自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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変わっていく日常

「うわ~~~、何で襲ってくるんだよ~」

「待てー戦えー!」

僕の後ろから自動人形を連れた学生が追ってくる。

 『ぼっち』の僕の友達に志願してくれているのではない。

 僕の白い絹の手袋そう〈夜会〉の参加資格を狙ってのことである。

 たぶん参加資格保有者の中で僕が一番弱そうに見えたからだろう。

 フレイとかもいたけれど女性にはと思ったのかもしれない。

「ちっ、しょうがないな相手をしてやろう!」

気だるそうに僕は足を止め振り返り、追っ手に手を向け呪文を唱える。

「マヒャド!!」

麗らかな情景が一変し、青白い極寒の地に変わる。

 木々は凍りつき、枚散る木の葉も落ちれば割れるように完全に凍りつく。

 絶対零度に支配された空間は、呪文詠唱者とそのパートナー以外に襲いかかり二つの氷像を作り上げた。

 僕はため息をつきながら呟く

「命は大事にしないとね」

僕は振り返ることなく立ち去った―――

 

なんてことできるはずないだろう!と頭の中で妄想しながら、その妄想に一人突っ込みをする…情けないが、どこで〈夜会〉参加者が見ているか分からないので迂闊なことはできない。

 そう戦略的撤退が一番いいのだ。

 ということで僕は自分に『ピオリム』という速度上昇呪文をかけ見事に〈トータス寮〉まで逃げ切ることができた。

 暗く古く壁にひびが入ったような狭い部屋であっても僕にとっては安全で気を抜くことができる唯一の場所である。

 そんな自室で寛いでいると、十六夜が話しかけてくる。

「この頃勝負を仕掛けられることが増えましたね」

「本当に困ったことだよ。今までは挨拶すら雷真やシャル以外としたことなかったのにね」

僕はため息を吐きながら苦笑いを浮かべて十六夜に答える。

 

「〈夜会〉まで講義以外は寮に籠ることにしますか?」

 十六夜の言葉に僕はしばらく思案する。

 確かに転生する前の僕ならば、ゲームをしたり、ネットをしたり、アニメを見たり、ラノベを読んだりと一週間だろうが一ヶ月だろうが籠る為の娯楽があったのだが、この世、20世紀の世界にはそれらは存在しない。

 

 そして今までのインドア派の僕からは考えられない答えが浮かんだ。

「学院の外にデートしに行こう!」

「デ、デートですか」

いつも泰然自若としている十六夜が少しどもる、珍しい姿だ。

「うん、観光もしたいし、可愛い十六夜に合う服も買ってあげたいし」

「えっ、いいんですか」

「もちろん、十六夜は嫌?」

「い、いえ。う、嬉しいです」

十六夜は俯き頬を染めている。

「うっ!!」

普段無表情な十六夜が見せた女の子の表情。

 僕は完全に撃ち抜かれていた。

(い、いかん。このままでは十六夜を押し倒してしまいかねん。別のことを考えねば…)

理性を立て直し、煩悩を振り払おうとしていると、何も言葉を発していない僕に疑問をもったのか、十六夜がチラッとこちらに潤んだような(僕が思い込んでいる)瞳で視線を向けてきた。

(グハッ、『魅惑の眼差し』か!)

女性に全く免疫がない僕は一瞬で全てのHPが消し去られ、その瞬間目の前が赤くなった。

 まるでドラクエで『ザキ』や『メガンテ』を食らったように。

 僕は何か幸せな感情を抱きながら眠りについた。

 次の日、ちょうど休日だったために約束通り僕達は町に行くことにした。

 ただ門を通り外に行くことは自動人形である十六夜には許されていないので、『ルーラ』を使い一回行ったことがある学院の外へでた。

 そこからは、全くデートの経験などないので、服を見たり町を練り歩いたりするしかできなかったが、十六夜は楽しそうにしていたのでそれはそれでよかった。

 それに十六夜にあう可愛い服も買うことができたし。

 で、今は僕達は路地裏にいる。

 別にいやらしいことをしようと思っているのではない。

 ドラクエとかでもそうだが、新しい町についたら隅から隅まで探索したり、路地裏まで探るのが基本であろう。

 それに路地裏には色々と面白いことや珍しい物がありそうだし。

 まあ、転生前であれば、このような所にはそれこそ怖いお兄さんやその筋の道の怖いおじさんがいそうで入ることはまずないのだが、今は呪文も使えるし、十六夜もいるからこうやって入ることもできるのだ。

 ある建物の裏口を通った時だった。

 突然扉が開き、輝くような金髪を持ち、誰もが振り返るとような美貌を持ち、一部が少し残念な見知った顔の少女シャルがいきなり現れた。

「えっ!!」

「えっ!!」

二人で見つめ合った状態で、一瞬の間をおいてまわれ右をして逃げ出そうとした。

 しかし、まわりこまれた。

「なんで逃げるのよ」

「いや癖で」

シャルは少し怪訝な顔をしたが、いつも通りの清ました表情に戻る。

「で、なんでこんな所にいるのよ。しかも十六夜も一緒になんてどうやって学院の門を出てきたのよ」

「えっと…その、あの…メタルキングの鎧を探して…」

「何言ってるの?」

緊張のあまり自分でも何を言っているのか分からない状態に。

「というかシャルこそなんでこんな所に?」

僕は刃を翻し切り返す。

「えっとそれは、あれよあれ」

「あれとは?」

僕はやったと頬を緩めて聞き返す。

「うっ…もういいわよ。話すわよ。そのかわりこちらの質問にもしっかり話してもらうわよ」

いいと言いながらもその笑顔は美しいのにおぞましかった。

 

「ハイワカリマシタ」

いつぞやと同じように片言になる僕、この世界の女性は恐いなと再び思い知ったこの時である。

 その後シャルと共に近くのレストランに移り、あのような一般人が近づかないような所に出入りしていた理由を話してもらった。

 たぶん僕に少なからず心を開いてくれていたからだろう。

 フラグが立っているとはこういうことを言うのだろう。

 そして、シャルが話してくれた内容とは、シャルが〈魔王(ワイズマン)〉を目指す理由とも重なるものであった。

 爵位剥奪の憂き目となり、それまで一緒に暮らしていた自動人形は全て解体された。

 シャルはその自動人形(家族)を取り返す為に行動をし、また〈魔王〉を目指しているということだった。

 そして、家族の心臓(イブの心臓)が裏で取引をされているということであのような路地裏の怪しい店などを訪ねて回っていると。

「ぅぅ…」

僕はその話はラノベを読んでいるので知っていたが、シャルの思い詰めた表情で語るのを見ていたら涙が出てきてしまった。

「なんで泣いているのよ」

「可愛そうで…もらい泣きしてしまい…どうか手伝わせてください」

「えっいいの?」

シャルは少し驚いた表情に変わる。

 今までこんなことを言われたことがなかったからだろう。

「本当に手伝ってくれるの?」

「うん、手伝うよ」

「あ……アリガトウ」

顔を背けながら顔を赤くして言うシャルを可愛いなと思っていると、シャルははっとした感じでこちらに振り返ると

「私は全部話したんだから、零夜あなたにもす·べ·て話してもらうわよ」

と満面の笑顔でありながら、そこには有無を言わさない底知れない圧力を感じたので、話さざるをえなくなった。

 まあ、シャルなら話しても問題ないと思ったので『ルーラ』について説明した。

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