自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

40 / 96
期末試験怒濤の三日間が終わりました。
というわけで更新を再開し第四巻に入りたいと思います。


新たなる闘争の幕開け

 時は夕暮れ時、濃いオレンジ色の光が入り込む窓際で心配そうな顔つきで外を雷真が見つめている。

「遅いな夜々のやつ……」

呟く雷真の後ろには、シャルと落ち込みうつむいたアンリが。

 そう先ほど一悶着あったのだ。

 新たに雷真ハーレムに加わったアンリと夜々が雷真を取り合って争いを起こしたのだ。

 あ、ついでに言うとアンリは、もともと学院の生徒ではなく、追放の憂き目にあう所だったのを、キンバリー教授の計らいで、助手として学院で働いている。

 その言い争いの中で夜々は言い負け泣きながら外へ飛び出してしまったのだ。

 ロキはその喧騒を嫌い憮然とした表情で外に出ていった。

 そういう訳で部屋の中は僕、雷真、ブリュー姉妹の4人で気まずい雰囲気になっている。

 たまらず僕は雷真に声をかける。

「大丈夫だよ雷真。黄泉やラビを連れたフレイや十六夜も捜しに行ってくれたんだから」

 そう夜々が飛び出すのと入れ違いのように入ってきたフレイが夜々の捜索を勝手出てくれたのだ。

 十六夜も『お姉さま』と慕う夜々のことが心配でいてもたってもいられなかったみたいで夜々を捜しに外に出ていったのだ。

「ああそうだな…」

やはり元気がない。

 しょうがないことではあるのだが。

 その後フレイと十六夜が夜々を伴って帰ってきた。

 夜々の目許には涙の跡が残りすっかり肩を落とし、気落ちしている。

 十六夜は夜々を必死に慰めている。

 まるで本当の姉妹のようである。

 帰ってきた夜々に雷真は駆け寄り優しく諭しており、シャルとアンリが夜々に謝罪したのちに帰っていった。

 僕は十六夜から雷真と夜々の二人にしてあげたいという主旨の意見を聞いので、それに同意し、まだ復帰はしてはいないが、フレイの戦いが気になるので夜会の会場に向かった。

「いつ来てもすごい盛り上がりだね」

「まだまだよ。所詮五十位までは前哨戦なのよ。それ以降からが本番の盛り上がりよ」

振り返るとシャルとシグムントが。

 二人で仲良く屋台で売っていたものだろう、ミートパイを半分にわけあったものを持ちながらその場に来ていた。

「ああ、シャルこんばんは」

「こんばんはってさっきまで会っていたわよね」

挨拶をすると返してはくれたが微妙な反応。

 気を取り直して先ほどのシャルの言葉にあった疑問について問いかける。

「さっきの話しなんだけど、五十位までは前哨戦ってどういうこと?」

「そのままの意味よ」

「?」

「零夜よ。『前哨戦』というのはシャルの所感だ気にする必要はないぞ」

「なに言っているのよシグムント。いいわ零夜教えてあげる。夜会の五十位までとそれ以降では選抜方法が違うからよ」

 その後のシャルの説明をまとめると、夜会参加者百人は定期考査の成績できまる。

 各学科のスコアから偏差値を割り出し、四学年全てを俯瞰して選抜されるらしい。

 最初の数回の試験でたまたま成績が良いと上位者としてランクされるので、一回生は比較的簡単に参加できりとされているようだ。

 つまり、戦闘力は全く考えられていない。

 そこで、選抜された百人のうち、約半分にあたる49位までは戦闘力の優劣で順位を決めることになっている。

 そして、周知の事実、一位はマグナスなのだが。

 そして、その結果五十位以下は実戦経験の浅い低学年層が大部分を占めることとなる。

 そういうわけでシャルは五十位までの夜会の戦いは前哨戦と考えているらしい。

 ただし、この考えはシャルだけのものでもなく教授陣や〈十三人(ラウンズ)〉もそのように考えているらしくまだ見に来てはいないらしい。

 その話を聞いた時、シャルや時々見かけるキンバリー教授は変わり者だなと思ったのは内緒である。

「という訳よ。分かった?」

「よく分かりました」

そう答えた瞬間会場が沸き立った。

 夜会戦場にフレイの相手が現れたのだ。

 相手は四回生のヴォルタ先ほどまでのシャルの話からすると、四回生でこの順位というのはそれほど強くはないのではないかと思われる。

 そう思いシャルを見ると真剣な表情に変わっていることに少なからず不安を覚える。

「どうしたんだろシャルが真面目な顔をしているよ」

僕は小さな声で十六夜に話しかける。

「聞こえてるわよ。私が真面目な顔をしていたら悪いかしら?まあそれは置いといて、あのヴォルタは先日まで巨人タイプのゴーレム型の自動人形を使っていたのよ。それが――」

