いたらない話ですがよろしくお願いします。
ブロンソンを雷真とロキが倒してから数日が経過した。
雷真は学院からの違法な外出、ロキは不正の証拠品としてケルビムの押収と二人とも罰せられるはずであったが〈灰十字(クルサーダ)〉に属すキンバリー教授のお陰で共におとがめなしで済んだ。
そして、フレイはラビと黄泉に新たにDワークスから救出された12頭の内の4頭を加え〈多重なる騒音(サラウンドロア)〉と呼ばれ快進撃を続けていた。
昨夜は93位を打倒するまでになっていた。
そして、ついに今日の〈夜会〉で92位の僕は参戦することになる。
僕は上位にあたるので今日は〈夜会〉をサボってもいいのだが、フレイとの戦いは避けたいので、僕とフレイ以外に邪魔者がいない今日少し話をしてできれば共闘、最低でも敵対関係にだけはならないようにするつもりだ。
「零夜もういいですか?」
「もう少し待って…あと少し」
そんな状況の中、僕は〈夜会〉が開催される間際になって、ある難敵と闘っていた。
その敵とは転生前からよくよく闘っていた―――緊張による『腹痛』である。
僕は日本人ということで制服の上に黒い羽織りを着て、腰には二本挿し、一本は以前貴族の屋敷でも使用した刃止めを施された刀、もう一本は父の形見の黒刀『烏アゲハ』である。
『烏アゲハ』の名前の由来は黒いりんぷんを撒き散らし空を飛ぶように、この刀に切られた者は黒い血飛沫を撒き散らし天に召されるということが由来らしい。
歯止めを施された刀で学生を、黒刀『烏アゲハ』で自動人形を相手するためだ。
十六夜は黒いローブを着て黒いマントを纏い、背に巨大な漆黒の鎌を背負っている。
闇の中でも一際引き立つ存在感、見るものによっては、畏怖を覚え、また見るものによっては、魅了される。
そんな両極端な側面を持つ大鎌である。
母は裏の仕事でこの鎌を使い『死神』とまで呼ばれたらしい。
その為この黒き大鎌は『刻死大鎌(死を刻む大鎌)』と呼ばれていたらしい。
とまあ準備万端で出掛けようとしたときだった。
緊張により腹がキリキリと痛み、我慢できずにトイレに飛び込んだ所である。
それから約30分強敵と死闘を繰り広げ、やっと鎮まってもらった。
いやまだシクシクと痛むのだが。
僕は腹を押さえながら、十六夜は僕を心配しながら〈夜会〉の会場に向かった。
〈夜会〉の会場で出迎えてくれたのはシャルであった。
「今日参戦するって聞いていたから貴方の無様な姿を見に来たのにこんなに遅れてどうしたのよ?」
「巌流島での決闘の武蔵を真似てね」
「???」
当然のことだが、どうやら日本のジョークは全く通用しなかったようだ。
「ハア、まあいいわ。今日の相手はフレイよ。勝算はあるの?」
「えっ僕はフレイとは戦う気はないよ。話し合いに来たんだから」
僕は偽ることなく真意を話す。
「呆れた〈夜会〉に参戦するっていうのにそんなに甘いことをまだ言ってるの」
呆れた表情でまだ続けようとしているので、このままここにいたら説教が長くなると思い、そそくさと〈夜会〉のフィールドに入った。
「11時30分、〈一匹狼(Looner)が参戦しました」
(なんか野球選手になったみたいだな)
と思って聞いていると、
「アオオーーン」
という声がしたかと思っていると、すでに僕と十六夜は四体の犬型自動人形に囲まれていた。
そして、すぐあとにラビと黄泉を連れたフレイがやってきた。
「こんばんはフレイ」
僕は気さくに挨拶をする。
フレイと黄泉は驚いた表情をしている。
(ウ~ン僕が92位って調べていなかったのかな)
と考えながら、今日の本題に入ろうと口を開こうとした時だった、
「貴方とは戦えない」
「へっ!?」
いきなり驚くべき言葉に反応できない。
最終的にそう落ち着いたらなと思っていた言葉がいきなり出たからである。
