自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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シャルの絶望、その時僕は…

 大型ライトで照らし出された夜の森の中で、フェリクスとシャルが向かいあっていた。

 そのような状況となったのは、シャルがフェリクスから絶望のどん底に落とされるようなことを言われ、それを晴らすためにも、また自分の信念にを貫くためにもカニバルキャンディーを捕らえようとしていた時のことである。

 その最中、シャルは森の中で蠢く四本足で歩く自動人形を目撃した。

 シャルはカニバルキャンディーを発見した、捕らえようと嬉々としてシグムントに『ラスターフレア』を命じ捕らえることに成功した。

 しかし、そんな中周りから一斉に照射される大量の大型ライト。

 シャルが捕らえたのは同じくカニバルキャンディーを捕らえることを目的として風紀委員が放っていた囮であった。

 そして、フェリクスが現れ、シャルと向かい合うといった感じでこの状況に至ったのだ。

 その場にフェリクス以外の風紀委員がいないのは、フェリクスが雷真に向けて、そして先ほど自分の〈禁忌人形(バンドール)〉を痛め付けた謎の敵を捜索させる為に放っていたためだ。

 シャルと向かい合っているフェリクスは、普段のにこやかな笑顔とは対極にあたるいびつに歪んだ笑みを浮かべている。

 フェリクスの口から語られた話はシャルをさらなる絶望に叩き落とすものであった。

 カニバルキャンディーは自分であること、そして、シャルの〈ラスターカノン〉と自分の〈魔術喰い(プレデター)〉が似ていたためにシャルに罪を着せて抹殺するつもりだったことを

 シャルは力なく座り込み、涙を流す。

 信じていた者が、少なからず好意を抱いていた者が自分を陥れようとしていたからだ。

 その様を影から見守っている、十六夜は唇を噛み締めて今にも叩き伏せてやりたいという思いを押し殺していた。

 この時十六夜に零夜が頼んだのは、シャルの命に危険が迫った時に限り行動を起こすこと、それ以外なら静観することであったからだ。

 地に伏せ涙を流すシャルを嘲笑しながら見ていたフェリクスは右腕を上げる。

 手が当てられた先にはいつの間にか、フェリクスの〈禁忌人形(バンドール)〉カニバルキャンディーがたたずんでいた。

 フェリクスの右手から魔力がカニバルキャンディーに流れ込む。

 魔力を得たカニバルキャンディーは、その魔力で氷の刃を生成し、シャルを貫くために射出された。

 ヒュンという風切り音と共に射出された氷の刃はシャルではなく、シャルを守るために盾となったシグムントを貫く。

 シャルは愕然として動けなくなっており、シグムントがシャルに言った「自分を支配しろ」という声さえも耳に入っていなかった。

 カニバルキャンディーはさらに氷の刃を射出した。

 シャルを殺すために……

 放たれた氷の刃は容易く体を貫き、血飛沫を巻き上げた。

「えっ…どうしてあなたが!」

 氷の刃が貫いたのはシャルではなく、突如現れた僕(零夜)であった。

「あ…あれ!?」

僕はいきなり襲いくる痛みに耐えられず、その場に膝をついた。

 僕は雷真がロッカーから走り去った後に、僕は夜々、雷真を回復させるために多くの時間を費やしたことに、危機感を抱いた。

 そして、少しでも早くフェリクスとシャルがいる場所に行こうと思い。

 そこにいるであろう十六夜を目的地として『ルーラ』を唱えたのだ。

 そして、現れたのが十六夜の側。

 しかし、僕の予想外だったことは、十六夜がシャルを守る為にシャルの元にたどり着く直前に僕が現れ、氷の刃を体で受け止めてしまったことであった。

 僕は改めて酷く痛む箇所を見ると氷の刃によって穿たれた穴がぽっかりとあいていた。

「な、なんじゃこりゃあ~~!!」

 このような時にたぶん一番正しい反応であろう、などと考えることもなく僕は叫んでいた。

「お前は何者なんだいきなり現れるとは」

 フェリクスがなんか言っているが、痛みで聞いていられないし、大したことは言っていないと判断し、無視して、回復に勤める。

「ベホイミ」

患部に当てた右手が淡い緑色の光を放つ。

 みるみるうちに穿たれた穴が閉じ、出血も止まる。

「な、なんなんだこれは…お前は本当に何者なんだ!」

 フェリクスは目の前で起こる不可思議な出来事に驚きを隠せない。

「だ、大丈夫なの零夜?」

シャルが僕に駆け寄り尋ねる。

「うん、大丈夫だよ。それより、初めて僕の名前を呼んでくれたね。嬉しいよ」

 

僕がシャルに向けて笑顔を向けながら話すと、

「何言っているのよ、こんなときに」

と顔を赤らめてそっぽを向くシャル。

そんなシャルを可愛いなと思って見つめていると、耳がとんでもない力で引っ張られる。

「何をにやけているんですか。この状況で」

見ると無表情ながら怒りのオーラが迸っている十六夜が立っている。

「あ、十六夜さん。ナニヲオコラレテイルノデスカ?」

あまりの恐ろしさに片言になる僕。

「いきなり自分の身を危険に晒したことが一つ、なんだか分かりませんがイライラしたことが二つ目です」

「?」

「無視をするな」

僕が?マークを浮かべて十六夜を見つめていると、いきなりフェリクスの怒鳴り声が聞こえ、それと共に何発もの氷の刃が雨のように降り注ぐ。

 

「私と零夜の話を邪魔しないでください!」

十六夜がそう言い、軽く右腕を振ると、爆風のような突風が巻き起こり、飛んでくる氷の刃が全て空中で粉々に砕け散った。

「!!」

「少しこちらでお話しましょう」

「いてててて、放してよ十六夜」

自分のカニバルキャンディーが放った無数の氷の刃をいとも簡単に遮られて驚いているフェリクスを他所に、僕はなぜか十六夜に引きずられてその場をフェイドアウトするのだった。

「大丈夫かシャル」

その時だいぶ遅れて雷真が戦場に到着した。

「なんで零夜が先についているんだ!!まあ気になるがそれは後できっちりと聞くとして、まずは今回の事件の犯人のフェリクスお前を倒す!」

「返り討ちだ」

ついに僕の望んだように、本編と同じように雷真·夜々VSフェリクス·カニバルキャンディーが幕を開ける。

 そんな熱い展開なのに僕は十六夜に正座させられ、自分の身を危険に晒したことと、何だか分からないがイライラするという意味が分からないことで説教されていた。

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