々木先輩が小学生誘拐事件を解決した』という噂を聞いた友達の知り合いの先輩が私に尋ねてきたんですよ。その先輩から『行方不明になった飼い猫を探して欲しい』って頼まれたんですけれども」

 猫という単語を聞いただけで嫌な予感がするのは、猫を被った羽川翼、ブラック羽川を連想するからだと思いたい。だが今回はそれに匹敵するものだと、僕の第六感、いや元吸血鬼のカンがそう訴えている。

 「ここだけの話なんですけれども、その猫『人を殺した猫』らしいんですけれども」

 

 ここだけの話過ぎるだろ!

 また報道協定が敷かれる案件じゃねえか!

 なんで人殺しの猫なんて飼っているんだよそいつ!

 その猫の飼い主がどういう奴なんだよ!

 なんでそいつが僕に頼んだよ!

 といつぞやの誘拐の話の時みたく突っ込みを入れた。

 

 人を殺した猫って。

 飼い猫って。

 

 誘拐の件もそうだが、立て続けになんてえらいもんを持ち込んでくれたな。

 小学五年生の誘拐はまだ、実際には誘拐ではなく『うつろねじり』の怪異に出会っただけで誰一人も死ぬことなく解決したものの。

 今度は既に人に被害が出ていて死んでいる。それを知ってか知らずが、その猫を飼って逃げ出すって…。その飼い主は一体何を思って飼ったんだ?

 日傘の話によれば、その猫は元々、二年前にオカルト研究会部長の霊沢零華(ぜろさわれいか)が飼っていた猫だが、その猫を使った儀式で失敗し、儀式を実行した零沢が猫に殺されたという。

 どういう儀式だったのかは分からないが以降、儀式に参加したオカルト研究会の部員はほどんど退部し解体された。

 だがただ一人、荒奴嘉村 《あらどかむら》はオカルト研究会に残り、怪異譚の収集をしたという。

 「いくら部長を殺した猫とはいえ、部長の勝手な都合に巻き込まれた被害者ならぬ被害猫だ。猫に罪はない」

 と猫を引き取ったという。

 

 「確かに噂は大体合っていますが、いくつか間違いがあります。」

 巷に流れる噂と実際の出来事は、人から人へとファイブサークルへを巡るうちに大事な部分が抜けていたり脚色されたりと誤差が生じている。

 「まず、私の飼っている猫は厳密に言えば『零沢部長を殺した猫』でもなければ零沢部長が元々飼っていた猫でもないです。正確に言えば、あれは元々猫だったのか分からないですね。なにせあれは零沢部長が『猫又の死体』と言って儀式の為に用意したものですから」

 

 日傘が勝手に荒奴を僕のアパートの住所を教えたばかりでなく、僕の承諾を得ずに僕を会わせる約束をし、荒奴はその約束通りに僕の部屋までやってきたのである。

 せめて前日とか一週間前くらいに言えよ!

 事後報告じゃなくて事前に打ち合わせくらいさせろよ!

 そもそも僕の承諾無しで部屋の住所を教えるなよ!

 と、日傘に突っ込みの三段突きならぬ散弾突きを食らわせたが、以前の時とは顔が暗く神妙な面持ちに見えた。

 

 以前のような友達の友達の義理の妹が誘拐されたから助けてほしいと話を持ち掛けた時とは違った。日傘は訪ねてきた荒奴の不吉な雰囲気に気おされる形で、なし崩し的に話を進めたらしい。

 まぁ、いわくつきの猫を飼っているというだけでも警戒するのは無理はないか。

 日傘に言われるまで忘れていた。いや僕が当時のクラスメイトの同級生に興味を持っていなかったのだが、オカルト研究会の部員だった荒奴嘉村も、その部長だった零沢霊華も、僕や戦場ヶ原ひたぎと同じく三年間同じ苦楽を共にしたクラスメイトであった事を初めて知った。

 

 「そして、大きな間違いは儀式は失敗していません。正確に言えば『儀式自体は成功した』が、羽川さんと怪異の専門家のおメメさんのおかげで零沢部長が死んだ。それだけですね」

 「羽川と忍野メメのおかげ?」

 

