自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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シャルの家族を求めて〈後編〉

 ナイフ一本を境に睨みあう十六夜と執事。

 執事は口許に微笑を浮かべるとナイフを手放し、バックステップで大きく距離を取る。

「やはり自動人形相手では部が悪いか。来るんだ私のパートナーよ」

「参りました」

執事が声をあげると、突如としてメイド服を着込んだ自動人形が現れる。

 メイド服と言っても転生する前にメイド喫茶などで見た紛い物ではなく本格的なものである。

「曲者だ出てこい」

 

豚のような屋敷の主人も執事同様に声をあげると屋敷の広間で見た女性型の自動人形がわらわらと現れる。

「零夜ここは私が足止めします。シャルロットさんと逃げてください!」

「ごめんね。そしてありがとう。無事に戻って来るんだよ」

「私は零夜の自動人形ですよ安心してください」

十六夜はそう言うと姿が消える。

 直後数体の自動人形が吹き飛ぶ。

「イオ!」

僕は横壁を破壊し、シャルの手を引き走り出す。

 しかし、しばらく走ると道をドーベルマン型の自動人形に塞がれる。

「よくやったお前たち」

すぐ後ろから薄ら笑いを浮かべた執事が追い付いてきた。

 口許は笑っているのに目は全く笑っていない。

 それどころか桁違いの殺気を孕んでいる。

「もう逃げられない。やるしかないのか…」

 僕は体の芯からの震えが止まらない。

 生死がかかった戦いとなると初めてだからだ。

「零夜よ。自動人形は私が相手をしよう。あの人間は任せたぞ」

そう言うとシグムントはシャルから魔力を受け取り巨大化しドーベルマン型の自動人形の群れに突っ込んでいった。

「シャルを護るためにもやるしかないんだ!!」

僕は自分自身を勇気付けるためにも声を張り上げる。

「君が私の相手をするのか。いいだろう」

執事は笑いながら白い手袋をはめ始める。

 手袋が嵌められたとたんに今まで以上の威圧感が僕を襲う。

 その直後だった、重く鋭い一撃が僕を襲った。

「グフッ!!」

「零夜!」

シャルの叫びが聞こえ、そして僕の視界が一転するといつの間にか僕は地面に倒れ、今までに味わったことがないほどの激痛が顔面を襲っていた。

 その時になって初めて僕が執事に顔面を殴られていたことを知った。

「ベホイミ」

まず体の回復をする。

(このままやっても勝てないならば…)

「スカラ、スカラ、スカラ」

自分の守備力を上げる。

 そして、悠然と微笑みを浮かべて歩いてくる執事に渾身の呪文を唱える。

「手加減抜きだ。ラリホーマ!」

「!!」

ラリホーの上位版のラリホーマを手加減することなく放つ。

執事の顔が驚愕に染まり体が揺らぐ。

(そのまま眠れ)

 僕の願いは通じなかった。

 執事はナイフを懐から取り出すと、自分の足に突き刺す。

「やってくれたな東洋の小僧!!」

執事の顔にはもう作り笑顔の影すら残っていない。

 すでに鬼の形相だ。

「お前たちは楽には殺さんぞ」

再び僕とシャルに向けられる強烈な殺気。

 屋敷からは何度となく爆発音や物が壊れる音が、シグムントが向かっていった方向からも激しく争っている音が聞こえる。

「ヒッヒッフー」

僕はどこかで聞いた心を落ち着かせる呼吸法を行う。

 そしてローブで隠していた最後の切り札を使うことにする。

 ローブを脱ぎ、左手で腰に挿した刀の鞘を、右手を束に添え、執事を見据える。

「ほう侍か」

「ええ、東洋の剣術を見せてあげるよ」

父から教わった剣術の中で唯一の護身術となる抜刀術。

 僕は不器用で近接戦闘には特化していないので抜刀術のみに絞り鍛練をしてきた。

 僕が唯一自信をもって使える近接戦闘用の戦闘術である。

「行くぞ!!」

地面が抉れるほどの踏み込みで執事が襲ってくる。

 ただし足にナイフを突き刺した影響で今までのスピードは影を潜めている。

 僕は目を瞑り、相手の気配に集中する。

(後10メートル、5、4、3、2、いまだ!!)

相手が自分の間合い1メートルに足を踏み入れた。

 そして僕の一閃が放たれた。

 空気を切り裂きながら放たれた一閃であるはずなのに、僕の斬撃は空をきる。

「残念だったな侍少年。俺は一度侍も殺したことがあってなその時に抜刀術を味わった。もう二度目は受けん」

 僕の懐に入り込んだ執事は足を踏み込み体の捻りを解放して爆発的な勢いで、拳を放つ。

「まだたー!!」

「なにー!」

執事の渾身の一撃が僕の腹を抉ると同時に、僕の更なる一閃が執事を捉える。

 僕は執事の一撃により数メートル吹き飛び、執事はその場に膝をついた。

 僕は防御力が上がってはいたが、執事の攻撃力がそれを遥かに上回っており。その攻撃を受けたために視界が歪み意識も朦朧としていた。

 そんな中僕の視界にはフラフラと歩き寄ってくる何者かの姿が。

「シャ、シャル?」

「残念だったな俺だ死ね!」

血走った目をむきボロボロになった執事がナイフを降り下ろした。

「やめてーー!」

執事の降り下ろしたナイフは僕のすぐ横に突き刺さる。

 シャルが執事に体当たりしたことにより、ナイフが僕を捉えることはなかった。

「この小娘!!」

執事は怒鳴り散らしながらシャルを弾き飛ばす。

「キャーッ」

シャルは地面に倒れ込む。

「貴様から殺してやる!!」

怒気を撒き散らしながら執事が倒れているシャルに歩み寄っていく。

 僕から遠ざかる執事。

 その先にはシャルが。

(このままじゃシャルが。動けよ僕の体。雷真ならこんな時でもシャルを守るために命をかけるだろ)