「え~~と、どういうこと?」
一応確認しておこうと僕は問いかける。
「黄泉から話を聞いたの、黄泉を助けてくれて、ラビまでも。本当にありがとう。だから戦えない」
僕は黄泉に視線を移すと(すまないね)と言った感じで苦笑いしている。
そうではあっても僕には願ってもないことなのですぐに答える。
「ありがとう。僕も戦いたくなかったんだ。今日はこれからの〈夜会〉で共闘しようと提案しに来たんだ」
僕が真剣な顔で告げると、
「嬉しい、ありがとう」
とフレイが言うので僕はフレイ達に近より手を差し出す。
フレイは恥ずかしそうにしながらもオズオズと僕の手を握る。
なぜか両手で包み込むように。
「アハハ」
近くで見たフレイは年齢以上に幼い容姿でありとても可愛く、ついついそのまま見とれてしまった。
いやいやロリコンではありませんよ。
しかし迂闊であった、この情景を怒気を撒き散らしながら睨み付けておられる方が。
「いったいアイツはなにしてるのよ!!戦うべき〈夜会〉の会場でフレイとイチャイチャして穢らわしい」
と、僕がその殺気交じりの視線に気づいたのは、十六夜が僕の服の裾を軽く引っ張って教えてくれた時になってやっとだった。
『人生楽ありゃ苦もあるさ』
という言葉が頭の中に浮かんでいた。
「昨夜は本当に大変でしたね」
「うん…フレイとの話し合いが上手くいったのに、そのあとシャルに空が白みかけるまでお説教されるなんてね」
「ですが、最後には機嫌も少しは良くなっていたので後腐れはなさそうなので良かったと思った方がいいですよ」
「そうだね」
前向きな十六夜のお陰で超後ろ向きな僕は少し前向きになることができた。
睡眠不足を癒すためにじっくりと休んでその日を過ごし(体調不良ということで自主休校)、夜になり再び〈夜会〉の会場に。
昨夜と同じ装備にマスクを追加して、体調不良を装いながら会場にたった。
しかし、その夜対戦相手が現れることはなかった。
フレイの連れてきた自動人形と戯れて時計は〈夜会〉終了の12時を刻んだ。
さらに、次の日も対戦相手は現れなかった。
「どういうことだろう?」
「二日続けてですからね」
「うん…」
僕と十六夜、フレイとラビと黄泉とリビエラ、ルビー、レビーナ、ロビンで〈夜会〉から帰るために歩きながら喋っていると、後ろから声をかけられた。
「簡単なことよ対戦相手がフレイ貴女を恐れて仲間を集めているからよ。今だと91位、90位、89位が組んでいるらしいわよ」
「あっシャルこんばんは」
「こんばんは〈暴竜(タイラントレックス)〉」
僕とフレイは暢気に挨拶をする。
「ハァ全く、危機感はないの?」
明らかに呆れた表情で聞いてくる。
「うん、十六夜は強いし、それにフレイと一緒なら負ける気はしないから」
「!!」
僕がはっきりと断言するとなぜかフレイは赤くなり、シャルは不機嫌になる。
「ふん、もういいわよ。心配してあげて来たのに」
足音をおもいっきりたてながら去っていってしまった。
(何か怒らせること言ったかな)
と首を傾げていると、チョンチョンと服の袖を引っ張られる。
「か、帰ろ…」
と顔を赤くしながら潤んだ瞳で見上げるフレイが。
「あ、え、う、うん…」
僕はぎこちなく答え皆で帰っていった。
翌日、学院での講義も無事に終え、腹ごしらえをして〈夜会〉に向かった。
〈夜会〉の戦闘区域には既に三人の対戦相手がフレイとオマケで僕を待っていた。
91位、90位、89位、そして彼らの自動人形、前衛に巨大なゴーレム型、鎧を着込んだ騎士型、後方に魔術師型の自動人形が陣を敷いている。
「行こう十六夜、フレイ、ラビ、黄泉、リビエラ、ルビー、レビーナ、ロビン」
「はい」
「うん」
「がう」
僕は初めての実戦を行うべく、戦闘区域に足を踏み入れた。