 「そう、奴がやろうとした儀式とは、オカルト研究会の面々を犠牲にして『猫の怪異の死体をベースにした人造の怪異の付喪神を作る』と事です」

 人造の怪異と聞くと、今まさに僕の部屋のベットに鎮座にいる百年使われた人間の付喪神のことだが、そのケースは、計画発案者は臥煙伊豆湖で、忍野メメ、貝木泥舟、影縫余弦、手折正弦が協力して作られた。しかし今回のケースは零沢零華が部員全員を騙して生贄にして作ろうとしていた。

 「なにが『夏休みだからみんなで百物語をやろう』だ。オカルト研究会を一年の頃に発足したのも羽川さんや我々部員と仲良くしとっていたものも全部、奴が式神を作るために仕組まれたんですよ。しかも、その式神作りに成功したら、次はあの羽川翼を亡き者にして直江津高校全員を犠牲に強力な怪異を作るつもりだったんですよ?糞が…。まぁ、結果は呪い返しで全員分の呪いを受けて消失したがな」

 ざまぁねぇぜ。と生気のない声で悪態をついた。不吉というか、病的にぎらついた目だけは僕の顔を捉えている。その目には具合が悪くて僕に助けを求めているようにも、僕を呪い殺そうとしているようにも、どちらにも見えて正直目をそらしたい。

 「大丈夫か?体調は」

 「いえ、大丈夫ですよ。序盤でお話したサキュバスにかけられた呪いの影響がある以外は健康そのものです」 

 どう見ても健康には見えねぇよ。だったら僕になんの恨みがあるんだよ。

 「それよりも話を続けますが。その呪いが何で零沢部長に全部きっちりと返ってきたのかと言えば、羽川さんが事前に部員全員に手作りの合格祈願の『お守り』を配っていてそれを持っていたおかげで誰も呪いの犠牲にならずに済んだのです。私の場合はそれよりも前におメメさんから呪い返しのお札を対価として貰いました」

 「対価?」

 「おメメさんにサキュバスの話や私にかけられた呪いの話をしない対価です」

 荒奴嘉村はサキュバスに首筋を噛まれ呪われた後、忍野メメと出会い、サキュバスの正体や呪いの解き方を聞いたものの、露骨に話題を逸らされ、代わりに他の怪異譚を忍野と情報交換をしていたという。そんな露骨に話題を逸らす忍野メメに不信感を持った荒奴嘉村が思い切ってサキュバスの件を問いただしたところ。

 

 『君にかけられた呪いの事やサキュバスに関しては、君には申し訳ないが、僕はもうその件には関わりたくないんだ。おじさんにはちと刺激が強かったし、君をサキュバスから逃がした後散々精力を吸い取られ歯が立たなかったよ。はっきりと言おう。あんな怪異は二度と関わりたくはない。それほど強力になってしまった怪異さ。もう一度あの怪異と対峙しろと言われたら、僕は怪異の専門家を辞めるよ。辞めたら外にいる昔の連れに挨拶しに行くのも悪くはないな。これは本気で考えているんだ。君がこの件の話をしないと約束するなら、それ以外の怪異譚の話をしよう。それと、このお札をやるよ。これがあれば少なくともこれ以上君が誰かに呪いをかけられることはない。専門家としてこれは保証する』と、言われ呪い返しのお札をもらったという。

 

 「そのお札のおかげで、呪いを受けることもなく零沢部長だけ暗闇に飲まれただけの被害で済んだものの、問題は肝心の儀式は成功した事だ。猫の形をした怪異の死体で作った付喪神を誰が受け継ぐのか、又はどう処分するか迷っていると自称、なんでも知っているお姉さんが私のところへ訪ねてあの付喪神の所有者になってくれと頼まれた、しかも、契約の儀式一式と付喪神の為の人形を用意して」

 「臥煙さんが?」

 「おメメさんだけでなく臥煙伊豆湖さんを知っているとは…。やはり貴方はこちら側の人間ですか。いや?怪異かな」

 「いや、たまたま知り合っただけで詳しくは知らないよ」

 「さいですか?本当に知らないですか?」

 「僕たちの何を知っているんだ!」

 まるで僕の、僕たちの事を知っている上で問い詰めるかのような口ぶりに思わず声を荒げ、怒りが込みあがってきたが、それが一気に引っ込んできた。何故なら…。

 「阿良々木ハーレム、性癖、たまに連れている金髪幼女、そこのベッドにいるダッチワイフ。猿の左腕、地縛霊、謎の京都弁を喋る怪力女、蛇とヤンデレ小女、落ち武者、くらやみ、忍野扇。あとは…たまに阿良々木さんの影がない時がある。すみません。貴方のことはこれくらいしか知らないです」

