自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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孤独な戦いと和解

 薄暗い地下空間、僕の背後には薄ら笑いを浮かべるシャルと十六夜。

 僕の前には可愛らしくにこにこと微笑む見た目は12歳前後ながら、実際は僕より二つ年上の二人の少女と、その二人の自動人形の騎士がいる。

 そしてなぜか僕は四面楚歌の状態にある。

 仲間のはずのシャルと十六夜はなぜか腹をおたてになったようで力を貸してくれない。

 ということで僕は一人で騎士二体を相手とするという自殺行為にでるしかないのだ。

 どうすればと呆然としていると、ぱさぱさという羽ばたく音が聞こえ、シグムントがやって来る。

「本当に一人で戦う気か?」

心配そうな声で尋ねてくる。

 唯一の味方がいた。

 僕はシグムントの優しさに触れ弱音を吐きたくなるが、それを必死に抑え込み気丈に答える。

「大丈夫。呪文を駆使して戦ってみるよ」

「顔がひきつっているぞ。はぁ、シャルも十六夜も鬼ではない無理だと思ったら死ぬ前には謝って助けてもらったほうがいいぞ」

「ありがとう…」

シグムントは再び羽音をならして下がっていく。

 (なんで強がってしまったんだろう…)

後悔先に立たず。

仕方なく、相手に視線を向けると、二人の少女は可愛らしくこちらを見て首を傾げている、騎士は明らかに強そうに見える。

 だが二人の少女には殺気や闘気といったものが一切感じられず、戦いをするようにはとても見えない。

 ということでいちるの望みをかけ、人間のみがすることができる話し合いをしてみることにする。

「一つ聞きいてもいい?」

「何々?」

「言ってみ~、お姉さんが答えてあげるよ」

にこにこしながら答える二人の少女。

 なごむな~と思っていると背後から刺すような視線を感じるので気を入れ直して続ける。

「戦わないといけないかな?このままここを通してほしいんだけど」

懇願するように僕は尋ねる。

「ダメだよっ」

「うん、ダメダメ。ローゼンベルクに怒られちゃうよ!」

「そうか…」

覚悟を決めるときが来た。

 そんな時になりながらもウジウジしていると容赦ない言葉が、

「何をしているのかしら?」

「早くしてくれませんか、れ·い·や」

背中が寒くなる。

 もう後ろを振り返ることすら困難である。

「じゃあいくよ。ヒャダルコ」

僕は下に向けて呪文を唱える。

 何も起こらないことに少女達に?マークが浮かぶ。

「こないならこっちから行くよっ」

「行こう。行こう」

二人がハイタッチを交わした瞬間、騎士が動き出した。

 シンと同様の滑らかな動き。

 床を滑るように向かってくる。

「メラミ!メラミ!」

二体の騎士それぞれにメラミを放つ。

 直径30cmほどの火球が火花を散らしながら薄暗い中を騎士に向かって進んでいく。

 騎士はメラミが到達する寸前に直角に浮き上がりメラミを避ける。

 そのまま天井付近まで飛翔する。

「ベギラマ!」

ギラ系中級呪文。

目映い閃光が相手を焼き尽くす閃熱呪文。

 騎士に向けた手が暴力的な閃光を放つ。

 その熱が炎となり騎士に迫る。

 炎が飲み込むと思われた時、騎士が互いの槍を交差する。

 迫っていた炎がUターンして戻ってくる。

「う、嘘だろ。マジックバリア!」

驚きの光景に焦りながらもマジックバリアを唱える。

 僕の前に魔力の壁が現れ炎を防ぐ。

 炎が消えた時にはトップスピードで眼前まで迫る二体の騎士が。

 騎士は鋭い槍を僕に突き刺すべく引いていた槍をつき出した。

「予想通りだ。ルーラ」

 僕の姿が騎士の後方10mの位置に現れる。

 騎士の槍は僕の残像を貫き地面に突き刺さり、蜘蛛の巣状に亀裂を走らす。

「貫け!」

僕の用意しておいたヒャダルコが発動する。

 地面から氷の刃が無数に突き刺す。

 そして今回も騎士が互いの槍を交差する。

 氷の刃は騎士二人を避けるように突き出る。

「またか…だがこれで」

ベギラマもヒャダルコも効果がなかった。

 しかし、二つの呪文は決して無駄にはならなかった。

 相手の魔術回路を把握することができたからだ。

 そして、僕は後ろを振り向くとシャルと十六夜の元に歩いていく。

 二人の前にたどり着くと、そのまま膝をつき、頭を床につけ、

「力を貸してください。あの二体にはシャルと十六夜の力が必要なんです。お願いします」

と頼みこむ、恥も外聞もない。

「ハァ。しょうがないわね。シグムント行くわよ!」

「ああ」

「分かりました。お手伝いします」

二人は呆れたような顔をしながらも、柔らかい笑みを浮かべるとそのように答えてくれる。

「あ、ありがとう」

僕は二人に抱きつく。

「なななな、何をするのよ!」

「れ、零夜!こんな所で…」

「(し、しまった。ついつい)ごめんなさい」

僕はすぐに二人を放し頭を下げる。

 何も起こらないことに逆に不安になりそろそろと見てみると、顔を赤く染めた二人が恥ずかしそうにそっぽを向いている。

「ねえ、もーいーかい?」

「いっちゃうよー」

二人の少女は暢気な声で話かけてくる。

 どうやら待っていてくれたらしい。

 待っていてくれたことに感謝を、そして答える。

「ありがとう。だけど、まーだだよ」

「もうあと少しだよっ」

「少しだよっ」

なんとOKしてくれた。

 (なんていい子達なんだ、抱きしめてあげたい)ということを考えているとまた大変な目に合いそうなので早々にきりあげ、シャルとシグムントと十六夜を呼び寄せる。

「騎士の魔術がどういうものか分かったから、二人には僕のいうように動いてほしいんだけど…」

「いいわよ」

「心得た」

「はい」

三人とも快く頷いてくれる。

「じゃあ――――いけそう?」

「当然でしょ。私を誰だと思っているねよ」

シャルは自信ありげに無い胸を張っている。

ごちそうさまです。

「大丈夫です」

十六夜もにこりと微笑み大丈夫と答える。

相変わらず可愛い。

 これ以上二人を見ていると色々と不味いので、

「よし行こう。もういいよ」

シャルと十六夜には戦いの指示を出し、二人の少女には再開の合図を送る。

 シャルはシグムントに魔力を送ると、シグムントは馬ぐらいの大きさになり、シャルはその上に乗り戦闘体制に、十六夜も『刻死大鎌』を構え、数センチほど宙に浮く。

「イオラ!!」

二体の騎士の間の空間が収縮し、円上に中規模爆発が起こる。

 しかし、二体の騎士は左右に分かれて爆発と爆風から逃れる。

「行ったよ、シャル、十六夜!」

「分かっているわ」

「はいっ」

二体の騎士が爆発から逃れて現れたところ、右にはシャル、シグムントが、左には十六夜がすでに待ち構えていた。

 壮絶な空中戦が繰り広げられることになる。

 

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