自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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黄泉を伴い学院に

 時は黄昏時、辺りは夕日のオレンジ色に照らされ幻想的に感じながらも、少し物寂しさを感じさせる時間である。

「もういいかい?」

「ああ、ありがとう」

傷が酷かったために下水道から出た後も『ベホイミ』の重ねがけをしてもう心配しなくてよいほどまで修復することができた。

 改めてドラクエの回復呪文の素晴らしさを実感するのであった。

「零夜そろそろ帰らないと〈夜会〉の開会式に間に合いませんよ」

僕の側にいる十六夜が学院に帰ったほうがよいと促す。

「そうだね。でも僕の出場はまだ3、4日余裕あるし大丈夫だよ。開会式なんて出なくても、だいたいそういう式は学院長のダラダラと長い話があるだけだし」

 

僕は今まで体験してきた入学式やら終業式やら始業式やら卒業式やらを思い浮かべながら十六夜に答える。

「私は構わないのですが、キンバリー教授に怒られないですか?」

「すぐ帰ります!」

十六夜の言葉で背筋が冷える思いをした僕は帰り支度を整える。

 十六夜は苦笑いを浮かべるだけである。

「ここって学院からどれくらい離れているのかな?」

僕は十六夜と黄泉に問いかける。

「すまないね、私はここの外に出たことがないから分からない」

黄泉が悪そうに答える。

 たしかに黄泉は外に出たことがないみたいだからしょうがない。

 いや黄泉の境遇を考えていなかった僕のほうが悪かったのかもしれない。

「ごめんね」

「なぜ謝る、なにも気にすることはないよ」

黄泉は不思議な顔をしながら返答する。

「零夜いいですか。軍の車のスピードと追ってきた時間を考えると30キロぐらいでしょうか」

「30キロかまいったな」

僕の『ルーラ』はまだ未熟であり、半径10キロ程までしか瞬時に移動できない。

 ドラクエの世界では簡単に世界の裏側だろうが、違う世界であろうが、行ったことのある所なら行けたのだが、世の中そんなに甘くはなかった。

「また十六夜に頼むのは心苦しいんだけど学院の近くまで運んでもらえるかな」

「気にすることはありません。私は零夜の役にたてるのが嬉しいのですから」

夕日に照らされて浮かべる十六夜の微笑みは大変美しかったので見とれていると、

「は、恥ずかしいので見つめないでください…」

と燃えるような夕日よりも赤くなりさっと僕と黄泉を担ぎ上げると舞空術で飛び上がりとんでもない速さで学院に向かって飛翔した。

 「さあ学院まで約5キロほどです」

「空を飛ぶだけでも驚かされたのに、まさかここまでのスピードとは…」

下ろされながら黄泉は感想を述べる。

 それはそうだろう。

羽があるわけでもないのに空を飛び、五分もかからない内に約25キロほどの道のりを移動してしまったのだから。

「そうですか?お二人のことを考えて相当スピードを落としたのですが」

「………」

絶句する黄泉、そうだろうなと思いながら『ルーラ』を使ったらもっと驚くんだろうなと思いながらも、悠長にしていられる時間もないので、移動先を〈トータス寮の裏側〉に設定して二人を連れて『ルーラ』を唱えた。

 

瞬時に僕たちの姿が消え、次に現れたのは指定通りの〈トータス寮の裏側〉であった。

 「お疲れ様、今からフレイの所へ行こう」

「ああ…」

茫然自失といった状態で一言発するのが精一杯のようだ。

「当然の驚きですよね」

十六夜もしょうがないといった感じだ。

 しばらく経ち驚きから立ち直った黄泉を連れフレイを探しに向かう。

 夕日も沈み辺りが暗くなり始める、

「どこを探そうか?」

僕はフレイが居そうな所には全く心当たりがないので二人に聞いてみる。

「私がフレイさんの魔力を追ってもいいのですが…」

と言いながら十六夜は気づかれないようにチラリ時計を見やる。

「私がフレイ匂いを追うから気にせず〈夜会〉の開会式に向かっておくれ」

黄泉は十六夜が気にしていることを察してくれたのかそう言ってくれたが、僕はフレイの喜ぶ姿が見たいことと、病み上がりの黄泉がやはり心配なので同行することにする。

 

「本当にいいのかい?」

「…零夜がいいというなら…」

黄泉は僕を心配しながらも嬉しそうに、十六夜は呆れたような顔をしてはいたが僕がそう言うのだろうと予想していたのだろう、文句を言うことはなかった。

 黄泉の後に続いて行くと、外灯に照らされたベンチにポツリと座り項垂れるフレイがいた。

 僕は黄泉の背を軽く押してやる。

「ありがとう。本当に感謝する」

黄泉は頭を下げるとフレイの元に歩いていく。

「がうっ!」

フレイの側に座っていたラビがいち早く黄泉に気づいたのか立ち上がり尻尾を振りながら踊るかのように喜んでいる。

「どうしたのラビ?えっ黄泉!!」

「フレイ久しぶりだね」

ラビの視線の先を見たフレイは驚きが隠せない。

「な、なんで雷真は死んだって……」

大粒の涙を流しながら未だに信じられないといった表情でフレイは黄泉に問いかける。

「フフフ、死にかけた所をある人に助けられてね。しかもここまで連れてきてもらったんだよ。ほらそこに」

黄泉は視線を僕らの方に向けたのだが、僕たちは感動の対面を妨害してはいけないなと思いもう立ち去っていた。

 「零夜あなた何処に行っていたのよ!!」

「も、申し訳ありませんでした」

少し前のこと、僕が〈夜会〉の開会式が行われている場にたどり着いた時には既に開会式は終わっていた。

「あ~あ終わっちゃったか、まあいいか」

と僕が軽口を叩いていると、なにやら後ろから言い表せられないような恐ろしい気配を感じ、恐る恐る後ろを振り返ると鬼のような顔をしたシャルがいて―――今の状況になっているのだ。

 恐ろしい顔で怒るシャルの前で地べたに正座をし、日本独自の高等謝罪術『土下座』に近い格好で頭を下げる僕。

 辺りには遠巻きに僕らを見る多くの人がいるが、シャルが視線を向ける度に顔を背ける。

「本当にどういうことよ。こんな大事な日に。雷真は遅れてくるわ、貴方はサボるわ、日本人はみんなそうなのかしら」

 

「ハハハ、そうかも」

「なにを笑っているのかしら」

「すいません」

その後も第一回戦の雷真が〈夜会〉の舞台に上がるまで僕は頭を下げ続けた。

 




フレイが開会式に出ていないことにさせてもらいました。
まあ、家族が亡くなったらいくら大事な開会式でも出ないかなと思ったこととご都合主義です。
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