自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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少し独自設定があります。


フレイとラビを救うために

 会場がざわざわし始める。

 ラビの異常なパワーアップ、フレイの突然の体中からの出血、フレイから溢れでる目視可能な程の濃密な魔力、これだけの異常な事態が起これば当然のことだ。

(まずはフレイの出血を止める)

『マホトーン』で魔力を抑えることが出来なかったので先に出来ることをすることにする。

「リホイミ」

僕は再度フレイに向けて呪文を唱える。

『リホイミ』とは一定の時間毎に体を癒す効果が発動する呪文である。

 ドラクエのゲーム中ではターン毎に最大HPの一割回復であったが、今の事態で一番効果があると判断した。

 ただし、応急的な処置でしかないが。

『リホイミ』の効果が早速出ているのか、破れて出血していた肌がふさがり始める。

(あとは暴走している魔力を少しでも抑え込んだり、減らしたりしなくては…)

頼みの綱の『マホトーン』が効かなかったために窮地に追い込まれる。

 そんな中でも会場ではラビがケルビムに向かって暴れ回っている。

 響き渡る獣の咆哮。

 それは魔力を多分に帯び、まるで迫撃砲の如く打ち出されている。

 ケルビムとロキはそれでも冷静に跳躍してかわす。

 流れ弾が戦闘区域を飛び越え、区域の仕切りとなっている石柱を軽く粉砕する。

 破片は飛び散り観客をも襲う。

 シャルに破片が襲い掛かるがシグムントが羽で護っている。

 しかし、そんな最中でありながらシャルは戦場に釘付けとなっている。

 先程のまでとは違いラビが一方的に押しているのだ。

 突進、そして砲撃。

 ケルビムはいなすことしかしていない。

 未だにラビが強力な攻撃を繰り出すと肌が破れ出血、そして一定時間後に回復というループを繰り返している。

 その光景を見てシグムントが低く唸った。

「フレイは魔力を強引に引き出されている」

 そうだ、今の様を見るとフレイから魔力を強引に引き出しているように見える。

 しかし、実際はその逆、フレイの暴走した魔力が無理矢理ラビに流し込まれているのだ。

(そうか、フレイの魔力を少しでも僕も肩替わりできれば)

僕はフレイの魔力を少しでも引き受けることにする。

「マホトラ」

呪文を唱える。

『マホトラ』は相手の魔力(MP)を奪い自分の物にする呪文である。

『マホトラ』自体はあまり魔力(MP)を奪えないので本当ならばかなり奪える『マホトラ』の上位呪文『ギガマホトラ』がよかったのだが案の定覚えていない。

 少しでも時間と、フレイの苦しみを軽減させられたらと思いこの呪文を選んだ。

 呪文が発動し、フレイから魔力が僕の所へ飛んでくる。

「グッ!?」

(な、なんなんだこの魔力は)

魔力が僕に入り込んだ瞬間とんでもない負荷が体を襲う。

 僕は甘く見ていた。

 ドラクエのように自分の最大魔力を越えたものは自然と消化されると思っていたのだ。

 しかし、実際は奪い取った魔力が僕の最大魔力を越えており、越えた分の余剰魔力が僕を襲ったのだ。

 僕は体を走る痛みに耐えかねて膝をつく。

「大丈夫ですか零夜」

「どうしたの大丈夫?」

十六夜とシャルが僕の異変に気づき心配そうに声をかけてくる。

「だ、大丈夫…」

僕は二人を心配させたくないので何事もなかったかのように立ち上がる。

(こんな苦しみをあの少女フレイが味わっているのか…)

