自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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あまりに原作知識があっても面白くないことと、三巻では主にシャルに関するもので主人公を少し表だって動かそうと思うために主人公の原作知識を二巻までに限定しました。
あと今回の話はあまり原作介入はさせず軽く流させてもらいます。


感動と怒り

 『ホイミ』で体の傷を癒したのちに、寮の自室で休んでいると、十六夜が近づいてきて話しかけてきた。

「花柳斎さんは学院からお帰りになり、キンバリー教授もフレイさんと学院を出ていかれました。今なら大丈夫ですよ」

十六夜には花柳斎硝子さんとキンバリー教授の動向を探ってもらっていた。

 色々動く上でも彼女達は要注意人物だと思ったからだ。

「ありがとう十六夜じゃあ行こうか」

「はい」

僕は深夜となると冷えるのでコートを羽織り、十六夜にも同様にコートを渡して寮から外に出た。

 外灯に灯された道をしばらく歩くと医学部の建物につく。

 以前は忍びこんだが今回は堂々とエントランスから入っていく。

 以前忍びこんだ治療室に向かう。

 治療室の前には黄泉が心配そうな顔をして静かに座っている。

 僕は黄泉に声をかける。

「こんばんは。今回はラビを回復させに来たよ。あと黄泉はフレイについて行かなかったんだね」

声をかけられた黄泉は僕に気づくと尻尾を振りながらやって来た。

「ありがとう。本当に迷惑をかけるな。あと私もフレイについていこうと言ったんだが自動人形を連れては行けないと言うことと、ラビのもとに付いていて欲しいと言われたのでな」

「そうか」

僕は納得いったので頷き治療室に入っていく。

 治療室のベッドには花柳斎硝子により手術を施され命をとりとめたラビが苦しそうに横たわっている。

 僕はゆっくりとラビに近づくと体に手を当てて呪文を唱える。

「べホイミ」

僕の手のひらから淡い緑色の光が溢れ、ラビの体に染み込んでいく。

「あと一回かけて後はリホイミでゆっくり癒すといいかな」

僕はそう呟くと再度呪文を唱える。

「べホイミ」

今回の『べホイミ』で外傷を癒す。

 先ほどは内部の傷を、今回は外部の傷を。

 ラビももう苦しげな表情ではなくなり、静かな寝息をたてて眠り始めた。

「じゃああとはリホイミ」

 僕は『リホイミ』をラビにかけ、治療室を出る。

そして黄泉に、

「ラビはもう大丈夫だよ」

と笑顔で告げると、黄泉も安堵した顔で

 

「私だけでなく息子まで助けてくれるとは…本当に感謝してもしきれないよ。本当にありがとう」

と頭を下げてくる。

「当然のことをしたまでだから。お休み」

「黄泉さんも安心して休んでくださいね」

僕と十六夜はそう黄泉に告げ医学部の建物を歩いている時だった。

「あれ零夜もう怪我はいいの?」

僕はちょうどシャルを探していたので助かったと思いながら答える。

「ありがとう、うん。もう大丈夫」

まず気を使ってくれたことに感謝の意を示し、本題に

「シャル今から雷真達を見に行かない?僕は心配だから見に行くつもりなんだけど十六夜と二人じゃ寂しくて。出来ればついてきてくれると心強いんだけど」

普通に誘っても恥ずかしがり断られるだけなので下手出てに誘ってみる。すると

 

「しょ、しょうがないわね。貴方がそこまで言うならついていってあげるわよ」

 

と嬉しそうに、いや嬉しさをなんとか隠そうとしながら快諾してくれた。

 シグムントがパタパタと飛んできて僕の耳もとで

「ありがとう。シャルの扱いがうまくなったな」

とシャルに聞こえないように小さく囁いた。

「段々とね」

そうシグムントに答えていると、

「早く行きましょ」

と急かすシャルが。

 本当はキンバリー教授とフレイと行きたかったんだろうなと思いながら微笑を浮かべてシャルのもとに行く。

「じゃあ今から四回のルーラで行くんだけど皆に気づかれたくないから前と同じようにこのローブを纏ってね」

と言い僕は十六夜とシャルに黒く目深まで被れ、闇に紛れられる黒いローブを渡した。

 そのローブを纏ったのを確認した僕は呪文を唱える。

「ルーラ」

 それから約9キロごとに刻みながら三回の『ルーラ』を使用しやっとDワークスの孤児院にたどり着いた。

「なんなのよこれ!!」

目の前に広がる光景に絶句するシャル。

 当然である。そこにはDワークスの警備員の死体がそこら中に転がっており、血の海が広がるまさに地獄絵図が眼前に現れたからだ。

 それはDワークスを裏切ったロキが引き起こした惨事なのだが、それは告げずにシャルを励ましながら先を急いだ。

 そして戦闘が行われているのがなんとか見える位置までたどり着く。

「零夜これ以上近づくとあそこにいるキンバリー教授に気づかれてしまいます」

「ありがとう十六夜。分かった」

十六夜に注意を促されたので、そこからシャルと共に見ることにした。

 戦闘はすでに佳境に入っていた。

 それも僕が一番見たかった感動の場面に。

 傷つき地面に横たわるロキと雷真。

そして、そのロキを侮蔑と愛惜が混じったような目で見るこの黒幕のブロンソン。

 あ、ついでに言うとブロンソンとはフレイとロキの養父である。

「解せないな。なぜお前は私に歯向かう?十分な報酬も与えていたはずだ」

「……オレは………オレたちは……あんたの言いなりだった。ある日仲間がいなくなっても……死ぬような実験をされてもだ」

「ますます分からんな。ではなぜ、今になって裏切る?」

ここからだと僕はワクワクして聞き耳をたてる。

「……オレは謙虚で寛大だ。だが、どうにも我慢ならないものが三つある。オレに命令する奴。オレに歯向かう奴。そして」

ロキは唇の両端を歪めて、にやりと笑い

「姉貴を裏切る、クソ野郎だ」

「…………」

原作でも感動した場面を目の前で見れたことと、ロキの言葉に言葉すら発せないぐらいの感動にうち震えた。

 そんなロキにブロンソンは嘆息し吐き捨てるように言った。

「お前はもっとも成功した個体だった。お前たち姉弟は、調達にも手間のかかった素材で、わざわざ新大陸にまで出向き、つまらない細工までしてまで確保したというのに」

「ダメだ、我慢できそうにない…」

僕は怒りで腹が煮えくり返っていたのでそう謝罪も込めて呟いた。

「が、我慢しなさい。私も我慢しているんだから。いつもだったらシグムントにラスターカノン撃たせているわよ」

とシャルが言えば、

「我慢してくださあ。キンバリー教授に目をつけられてしまいますよ」

と十六夜も僕を諌める。

 二人は必死に止めようとするが僕は無意識の内にブロンソンに手を向け、呪文を唱えようとしていた。

「仕方ありません。ごめんなさい」

近くで十六夜の声が聞こえた時だった。

 ドスッと僕の首筋を衝撃が襲い、目の前が暗転した。

 次に僕が起こされたのは夜々が『ひさぎ太刀影』で閃光を放ちながら超高速で通り抜け、ブロンソンの自動人形ルシファーを貫いているところだった。

「安心したわ。ありがとうここまで連れてきてくれて。帰りましょ」

ブロンソンの自動人形を倒した所を見届けたシャルは満足したようで、そう言ったので、それならと僕たちは『ルーラ』を使用して学院に帰っていった。




次回は零夜の〈夜会〉参戦のオリジナルの話を一話入れ、その後に原作三巻の内容に入っていきます。
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