昨夜の戦いの後が大変だったらしい。
伝聞形なのはあの後僕は意識が無かったために覚えてなく、十六夜達に聞いて知ったためだ。
意識を失った僕を十六夜が医療室に担ぎ込み、シャルも付き添って来てくれたらしい。
僕の怪我はかなりの重症で、骨がバラバラに砕けた粉砕骨折であり、すぐに緊急手術が行われ、難しい手術ではあったがクルーエル医師が成功させてくれたのだ。
いつもの言動を見ると生臭医師でダメ医師に見えるが、ここぞというときには本当に頼りになる医師である。
まあ、手術が終わった後はまた男でつまらなかったと言ってはいたそうだが。
そして、次の日僕が目を覚ました時には学生用の病室であった。
腕は固定されて動かすことすらできなかった。
そして、時々なんの前触れもなく激痛が走るという地獄であった。
当然腕は固定されて動かせないので『ベホイミ』すら使えない。
始めに僕が目を覚ましたのに気づいて声をかけてくれたのは隣のベッドに寝ている雷真であった。
「よお、目を覚ましたか。昨日はシャルを助けてくれたみたいでありがとな」
「いや、大切な仲間だからね。いつも雷真が命をかけているのも分かる気がしたよ」
「ハハハ、そうか」
二人で歓談した後雷真のさらに隣を見ると、静かに魔術書を読むロキが。
ついに僕も、入院常連組に加入してしまった。
そして、話していた声が聞こえたのか十六夜とシャルも部屋に入ってきた。
二人とも安心したような顔をして、
「よかった」
と喜んでくれた。
またシャルは
「ありがとう。助けてくれて…本当に嬉しかった」
と照れながら言ってくれたのでこの怪我も報われた気がした。
そう、ここまでは和気あいあいとしていい雰囲気だったのだ……。
しかし、フレイと夜々がここに来てからその雰囲気は全く別のものと化した。
「はい、雷真、零夜、アーン」
雷真と僕の口にフレイが持ってきたサンドイッチが近づけられる。
「いや、俺は自分で食べれる。零夜にしてやってくれ」
雷真はいきなりとんでもないことを言い出す。
確かに食べれないが。
「そう。…わかった。零夜アーン」
僕が雷真を見ると(すまんな)といった感じで手を合わせている。
夜々を恐れてのことだろう。
それだけじゃない。
雷真の隣から刺すような視線が…
いたたまれない。
しかし、手を使えないので、感謝して食べさせてもらおうとした時だった。
「ちょっと何やってるのよ!零夜には私が食べさせるわ!それが高貴なる者の義務(ノブリス·オブリージュ)なのよ!」
シャルがわってはいる。
「これは私が作ったサンドイッチ…」
エッヘンといった感じで大きい胸を揺らす。
巨乳好きの雷真の視線がそこに集中し凝視する。
僕は小さい方が好きなのだがついつい男の本能として見てしまう。
そして、部屋内の雰囲気が凍りつく。
「雷真ー!そんなに大きいのがいいんですか!」
夜々が雷真の首を締め始める。
「零夜!貴方は小さい方がいいって言っていたわよね!」
「はい、その通りです。今回はたまたま本能で」
修羅場と化した。
僕がシャルに叱られている時につかつかと十六夜が近づいてくる。
流れるような包丁捌きでリンゴの皮を剥き、切り分け、フォークでさし、フレイの如く「アーン」と持ってくる。
十六夜の可憐さについつい、シャルに叱られている最中なのにつられてアーンと口をつきだして食べてしまった。
「何やっているのよ、十六夜まで」
「私は零夜のパートナーですから。私がお世話します」
いつになく強い口調の十六夜。
「フ、フン。わ、私は、れ、零夜の、だ、大事な人なのよ。そ、それに、一生添い遂げて欲しいってプ、プロポーズされたのよ!」
真っ赤になりながら呟くようにそう宣言する。
(そこまで言ってないよー!)
と突っ込みたいが突っ込めない。
勇者が使うライデインは使えたが、この場では勇者にはなれない。
後が恐いから。
僕はまだ力不足である。
「零夜のそばにいるのは十六夜です!」
十六夜とシャルが口論を、その隣ではなぜかフレイと夜々が、収集がつかなくなった時に色々と我慢ができなくなったクルーエルが怒鳴り込んできてなんとか場は収まった。
外に皆は追い出され、やっと僕たちは養生することができた。
◇◆◇◆◇◆
外に追い出されてから、私は今の自分に戸惑っていた。
今まで感じたことがない感情が沸きだしているからである。
そうして悩んでいると、優しく声をかけられた。
「大丈夫ですか十六夜さん」
夜々さんであった。
同じ自動人形なので相談に乗ってもらうことにした。
「私は、零夜に友達ができることは大変良いことで、望ましいことだと思っていました。雷真さんにも友達になって頂き大変感謝していました……なのに最近零夜がシャルさんや、フレイさんと仲良くしているのを見ると、なぜがモヤモヤして……変ですよね」
ついつい夜々さんに思いの丈を話してしまった。
すると、
「変じゃないです。夜々も十六夜さんの気持ちはよく分かります。夜々も同じ悩みがありますから」
「本当ですか」
私と同じ悩みを持つと聞いて嬉しくなる。
「夜々が十六夜さんの悩みを解決するのを手助けします(女狐を一人受け取ってくれた感謝もありますし)」
とても夜々さんが頼もしく見える。
「あ、あの、夜々さんのことお姉さまと呼んでいいですか」
なぜか自然とそんな言葉が出ていた。
「お姉さま!いいですよ。小紫に言われるよりいいです。色々と教えてあげますよ十六夜さん」
「十六夜と呼び捨てでいいですお姉さま」
なんか恥ずかしいけど嬉しい。
「一緒に頑張りましょう十六夜」
「はいお姉さま」
ここにも新たな絆が生まれていた。
ついに来週からテストまで一週間に。なので更新が空くことが出てくるかもしれませんが許してください。