自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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夜々VSカニバルキャンディー 最後の戦い

 少し離れたところから爆音のような打撃音が聞こえてくる。

 雷真とフェリクスの戦いが始まったのだろう。

 闇に響き渡る打撃音からもその戦いの壮絶さがまざまざと伝わってくる。

 そんな戦いが始まっている今、僕は何をしているのか?

 はい、きちんと地面に正座をして俯いて十六夜のお説教?を聞いているのです。

 しかし、気になって気になって仕方がない!ということでチラチラしていると十六夜が僕のもとへ一歩一歩近寄って来る。

 顔は影になっていて見えないそれがまた恐い。

 目の前までやって来た十六夜は僕の耳元で囁いた。

「この先の校舎の上に先程雷真が到着する直前にマグナスが現れました。今零夜の呪文を見せるのは得策でないためにこのように緊急で退避することになりました、ここは彼の視界からも外れています、そこでここから雷真さんとフェリクスの戦いを観戦し、少し手を貸すのが一番よいと思います」

十六夜の話から十六夜は怒っていたのではなく、緊急的に退避をしたということであった。

 そうは言っても先程の十六夜の怒りのオーラは演技とはとても思えなかった!とはこの状況ではとても言えなかった。

 

 そして雷真とフェリクスの戦いを観戦することにした。

 今雷真とフェリクスの一回戦は終わったような状況である。

 雷真の隣には夜々が控え、フェリクスの隣にはフェリクスの〈禁忌人形(バンドール)〉カニバルキャンディーが控えている。

 ただし、夜々は無傷、カニバルキャンディーは鎧が所々傷つき、特筆すべき点は鉄仮面が砕け、リゼット·ノルデンの顔が出ているところである。

「お前の本当の名前はなんていうんだ?」

「君に教える理由はない!」

「引っ込んでいろよ、お前には聞いてねえ!」

「……エリザ……」

 

「OKエリザ、退くつもりはねえか?」

 

「…寝言は寝てから言ってくださいこのウジ虫野郎」

 

雷真はなんとかしてエリザを止めようとするが、それは平行線を辿った。

 そして、凄絶な笑みを浮かべたエリザの発した一言が戦いの第二回戦幕開けのゴングを鳴らすことになる。

「貴方は、食事が嫌いですか?」

 この一言で雷真の纏う気配が一変する。

 カニバルキャンディーに対する燃えたぎる怒りから、凍てつくような殺気へと。

 雷真は徐に手を夜々に向け魔力を送り込む。

「光焔三六衝(こうえんさんじゅうろくしょう)」

「はい!」

雷真が魔力と共に指示を与えると、夜々は返事をし、放たれた弾丸のように飛び出す。

 エリザもそれを迎え撃つべく氷の刃を無数に放つ。

 しかし、夜々は止まることはない。

 身を翻しながら、氷の刃を受け流し、燃え盛る火炎のように、エリザに向けて突き進む。

 一瞬でエリザに肉薄した夜々はエリザの剣での一閃をかわし、空高く舞い上がり、足を大きく振りかぶり、降り下ろす。

 夜々の絶大な力と重力が混ざりあった踵落としの力は計り知れない力を持ち、エリザに襲いかかった。

 エリザはかわしきれず左肩を破損する。

 正史であれば、水になって無傷であるはずなのだが、今回は僕の妨害で『水妖(ウンディーネ)型自動人形』の魔術回路を得ることができなかった為に劣勢にさらされているのだ。