「ル……ルー…ルーラ」

体は動かないが声はなんとか出すことができた。

「死ね小娘!!」

ナイフが深く突き刺さり血飛沫が辺りに広がる。

「…えっ!?…」

僕の目の前には驚きの表情で横たわりながら僕を見つめるシャルが。

なんとかルーラで瞬時にシャルの前に移動し執事の凶刃から守ることができた。

「よ…よかっ…た」

僕はシャルを助けることができたことに喜びながらも体がもたずに崩れ落ちた。

「い…いやーー!!」

シャルの叫びが夜の闇に響き渡る。

「最後まで邪魔しやがって」

執事は先ほど僕を突き刺したナイフを今回は心臓めがけて降り下ろす。

 その時、屋敷が激しい光を放ち跡形もなく消し飛び、屋敷から飛び出した黒い影が僕の元に舞い降り執事のナイフを蹴り飛ばした。

「よくも零夜に…」

「き、貴様は自動人形に相手をさせていたはずだが」

いきなり現れた十六夜に驚き戸惑う執事。

「私の相手は全てイブの心臓のみになってもらいました。屋敷の主は縛って捨ててきました。あなたは殺しはしませんが。償ってもらいます」

十六夜が手を振った瞬間執事の全身に殴打の跡が数えきれないほどつき、その場に倒れ込んだ。

 その様子を見て僕は安心して意識を手放した。

 僕が目を覚ましたのはベッドの上であった。

 横には椅子に座ったまま眠るシャルが。

 何がなにやら分からないままに茫然としていると、扉が開かれ包帯と薬を持った十六夜が部屋に入り、僕と目が合う。

 しばらく間が空き見つめあった後に

「れ、零夜意識が戻ったんですね!」

と初めて笑顔になり涙を流しながら飛び付いてきた。

「うぎゃーーー!!」

「な、なんなの!?」

十六夜が僕に飛び付いた瞬間体に激痛が走り叫ばずにはいられなかった。

 その叫びを聞き、眠っていたシャルも目を覚ました。

「れ、零夜……良かった…」

シャルも僕が意識を取り戻したことに涙を流しながら喜んでくれた。

 しばらくし、十六夜とシャルが落ち着いたので僕が意識を失った後になにがあったのか教えてもらった。

 どうやらあの屋敷に潜入していた〈魔術協会(ネクタル)〉の〈灰十字(クルサーダ)〉の調査員がいて、その人の知り合いが学院にいるということで応急手当てをされた後に保健室に急いで運び込まれたということだった。

 少しでも遅れたら出血死するところだったのだが、あの屋敷から十六夜が数秒もかからないうちに運びこんでくれたらしい。

 シャルと僕の代理の十六夜が学院からお叱りを受けるはずであったが、〈魔術協会(ネクタル)〉が今回の貴族を捕らえることができたことに対するお手柄に免じて裏で手を回して上手くまとめてくれたらしい。

 僕はこの学院の〈灰十字(クルサーダ)〉に感謝した。

 その話をシャルが話してくれた後に今度はとシャルに質問された。

 質問は二つ。

 一つ目はあの執事が抜刀術で死ななかった理由。

 二つ目は抜刀術は一度抜き放つと大きな隙ができ再度攻撃することができないのになぜ攻撃できたかということだ。

一つ目の答えは、この刀が『刃止め』を施してあり、切れなくしてあるからであり。

二つ目の答えは、ドラクエの特技の1ターン二回攻撃の『隼切り』を利用し、一撃目を抜刀術の一閃に、二撃目を抜刀術で抜いた刀を鞘に納刀するために使い、抜刀術の弱点をなくしたのだ。

 ただ二つ目は説明することを憚られたので上手くごまかすことにした。

 シャルはジト目で見ていたがなんとか許してくれた。

 直後シャルはいきなりモジモジし始めて赤くなり僕から目を反らすと何かを僕につきだす。

「こ、これは?」

「お、御礼よ。今回私の家族を助けてくれたことと、私の命を助けてくれたことにたいしてのね」

「あ、ありがとう。一生大切にするね」

僕が満面の笑みでシャルにお礼をいうと、

「だ、大事にしてよね」

と背を向けながら言うと振り向くこともなく保健室から出ていってしまった。

「今回も大変でしたね。今はゆっくり休んで体を癒してくださいね」

と十六夜が椅子に座りながら僕の頭を撫でてくれる。

 子供じゃないから恥ずかしいなと思う一方、懐かしく心休まる感じもして僕は再び眠りについた。




色々グダグダになりながらもオリジナルの話は終了しました。
次回から原作の小説第二巻に入ります。
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