自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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シャルとの最悪な出会い

 僕と十六夜がキンバリー教授からの罰掃除を終えたのは、あれから数時間後のもう日が暮れた時であった。

 キンバリー教授が問答無用でとてつもなく広い講堂を選んで罰としたからだ。

 キンバリー教授は怒らせたらマズイと改めて思い知ったのだった。

「ごめんね。僕の失態のせいで……。」

 

「いえ、私は零夜のパートナーですから」

怒ってはいないのだろうが、いつもと同じ無表情答える十六夜。

答え方も口調は固いけれど、やっと『様』付けから解放され、少し仲も進展したのかなという感じである。

「お腹も減ったし急いで帰ろうか」

「はい」

と二人で帰途を急いである建物を横切った時であった。

「キャーー!!」

頭上から誰かの叫び声が夜の闇に響き渡る。

 僕は驚き構えをとり見上げると、湯気の出ている窓から落ちそうになっている少女の姿が、なんとか落ちるのは回避できたようだが、少女ではなく、なにか落ちてくるものが。

 僕はなにかなと不用意にそれを掴んでみた。

 本当に軽率な行動であった。

 その飛来物は触った感触はフワフワしている。

 ただ暗いせいでよく見えない。

 どうしたものかとそれを手に立っていると、その建物から美しい金髪を靡かせ、まるで妖精かとも見紛うばかりの美貌を持った少女が湯気を纏いながら、焦った感じで出てきた。

 

(ああ、この人がシャルロット·ブリュー、通称シャルか。ラノベの登場人物に直に合えるなんて感動だな。それに本当に美人だなぁ)

僕は突然現れたシャルを目の前にそう思っていると、シャルは目に見えるのではないかとも思われる程の怒りのオーラを纏いながら詰め寄ってくる。

 あまりの恐ろしさに本日二回目の金縛り状態になっていると、

「これは私のなの返してもらえるかしら」

という丁寧な口調ながら、僕の了承を得ることもなく引ったくるように取り上げられた。

 僕は恐怖に怯えながらも小声でシャルに聞こえないように十六夜に

「あれなんなんだろう?大切な物なんだろうね」

と尋ねると

「私のデータ(記憶)から推察すると、パッドではないかと思います」

と教えてくれた。

 そこで僕は合点がいった、そういえばシャルは使っているようだったなと。

で僕は何を思ったのかフォローをしなければ、と思い勇気を振り絞り

「だ、大丈夫ですよ。なんか貧乳はステータスって誰かが言っていたし」

その瞬間なぜか場の空気が凍りついた。

いやシャルから壮絶な殺気が混じった冷気が溢れだしたのだ。

「はぁっ……不用意発言……」

なぜか十六夜も呆れたようにポツリとため息混じりに呟いている。

 (えっ、なにかまずいことしたのかな、ナイスフォローだと思ったのに…)

聞いたことがあることをそのまま言ったのにて何がなんだかわからない僕は戸惑いたじろぐことしかできない。

 シャルがくるっとこちらを向くと、綺麗な顔は般若のようになり、とんでもない殺意と殺気をまとった視線を僕に向け、その視線は容易に僕を射抜いた。

「シグムント!!」

 

シャルが声をあげると小さいシャルのドラゴン型の自動人形 『シグムント』が舞い降りる。

「シグムントこの馬鹿を殺るわよ!」

「やれやれ……」

シャルの言葉に呆れたように呟きながらも、シグムントは7~8メートルに膨れあがった。

「ラスターカノン!!」

シャルの声が冷たく響き渡る。

 僕は一度見てみたいなと思っていた技であるが、

「これが撃たれたら間違いなく僕は死ぬ、敵討ちもできずに死ぬ訳にはいかない!!」

と覚悟を決め、十六夜を呼び寄せ、この十年の修行で得た呪文を唱える

「アストロン」

 その直後、闇を切り裂くような激しい閃光が辺りを照らし出し、全てを分解する光線が放たれた。

 光線が着弾した場は大きなクレーターと化していた。

「しまった、怒りに我を忘れて殺しちゃった!」

シャルが困惑の表情であたふたしていると、

「落ちつけシャル、見てみろ」

落ち着いた渋い声でシグムントが話しかける。

クレーターの中心には金属の彫像のような物が傷一つなく佇んでいる。

「はあ、死ぬかと思った、まさか本当に撃つんだもんな」

 僕がアストロンが解け金属から元に戻ると目の前には驚愕の表情を浮かべて立ち尽くすシャルが。

「今なら逃げられます。行きましょう零夜」

十六夜はそう言うやいなや僕を掲げて走り出す。

 音速をも遥かに越える速度で走り出したので、風圧で息ができなくなりながらも、シャルから逃げ出せたという安堵の方が僕にとっては大きかった。

 僕は命からがら帰りついた学生寮のトータス寮(ドンガメ寮)の一室の自室、薄暗く、お世辞にも綺麗とは言えない部屋の中で十六夜に苦言を呈されていた。

 

「零夜はもう少し乙女心を知るべきです」

と、反省しなくてはならないのは分かるが、『乙女心』については全く分からないので、

「以後気を付けます」

という生半可な返事をするしかなかった。

しばらくしてやっと落ち着くと、

「アストロンうまくいきましたね」

と十六夜が話しかけてくる。

「うん、あの時はやるしかないって思ってね。成功してよかったよ」

僕は口ではそう十六夜に答えてはいたが、感覚的になぜか絶対に成功するという確信があった。

 アストロンとは、特別な金属と化し全ての攻撃を無効化するという完璧な防御呪文であり、真の効果が出ればもう少し長い間金属と化しているのだが、まだ未熟なので効果は数十秒しか効力はなかった。

 まあ今回はその短い時間というのが項を制したのだが。

「じゃあ電気消すね。お休み十六夜」

「はい、お休みなさい」

 電気を消して今日を振り返ると、

「今日もほとんど良いことはなかったな、キンバリー教授は怖かったし、シャルも怖くて殺されそうになるし、でもシャルはラノベに書かれていた通り綺麗だったな」

と思い返しながら僕は眠りについた。

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