 恐怖でしかなかった。なんでこいつは怪異がらみの事を知っているんだ?しかも、知られたくもない秘密を。さっき忍野メメから怪異譚の話を聞いた、と奴は言っていたがしかし。後半は忍野がこの町を去った後だ。僕は羽川やひたぎには話した記憶はあるが、こいつには話したことなんてない。

 「貴方の噂は、オカルト研究会だけでなく学校中で広まっているのはご存知ですか?例えばバスケ部とか」

 「だとしても、忍や影縫さん、千石のことや死屍累生死郎の事を知っているのはおかしいだろ」

 「ん?影縫さんと千石、死屍累生死郎?どの記憶が影縫で千石でしし…?イッ」

 荒奴は突然、サキュバスに噛まれた跡に、首筋に手に抑えもがき苦しみ転げまわる。一体、何がどうなっているのかは分からないが、こいつはサキュバスの呪いに苦しんでいるのは確かだった。

 「いえ、いつもより痛いってことは…私の思惑が当たったか。いや、それよりも貴方に頼みたい事は三つ。はぁ…」  

 息がだんだんと荒くなり苦しんでいるが、構わず喋り続ける。

 「まず、行方不明になっている私の式神羽折鶴耶(はねおりつるや)を探して欲しい。二つ目、このサキュバスの呪いを解いて欲しい。そして…はぁ…はぁ…」

 荒奴嘉村が喉元を右手で押さえながらゆっくりと立ち上がった。その僕を見上げる目は、怨みを込めた鋭い目だった。

 

 「サキュバスの正体を…教えて欲しい」

 そう言って左腕で突然僕の顔を思いっきりぶん殴り、僕は頭をドアへぶつかった。一体、どういうつもりなんだ。と叫び殴った男のほうへ振り替えると、男の左腕がおかしかった。先ほど色白だった左腕がいつの間にか、毛むくじゃらの体毛に覆われていた。

 というか、猿の左腕だった。なんで今更レイニーデビルが?

 レイニーだけじゃない!荒奴の、サキュバスに噛まれた跡から白くて太い紐が何本か落ちている。紐じゃない。白い蛇だ!

 そして、鎧武者の甲冑を荒奴は被っている。

 「阿良々木くん」

 「阿良々木…」

 「阿良々木先輩」

 「暦お兄ちゃん」

 「鬼畜のお兄やん」

 「阿良々木殿とキスショット!!」」 

 「阿良々木先輩」

 「阿良々木!!」

 羽川、ひたぎ、神原、千石、影縫さん、死屍累生死郎、忍野扇、老倉。それぞれの僕を呼ぶ声が、目の前の怪異化した荒奴嘉村から聞こえる。…どれも殺気や怨みのこもったものだ。

 何時ぞやの僕と神原を襲ってきた怪異もどきを連想されたが、今回の場合は、かつて僕に殺意を、怨みを持った人間や怪異の残留思念だけをツキハギしてくっつけたような性質を持っている怪異だと、呪いだという事は分かった。この場合は、僕を殺さないと呪いは解放されるが、残念ながらこんな所で殺されてたまるかよ。

 まだ、ひたぎとのキャンパスライフも、忍との約束も、火憐ちゃんや八九寺や斧乃木ちゃんとの結婚も、そして羽川の胸をちゃんと揉むのもまだ済んでないんだ!!

 「結局羽川の巨乳かよ。クズのお兄ちゃん」

 先ほどまでベッドの上にいた斧乃木ちゃんが、目の前の怪異を蹴り上げ、天井へ突き刺した。

 「どんだけ羽川の胸を揉みしだいたいんだよ。あと、多重婚企んでんじゃねーよやっぱりクズのお兄ちゃんは阿良々木ハーレム作るつもりなんだね」

 「そんな悪趣味な組織は存在しねぇよ」

 「それよりも、このアマチュア専門家を何とかするべきだよ。クズのお兄ちゃん」

 天井に突き刺さった荒奴嘉村は、左腕でめり込んだ首を引っこ抜き、地面に落ちた。

 「暦お兄ちゃん「憎い憎い憎い憎い憎い憎い「ここであったが四百年目「嫌いだ!!何もかもが!!「僕は何も知りません。貴方が知っているんです「何でもは知らない…何でもは「私は何でも知っている「元気ええなぁ、何かええことでもあったんけ?」

