自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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ただでさえ分かりづらくなってきた所で、今回はより複雑化した物語なので主人公以外の別視点を入れたいと思います。


奈落の底で

 木々でできたトンネルを、十六夜、雷真、夜々と走り続ける。

(えっ、どういうことだ!?)

僕は目を疑った。

 シャル?を追っているはずであるのに、梢の先に見紛うことのないきらびやかな金髪を持つシャルがいるのだ。

 だが、そのようなことに戸惑うことなど許さないように、事態は深刻化する。

 シャルが真剣な顔つきで見つめている先には、そろいの制服を着て、辺りに目を光らせている集団。

 その腰にはギラリと鈍い光を放つ銃を携帯する警備員。

 そして、その中心には、一際体格のいい偉丈夫学院長エドワード·ラザフォードがいる。

 どうやら壊された時計塔を検分しているらしい。

 そして、そこで僕と雷真はシャルの目論見に気づいた。

『学院長エドワード·ラザフォードを殺害する気だ』と。

 茂みに身を潜めていたシグムントが身じろぎをし、飛び立とうとする。

 隣で雷真が夜々に指示を出す。

「夜々、硝子さんに連絡を入れろ!」

「えっ―――嫌です!夜々も!」

「いいから急げ!頼んだぞ!」

雷真が視線を戻した先でシグムントが飛び出し、シャルがその背に飛び乗る。

 そのまま高度を上げる、そしてシャルから魔力がシグムントに伝導し、顎がゆっくりと開かれる。

 シグムントの顎が開かれた先には時計塔の残骸、そして学院長、それとそちらに向かうシャル?に似た?少女。

 その少女がシャルにむけて叫んでいる。

「お姉さま!やめて!お姉さま!」

(そうか、妹だったのか)

こんな緊迫した状況の中でも疑問が解決したことを喜んでいる僕。

 マイペース過ぎるだろ!と自分に突っ込み気を引き締める。

 シャルはその声にも全く気づいていないのだろう、それどころか気づいたのは警備員だった。

 その声でシグムントに気づいた警備員が騒ぎ出す。

 しかし、どうにもならない。

 シグムントの口内が激しく発光し、そして、閃光が放たれた。

 暴力的な光の奔流。

 辺りを光で満たし、僕たちの視界が遮られる。

 あまりの眩しさに僕は目を開けてはいられない。

 そんなさなかであっても雷真は力を込めて地を蹴り、突っ込んだ。

(こうなったら呪文で!)

僕は覚悟を決め呪文を唱えようとした時だった。

「ダメです零夜!ここは私に任せてください!」

 光の着弾地点に素早く入り込む十六夜。

 ラスターカノンに手をつき出す。

 そして片手一つでラスターカノンを受け止める。

 しかしながら全てを完全には受けとめきれてはいない。

 溢れでる光が放射線上に広がり辺りを融解させる。

 地面が消える。

 いや元々地下が空洞であったようで巨大な穴が開いたのだ。

 いきなりのことで僕は抗うこともできずに崩落に巻き込まれ奈落に落ちていく。

「零夜!」

 薄く開けていた視界に、少し傷ついた手のひらが見える。

 

僕に向けて伸ばされていることに気づく。

 手の主は十六夜である。

 目頭に涙をためながら、必死に手を伸ばしている。

 僕はかぶりを振ると十六夜に指示を出す。

「僕は大丈夫!この期を逃したら後はないかもしれない。後は頼んだよ」

 崩落する音で聞こえていないかもしれないが、十六夜がしっかりと頷いたのが見えた。

 僕は岩と共に奈落の底に落ちていった。

(ああ、生きてた!)

僕は目を覚ますと、遥か頭上に太陽があることに気づく。

(あんな高い所から落ちたのに生きているのは塔から飛び降りてもノーダメージのドラクエキャラのような身体能力をてに入れたからか)

等と楽観的に考えながら立ち上がろうとした、その時、体に激痛が走った。

 言葉にすることができないほどの激痛。

(痛すぎる。全身の骨がいったかも…)

僕は我慢強くはなかった。

 辺りに誰かいるかもしれないのに、痛みを逃れるために、呪文を唱えた。

「ベホイミ!」

 薄暗い辺りに淡い緑色の光が広がる。

 体から痛みが少しずつ和らいでいくのが分かる。

 そしてさらに時が経つと体中の骨折が治り、自由に体を動かせるようになる。

「ふう。やっぱり役にたつな」

と僕は呟くと体を起こし辺りを見回す。

 穴の開いた天井からほんのりと太陽光が入ってきてはいるが、些細なものであまり役にはたたない。

 『レミーラ』を使おうかどうしようか迷っていると、少し離れた所から

「夜々ー!」

と叫ぶ声が。

(あの声は雷真だ)

