自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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黄泉を救え!!

 Dワークスの孤児院辺鄙な所にあるが故にかなり広い。

 まあ後ろ暗いことをしているのだから、このような辺鄙な所にあるんだが。

 遠くから見た通り石造りの建物、背の高いサイロ、木造の家畜小屋がある。

 多分今は子紫に引っ張られて雷真は牛舎の所にいるのだろうが、やはり『八重霞』により全く見えないし、感じることもできない。

 ということで気づかれないように細心の注意をしている。

 必要以上に離れ、『鷹の目』を使い最初に雷真が入り、黄泉に会うことになる石造りの小屋の扉が開くのを待っている。

 遠くから見てもよくわかる他とは違い異様な雰囲気を醸し出している。

 妙に堅固で扉は鋼鉄製で分厚い。

 そして何より怪しさというか、不気味さを醸し出しているのが魔術的な封印が施され、のぞき窓に鉄格子がはまっていることである。

 雷真が印象をもった牢獄というのはそのままい言えて妙だなと僕自身も感じた。

 そして、しばらくするとその石造りの小屋の扉がひとりでに開き閉じる。

(雷真が入った)

僕は確信し、人間には全く効果は無いが、自動人形には効くということで僕と十六夜に『ステルス』の呪文をかける。

「じゃあ十六夜行こう」

「はい」

十六夜にはなぜか効かないことがわかっているので話しかけ、石造りの小屋まで近寄る。

(以前シャルといった貴族の屋敷の嫌な思い出が思い出されるな…)

と少し辟易しながらも、石造りの小屋の扉の前に息をころして耳をそばだてる。

 小屋の中からはボソボソと黄泉が話す声が聞こえる。

 黄泉と雷真が話しているのだろう。

 ただし雷真、子紫の声は『八重霞』の効果によって聞くことはできない。

 黄泉とは、Dワークスの作り出した〈ガルム〉シリーズのプロトタイプであり、生体部品を用いて作られた〈禁忌人形(バンドール)〉である。

 そしてラビの正真正銘の母親にあたる。

 暴走した自動人形によって亡くなったフレイの両親に代わり母親がわり、そしてラビと共にフレイの家族になった自動人形である。

 しばらく聞き耳をたてていると、黄泉の声が聞こえなくなり代わりに何かが外れる音と歩く音が聞こえ、そして無音に静寂が訪れる。

 そうここからがより一層気を付けなくてはならないのだ。

 黄泉も子紫の『八重霞』をかけてもらうのだから。

 音がなくなってから時間を十分においてから中に入り部屋の奥に進んでいく。

 孤児院の二階を進む、そしてさらに先に進むのだが、今度は雷真だけでなく、Dワークスの社員からも隠れながら進むという更に難易度が上がる。

 ただし、社員達は十六夜がどこにいるのか把握できるので隠れるところさえあれば問題はなかった。

 次に進むのは別棟の一階。

 外から見えた鉄格子がはめられていた場所である。

 屋内はまるで学校かと思うような佇まいである。

 教室のような広い部屋、黒板が設置されていたり、運動場のような所もある。

 そして、雷真が驚愕した場につく。

 まるで食堂のような場で子供達がパンにスープ、サラダに肉といった食事をとっている。

 ただし、不自然に感じるのは子供が集まっているというのに、あたりが静まりかえっているのだ、会話などありはしない、黙々と、まるで機械のように食事をしている。

 そして、その子供達は―――皆フレイやロキと同じように真珠色の髪、紅い瞳を持っているのだ。

 やはり、ラノベで読んで知っていたとはいえ、目の前で実際の物を見せられると驚きは禁じられなかった。

 この子供達は、〈約束された子ども(プロミストチルドレン)〉である。

 人間の中でも稀に(百万人に一人)魔力親和性に優れた者がいる。

 その孤児がここにいる子供達なのだ。ということだったと思い返す。

 さあ、ここからが以前の光景をフラッシュバックさせられる場にいくことになる。

 裏の世界の醜悪な部分、人間によって現実に作り出された地獄。

 薄暗い階段を足音を潜めて地下へと降りていく。

 空気が変わる。

 体の芯から冷やされ、以前貴族の屋敷の一室でかいだ血なまぐさい臭気が漂ってくる。

「いつかいでも慣れないし、嫌なもんだね」

「そうですね。ただ慣れる必要なんてないんですよ」

十六夜と言葉を交わす、ざわめく心を落ち着かせたかったのだ。

 さらに降りていくと自動人形ではない獰猛そうなドーベルマンが部外者を遮るように座っている。

 僕は『ステルス』がかかっているがやはり心底臆病者なので呪文を唱える。

「ラリホー」

くたっと伏せ眠りにつくドーベルマン、脇をすりぬけ先を進む。

 ついに地下の最重要区画に辿り着く。

 すでに、重厚な扉は開かれている。

 雷真が進んで行ったことが見てとれる。

 さらに緊迫した状況なのは部屋の中から非常ベルがけたたましく鳴り響き、警備員が押し寄せていたのだ。

(先に進むために全員眠ってもらう)

