自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

11 / 96
雷真を救え!

 目の前には漆黒の暗闇が広がっている。

 まるで僕の心境を表すかのような暗闇だ。

 そんな中を僕は全力で走っている。

 それも僕の見識の甘さが招いた失態である。

 僕は、カニバルキャンディーを『イブの心臓』を残すまでに追いやった。

 そのため、この事件の進行を先伸ばしにし、シャルの悲しみが少しでも癒えてから事が起こるようになるだろうと考えていたのだ。

 しかし、この考えは甘すぎた。

 ヤツの、黒幕のフェリクスとその後ろ楯の力を甘く見ていたのだ。

 『イブの心臓』のみになっていたはずのカニバルキャンディーをすぐに元の姿に修復し、そのまま事件を終息させようとしていたのだ。

 すべての犯罪をシャルに被せて…。

 確かにこのまま静観に徹しても事件は雷真によって幕く引きとなるのだが、その引き換えとして雷真は大変な怪我を負い、さらには命まで削られる。

 そして夜々も流さなくても良い血を流し、後々のことになるが心に大きな傷を負うことになる。

 それだけは、回避したいと思って行動していたのに…。

 まだ事件が続いていると気づいたのは、十六夜のおかげであった。

 モヤモヤしていたが命を一つ救えたから良かったかと思い就寝しようとしていた時だった。

「零夜大変です。雷真とリゼット·ノルデンが合流したようです!」

十六夜が少し焦ったような声色でそう言ったのだ。

 十六夜が気づけたのは十六夜には『気』や『魔力』を感知できる仕様となっているからだ。

 普通に考えると、雷真とリゼット·ノルデンで何が危険なの?と思うかもしれないが、そうリゼット·ノルデンこそがフェリクスの『禁忌人形〈バンドール〉」カニバルキャンディーであるからだ。

そして、今僕は雷真の方へ、そして十六夜にはシャルの方へ手分けして向かっているのだ。

 急いでいるのに目的地には近づいているのかさえ分からない。

 漆黒の暗闇が焦る僕を妨害するかのように立ち塞がっているのだ。

(この辺りには風紀委員がいるだろうからあまり自分の位置を報せるような真似はしたくはないが、しょうがない)

僕は見つかるのも覚悟の上で見通しをよくする方を選んだ。

「レミーラ」

僕が呪文を呟くと周りの暗闇を振り払うように明かりが照らし出す。

(よし急ごう)

 見通しの良くなった道を僕は『重要機巧保管施設·通称〈ロッカー〉』へと急いだ。

 しばらくすると墓石のような巨大な施設といくつもの人工的な明かりが見えてきた。

 僕は呪文を解き、物陰から様子を伺う。

 すると、風紀委員と数多くの自動人形が群れをなし、何かをしている。

 遠くて見えないのでここはドラクエの特技でと『鷹の目』を使う。

 一般的には町やダンジョンを探す特技なのだが、今はそんなことは関係ない。

 視界がさえ、よく見えるようになった。

 そして、そのよく見えるようになった光景に僕は腹が煮え繰り返るような怒りが沸きだしてきた。

 風紀委員とその自動人形達は、拘束されて動けなくなった夜々を周りからリンチするように暴行を加えていたのだ。

 沸き上がる怒りをなんとか鎮めて僕はまず夜々を助けることにした。

 ここで夜々を助けておかなければ、雷真の命が削られる、さらに後々の夜々の心に大きな傷をつけることになるからだ。

 本当は怒りに任せて上級呪文をぶっぱなせたらとも思ったが、幸か不幸か今の僕は初級呪文(メラ、ギラ、ヒャド、バギ、イオ)と一部の中級呪文(メラミ、ベキラマ、ヒャダルコ、バギマ)しか使えない、それに大事にもしたくなかったために穏便にいくことにした。

(まずは自動人形を行動不能にする)

「マホトーン」

この世界ではとんでもなく役に立つ呪文『マホトーン』、魔法と魔力が封じられ、魔力供給が途切れた自動人形達が、機能を停止させ動きを止める。

 機能を停止させた自分達の自動人形に駆け寄る風紀委員。

 

(次は君達だ!)

「ラリホー」

僕の呪文『ラリホー』を受けた風紀委員達が次々と倒れ始める。

 僕の運がいいのか、風紀委員のレベルが低いのか、二つの呪文によりその場の全ての風紀委員とその自動人形を無力化するのに成功した。

 僕はそれを確認すると夜々に近づく。

 月明かりに照らされる夜々は『雪月華』の『月』にあたりその美しさが月光によってひきたてられている、その美しさに目を奪われそうになったが、邪念を振り払い回復させることに専念する。

『ベホイミ』

魔力を注げばいいのだが、ラノベ本編では夜々に魔力を注ぎこんだシャルの手がシワシワになるということが起こっていたために、呪文での回復を選択した。

 夜々の傷つきかたを見ると、『ベホイミ』よりは『ベホマ』のほうがいいのだが、これも使えないのだからしょうがない。

 一回の『ベホイミ』では癒しきれず、幾度となく『ベホイミ』を重ねがけすることで傷は癒え、夜々は目を覚ました。

 その夜々の第一声は「雷真はどこに」であった。

 僕は夜々を宥め、

「雷真が大変なんだ急ごう!」

と言った。

 ただそれがいけなかった。

 夜々の体から漆黒の暗闇よりも黒いどす黒いオーラ(魔力)が溢れ出す。

「ま、ま、まさか、あの女狐とよろしくやっているのでは…許せませーーん!!」

と叫びながら夜々はどす黒いオーラ(魔力)を撒き散らしながらロッカーに突っ込んでいった。

 僕が夜々に追い付いた時には、夜々は雷真にすがり付き涙を流していた。

 ただその周辺には死屍累々の風紀委員が転がっていたのは言うまでもない。

 たぶんこの風紀委員も外の風紀委員同様に雷真に暴行を加えていたのだろう。

 それを見た夜々が片付けたのであろう。

「雷真、雷真、起きてください」

涙の結晶を流し続けながら雷真に声をかけ続ける夜々。

「僕が雷真を治療するから少し待っていて」

と僕が言うと

「はい…」

とだけ言い、雷真を膝枕し静かに雷真を見守っていた。

 雷真も『ベホイミ』一回では癒しきれなかったが、二回ほどで全快に近い状態になっていた。

 慌てて飛び起きた雷真に事情を説明し終えた瞬間、雷真は夜々を連れて走り出した。

 友を、シャルを救うために……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。