雷真が近くにいるとわかった安堵から、喜んで声を便りに慎重に歩いていく。

 しばらく歩くと、なにか揺らめく光が。

 特技『鷹の目』を使いじっと見つめると、暗闇に慣れてきたためにうっすらと見えてくる。

 二人分の影が、一人は雷真、もう一人はどうやらシャルの妹のようだ。

 なにか揉めているようだが、構わず声をかける。

「雷真も無事だったんだ。それにシャルの妹さんも」

「零夜お前も落ちていたのか」

「うん」

僕は笑顔でそう返すと、視線をシャルの妹に向ける。

(うわー、本当によく似ているな)

とじっと見つめていると、僕の視線に気づいたのか

「きゃー男が私をなめ回すように嫌らしい目付きで見つめてくる。変態ー!」

とんでもない事を叫ばれる。

 唖然としていると、雷真が気にするなと肩を軽く叩いて言ってくれたので、結構ショックではあったが、流してその少女のことについて雷真に尋ねてみる。

 雷真の話によると、彼女の名はアンリエットといい、シャルの妹であり、男性恐怖症の自殺願望持ちだということが分かった。

 その後、男性恐怖症のアンリを驚かせないように気を使いながら今後どのようにするかを話あおうとしたが、アンリは頑なに進むのを拒絶する。

 そして、雷真は真剣な顔で過酷な現実を突きつける言葉を放った。

「下手をすれば、けされるぞ」

 辺りが静寂に支配される。

 あるのは自分の鼓動だけのように錯覚するほどの静寂。

「そうだろうね。ここはどうやら人口的に作られた秘密の場所みたいだしね」

僕は雷真の言葉に同意する。

「ああ零夜の言う通りだ。当然知っているものも限られる。とすれば知った俺たちは……」

雷真が全てを言わなくても僕も、アンリもその次の言葉はしっかりと分かっていた。

 しかし、アンリはまだダダをこねる。

「…それなら、それでいいです。消されるなら、手間が省けます」

「何をダダこねてんだよ。頑固な所はあいつにそっくりだな」

その雷真の一言にアンリは反応した。

 どうやらシャルのことが突破口になりそうだ。

「シャルも心配してるはずだよ」

「そ、そんなことありません。お姉さんのためにも私は生きてちゃ――」

アンリの話を遮るようにいきなり巨大な大岩が降り、地面にめり込む。

 それを見たアンリの顔面は蒼白に。

(口ではそう言っていても恐いんだな)

と思い、少し笑みを溢すとアンリに睨み付けられた。

 そしてそのさまを見ていた雷真がなにかを思い付いたように語り始めた。

「思い出したぜ。その昔、この洞窟には数千人が生き埋めにされたんだ」

「え…!」

「ここは巨大な魔術施設。これ自体が巨大な魔具なんだ」

「ああ、蠱毒みたいなものか…」

僕は相づちをうつ。

 雷真は僕に視線を向け頷くとさらに続ける。

「その秘密を守るために、工事に参加した人足達を埋めたんだと。ところが……」

「………!」

アンリは前のめりになって聞き入っている。

 僕は笑みを溢しそうになるが必死に堪える。

「取り残された人足たちは、生きるために共食いを始めた。肉を、臓物を、引き裂き、むしゃぶりつき」

アンリは縮こまり震え始める。

 雷真の語りはさらに力がこもる。

「人外の行いは、やがて連中をこの世ならざるもの…化け物に変える。そして長い年月の末、その化け物は……」

「どうなったんですか?」

「今でも食い物を求めて…」

「そ、そんな――」

アンリの言葉を遮るように僕は口を挟んだ。

「なにか引き摺るような音が……」

「えっ……。嘘です」

「いやほらすぐそこで……」

僕は雷真に目配せをする。

 頷いた雷真は、

「食わせろおぉぉお」

「いやああああー!」

アンリは頭を隠して震え上がって涙を流している。

「雷真、ここを動いてもらうためだけど少しやり過ぎたね」

「ああ、そうみたいだな。悪かったアンリこれはただの怪談だ」

後に二人で謝った。

 そして雷真は続けて優しくささやいた。

「あの世がどうなっているかなんで知らねえし、あの世があるかも知れねえ。けどよ、ひょっとするとそこはここのように暗くて、亡者が集まっている所かもしれないぜ」

「う……」

「そんな所に行こうなんて思うなよ」

「私だって…死にたくない」

(さすが雷真、アンリの本音をひきだした)

僕は温かい目で見守るしかなかった。

 ついに天の岩戸が開かれ、雷真によってフラグが建てられた所だった。

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