「ラリホー」

再び幾度となく役にたってもらっている呪文を唱える。

 しかし、僕は驚愕した、警備員は眠りに堕ちないのだ。

(どういうことなんだ呪文が効かない!)

僕が驚き動けないでいると、こちらへ向かってくる音が、絶体絶命そう思った時だった、後ろにいたはずの十六夜の姿が消え、中から打撃音が聞こえたと思ったその時に、部屋から十六夜が出てきた。

「状況は刻一刻と悪くなっています。私が全て眠らせました急ぎましょう」

「あ、うん」

僕は一言返すのが精一杯だった。

 開かれた扉から冷たい空気が漏れだしている。

 肌を突き刺すような冷気、そうここは〈冷凍庫〉なのだ。

 ただ用途が普通とは全く違う肉は肉でも人間の子供の肉を保存する。

 だが今は感傷にひたっている訳にはいかない。

 床に開かれた奈落に続くような穴がある。

「雷真達はここを降りていったんだ。ただここの下は下水道に繋がっている。問題なのは……僕は…カナヅチなんだ。本当に申し訳ないんだけどまた舞空術で運んで欲しいのだけど」

「いいですよ」

僕が本当に申し訳なさそうに言うと、十六夜は嫌がる素振りすらせずに、僕を抱えて穴に飛び込み、水に浸かる前に舞空術を展開し、暗いトンネル状の中を進んでいく。

 少し先から銃声が響き渡る。

 下水道なので反響して耳が痛いほどだ。

 しかし、そんなことを気にしていられない。

 そして銃声が響いて来た少し前あたりにチラチラとランプの光が見える。

(こんどこそ)

先ほどの失敗を考慮して呪文を唱える。

 

「ラリホーマ!」

ラリホーの上位呪文。

 さすがにラリホーマは効いたようで警備員達は倒れて眠りにつく。

 銃声がした場に辿り着くと上半身と下半身が分断された狼犬の自動人形黄泉と、銃で太股を撃ち抜かれのたうつ警備員、事切れたように動かない自動人形がいる。

 さらに黄泉が魔術を使用しようと体が発光している。

(まずい!)

「マホトーン!」

僕は咄嗟に黄泉に呪文をかける。

 黄泉の体の光が収まる。

 なんとか黄泉の命をかけた魔術を阻止することに成功した。

僕は十六夜に下ろしてもらい急いで黄泉に駆け寄る。

「お、お前は…何者…なん…だい」

黄泉は苦しそうに途切れ途切れ聞いてくる。

「僕はフレイの友達です。あなたを助けに来ました」

「無理…だよ…私は…もう…イブの心臓が…やられて…いて

修復…できない」

そう雷真も黄泉を助けようと思ったのだが、イブの心臓が傷ついていたために魔力を流し込んでも修復できなかったのだ。

 だが僕にはそんなことは関係ない。

「零夜合わせました」

十六夜が下半身を上半身に繋ぎ合わせる。

「ありがとう。ベホイミ」

「!!」

上半身と下半身が僕の手のひらから発せられる緑色の光に照らされ、繋ぎ合わせられていく。

「なんなんだいこれは!?」

驚き困惑した表情で黄泉は聞いてくる。

 しかし、傷があまりにも深く一度の『ベホイミ』だけでは全く癒しきれない。

「ベホイミ、ベホイミ、ベホイミ、ベホイミ」

何度も重ねがけをする。

 それが項をそうしたのか、黄泉の上半身と下半身はしっかりと繋がり、黄泉の表情からも苦悶の色がなくなる。

「よし上手くいった。じゃあここを破壊してフレイの元に帰ろうか。十六夜頼めるかな?」

「はいもちろんです」

十六夜は答えると、手のひらから二十センチ代の黄色く発光する球体の気弾を生成しその場にとどめる。

 僕の『イオ』では破壊しきれないために十六夜に頼んだのである。

「リレミト」

僕と十六夜と黄泉の姿が消えた。

 そして気弾は輝きを強くして弾けとんだ。

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