 荒奴嘉村から聞こえる声が混ざりあい、殺意を僕に向ける。

 「「『例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)」僕はキメ顔でそう言った」

 奴と斧乃木余接は、互いに全く同じ技を繰り出し、互いの攻撃を相殺した。

 「こいつ、僕と同じ技を?」

「斧乃木ちゃん!ここは逃げるぞ!」

 今は荒奴嘉村の事もサキュバスにかけられた呪いも、まだ分からない事が多い中、ここで戦闘するのは悪すぎる。というか、僕の自室が甚大な被害が出る!下手をすればこのアパートごとぶっ飛ぶ。

 「そうだね。じゃ、僕の胸じゃなくて腕を掴んで。ここから離れるから」

 お言葉に甘えて胸を掴もうとしたら、斧乃木ちゃんに頭を思いっきり殴られた。

 「胸じゃなくて腕だって言ってんだよ。クズ野郎」 

 この言葉を聞いたのを最後に、僕の意識は途絶えた。

 

 その日の昼間、僕が目を覚ますと北白神社の境内で両手を縛られて拘束されていた。

 太陽が沈んでいないが緊急事態という事もあってか、金髪金眼の幼女にして吸血鬼の成れの果ての忍野忍、付喪神の斧乃木余接、そしてこの神社に祀られる神様である八九寺真宵の三人が揃っていた。

 「なるほど、それで理解しましたよ。暴走して怪異化したアマチュア専門家さんの呪いを解くのと、迷子になっている猫の付喪神を探す為に、とりあえずここへ避難したんですね」

 「そうだね。忍野のお兄ちゃんの言う、外にいる昔の連れってのは手折正弦の事だね。あの忍野のお兄ちゃんが専門家を辞めて臥煙さんの元から離れたいと思わせる怪異って事はよっぽどヤバい怪異だろうな」

 斧乃木ちゃんは死体で作られた人形である為、いつも無表情で棒読みであるのだが、この時はいつもよりも圧が強く感じる。

 「ヤバい怪異、で済まされぬと思うぞ?サキュバスの呪いと猫の死体人形は。わしの予想が正しければ……いや、正直この予想が外れて欲しいのじゃが」

 と僕のパートナーである金髪の幼女である忍は、苦虫を嚙み潰したような顔で下を向く。

 予想?忍にしてはやけに弱気だな。まぁ、サキュバスならともかく、僕と忍は猫の怪異で散々嫌な目にあってかなりのトラウマになったからな。ところで。

 「なぁ、なんで僕の両手を縛られているんだ?」

 「鬼畜のお兄ちゃんが僕の胸を触ったからだろ。」

 「それはあの時はしょうがなかっただろ。後さっきはスルーしたけど僕の事をクズのお兄ちゃんとか鬼畜のお兄ちゃんとか読んでないか?いつもは鬼のお兄ちゃん♡とか読んでいただろ」

 「だから僕は僕の腕を掴めと言っただろ。それと原作もアニメも一度も♡なんて付けた覚えなんてねーよ」

 「最近僕に冷たいなぁ、何か良い事あったのかい?」

 「忍野のお兄ちゃんのセリフをパクるな」

 と斧乃木ちゃんは凶器である人差し指を、僕の額に向けた。あれ?斧乃木ちゃんを怒らせる事したっけ?

 「クソら木さんはこれまで散々出会った女の子たちにセクハラを軽く超えた性犯罪をしてきたじゃないですか!先日彼女の戦場ヶ原さんを山奥に引きずり込んで薬漬けにして乱暴したのを私たち三人知っています」

 「わざと人聞きの悪い言い方をするな。ちょっとひたぎの思い出の場所で利尿剤を飲ませていたずらしただけじゃないか。というか、なんで知っているんだ?忍!八九寺と斧乃木ちゃんの三人で遊んでろって言っただろ。あと、僕の事を排泄物の蔑称みたく呼ぶな。僕の名前は阿良々木だ」

