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ゴツい鎧を着て背に巨大な剣を担いだ禁忌人形(バンドール)通称魔術喰い(カニバルキャンディー)と、水妖(ウンディーネ)型の自動人形を庇うように前に立つローブを目深に被った二人が睨みあっている。
「今回はあなたの思い通りにはさせません、そして痛い目にあってもらいます」
ローブを被った二人のうちの一人、背が低い方が冷静な口調ではあるが、所々に怒りが込められた口調で言い放つ。
声の感じから女性だということが分かる。
「……オス、………ス、……リム、………ム、…カラ、……ラ、…カニ、……ニ」
片やもう一方のローブを被った者は何かをブツブツと呟いている。
そしてこちらはブツブツ呟く声から男であることが分かる。
「私達の邪魔はするな」
カニバルキャンディーが一言だけ冷たく警告をしたと思うと背から剣を抜きはなつ。
闇の中で抜き放たれた剣は鈍い光を放つ。
そして、地面を抉るほどのとてつもない踏み込みで剣を振りかざしながら飛び出す。
宙を滑るようにローブの二人に襲いかかる。
「僕がやる!」
「分かりました。ただし危なくなったら参戦します」
そう言うとローブを被った男が一歩前にでる。
降り下ろされる剣を恐れることなく一歩踏み出し、迫り来る剣の横腹に押すように手で力を加える。
「!」
軌道をずらされた剣は目的の相手の横を素通りして地面を砕く、そして大きく隙ができた所に滑り込むように懐に入り込み腹部に手を当てる。
「メラミ!!」
腹部に当てられた手から直径30センチメートル程の灼熱の火球が突如出現し、火の粉を撒き散らしながらカニバルキャンディーを弾き飛ばす。
木々をへし折りながら数十メートル吹き飛んだ後に火柱が上がる。
「やったかとは言わないよ負けフラグだからね」
案の定燃え盛る炎の中からカニバルキャンディーが歩いてくる。
すでに鎧は所々が崩れ落ちている。
「なぜだ、なぜ人間がここまでできる」
「それはね、君が弱っているからだよ」
カニバルキャンディーが言葉を発した時にはすでに真後ろから答が帰ってくる。
カニバルキャンディーが後ろを振り返るとさも当然のように後ろに佇むローブの男。
「どういうことだ?」
「言葉の通りだよ。君は僕の呪文でスピード、守備力が極限まで落ち、逆に僕はスピードと守備力が限界まであがっている。じゃあ始めようか。断罪の時間ですよ。安心してください、イブの心臓だけは残してあげますから」
ローブの男の口元は見えないが笑ったようにカニバルキャンディーは思った。
その時にローブの男が指を差し呪文を唱える。
「イオ!」
指定された空間が収縮し、小規模の爆発が起こる。
カニバルキャンディーはバックステップをとり避けようとするがスピードの低下から避けきれず爆風に飲まれ上空に舞い上がる。
「バギマ!」
追い討ちをかけるように更なる呪文。
できあがった竜巻が舞い上げられたカニバルキャンディーを飲み込み真空の刃が幾多に渡り体を切り裂く。
竜巻が消えると体中から血液を撒き散らしながらカニバルキャンディーが落ち、地面に叩きつけられクレーターが出来上がる。
「もう終わりかな?やはり主人がいないとたいしたことはないな、どこかで見ているんだろうが」
「………」
反応しないカニバルキャンディーに警戒しながらもゆっくりと近づく。
「死ね!!」
「しまった」
警戒はしていた、そして相手のスピードは落ちているはずだった。
しかし、火事場の馬鹿力か、窮鼠猫を噛むか自力て呪文の効力を打ち消し、目に見えぬほどのスピードで剣をつきだして突っ込んでくる。
一メートル、50センチメートル、10センチメートル、
死ぬ前の光景がスローに見えるように、剣の切っ先が少しずつ死を纏って迫り来る。
(もうだめだ)
目を瞑り観念するが、剣が刺さることはなかった。
開けられた視界の先には剣の切っ先を握るもう一人のローブを纏った女性が、
「交代です。下がっていてください。あと、メラミの火柱、イオの爆発、バギマの竜巻を見た風紀委員の人達がこちらに向かってきているのですぐに終わらせます」
「なめるな!!」
切っ先を掴まれていることも気にせず力で押し込もうとするがびくともしない。
ローブの女性が剣ごとカニバルキャンディーを持ち上げジャイアントスイングをした後に再び上空に投げあげる。
「あの者のイブの心臓にアストロンをお願いします」
「了解、アストロン」
部分指定のアストロン、カニバルキャンディーのイブの心臓は金属化して無敵状態に。
「さようなら。ヘルズフラッシュ」
16号を基本にしたために使える技、
ただし16号のように腕を取ることを必要とはしない。
かめはめ波のように手のひらから放たれる。
放たれたヘルズフラッシュの黄色い極太レーザーはカニバルキャンディーを飲み込み瞬時に体を全て塵とする。
そのまま勢いは衰えることはなく夜の暗闇を強引に引き裂きながら天に登っていった。
「さすがに凄いな…。呪文いらないんじゃ…」
ショックから体育座りをして落ち込んでもしょうがないぐらいではあるが足音が近づいてくる音がするので気を取り直して撤退する。
「ルーラ」
ローブの男女は闇に溶け込むようにその場から消えた。
「やつらはいったい何者なんだ」
ローブの二人組が消えると物影から現れる男。
金属化し破壊されるのを免れたイブの心臓を拾うと苦々しげな表情を浮かべ去っていった。
数分後、町から帰ってきた雷真とシャルが先程まで激しい戦いが繰り広げられていた現場に来ていた。
「はぁはぁ…、今日も現れたようだよ。はぁはぁ…」
「カニバルキャンディーか。それにしとも疲れているようだが大丈夫か?」
「気にしないでくれ…」
「ああ」
雷真と疲労しきったフェリクスが一言二言言葉を交わす。
「やあシャル、町に行っていたのか?」
「え、う、うん…」
気まずそうにどもりながら答えるシャル。
「シャル、君はもうこの事件から身をひくんだ」
そして、そんなシャルの心を抉るようなことをフェリクス続けて吐き捨てた。
「僕は身をひく、君は雷真を選んだんだ。しばらく君の顔は見たくない」
愕然とした表情をしたシャルはショックを受けたように走り去った。
「あ~あ、やっぱり役者だな。ちょっとした変化じゃあ流れは変わらないか…」
僕は少しはよくなると思っていたが、命を一つ救えただけで、他は変わることがないことに少なからずショックを受けていた。