自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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説得

 夕日が落ちていきオレンジ色の夕焼けの中で僕と十六夜は走った。

 学院長エドワード·ラザフォードは学院長公邸にいる。

 ただ今まで一度も行ったことがないために『ルーラ』には登録されていない。

 そのため走っているのだ。

 体力がないため息切れしながらなんとか目的の学院長公邸が見える所にまでたどり着く。

 辺りを見回すと何人もの男たちが辺りを徘徊している。

 警備員だろう。

「やっぱり警備員が多いね」

「ええ、もう二度も命を狙われていますからね」

僕と十六夜は話ながらシャルが隠れそうな所を探す。

 くるなら夕闇に紛れて来るだろうからここで待ち伏せするつもりだ。

 なんだかストーカーみたいだがしょうがない。

 夕日が落ち、暗闇が広がり、外灯に明かりが灯される。

 僕たちがいる大岩の陰は、外灯の光さえも届かない。

「なんか寒いね」

「そうですね。まだ夜は冷えますね。私の側にくれば温かいですよ」

「えっ…!」

予想だにしない十六夜の一言にどぎまぎしていると、足音をころして何者かがやってくる。

(シャルが来たかな?)

僕がこっそり覗くとやはり暗闇の中でも見てとれる金髪を持ったシャルであった。

(よし、行くか)

僕はゆっくりと大岩の陰から姿を出す。

「こんばんはシャル。久しぶりだね」

笑顔で話しかける。

「えっ!?なんで貴方が?」

驚きの顔で僕を見つめる。

「十六夜が言ったはずだよ。一緒に助けに来るってね」

僕は優しく語りかけるが、シャルは耳をかさない。

 それどころか、殺気混じりの魔力を体から放出している。

 シャルとシグムント両者だ。

「そこを退いて。私は学院長を殺すの」

シャルの口調はしっかりしているが、目には不安が見え隠れしているのが分かる。

「家族であるアンリのために?」

「そうよ。悪い。たった一人の家族なのよ!」

真剣な表情でいう僕に、言葉を詰まらせながらも強い口調でシャルは言う。

「家族を助け出すという夢は諦めるの?学院長を殺したら〈魔王(ワイズマン)〉どころの話じゃないよ。それこそ賞金首だよ」

「そんなこと分かっているわよ!」

シャルの目には涙が滲んでいる。

 あまりにも悲痛に染まった瞳。

 痛々しくてとても見ていられない。

 僕が声を出そうとしたその時。

「退いてくれないかな零夜、十六夜。君たちを死なせたくはない」

シャルを庇うように一歩前に出て僕たちに語りかけるように言うが、その声はかなりの力強さを感じる。

「止められないのか?」

「ああ」

重々しい声が響く。

 そして、魔力がシグムントに流れ込む。

 シグムントの巨大な牙が僕を噛み砕こうと襲いかかる。

 かなりの迫力だ。

 しかし、僕は動かない、十六夜を信じているからだ。

「十六夜悪いけどシグムントの相手をしてもらえる?」

「ええ」

十六夜がすでに僕の前に現れ、シグムントの牙を受け止めていた。

 シグムントはすぐに首を振り十六夜を振り払う。

「ラスターカノン!」

シャルの指示が飛ぶ。

 シグムントの喉から闇夜を切り裂く光が漏れた。

 そして、暴力的な光の濁流が十六夜に襲いかかる。

 十六夜は焦るそぶりも見せず、気を纏わせた右腕をラスターカノンを振り払うように振るう。

 右腕に当たったラスターカノンは弾かれて闇夜を切り裂く。

 その光を見た警備員が走ってくる音が聞こえる。

 いち早くその場に現れたのは以前シャルとシグムントに襲いかかった甲冑を来た猿のような自動人形、警備用のヘイムガーダーだった。

「少年援護するぞ!」

「我らが倒す!」

「抵抗するな、投降しろ!」

「邪魔しないで!!」

シグムントから即座にラスターカノンの第二射が。

 辺りの岩や木々を、そしてヘイムガーダーを呑み込む。

 後には何も残っていない。

 辛うじて岩だけが融解している状態である。

 その様子を見た警備員は腰を抜かしている。

 シグムントの喉にさらなる光が。

 腰を抜かして動けない警備員。

「ごめん退場してください。バシルーラ!」

「お、おわ!!」

警備員達は纏めて姿を消した。

『バシルーラ』は敵を任意の場所に瞬時に移動させる呪文である。

「今まで誰も傷つけたことがない君が。ここまで追いつめられているのか」

怒りが込み上げてくる。

「戻ってくるんだシャル!!」

僕はいつの間にか声を荒げていた。

「もう私に構わないで」

もうシャルも感情を抑えきれていない。

「助けたいんだ!」

「無理よ。私はもう時計塔も破壊していまったのよ。それに学院長も攻撃した!」

「そんなの気にするな。時計塔を直して、学院長の記憶を消せばいい!」

「無理よ!」

「無理じゃない!僕の呪文『パルプンテ』があれば、10回ぐらい唱えれば時が戻るから!」

「……」

シャルは声をつまらせる。

 しかし、再び口を開く。

「相手はキングスフォート家なのよ!一国全てが敵になるのよ!」

「『ルーラ』なら世界の裏にでも即座に逃げれる、それに――」

僕が続けようとした時、今までとはけた違いな魔力がシグムントに流れ込む。

 巨大な光の奔流。 辺りのものを融解しながら十六夜に放たれる。

「迎え撃ちます。力をセーブして、ヘルズフラッシュ!」

十六夜の手のひらから放たれたヘルズフラッシュがラスターカノンと激突し、拮抗する。

 それを傍目に僕は叫ぶ。

「世界が敵になっても僕だけはシャルの味方だ!!」

僕が叫んだと同時に十六夜のヘルズフラッシュはシグムントのラスターカノンをかき消しながら空高くのぼっていった。

「なんて…なんでそこまで私に…」

もう号泣しながら呟くように聞いてくるシャル。

「簡単なことだよ。僕にとってシャルは大事な人だから」

「!!!」

真っ赤になり俯くシャル。

(決める!!)

僕は最後の言葉をシャルに届けようとした時、

「モガガ……なにするの十六夜」

いつの間にか後ろにいた十六夜に口を押さえられて妨害される。

「申し訳ありません。ただいつも零夜はこんな時に言ってはならないことを言って台無しにするので。それに嫌な感じがしたので、一応なんと言おうとしたのか教えてくれませんか」

「うん、言おうとしたのは…………」

十六夜は僕の言葉を聞くと、大きなため息一つ、そして

「本当に止めてよかった。それを言っていたら零夜はここに存在していませんでしたよ。ラスターカノンで消されて」

「えっそうなの!!」

どうやら言ってはならないことだったらしい。

「じゃあどうしたら。十六夜ならなんて言われたら嬉しい?」

少し十六夜は考え込むと少し頬を染めながら

「つ、妻になって欲しい…とかですね」

「ありがとう」

僕は十六夜にお礼を言ったあと、シャルの方を向き言おうとしたが

「はぁっ、もういいわよ。ありがとう」

泣き腫らした顔ではあるが清々しい笑顔でそこにシャルがいた。

「よかった。じゃあまずは有言実行だ。一つ目の懸案を消そう」

僕は睨み付けるように虚空に視線を飛ばす。

「いいかげん出てこいよ。腐れ執事!」

「これは、これは気づいておられましたか」

宙に浮かぶきちっとした紳士服を着た金髪の男が笑顔を浮かべてそこにいた。

 

 

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