 「失礼、噛みました」

 「いや、わざとだろ」

 「噛みちぎってやる」

 どこを!?マジで止めてよ!!まだ女の子になりたくないんだ。

 「まだってなんだよ。将来的に女の子になりたいのかよこの性犯罪者は」

 「もう、こやつを我が主様とは思いとうないの」

 やめてくれ忍!僕を見捨てないで。僕と忍と交わした約束はどうなるんだよ。

 「安心せい。まだ裁判が終わるまでは生かしといてやるわい。お前様が儂らを襲いかかってこない限りは」

 裁判って。僕を性犯罪者とか表参道を歩けないような表現を使うのはやめてくれよ。

 「というか、なんで知っているんだよ」

 「そりゃあ、お二人のデートの様子を監視してましたから」

 「僕たちのデートを監視するな。二人っきりになりたいから忍にドーナッツ一ケースやったじゃないか」

 「確かに三人で遊んでこいって言われたが、監視するなとは言っとらんじゃろ」

 そこは盲点だった。今度は遊んで来いじゃなくて二人きりにしてくれと頼もう。

 「もう今度とかもうないんじゃないかな、鬼のお兄ちゃん」

 「あ、斧乃木ちゃんが鬼のお兄ちゃんって呼んでくれた」

 「クズのお兄ちゃんの処罰は阿良々木ハーレムの面々で決めるってこれは決定事項だから」

 「畜生、余計な一言を言ったな。僕は。って阿良々木ハーレム存在してたの?」

 「何を今更言っているんですか。人間枠の羽川さんと怪異枠の私八九寺を中心に集まって情報交換をしています。主に阿良々木さんから受けたセクハラや性被害の情報を共有して被害を防ぐために」

 僕そんな奴だっげ?というか僕の知らないところでそんな組織を作るなよ。

 「さっきアマチュア専門家から逃げた際に借りパクしたノートに阿良々木ハーレムについても書いてあるね」

 斧乃木余接が、荒奴のものと思われるリュックから、何冊かのノートを取り出した。どうやら、アマチュア専門家で式神使いの荒奴嘉村から逃げる前に彼が怪異譚や学校内で流れている噂をまとめたものらしい。

 

 阿良々木ハーレム。

 直江津高校で羽川翼と同じく有名な噂で怪異譚。オカルト研究会の部員だけでなく、クラスの間や神原駿河を中心としたバスケ部でも有名。

 阿良々木暦を中心とした組織で、構成員として囁かれているのは

 

 直江津高校最大の怪異の羽川翼。

 深窓の令嬢こと戦場ヶ原ひたぎ。

 バスケ部の元エース神原駿河。

 一年の頃の裁判で失脚した元学級委員長老倉育。

 よくミスタードーナツでよく一緒に連れている金髪のロリータ。

 幽霊の八九寺真宵。

 北白蛇神社で見かけたラブドール。

 夢に出てきたメンヘラ蛇使い。

 そして、私に阿良々木暦のストーキングを依頼した忍野扇。

 の9名。

 主に半数が直江津高校で有名な女子と残りはちっちゃな少女で構成されており、他にも大勢存在すると思われる。

 このメンバー共通する要素は『いかに不幸であるのか』又は『ちっちゃな幼女』又はその両方であると、私は考察する。

 前者の根拠としては、失脚して学校へ来なくなった老倉育を筆頭に、戦場ヶ原ひたぎはかつて金持ちの令嬢だったが両親が離婚して貧乏へ、神原駿河は両親は交通事故で両親は死んでいる。羽川翼に至ってはこの三年間彼女の両親を、先生もクラスメイトも、それどころか近所の住民すら、一度たりとも授業参観や三者面談で見かけた者はおらず、両親が存在しない、無から生まれたのではないかと囁かれる。

 後者の根拠は、三つ。

 一つは、オカルト研究会の後輩五月雨東湖(さみだれとうこ)が偶然カメラで撮影した『地縛霊』相手にセクハラをしている阿良々木暦の写真。残念ながら普通のカメラであるため、カメラ越しでは地縛霊の姿は確認できないが、映像では阿良々木暦は『八九寺』と名前を叫び見えない幽霊のパンツを脱がせようとしているのが確認できる。

 ちなみに調べると十年前に離婚した母親に会う途中、交通事故で死亡した『八九寺真宵』であることが判明。ソースは当時の新聞。

 二つ目は、忍野扇の依頼でストーキングした際に見かけた童女人形。 名前は分からないが、人間にあるはずの生気はなく、羽折羽折鶴耶と同じ死体で作られた人形だと推察される。撮影した写真では、童女姿をした人形の後ろからスカートをめくってイチャつく阿良々木暦の姿が確認できる。恐らく、自らの性欲を発散させる為に作ったラブドールの一種ではないかと思われる。

 そして、複数の生徒が撮影した、阿良々木暦がよく連れまわしている金髪の幼女の存在。こちらも名前は不明だが、だいたい小学生未満くらいの女の子で、ミスタードーナツでよく見かける。

