自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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またもや更新遅れました。申し訳ないです。


シャルの家族を求めて2【中編】

 酒場は突如現れた男の声で静まり返る。

 声を出したのは、トレンチコートを身に纏った、威圧感が半端ではない、しかし、どこか威厳さえ感じさせる男であった。

 「お、親父。なぜ止めるのですか。コイツらは先生を…」

立ち直った黒服の男たちは丁寧な口調で『親父』と呼んだ男に聞き返す。

 たぶん男たちが言った『先生』というのは、十六夜に一発いれられ、白眼をむいて倒れているこの男のことだろう。

 『先生』という言葉から想像するに、用心棒のことを指すのだろう。

 かなりチャラくて、モヤシみたいな感じだが。

「全てはコイツが招いた結果だ。それにこの程度でのびるようなヤツなら役にはたたん」

「しかし…………」

男のドスの効いた声に黒服の男たちは、一声発するのがやっとで黙りこむ。

「心配するな。代わりになるヤツが見つかった」

男は口許に笑みを湛えると、僕たちに熱のこもった視線を向ける。

 ゾクリと背筋が寒くなる。

 とんでもなく嫌な予感がする。

 男は大股で、しかしゆっくりと僕たちに近づいてくる。

 視線は僕たちから外すことはなく。

 男がついに僕たちの前に立つ、男からは凄まじい威圧感が、そして近くから見るとかなり体格が良い。

「少し話があるんだが」

「は、はい……」

とても、NOとは言えない雰囲気に、僕は気圧されYESと答える。

 シャルも男の威圧感に気圧されており、縮こまっているばかりである。

 小動物みたいで可愛いと思えるほどの余裕はさらさらない。

「で話なんだがよ―――」

かいつまんで言うと、のびている男は、かなりの腕の人形使いで、縄張り争いでこれから抗争に向かう所だったらしい。

 その抗争相手とは一対一で戦うことになっていて、この男が代表だったらしい。

 そしてなぜか人形使いだとバレた僕たちに白羽の矢がたったらしい。

「なんで僕たちに?」

「その出で立ちや此処に出入りしていることを考えりゃあ、お前たちが裏の世界に足を踏み入れていることが分かる。それに、コイツをぶった押したそこのヤツの動きは人間のそれじゃあなかった。つまり自動人形だろ。それもかなりつええ。俺の目に狂いはねえ」

半分外れで半分正解だった。

 僕たちはかたぎですとはとても言えない。

 すると、僕の服の裾がをクイクイと引っ張られる。

 振り返ると心配そうな表情をしたシャルが。

「いい機会かもしれない。裏の世界に顔が広い人と懇意を結べば、これからシャルの家族の情報も入りやすくなるよ」

僕は小声でシャルにそう告げる。

「で、でも大丈夫なの?」

「僕だけだったら死ぬかもしれないけど、十六夜がいれば大丈夫だよ。シャルは見ててね」

「う、うん」

僕は前を向くと、男に

「お手伝いします」

と簡潔に答える。

 たぶん声は上ずり震えていたと思う。

「よし、いい返事だ。嬉しいぜ。勝ってくれたらなんでも言うことを聞いてやるぜ」

「あ、ありがとうございます。で対戦相手の情報が知りたいのですが」

「分かった。だが時間がねえ。車の中で話してやる。ついてこい」

男の後ろについていく。

 黒服の男たちはまだかなりの警戒心をもっており、僕たちを睨み付けてくる。

 生きている心地がしない。

 僕は等々踏み入れてはいけない領域に足を踏み入れたのだった。

 おじいちゃんごめんなさい。

 僕たちが車に乗り込むと、車は走り出した。

「で戦ってもらう相手だが。『混沌から生まれし者』だ」

「へ?」

僕、シャル、十六夜、シグムント皆が呆然とする。

 冗談でしょと突っ込みたくはなるが、男は真剣な表情で語っている。

 下手に突っ込んだら、指をもっていかれたり、コンクリートを抱いて海にドボーンてことさえありそうなので、黙っていると

「これは冗談じゃねえ。本名も、生まれも何一つ分かっちゃいねえんだ。自称『混沌から生まれし者』と言っているからそれで通ってるってわけだ」

僕たちの表情から悟ったのか、頭をかき苦笑いしながら詳しく説明してくれる。

「たぶんよ、薬の使い過ぎでラリってるんだろうよ。かなり言動もいっちまってるからな。ただ強さだけは本物だ」

「そうですか。ではどういう戦いかたをするのですか?」

「分からねえんだ。対戦相手は全て死んでるからな。観客も今まではいなかったらしいしな」

辞退したほうが良さそうだ。

今なら『ルーラ』で逃げられるかな?と頭の中で考えていると、隣の十六夜が僕の手を握ってくれる。

 そのとたん、安心感に包まれ、安らぎを感じる。

 十六夜を見ると、優しい笑顔を向けてくれる。

 勇気付けられた時に、ちょうど車が目的地に着いたらしく、停車する。

 黒服の男がドアを開け、男が降り、先へ歩いていく。

「!!」

着いた所を見て僕は、茫然自失となる。

 目の前にあったのは、そびえ立つ城であった。

 よくファンタジーなどの話に出てくるあの城である。

「行くぞ」

城を見上げて茫然としている僕に声がかけられる。

「行きましょ」

意にも返さないのかシャルが先に歩いていく。

 さすがに元公爵家の御令嬢、見慣れているのかなと思いながら僕も小走りで後を追った。

◇◆◇◆◇◆

 

