自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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完成、一生の相棒

 美少女自動人形を作り始めて早くも一ヶ月程経過した。

 始めは貰った『知識』、祖父から授かった『制作技術』、祖父の工房の『設備』『材料(イブの心臓)』などが揃っていたので、制作にはそれほど時間はかからないのではないかと、たかをくくっていた。

 しかし、度々思い知らされることだが、現実は甘くはなかった。

 『知識』は16号、19号のものである。

 16号はゴツイモヒカンアニキ、19号はデブ、しかも共に男である。

 僕が作りたいのは、小柄な美少女型。つまり全てが真逆なのである。

 そのため、大幅に路線変更を強いられることになる。

 ただし、どんなことがあっても『小柄な美少女』だけは譲れないということで、それ以外の面で妥協することになった。(注意書として、僕はロリコンではありません。大事なことです。)

 

 僕は迷わず戦闘力を下げることにした。

 体格さ、質量さ、などから考慮してもそれしかなかった。

 それに、16号も、19号でさえも『地球』を軽々破壊する力を持っているのだ。

 それならば、この世界ならば、かなりのパワーダウンでも敵討ちは可能ではないかと判断したのである。

 そのように妥協することを決断してからは制作スピードも上がった。

 祖父の制作途中の、ある意味形見的な物を使わせてもらったことも大きな要因である。

 そして、数ヵ月を要してついに、ついに、ついに、僕の念願の美少女自動人形が完成した。

 僕はその自動人形を前にうち震え、歓喜の涙を流した。

 始めて制作できた喜びからかもしれない、敵討ちができることへの安堵かもしれない、しかし、一番の喜びは、親不孝者ですいません、ストライクゾーンど真ん中だったんです……。この世界は凄い、可愛い少女しか登場しないかと、思っていたように、僕の自動人形も世界観通りに可愛く、美しくできたのです。

 そして、ついに人間で言えば『誕生』自動人形で言えば『始動』することとなる。

「初めまして、零夜様」

可愛らしい声であるが、無表情。

16号の知識を使ったからしょうがないことではあるが、もうちょっと雷真の『夜々』のように笑顔でいってくれたらなぁ、とも思ったが、『夜々』も最初はかなりツンツンしてたし、仲良くしていけば笑顔も見せてくれるだろうなと思うことにした。

「…………」

無表情で僕の顔を見つめる瞳。

 何かを訴えかけている。

「そうか」

 そこで、鈍い僕も気づいた。名前をまだつけていないことに。

 僕の名前は『零夜』だし、『機巧少女は傷つかない』の世界のヒロインの名前は『夜々』ということで夜に関連する名前にしようと考えていた。

 そして考えついた名前は「十六夜(いざよい)」である。

 単に女の子らしい名前だからということは言えない。

 最初は「黎明(れいめい)」とか「曙(あけぼの)」とかが思い付いたのだが、共に男のような名前だし、後者は……、あの人しか思い浮かばないということで『十六夜』にしたのだ。

「君の名前は十六夜だよ。これからよろしくね」

そう僕が言うと、無表情ではあるが、僅かながら頬が赤みをおびて

「よろしくお願いします」

とポツリと呟く。

 ウ~ン、なんか無表情もよくなってきた。

 となんやかんやありながら、僕は一生の相棒を見つけた。

 それから、僕は『ヴァルプルギス王立機巧学院』を目指すべく動き始めた。

 ただ、『ヴァルプルギス王立機巧学院』は資金と学力がともにないといけない、本当に狭き門であり、それらがないのであれば、それなりの後ろ盾がないといけない。

 その問題に直面したため悩んでいたが、行動しなければどうにもならないので、家の中を捜索してみることにした。

 家の中には驚くべきものが多数存在した。

 祖父の机を捜索した時に、『零夜へ』と書かれた封筒が見つかった。

 少し緊張する心を落ち着けながら封筒を開け、中に入っているものを逆さにして出して見ると、一枚の手紙と何かの鍵が入っていた。

 その手紙にはこう書かれていた。

(零夜がこの手紙を見ているということは、わしはもうこの世にいないのであろう。

 そして、敵討ちをすると覚悟を決めたのであろう。

 わしは敵討ちなどして裏の世界に関わるなどしてほしくはないが、わしの孫だ諦めることはないことは分かっている。

 だが、敵はあまりにも危険すぎる。

 わしはその名をつきとめたがここに残すことはしない。

 その名はわしが一番の信用する者にしか言っていない。

 お前はこれから、敵討ちをするにしても、将来のためにも『ヴァルプルギス王立機巧学院』で学ぶのが最善だと思う。

 わしの蓄えやお前の両親が残しておいた金があれば十分足りるだろう。

 そして、後はお前の頑張りしだいだ。

『ヴァルプルギス王立機巧学院』で十分な力をつけることができたら、その時にわしの信用する者がお前に真実を話してくれるだろう。

 じいちゃんはいつもお前の味方だ。

 いつでも、見守っているぞ。

 

追伸 この鍵は金庫の鍵となる。そこにお前の助けとなるものがあるだろう)

ということが書かれていた。

 熱くなる目頭を押さえながら、嗚咽を漏らしていると、そっと後ろから十六夜が抱き締めてくれていた。

 そこで僕は歯止めが効かなくなったように泣いた。静かに寄り添っていてくれた十六夜には感謝してもしきれない。

 その時、自分はもう一人ではないと改めて実感した。

 しばらくたち、立ち直り部屋一つ分あるのではないかという金庫に鍵をさし、開く。

 ギィーと重厚な音をたてながら大きな扉が開かれる。

 その時、僕は呆然とした。

 金庫の中にはぎっしりと金が納められ、更に、よく見知った『大鎌』と『太刀』が納められていた。

 父と母の形見である。

 錆び一つなく、また刃には顔が映るほど磨かれており、祖父が手入れしていたことも伺われた。

 その父と母の形見に手を伸ばした時に、すでに僕は覚悟を決めていた。

(父と母の敵討ちをしよう)

と。

まあそんなふうに、かなりご都合主義が続きここまでことが運んだのだ。

 たぶん、あの転生させてくれた女性がこのような展開をえがいているのではないかと思われるほどうまく進んだ。

 そしてこの………

グハァッ!!

 何かが自分の眉間を撃ち抜いている。

 目の前には白い粉状のものがはらはらと舞落ちる。

「私の講義で考え事とはいい度胸だな」

 鬼が立っていた。そのい抜くような冷たい視線は僕を金縛り状態にする。

 そう僕が回想を膨らましていた講義は絶対に気を抜いてはいけない、キンバリー教授の講義であったのだ。

 その後、僕と十六夜が広大な講堂を掃除することになったのは言うまでもないことである。

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