自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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色々と問題があるかもしれませんがお見逃しください。


シャルの家族を求めて〈前編〉

 町外れの暗闇の中が少し発光した後に三つの影と一つの小さな影が現れる。

「見ていても驚かされたが、自ら実感してみるとより驚かされるな…」

「ホントよ。なに瞬間移動って、チートじゃない」

シグムントとシャルが口々に『ルーラ』の感想を言う。

 今から町にある闇市に行くために、僕と十六夜、シャル、シグムントの四人で学院の門を通らず、町に出てきたのだ。

 やはり、口では説明していたが、『ルーラ』には二人とも驚かされたみたいだ。

「じゃあ行くわよ」

「ちょっと待って」

行こうとするシャルに僕は待ったをかける。

「どうしたのよ」

「これを着て」

僕はシャルに荷物の中から黒いローブと仮面を取り出してシャルに渡す。

「これは何?」

「今から町の闇市に行くところを誰かに見られたら大変だからね。これで僕達だって分からなくするんだよ」

「懸命だな」

僕の提案をシグムントは渋い声で支持してくれた。

「そ、そうねありがとう」

シャルは僕からローブと仮面を受けとると、ローブを見にまとい、仮面をつける。

「どう?」

「ウ~ン。夜の闇に紛れるからいいけど、もしも明るかったら通報されるな。それに」

思った通りのことを話す。

「それに?」

「シャルの綺麗な顔が見れなくて残念だよ」

「!!!。な、な、な、何行ってるのよ早く行くわよ!」

プイッと背を向けると足早に歩いて行ってしまった。

「ま、待ってよ」

とついていきながらも、仮面でカバーできない耳が真っ赤に染まっているのを外灯の光で見てとれた。

「フフ」

「はぁ…」

その後を微笑を溢したシグムントと、深いため息をついた十六夜が続いた。

 しばらく外灯をさけ、夜の闇に紛れて町のなかを進むとシャルが路地裏のある建物の扉の前で立ち止まる。

「ここよ。さあ入るわよ」

シャルの声色からも緊張が伝わってくる。

 ドアノブにかけた手も少し震えているようにも見える。

「大丈夫。僕が先に行こうか?」

「だ、大丈夫よ。行きましょ」

重く錆び付いたドアを開くと目の前に地下へと続く階段が現れる。

 シャルが一段一段降りていくのに僕達も続いて降りていった。

 階段を降りきった所に再び重厚な扉が再び現れる。

 その扉にも仮面を被っているから分からないが、たぶん緊張の面持ちで手をかけて開く。

 扉が開かれると中から小さな光が漏れてくる。

 大きく開かれた先には今まで見たことがない、裏の世界が広がっていた。

 なにかよくわからない煙が漂い、顔に大きな傷を持った強面の男や、何処かの軍人かとも思われるゴツい男や、目付きが恐ろしく鋭い男等々、表の世界ではお目にかかれないであろう人々である。

「すいません、すいません…」

恐怖から腰をひいては謝る必要は全くないのに平謝りしながらシャルの後ろをついていく。

 なんとも情けない姿である。しょうがないヘタレなんだから。

「もう少し堂々としなさい」

小声で僕はシャルにたしなめられる。

 そんなおっかない中を固まって行くと一つの区画の露店のような店の前で足を止める。

 そしてそこにいるちぢれた煙草をふかせているいかにも極〇風の店主に話かけた。

「〈イブの心臓〉がここで売りに出されると聞いたのだけど」

机の上に〈イブの心臓〉が見当たらないから尋ねたのだろう。

「ああ、わりいな、全て貴族風の奴に買われちまったよ」

「いったい誰なの?」

たぶん仮面のなかは恐ろしい剣幕をしてまくし立てているのだろう。

「思い当たるヤツはいるが言えねえな。こちらも客商売なんでねえ」

店主は嫌らしい笑みを浮かべながらこちらをうかがっている。

(ああ、そういうことか…)

どうすればいいのよと悩んでいるシャルを制して僕が前に出る。

「何をするの?」

「まあ見ていて」

僕は店主の手を取り、両手で包み込むように握手する。

「ちょっと待ってろ」

店主はにやりと口角を上げ店裏に引っ込みしばらく経って出てきた。

 手には何かが書かれた紙を持ってきていた。

 僕はそれを受けとるとシャルに行こうと言い足早にその場を立ち去った。

 怖すぎてその場をいち早く出たいという心理から出た行動であろう。

「ふう~、怖かった」

僕は外に出て深いため息をついて深呼吸をしていると、シャルが近づいてきた。

「ねえ、あの店主から何をもらったの?」

僕はシャルに店主から渡された一枚の紙を渡す。

 シャルが紙を開いて見ると

「えっ!これって!!」

驚いたような声が聞こえる。

「これって売った貴族の名前と住所じゃない。いったい何したのよ!!」

シャルは僕に詰め寄ってくる。

「少し掴ませたんだ」

「掴ませる?」

「賄賂か」

「どこでそんな悪いことを覚えたんですか」

シャルが聞き返すと、シグムントが答え、十六夜がすずいと近づいてくる。

 十六夜のつけている仮面が余計怖さを引き立てている。

「十六夜さん、それは後程お話します」

「……分かりました……」

僕は胸を撫で下ろすとシャルの方を向いて続ける。

「握手をした時に二、三枚の金貨を掴ませたんだよ。店主がそれを要求していると見てとれたからね」

「あのときね。いきなり手をつかんでいたからその気があるのかと思っちゃったわよ」

いきなりとんでもないことを言い出すシャル。

「僕はノーマルです。十六夜やシャルのような可愛い子が好きなんです」

「!!」

「な、な、な」

十六夜とシャルの動きが止まる。

 やり過ぎたかと思っていると。

「じゃ、じゃあ行くわよ」

「はい」

上ずった声でそう言うと、十六夜も続いて先に行ってしまう。

「フッ、初そうに見えながらも、なかなかやるではないか」

「ありがとう」

(ラノベでよく行われていたことをしていたんだが、結構役にたつもんだ)

僕はそう思いながら走ってついていった。

 住所は書かれていたが僕は全く分からないのでシャルの後をずっとついていくだけになった。

 目的の貴族の屋敷についたのは、夜がかなり更け、月が真上に上る頃であった。

 月明かりに照らされて見える貴族の屋敷は想定以上に広く、広大であり、夜中であるのに門の前には番兵とそのパートナーの自動人形が立っている。

「どうする?強攻突破する」

(さすが〈暴虐竜〉)と思いながらも声には出さない。

 再び大変な目に合うのは自明の理であるからだ。

「そんなことしたら大変な事件になっちゃうよ。少し待っていて」

僕はシャルをそうやって落ち着かせると、以前風紀委員達を無力化した方法をとる。

 ただ、今回は自動人形が先に動きを止めたら仲間を呼ばれる恐れがあるので、先に番兵を無力化することにした。

「ラリホー」

僕が呪文を唱えると、クタクタと番兵が座り込み眠り始める。

「よし、次はマホトーン」

再び呪文を唱える。

番兵の魔力を封じ込め、魔力の供給を遮断する。

直後、自動人形も機能を停止した。

「さあ終わった。行こ」

「本当にとんでもないわね。今は仲間だけど敵になったらと考えると……」

「やりづらいことこの上ないな」

シャルとシグムントが何かを話しているが気にせず僕は屋敷に潜入すべく向かった。

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