とまあ、こんなことがあって今の状況になっているのです…。

 でどうやら、僕たちの戦いは、イベント化して、かけ試合になっているために、観客が集まっているらしい。

「さあ、共に混沌を奏でようぞ。行くぞ我が敬愛なるPrincse of darknessベルゼビュート!」

ポーズをビシッと決めながら言う自称『混沌から生まれし者』薬でラリっているのではない。

ただの重度の中二病なのだ。

この時代にも中二病はいたらしい。

昔の自分を見ているようで居たたまれない。

「ハァ。かったりいな。どうせ物の数秒しかもたねえだろうがな。少しは楽しませてくれよ」

『混沌から生まれし者』の自動人形であろう、紳士的に見える渋い男がダルそうに呟くと、軽やかなステップで跳躍し、宙に浮かんだ瞬間姿が消えた。

 それに呼応するかのように、十六夜の姿も消えた。

 その瞬間、舞台の中心部で爆発音のように耳鳴りがするほどの音と、立っていられないほどの衝撃波が巻き起こる。

 なんとか姿勢を保ち、見てみると、十六夜とベルゼビュートが拳を突き合わせている。

「ほう。なかなかやるな。これは楽しめそうだ」

ベルゼビュートは口角を上げ、笑みを浮かべる。

 その表情からも喜んでいるのが分かる。

「さあ。我が混沌を受けとるがいい」

『混沌から生まれし者』からピリピリと痺れる程の圧倒的な密度の魔力が放出され、その魔力は全て余すことなくベルゼビュートに流れ込む。

「ついてこいよ」

再びベルゼビュートの姿が消える。

「私も楽しめそうですね」

十六夜も微かに笑みを浮かべると、追従するかのように姿を消した。

 たびたび現れては消えるを繰り返す中、打撃音と衝撃波のみが轟き、吹き荒れる。

 観客も声を出すことさえも忘れ、静まりかえる。

「はっ!」

空中に現れた十六夜が、気弾を放つ。

「ふん」

ベルゼビュートが足を止め、腕で振り払うように気弾を弾き飛ばす。

 弾かれた気弾は壁に当たり、巨大な穴を穿つ。

 もう僕が介在できる戦いではない。

 次元すら違う戦いである。

 十六夜は空中から衝撃波を撒き散らしながら、ミサイルのように一直線にベルゼビュートに突っ込み、蹴りを入れる、紙一重で避けたベルゼビュートは流れるような流れで、交差する十六夜に裏拳を入れる。

「!!」

しかし、裏拳は十六夜に当たることはなく、すり抜ける。

「素晴らしい反応速度です。しかし、一歩足りません」

ベルゼビュートの懐付近に姿を現した十六夜は、ベルゼビュートの腹に手を当てた。

「終わりです!」

十六夜の両手から神々しい光が溢れ、空間をも裂くような気功波が放たれ、ベルゼビュートは光に飲み込まれた。

 唖然とする観客、すでにヤジを飛ばす気概さえ削がれていた。

 黒焦げになったベルゼビュートが頭から地面に落ち、そのまま動かない。

 勝負あったかなと思っていると、

「くっ!」

その時、『混沌から生まれし者』が包帯を巻かれた腕を抑えながら蹲る。

「く、くそっ……こんなときに……俺に宿る力が暴走するとは…」

その苦しみようは、迫真に迫るものがある。

 とんでもなく重い症状だな、僕でもこれほどではなかった!

と呆れ半分、驚き半分で半眼で見ていると、驚くべきことに、『混沌から生まれし者』の腕からもうもうと、黒く闇のような魔力が溢れだした。

「す、すごい魔力だ。まるで闇のように…」

「ほう、貴様には俺に宿る真の力が見えるようだな。俺と同じ魔眼持ちか」

「…………」

真面目に答えるのがバカらしく感じてきた。

 ただ事態は深刻化する。

 『混沌から生まれし者』の腕から生き物のように這い出してきた黒い魔力が、倒れているベルゼビュートに流れ込んでいるのだ。

「第二幕の始まりだ。立つんだ我がPrincse of darknessベルゼビュート!!」

閉まらない戦いの第二幕が始まる。




なんか無理やりなことの運びになってしまいました…
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