自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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伏兵VS伏兵

 四方八方から包囲するように五体の騎士型自動人形が突っ込んでくる。

 五体とも宙を滑るように滑空し、剣を前方に構えたまま突っ込んでくる。

 狙いは黄泉、ラビ、リビエラ、ルビー、レビーナ、ロビンそして僕と共に乱入した十六夜である。

「皆さん伏せてください!」

十六夜がそう声を上げるので僕とフレイは地面に体勢を低くして備え、黄泉、ラビ、リビエラ、ルビー、ロビンは犬がする『伏せ』そのものの体勢をとる。

 十六夜は皆に視線を通わせ、準備が整ったのを確認すると、うっすらと微笑を浮かべ腕を左右に広げ『気』を放つ。

 十六夜の体がうっすらと輝いたかと見えると、解放された『気』が爆風のように発せられた。

放たれた『気』は十六夜を中心にして円上に全方向に衝撃波となり吹き荒れる。

 その衝撃波は五体の騎士型自動人形を木の葉のように吹き飛ばし、観客席にまで吹き荒れる。

 軋む夜店、大きく揺らぐ木々、めくれそうになる女学生のスカート。

「純白、ピンク、シマシマ…うわっ!」

「大丈夫かい零夜」

両手が使えない為に踏ん張りが利かず、また女子学生のナニに気をとられて吹き飛びそうになるのを、黄泉が助けてくれる。

「ありがとう」

「まったくこんな時まで男というものは……」

「申し訳ない、男の性には抗えなくて…」

黄泉の鋭い指摘にたじたじになっているとフレイがにじり寄ってくる。

「ねえ零夜。雷真も好きなのかな?」

頬を染めながら聞いてくるフレイ、なんとも言えない愛らしさがある。

「もちろん雷真も大好きだよ。見せてあげたら泣いて喜ぶんじゃないかな」

「ありがとう。こんど雷真に見せてあげよ」

純粋なフレイには悪いとは思うが以前の騒動のお返しをと思っての返しだった。

これが後々大きな騒動になるのはまた別の話になる…

戦闘の最中とは思えないやり取りの後に、僕はフレイから視線を騎士型自動人形に移すと爆風のような衝撃波に吹き飛ばされた後に、宙で体勢を整えて、浮き停止している。

「どうする十六夜、フレイ?」

なんとも情けない話だが、いち早く割って入った僕が足手まといであるのだが…

 

「大丈夫ですよ零夜。私は後方に吹き飛ばした二体の相手をして、残りの三体は彼らに任せます」

十六夜はフフと微笑を溢すと視線を前方に移す。

 その先には背中合わせで戦場に足を踏み入れた二人の男の姿が―――そう満身創痍のはずの雷真とロキの姿があった。

「どうも百位です」

 

「遅れました、九十九位です」

二人は平気そうに言うが、雷真は包帯でぐるぐる巻き、ロキは松葉づえをついている。

 頭数は揃った二人はやっぱりと思った最中にいつもの光景が。

「真似すんなバカ」

 

「貴様だろ真似は東洋バカ!!」

いつものいがみ合い。

 まだやむことなく続けているがそれは放っておいて、敵の学生と自動人形に目を向ける。

 先程の緊迫した状況の中では全く確認する暇はなかったからだ。

 学生は自分たちより高学年なのは分かる。

 そして人種も違うぐらいか。

 騎士型自動人形は全て型が同じで共通の意匠をもつ〈シリーズ〉の自動人形である。

(よしそろそろ第二ラウンドか)

と思い雷真達に再び視線を送ると……胸を押さえて激痛に耐える雷真と、脇腹を以下省略。

(何しに来たんだよこの二人は)

