自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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第三巻スタート 学院を揺るがす大事件

 今僕は学院の中を歩き回っている。

 前までであれば原作知識もあったので先手を取ることができ、上手くことを運ぶことができたが、今からは全くできない。

 となると、情報が何よりも重要になるからだ。

 さらに、〈夜会〉が始まったためにもう勝負を仕掛けて来るものもいないからだ。

「なかなか問題は起こらないもんだね」

「いいことではないですか。平和が一番ですよ」

ただ単に宛もなく歩き回っているだけなので、そう簡単に問題に遭遇することもない、故に十六夜と散歩をしているだけのようになっている。

 この世界が小学生探偵が活躍する世界であれば、主人公の死神小学生についていけばすぐに事件に遭遇することになるが、この世界の主人公の雷真は問題に遭遇するより、起こってから自分で事件に突っ込んでいくタイプと僕は思っているので、ついていってもその先で問題が起こることはまずないだろう。

 可愛い十六夜と二人でただ単に散歩するのもいいなと思い始めていた時だった。

 僕たちを照らしていた太陽の光が突然巨大な影に遮られた。

 雲かなんかかと思いながら見上げると、全長8メートルほどになるシグムントと、その背には太陽の光に照らされ輝く金髪をなびかせたシャルが乗っている。

 何事かと驚いて見ていると、いきなり強大な魔力がシャルからシグムントに流れ込む。

 シグムントの体が魔力により発光する。

 そして、シグムントの口から全てを塵にする『ラスターカノン』が放たれる。

 大気を切り裂き、爆風のような衝撃波を撒き散らしながら、放たれた『ラスターカノン』は学院の象徴、100年の歴史を持つ時計塔を撃ち抜いた。

 そのまま斜めに『ラスターカノン』で時計塔を凪ぎ払うように放ち続ける。

 『ラスターカノン』を受けた部分は融解しており、崩れ始める。

 粉塵を撒き散らしながら時計塔は融解面から滑るように落ちていき、遂には傾き落下し始める。

 僕はいきなりの出来事に驚愕しながらも、その様を特技の『覚える』を使用し、脳に刻み込む。

 時計塔の近くにいる学生や学院職員、その他諸々が逃げ惑う。

 壮絶な惨状である。

 僕はそこで転び逃げ遅れた女子生徒がいることに気づいた。

「いけない。イオラ!」

僕は無意識の内にその女子生徒の上から降ってくる大きな瓦礫に向けて呪文を唱えていた。

 指定した位置の空間が収縮し、解き放たれ、爆発が起きる。

 かなり大きな瓦礫であったが見事に粉々に破壊することができた。

 今まで成功したことがない『イオラ』が使えたことの喜びよりも、女子生徒を救えた喜びと安堵の方強かった。

 『ラスターカノン』が放たれ時計塔が崩れるのは僅か一分にも満たないものであったが、僕にはそれがとても長く感じられた。

 シャルは冷静に、また冷酷にその様を見下ろしているようではあったが、その瞳には戸惑いや不安が込められていることが見てとれた。

 完全に破壊され瓦礫と化した時計塔を見遂げるとシャルはシグムントと共に去って行った。

 僕はシャルの真意が計れず追って聞いてみたかったが、負傷している生徒が多数いるので、諦めざるを得なかった。

 しばらく、怪我人の手当て、そして集まってきた風紀委員に事情を聞かれるなどして、寮に帰ってこれたのは、日が落ち暗くなった時であった。

 当然大事件となり、その日の学院の講義は全て休校となった。

 シャルは女子寮にも案の定戻って来ることはなかったようだ。

 僕は寮の自室で考えていた。

 あの厳しくも、優しいシャルがなぜあのような暴挙を働いたのか。

 絶対に人は傷つけることをしなかったシャルがなぜあのようなことをしたのか、操られていたとしか考えられない。

 まずは時計塔を破壊することによって起こることはと考えると、それは学院の権威の失墜だ。

 その一点だけであろうか。

 ここで僕は特技『思い出す』を使用する。

 あの事件の現場に必ずヒントがあるはずである。

 まずは崩れ落ちる時計塔を思い出すが何も不審なところはなかった。

 次に着目する点は、逃げ惑っていた人々に注目する。

 ただあまり鮮明ではないため、『思い出す』の上位互換『もっと思い出す』を使う。

 ぼやけていた像がはっきりとしてきた。

 逃げ惑うのは学生、学院職員、等々。

 まずは学生だが、シャルが〈夜会〉で恐れるであろう学生はその場にはいなかった。

 次は職員。

 その時、僕ははっきりと手がかりを掴んだ気がした。

 職員の中に重要人物であり、瓦礫が一番降り注いでいるところにいる人物がいたのである。

 ヴァルプルギス王立機巧学院学院長エドワード·ラザフォードがいることに。

 巨体に似合わず迫り来る瓦礫を身軽にかわし続けていたのである。

 学院の象徴の破壊による権威の失墜、そして合わせて学院長エドワード·ラザフォードの殺害これが狙いであることに気づく。

 さらにそこからさらに広げ、学院、学院長とシャルを憎む人物を推測する。

 あの男しかいない、「キングスフォート家のフェリクス」である。

 学院長エドワード·ラザフォードがフェリクスを〈魔術喰い〉と宣伝したことにより名誉が失墜した。

 その怨みってところか。

 そして、シャルに対しては〈魔術喰い〉事件を解決したことに対する怨み。

 だが、シャルを操るにしても何かしらの要因がなくてはシャルはしないだろう。

 それを考えるには情報が足りなさすぎる。

 あのシャルの寂しそうで、不安に包まれた瞳、絶対に解決して見せると覚悟を決め、明日からすることが決まる。

 より多くの情報を集めること、シャルについて、キングスフォート家の繋がりについて、そしてここが一番事件の解決に近いもの。

 必ずまた今回失敗したために学院長の殺害にシャルは現れるはずである。

 それを阻止すると共にシャルとシグムントを気づかれずに追うことができれば、事件の黒幕にあたることができるはずだ。

 僕は自分の頭の中で纏めた考えを十六夜にも話し、明日から行動に移すことにした。

 絶対にシャルを、あの表情をなくさせ助けるために。

 だが、学生の身でどうすればそれらの行動をすることができるのかは全く思いつかなかった。

「また仮病を使おうかなあ」

と言ったら十六夜に叱られた。

 まあ明日までに考えようと思っていたのだが、微睡み、眠りについていた。

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