「まだまだマホトラ」

再び呪文を唱える。

 纏まった魔力が僕の体内に入り込む。

「クッ!」

体内で暴発した魔力が僕の体を傷つける。

 フレイと同じように体から出血し、大きな痛みが襲ってくる。

「本当に大丈夫なの?えっ出血してるわよ!」

「零夜もう止めてください。体がもちませんよ!」

僕のただならぬ様子と出血を見てシャルは驚き、十六夜は制止する。

「まだまだ」

僕は再度唱えようとしたその時。

「やっと来てくれたか」

僕は安堵の声をあげる。

 ついにあの男が会場に現れたのだ。

「俺も交ぜてくれよ。ダンスの相手がいないんだ」

ラノベ本編とは違い完全に体が快癒した雷真である。

「ど、どういうことだ!?」

雷真はラビの変わりようよりもフレイの側に黄泉がいることに驚愕している。

「黄泉なんでお前がここに?死んだはずじゃ!」

雷真が視線を向けていることに気づいた黄泉が雷真の元に走る。

「あのあと色々あってね。それは後々話すとして、ラビを助けてやってほしい」

黄泉は深々と頭を下げる。

「当然だラビもフレイも助ける」

そのように雷真が言った時だった。

「部外者がでしゃばるな!」

ロキがいきなり現れた雷真にくってかかったのだ。

(あ~あまたか本当に仲がいいな)

僕は十六夜とシャルに支えられながらその様子を見守るしかない。

「ケルビム!」

「I’m ready」

ロキの指示でケルビムが宙に浮く。

 ケルビムが行動を起こす前に雷真はロキの後頭部を叩き、行動を妨害する。

「何をする!」

「こっちの台詞だ!何をする気だ!」

「ラビを止めるに決まっているだろ!バカか!」

「バカはお前だ!お前が攻撃するとそのぶんフレイの命が縮むんだよ!」

「貴様はわかっていない!バカは黙って見ていろ!」

「お前が見ていろ!」

「貴様が見ていろ!」

等々etc。

二人に聞かれたら大変だが、本当に仲がいい。

 大勢の観客の真っ只中しかも大変な状況の中で口論している。

 そこへラビが飛びかかるが――

主人たちとは違いケルビムと夜々は息があった連携でラビを止める。

 その後ろで再び二人は口論を始める。

 どうやらロキはラビを殺しフレイを救うといい。

 雷真はフレイもラビも助けると言っているようだ。

 最終的には雷真が強引に話を切り上げ行動を起こす。

 夜々に魔力を送り、夜々にラビを相手させ、雷真はフレイを気絶させるようだ。

 雷真は軽やかにフレイに走りよりフレイを落とそうとする。

 その時だった、夜々のマークを突破して雷真の後ろからラビが襲いかかる。

「雷真!」

夜々の悲鳴が聞こえ、そして、ガキッという金属と金属がぶつかり合う音がする。

 ロキが大剣で、ラビを受け止めたのだ。

「ロキ…」

「俺は謙虚で寛大だが、口だけの男はぶっ殺したくなる」

ラビと鍔迫り合いをしながら吐き捨てるように言う。

「言ってろ」

笑顔で雷真はロキに答えるとフレイの元に向かった。

「雷真頼む」

「ああ任せろ」

虚ろな目をしているフレイの元にいるラビが雷真に頭を下げる。

 そして、黄泉はフレイを雷真に託しラビの元に向かった。

 ラビをケルビム、夜々、黄泉で囲み動きを止める。

 そして、雷真はフレイを気絶させ、魔力の暴走を止めることに成功した。

 魔力の供給が途絶えたラビは魔力で膨れ上がっていた体が縮み、パタリと倒れ、そして―――ラビの肩が弾け飛び、血液と肉片が飛び散った。

 あまりの終わり方に場が静まり帰る、そしてその後、せわしなく医療班がやって来てラビを施設に運んでいった。

 心配そうな顔をしてシャルはその光景を見ているので、

「僕のことは気にしなくていいから言ってきなよ」

と言うと少し悩んでいるので、笑顔で

「大丈夫」

というと頷き

「ありがとう行ってくる」

と言って走っていった。

 本当なら僕が行ってラビを回復させてあげるのが手っ取り早いのだが、医療施設には今、花柳斎硝子とキンバリー教授という呪文を絶対に知られると不味い人物が勢揃いしているので涙を飲んで辞退した。

「じゃあ帰りましょうか」

「うん」

僕はそのまま十六夜に肩を貸してもらい〈トータス寮〉に帰って行った。

 このような悪辣な事を仕組んだ黒幕との戦いに備えるために体を休めるために。

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