と呆れながら見ていると、先ほどまで地面に膝をついていた二人がすくっと何もなかったように立ち上がる。

 二人とも負けず劣らず負けず嫌いである。

そんななか、

「おや、伏兵がまたもや。卑怯ですね~。人のこと言えませんが」

最初からこの戦場に立っていた中性的な学生ヴォルタが茶目っ気たっぷりに笑った。

 その表情とは裏腹に警戒しているのか、仕掛けてこない。

 しばらく続くにらみ合い。

 気迫と気迫のぶつかり合い、沈黙に押され出して騎士達が後ずさる。

「怯むな!相手は怪我人ばかりだ、それに人数もこちらがうえだ」

ヴォルタの叱咤に気を入れ直した騎士達が宙に浮きながらフォーメーションを立て直す。

「ねえ雷真」

「ああ分かっているロキもだろ」

「ああ当然だ」

三人で頷きあう。

 騎士の動きがあの執事の男シンに似ているからだ。

 つまり、シンと似たような、もしくは同様の魔術回路を備えているとも理解できる。

 そして、それはあの騎士の甲冑の中身がシンのように生きた人間であるということも想像にかたくない。

 ロキもシンのことを知っているのはキンバリー教授に雷真の護衛を頼まれた時に一戦交えたからだそうだ。

「お姉さまもう大丈夫なんですか?」

十六夜が心配そうに夜々に近寄る。

「もう夜々は大丈夫です。十六夜一緒に頑張りましょう」

まだ残る涙のあとは痛々しいが、声には生気が戻っている。

「どうする〈剣帝〉零夜?」

「怖じ気づいたのなら、そこで見ていろ」

「誰が!」

「ふんっだから貴様は下から二番目なんだ」

「いきなり喧嘩を売るなバカ!」

二人で再び喧嘩を始める二人。

僕と十六夜と夜々とケルビムも見ているしかない。

 止めるのもバカらしいし、火の粉が飛んできてもこまる。

 しばらく口論が続いた後にロキが一歩前に出て松葉づえを捨て、魔力をケルビムに送り込む。

 ケルビムの魔術回路〈熱風操作〉が発動し、短剣が宙を舞う。

 前方の騎士の三体は回避に徹するが、追い縋る無数の短剣、回避に専念するが為に騎士は攻撃する余裕を失う。

 すでに三体はロキにケルビムに釘付けの状態になっているさすがもとは〈十三人(ラウンズ)〉だ。

「雷真後ろの二体を倒そう」

「ああ、そうだな夜々準備はいいか?」

雷真の呼びかけに夜々は頷く。

「吹鳴四八衝!」

爆発的な勢いで騎士に肉薄し、蹴りを見舞う。

 騎士の甲冑に夜々の足がめり込み体が曲がるが、折れしない。

「天剣!」

魔力の質が変わった瞬間ボキッと嫌な音がしたと同時に騎士の背骨が折れ、兜の部分から血飛沫があがる。

 おぞましい光景に僕は見ていられなくなり目を背け、雷真は吐き気をこらえる。

 その隙に乗じて棒立ちになる夜々に騎士が巨大な戦斧を掲げて襲い掛かる。

 戦斧が降り下ろされた。

 しかし、夜々を戦斧が襲うことはなかった。

「お姉さまは傷つけさせません!」

十六夜が夜々の前に立ちはだかり巨大な戦斧を真剣白羽取りする。

 手で挟んでいる部分の戦斧に亀裂が入り、そして、粉々に砕け散る。

 粉々に砕けた戦斧の破片が月光に照らされキラキラと輝くなか、十六夜はその輝きを背景に舞うようにまた流れるような動きで騎士に攻撃を加える。

「血桜連舞」

 目に見えない高速の連打が騎士に降り注ぎ、舞を舞うように騎士が宙を舞い、甲冑が砕け血飛沫が月夜を染める。

 まるで月夜に咲く桜のように。

 おぞましさを感じる反面幻想的な美しさも感じさせる光景である。

 後方の二体が倒された時には、すでに前方の三体の騎士もケルビムに切り裂かれ、血の海に沈んでいた。

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