 以上の事から阿良々木暦は、複雑な家庭事情を抱える女子高生とロリコン趣味であると。阿良々木ハーレムはそういった趣味で構成されていると。

 私荒奴嘉村は結論付ける。

 

 「ラブドール、というか僕に対する考察は間違っているけど。それ以外は正確に分析できていると思うよ」

 「いや、全然的外れだろ。特に最後の結論は。まるで何かに虐げられている女子高校生とロリコンの趣味をしている性癖のぶっちぎりでヤバい犯罪者じゃないか」

 「そこは合っていると思う」

 「そこは合っていると思う」

 「そこは合っていると思う」

 神の少女と元吸血鬼の幼女と付喪神の童女に、三方向から同時に突っ込まれた。

 「まぁ今更阿良々木さんの性癖を指摘されたって、もう阿良々木ハーレム全員知ってる事実ですし」

 「そうじゃの。皆まで言わなかったのじゃが、お前様の不幸な女の子漁りはもう治らんじゃろうから皆諦めておる」 

 僕ってそんなヤバい奴なんだ。みんな知っている事実なんだ。僕のラマンの戦場ヶ原ひたぎさんや親友の羽川翼さんは、普段から僕の事をそう思われているなんてショックだ。

 というか、何故みんなはそんな奴と付き合っているんだよ。恋人として、親友として、友達として。

 「話はだいぶ剃れてしまいましたけど、そこにサキュバスの呪いとか迷子になっている猫の式神さんの事について書いてありますか?」

 「書いてはあるけど、忍が懸念している最悪の事態くらいしか書いてないね」

 「はぁ、儂は出来れば、もう関わりとうないのじゃが、こうなってしまったら腹をくくるしかあるまい。こんな性犯罪者もどきで吸血鬼もどきでも、一応儂の主様じゃからな」

 性犯罪者呼ばわりはこの際甘んじて受け入れ…いや受け入れたくはないが。忍が懸念している事態って羽川や障り猫の事か?あれはもう解決した問題じゃなかったか?ブラック羽川や苛虎は、羽川自身が受け入れたはずだ。

 「いや、お前様も忘れてはおらんか?あの地獄のゴールデンウイークであの障り猫のストレスの犠牲になったのは、あやつの両親の他におったじゃろ?あやつ自身の問題が解決したとしても、被害にあった者の問題が解決するとは限らん。むしろ既に解決したのを知らずに引きずっておる」

 そうだ、ブラック羽川。いや羽川自身が、血の繋がらない両親の他に、無関係な町の人を襲っていた。

 解決した。という言い方は、それは加害者側の都合であり、被害側からすれば障り猫や羽川の事情なんて知っているはずはなく、ほったらかしにされ問題が残ったままだ。あの時は羽川の、重い思いが頭に強烈に残っていてその後の処理なんて気には留めなかった。

 「怪異は観測した者の解釈によって変質する曖昧なものじゃから、あの猫を見て『サキュバス』だと思ったのじゃろう。あのアロハ小僧も障り猫の事に一切触れたくなかったじゃろうからアマチュア専門家が知らないのも無理はないの。」

 じゃから、サキュバスという認識も合っとる。と忍は付け加えた。あの時の羽川を、下着姿の猫耳姿を、夢魔である「サキュバス」と認識していてもおかしくはない。障り猫の特性であるエナジードレインと夢魔の精力を吸い取るという特性は、どちらも似ている。

 「このノートを見る限り、確実な証拠を持っていないけどサキュバスの正体を羽川翼だとは掴んではいるみたいだし、鬼のお兄ちゃんがこの件に関係していると考えているね。だから、鬼のお兄ちゃんの元に尋ねてきたんだと思う。この項目を見てよ」

 

 サキュバスの呪い

 サキュバスに首元を噛まれてからは、奇妙な夢を見るようになり、それが具現化するようになった。 

 最初の夢は、5月9日に見た、阿良々木暦の口にホッチキスを挟むという『狂気的な夢』だ。最初は変な夢を見たと思ってあまり気を留めていなかった。しかし5月20日あたりから、頻繁に阿良々木暦を殺す、又は殺しかける夢を具体的にみるようになった。