 夜々は液体などの相手は苦手とするが、エリザは今回は液体になれない為に、エリザを圧倒し始める。

 しかし、フェリクスは依然として不適な笑みを浮かべている。

 夜々が再びエリザに肉薄した時だった。

 後ろに控えている雷真が転倒し上下が逆さまになり何かに吊り上げられ、そのまま大樹に叩きつけられた。

 雷真は大樹がへし折れる程の力で叩きつけられる。

「雷真!!」

夜々とシャルの悲痛な叫び声がこだまし、フェリクスは歪んだ笑みを浮かべる。

 夜々、シャルの『哀』とフェリクスの『喜』の感情は大樹のもとに横たわる雷真を見て真逆に変わる。

 雷真は、銀色に鈍く光る金属と化していた。

「ふう、間一髪だったけどうまくいったな」

僕はアストロンが上手くいったことを喜んだ。

 雷真が大樹に叩きつけられる直前にアストロンをかけたのだ。

「これは、まさか零夜が…」

雷真の姿を見てシャルは小さく呟いた。

 夜々は金属と化した雷真に近づき心配していたが、シャルに「大丈夫」と言われると安心して、雷真をつり上げる為に使われ、未だに雷真の足に巻き付いている鎖を引きちぎった。

「いったいどういうことなんだ!」

一行に上手く事が運ばないことに対してフェリクスは怒りの声をあげる。

「しょうがない、マグナスの為にとっておいた魔術だが見せてやる」

フェリクスの右手から膨大な魔力がエリザに流れ込む。

 エリザが白く発光し始めた。

(少し展開が早まったみたいだならば)

「ヒャダルコ!!」

白い霧が夜々を巻き上げるところに呪文を放つ。

『ヒャダルコ』ヒャド系中級呪文。指定した範囲を凍りつかせる呪文。

 フェリクスのとっておきの魔術は〈白い幻霧(ホワイトミスト)〉気化した魔法薬(エリクサー)の溶解液であり、攻撃能力を持った流体、夜々の弱点をつく攻防一体の魔術である。

 その〈白い幻霧〉は時間をおうごとに敵を腐食させる。

 雷真は、この危機を夜々の血を流させることと、エリザの特性を上手く利用して攻略するのだが、それは雷真にとっても苦渋の決断である、僕はそれをさせたくなかった。

 雷真の心の傷、夜々の体の傷をつけさせないために。

 例え魔術であっても、気化した魔法薬であるなら、冷やして固めればいい。

 辺り一体の気温が急激に冷やされる。

 草は凍りつき、霜柱がたつ。

 そしてヒャダルコはエリザにも牙をむく。

 辺りに充たされた〈白い幻霧〉が集まり液体になり、次第にぎこちない動きなる。

「夜々、そいつをぶっ飛ばせ!!」

金属と化していた雷真が元に戻り、夜々に指示をだす。

 振るわれた拳は凝固し始めたエリザを捉え地面に叩きつける。

 フラフラとしながら立ち上がるエリザに留めをさしにかかる、夜々は雷が光るような速さで衝撃波を撒き散らしながらエリザの懐に潜り込む。

 エリザはもう動くこともままならず受け入れたように立ちつくしている。

「天剣絶衝」

雷真の指示を受けた夜々がエリザに拳をつける。

「〈破却水月〉」

エリザの体が波打つ。

夜々の力がエリザの体内で爆発し、エリザは霧散した。

 霧散する直前に見せたエリザの顔は憑き物がとれたように清々しく綺麗な笑顔であった。

 潔いエリザとは違い、主人のフェリクスは往生際が悪かった。

「僕はキングスフォードの嫡男だ。僕に狼藉を働けば、王室が黙っちゃいない」

だとか

「取引をしようじゃないか。僕は君たちが無実だと証言する」

等々小悪人らしい言葉を並べ立てる。

 僕は呆れて笑うことすらできなかった。

 そして振るわれる雷真の拳はフェリクスの顔面を捉え弾き飛ばした。

 もしも、今僕がバイキルトが使えていたら、雷真に使ったのになーとかなり残念に思ったのだった。

 




戦いの展開がかなり早くなってしまいました。
戦闘描写は本当に難しいです。
今回と次回の冒頭で小説一巻分が終わるので、少し番外編を挟んで二巻に進んでいきます。
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