自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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強大な敵とない手懸かり

 ロキとシュナイダーの戦いは熾烈を極めていた。

 たしかにロキはシュナイダーの自動人形の動きに反応できていた。

 しかし、ケルビムが対応しきれてはいなかった。

 シュナイダーの騎士が降り下ろしたクレイモアがケルビムの両手のブレードを用意に切り裂いたのだ。

 宙を舞う切断されたケルビムのブレードが地に刺さる。

 地に刺さったブレードの刃が映し出す光景は、騎士がケルビムを地面に叩きつけ、踏みつけているところであった。

 騎士がケルビムを倒したように、次にはシュナイダーがロキの眼前に迫っていた。

 電光石火の動きに、その場の誰も反応できない。

 雷真が反応できないのだから僕が反応できるはずがない。

 シュナイダーが放つ拳がロキを弾き飛ばす。

 そして騎士がケルビムを押し倒しているように、その主のシュナイダーもロキを組伏せて馬乗りになり、ロキの首に手をかける。

 血走ったシュナイダーの眼に殺意の炎が灯る。

 ロキの首にシュナイダーの手がかかるその時だった。

「迂闊だぞ、〈Ⅴ〉」

 ローゼンベルグの声と同時にローゼンベルグの小柄な騎士がシュナイダーの腕を止めていた。

 騎士の力が強いのか、シュナイダーはすぐに手を引き、顔をしかめて腕を振っている。

 主と同時にシュナイダーの騎士もケルビムを解放し、クレイモアについたケルビムのオイルを払うかのように、一振りしクレイモアを鞘に収めた。

 僕も含め皆がその光景に愕然としていた。

 あのロキとケルビムがまるで赤子の手を捻るかのように簡単に捻られたのだ。

 だが、その光景に満足いかないものが一人、そう銀髪の少女、アリスである。

 ローゼンベルグにどうして途中で止めたのかとにっこりと微笑みながら聞いている。

 ローゼンベルグが言うにはそろそろ執行部がこの場に来るから止めたそうだ。

 アリス以外にも不満げな学生もいるが、ローゼンベルグの言うことに渋々頷いたアリスの引き上げだという言葉に従いその場を去っていった。

 アリスと共に去っていく夜々の背中に雷真と十六夜は悲痛な叫びを投げかけたが、夜々は振り返ることもなく去っていった。

 あまりにも強大な敵に言葉がでない。

「ロキ大丈夫?」

フレイが心配して近寄るがロキは手で制す。

 ロキの表情には強い憤りが見える。

 怪我をしていたとはいえ簡単に不覚をとった自分に怒りを覚えているのだろう。

 ロキだけでなく、雷真もかなり苛立っている。

 夜々が自分の元をさり、更には謎の手強い新手が現れたのだ、同情を禁じ得ない。

 パートナーの去った悲しみは体験したものしか分からないが、そのショックの大きさは自分の元から十六夜が去ったらということを想像するとよく分かる。

 だからこそ掛ける言葉が見つからない。

「ロキ、雷真よ。こんな時かそ落ち着くのだ」

重々しくも、思慮深い声がその場に響く。

 もちろん、この場で一番頼りになるシグムントだ。

「我々一同がここに集められたということは、全員が彼等に目をつけられたようだ。今回だけは協力して事態に立ち向かうべきではないか?」

シグムントが視線を巡らせると誰も反論せずに、同意する。

「では雷真。当事者であろう君の話が聞きたい。何があったのだ、夜々はなぜ彼等と共に?」

雷真は表情を曇らせながらも思い出すように、ポツリポツリと昨夜のことを話し出す。

 夜々が普段と違っていたこと。

 思い詰めた様子をしていたことを。

 途中で仲良くしていた十六夜にも同様の質問がされたが、度々思い詰めた表情をしながら元気がなかったことしか気づけなかったと涙を流し始める。

 僕は慰めるしかできない。

 しばらく雷真の話を聞いたシャルが雷真に問いかける。

「あの子は自分からいなくなったのね?」

「ああ…」

「可哀想に、よほど不満が溜まっていたのね…」

「悪かった雷真」

シャルの答えを聞いて自分達の失態に気づき謝る。

「ど、どうしたんだいきなり?」

「僕たちがいたから夜々と色々と楽しめなくて不満が溜まっていたんでしょ…医療室にいつも僕たちがいたから我慢していて…」

「変な勘違いをするな!」

「そうよ零夜あなたは悪くないわ。雷真が下手だったのよ」

「下手なのはいけないのか…僕もダメかも。まだだし…」

「気にしないで零夜。夜々が不満があったってだけよ。私は下手でも…」

「お前たち話があらぬ方向にずれていってるぞ」

収集がつかなくなってきた話をシグムントが元に戻す。

「夜々が自ら去ったかどうかはいずれにせよ、夜々がいなければ雷真君は夜会に復帰できない」

「そんなことはどうでもいい!」

雷真の怒号が響く。

 フレイとシャルがびくつく、雷真はそんな二人を見てハッとしたのか謝りながら続ける。

「悪かった。だが今は夜会よりも夜々のほうが大事なんだ。夜々のことを考えると…」

夜々への思いを吐露する雷真に対して僕やシャルやフレイが押し黙っていると、

フンッと鼻で笑い飛ばしロキが立ち上がる。

「それならば、これは貴様の問題だ。オレはもういくぞ。オレは謙虚で寛大だが馴れ合いは好かん」

ロキはケルビムの折れて地面に刺さったブレードを引き抜き、足を引きずりながら去っていく。

 ケルビムも体を揺らしながらロキの後について行った。

 去っていくロキの背中に雷真は礼を言っているようだった。

 ロキの姿が見えなくなると、雷真はこちらに振り返り。

「みんな付き合わせて悪かったな」

と頭を下げて謝る。

「いいよ。友達だろ。肩を貸すよ一緒に医療室まで戻ろう?」

と僕は言うが雷真はかぶりを振る。

「貴方、まさかそんな体でまだ探す気?」

「ライシン無茶しないで」

シャルとフレイが雷真の真意を推し量り止めに入る。

 しかし、雷真の目は覚悟を決めたものであるので僕は止めることができない。

 隣を見ると十六夜もいてもたってもいられないようなので背中を押してあげる。

「十六夜も夜々を探したいんでしょ?僕はいいから雷真についていって補佐してあげて」

「えっでも…」

僕の提案に驚く雷真と十六夜。

「大丈夫。僕は怪我が酷くなったって言えば夜会はなんとかなるから。それに今の悲しそうな十六夜を見てると僕まで悲しくなってきちゃうから」

「ありがとうございます零夜」

「うん」

十六夜は行く気になったようだが雷真は納得していないようだ。

「いいのか零夜。十六夜を借りて」

「うん、雷真は狙われているだろうから心配だから。ああそれと十六夜には相当魔力を送っておいたから十分もつから」

神性機巧だから魔力供給は必要ないよとは言えないので、このように言っておく。

「だが、お前も狙われて……」

「零夜は私とシグムントが医療室に連れていくから安心して探してきなさい」

シャルが僕をフォローしてくれる。

 雷真はありがとうと一言言うと十六夜を伴って森の中に消えていった。

 フレイも心配そうに雷真を見つめていたが、雷真の姿が見えなくなるとラビの背に乗り森の中に消えていった。

(十六夜と雷真が帰ってくるまでに万全になっとかなくちゃ)

と僕は決心すると

「私達も行くわよ零夜」

という声と共に手が差し出される。

 僕は感謝してシャルの手を取り、シャルと共に医療室に戻って行った。

 

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