 左腕が猿のように毛深くなった誰かが、阿良々木暦の内臓を引きずり出して投げ飛ばす『猿の夢』

 8月15日に見た、京都弁の怪力女が忍野メメの住処だった学習塾跡で阿良々木暦を一方的に殴る『京都弁の女の夢』

 8月20日の、自転車に乗っている阿良々木暦と地縛霊の八九寺真宵を追い回す『ストーカーの夢』

 8月21日の、羽川が召喚した落ち武者が阿良々木暦と神原駿河を襲う『落ち武者の夢』

 8月24日の、直江津高校のグランドで落ち武者と決闘して落ち武者が負ける『敗北の夢』

 そして、10月末の「暦お兄ちゃんなんて大っ嫌いだよ!」と叫びながら彫刻刀や蛇を操って阿良々木暦を殺す『ヤンデレ蛇使いの夢』

 

 どれもほかの夢よりも具体的に描写されており、阿良々木暦を殺す側の視点のものが多い。その夢を見た直後一時的に、左腕が猿のように毛深なったり身体が重くなったり、はたまた地面が歩けなくなるといった不可思議な怪異現象にあってしまう。

 この現象は、サキュバスによる呪い。すなわち阿良々木暦に対する殺意や怨みを蓄積、集約する呪いであると推察する。ではなぜそんな呪いを、阿良々木暦とは関係のない私にかけたのだろうか?誰が私にかけた?

 いや、関係のないから選ばれたのだろう。阿良々木暦との繋がりのない、赤の他人に近いクラスメイトが阿良々木暦を自分の代わりに殺してしまえば、まず自分に、阿良々木暦の周りの人、いや阿良々木ハーレムの面々怨みを買うこともない。代わりの誰かが怨みをかえばいい。そんな感じなのだろう。

 では一体誰が私にそんな呪いをかけた?真っ先に思い浮かんだのは羽川翼。私がサキュバスに首筋を噛まれ入院している間、羽川翼も学校を欠席しており、羽川翼が登校したと同時に白い化け猫の噂がピタリとやんだのだ。

 元々、零沢部長が『この町に吸血鬼がいるから調べてこい』と無理難題を振られ調査した羽川翼が『この町は吸血鬼が13人いて、そのうち一人退治された』という証言が本当か検証するために、私たちオカルト研究会は駆り出された。結果、吸血鬼13人全員の存在を確認した後『退治された吸血鬼』の存在を確認する途中に、私は襲われた。この調査そのものが、羽川翼の巧妙な罠ではないのか?阿良々木暦殺害の代役を選ぶ為の…。

 もちろん、羽川翼も白い化け猫やサキュバスに襲われた被害者、又はその怪異を倒したという可能性も否定できないが、あのサキュバスの姿はどこか羽川翼に似ているように感じた。いや、私の妄想が具現化した?できれば後者のほうがいい。前者だったら絶望的だ。

 どちらにしてもサキュバスと羽川翼とは関係ある可能性が浮上した。だが、何故、阿良々木暦を恨んでいるんだ?阿良々木ハーレムが関係しているのか?

 

 「後半の羽川の巧妙罠云々はともかく、荒奴の見た夢って全部僕たちが経験した出来事じゃないか」

 つまり、この荒奴という男は、僕に対する殺意を取り込み続けているのか。今もなお。

 「阿良々木さんって本当にいろんな人に恨まれたり殺意を持たれたりしているんですね。しかも阿良々木ハーレム以外の方から」

 「だから、そんな悪趣味な組織なんてもう解散しろよ」

 「でも普段から人をセクハラしたり裸を見たりとかしなかったらほとんどの人から怨みを買うことも、阿良々木ハーレムが結成されることなんてないですよ。自業自得ですよ。」

 もうそれ、阿良々木被害者の会でいいんじゃないかな?

 「で、どうする?鬼のお兄ちゃん。アマチュア専門家の呪いを解くか、猫探しをするか、それともみんなの怨みを晴らす為にぶっ殺されてみる?」

 「いや、これ以上殺されたくないから、最後のは無しだ。まずは猫の死体人形を探すのはどうか?そのノートだけで判断できないな。所々主観的で実際とは違う可能性だってある。特に僕の認識あたりとか」

「もうそこは認めたらどうかな、鬼のお兄ちゃん」

 「それにあの怪異化した荒奴の問題を解決するのには、少しでも味方が欲しい。少なくとも彼の猫の式神を敵に回すよりはいい」

 そうみんなで決意したところで。そう、このベストタイミングで、僕のスマホから電話が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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