 

シャルが視線を向けた先には騎士の甲冑を着た自動人形が。

「夜会に合わせてとっておきの自動人形を隠しておくという戦術もあるのよ。まあ〈奥の手〉を温存して参加資格を得られるほど夜会の選考はぬるくないからそういう戦術な出る者はすくないけど。そこから考えるとあのヴォルタは案外とんでもない力の持ち主かもしれないってことよ」

「ありがとうございますシャルロット先生」

「先生?」

「いやつい…」

そして再度会場のギャラリーがざわめく。

 六頭の〈ガルム〉を引き連れた真珠色の髪を持つ、巨乳のフレイがヴォルタの前に現れたのだ。

 フレイがヴォルタの前にたつと離れていても分かるぐらいにヴォルタは微笑む。

 少し遠いので話し声までは聞こえないがなにやら一言二言話をすると、フレイが皆に指示を出す。

 ラビ、リビエラ、ルビー、レビーナ、ロビンが敵を包囲するように散開する。

 黄泉はフレイの側に控えている。

 包囲が終わると、フレイの真珠色の髪が逆立ち、魔力が噴き上がる。

 全てのガルムにフレイの魔力が行き渡り、一斉の咆哮。

 砲弾のような音の塊が芝生を抉りながら敵に向かい突き進む。

 ヴォルタは余裕の表情で微笑みを浮かべたまま騎士の肩に手をかける。

 その刹那、騎士はするりと真上に逃れる。

 飛び上がったのだ。

「魔力を与えた感じはしなかったよね」

「ええ、魔力は注ぎ込まれていませんね」

空に飛翔した自動人形とヴォルタを見て違和感を覚えた僕は十六夜に確認したのだ。

 騎士が飛び上がったのを、タイミングを計ったように、フィールドに現れる無数の影。

 影は四つ。全てが空中を滑るように滑らかに飛翔しながら

肩に学生を乗せ現れる。

 全ての自動人形がヴォルタの自動人形と同じ騎士型の自動人形である。

 着地と同時に主を下ろした騎士の自動人形は五頭のガルムに襲いかかる。

 いきなりの奇襲に反応しきれていないフレイは苦し紛れに指示を飛ばし、魔力を送る。

 五頭のガルムは再度音の砲弾を放つ。

 音の砲弾は敵に向かい放たれる。

 幸いにも放たれた砲弾の先には敵の自動人形と主が一直線に並ぶ。

 そのため騎士は避けることをしない。

 自分の身を盾にして主を護る。

 音の砲弾が敵を捕らえ、衝撃波が砂煙を巻き上げ、大地を揺らす。

 まともに捕らえたはずのフレイの攻撃だったが、騎士は微動だにしていない。

 ほとんど無傷といっていい。

 その直後、膨大な魔力がフィールドだけでなくギャラリーのいる観戦席まで充たす。

 圧倒的な魔力の波動。

 まるで騎士の自動人形が自ら魔力を放っているような。

「十六夜!」

「はい」

僕の体は無意識の内に飛び出していた。

「零夜!」

後ろからシャルの声が聞こえるが、止まることはない。

 フィールドに降り立つと同時に骨折している腕に痛みが走る。

(骨折しているの忘れてた!!)

 後の祭とはこのことだった。

 僕が十六夜と共に戦場に降り立ったと同時に僕にも殺気を纏った視線が向けられる。

「十六夜ごめんね、後先考えず行動して」

「構いませんよ、零夜の性格は分かっていますから」

十六夜は微かに微笑む。

 僕は痛みを我慢しながらフレイの元に下がる。

 共同戦線を張るために。

 直後五体の騎士の自動人形が襲いかかる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。