自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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夜々VS十六夜 初手合わせ

 今僕の目の前では、以前の世界ではけっして見られないであろう想像を絶する戦いが繰り広げられていた。

 生来の臆病気質の僕はこんな戦いを目の前で繰り広げられていたら、絶対に尻込みするものと思っていた、しかし、今の僕には真逆の思い、少しワクワクする感情が現れていた。

自分自身でも驚きの感情である。

 10人の学生達の自動人形が一斉にシグムントに襲いかかっている。

 だが、シグムントも流石に〈十三人(ラウンズ)〉の一角である。

 最初に投擲された人間の身の丈ほどある巨大なトゲツキの鉄球を羽で弾く、流れるような動きで突撃してくる騎士風の自動人形を噛みつきそのまま放り投げた。

 だが、どんなに強くても多勢に無勢、段々とシグムントが押され始める。

 素早い動きでシグムントの懐に入り込んだ闘志風の自動人形がシグムントの頭部を己の強靭な爪で幾度となく、切りつける。

 シグムントが頭を振り振り払うと、その時にできた僅かな隙を見逃すことはなかった。

 水妖(ウンディーネ)型の自動人形が全てを凪ぎ払うかのごとき水流をシグムントが襲う。

 飛翔してかわそうとするシグムントだが、雪の精(ジャックフロスト)型の自動人形がシグムントにかかった水を凍結させ動きを封じる、さらに、上空から舞い降りた鳥乙女(ハーピー)型の自動人形がシグムントを巻き起こした突風で地面に叩きつける。

 地面に叩きつけられたシグムントにとどめとばかりにゴーレム型の自動人形が巨大な拳を降り下ろした。

 ここまでは、完璧な連携であり、シグムントを徹底的に調べあげて組み立てたすばらしい作戦であった。

 しかし、彼らの作戦はシグムントのみを相手にした場合のものであった。

 ゴーレムの拳がシグムントに当たるその直前に横から滑り込むように現れた黒い影により軽々と受け止められた。

 そうこの物語のヒロインである、夜々である。

 そこから気位が高いシャルが雷真が横槍を出したことについて文句をいい、それについて問答を続けていたが、その後は雷真が鋭い目付きで辺りを見回し今度はシグムントを襲っている学生達と激しい舌戦をし始める。

 まとめると、「シャルとシグムントは俺の獲物だ」という言い合い。

ただし、雷真が気に入らないのは多人数で襲いかかったことらしい。

 そんな問答の最中に雷真と夜々が立っている場が爆発と共に猛火に包まれる。

 姿を隠していた学生が「とったぞ!!」と興奮して立ち上がったが、砂煙が収まった場には抉れた地面と、なんと無傷な二人が。

 その一撃が二人に火をつけたのは明確であった。

「光焔十二結!」

雷真から夜々に魔力が流れ込むと、炎を纏ったような激しい動きで敵に襲いかかる。

 驚くべきことは雷真も夜々のあとを追い夜々が崩した相手に雷真が流れるような動きで追い討ちをかけるものだった。

 ラノベ通りの戦い方ではあるが、生身の人間が自動人形を相手にする姿は驚くべきものだった。

(僕にはできないな)

と思って見ているうちに戦いは終わっていた。

 シグムントも負けずにシャルの指示による

「ラスターフレア」を放ち無数の光の矢が残りの敵を退けていた。

 ラスターフレアの数本が僕にも降ってきたが、それは十六夜が気を纏わせた腕で弾き返し、難を逃れた。

 あれだけいた学生があるものは倒れ、あるものは逃げ、その場に立っているのは僕と十六夜の二人だけになっていた。

 

「ねえこの無礼者(雷真)なぜあいつだけ倒さなかったの?」

シャルが鋭い視線で僕を一瞥し指を指しながら雷真に噛みつく。

「あいつには殺気も戦闘する気もないみたいだったからな」

 雷真は簡単に言ってのける。

 流石雷真だと僕は感心しながらも、雷真に近づき声をかける。

「はじめまして」

「こんなところで日本語で話しかけられるとは思わなかったな。ゆっくり話してみたいものだ。でなんでお前はかかってこなかったんだ?」

 

雷真も驚きながらも嬉しそうにただ疑問を問い詰めるように問いただしてきた。。

「僕も嬉しいです。でご質問のことなんですが、僕は巻き込まれてここにいただけなので」

「そうか」

雷真は頷くと去ろうとしたが、僕は続けて言葉を紡ぐ。

「ただ、あなたの戦いを見ていたら柄にもなく熱くなってきて、できたらお手合わせ願えませんか?」

「いいぜ」

断られるのを当然と思いながらも意をけっして言ってみると、事も無げに承諾してくれた。

 夜々と僕の一歩前にでた十六夜が向き合う。

「ごめんね、夜々さんも、十六夜も僕のわがままに付き合わせてしまって」

 僕は二人に頭を下げ謝罪する。

「いいんです。雷真の言うことに私は従うだけですから」

「零夜の願いをかなえるのが私の使命ですから」

夜々は笑顔で十六夜は無表情で答えた。

 そして戦いの幕がきって落とされた。

「水鳴四八衝」

「はい」

雷真の指示に夜々が答える。

 すると、夜々の姿は透けていた。いや透けるように見えていた。

 夜々は既に十六夜の眼前にまで迫っていた。

 透けたように見えたのは夜々の残像であった。

 十六夜に襲いかかった夜々は鋭い貫き手を連続で繰り出す。

 しかし、十六夜は涼しい顔で幾重にも繰り出される貫き手を全て紙一重でかわし続ける。

 そのやり取りがしばらく続いたが進展することはないので、夜々はバックステップで一度雷真の元にもどった。

「こりゃあ、夜会を前にいい練習になるぜ。本気でいくぞ夜々。光焔三六衝!」

「はい!」

 再び雷真から膨大な魔力が夜々に注ぎ込まれ、夜々は爆発的な速度で十六夜に迫る。

 十六夜は変わらずに夜々の動きを冷静に捕らえている。

 夜々は直進して十六夜に迫るが直前で宙に舞い、重力を味方につけ加速して膝を渾身の力で叩きつける。

 夜々は捕らえたと思ったのだろう、だが夜々が捕らえたと思っていた十六夜に当たることはなく、夜々の膝は十六夜をすり抜けていた。

「残像!!」

夜々が驚きの表情でそれを見ると、

「ごめんなさい」

と背中辺りから声を聞いた。

 その直後、十六夜が夜々の背中に軽く触れるようにそっと背に手のひらを当てる。

 その瞬間、手から波紋上に衝撃波が巻き起こり、夜々は凄まじい勢いで吹き飛ぶ。

 ただし、夜々も流石に実戦慣れをしており、冷静に宙で反転し体勢を立て直し、地面に足を着き、すぐに地を蹴り反撃に転ずる

「天剣絶衝」

雷真の指示を受けた夜々は十六夜の胸に拳を当てる。

「〈破却水月〉」

 十六夜が驚いた時にはもう遅かった。

 十六夜の体が波打ち、恐ろしいインパクトが十六夜に襲いかかり、遥か彼方に木々をなぎ倒しながら吹き飛び、十六夜が倒れ込んだ所に覆いかぶさるように木々が倒れ埋もれてしまった。

(十六夜もここまでしてくれた。それに夜々も雷真も付き合ってくれた。お礼を言っておこう)

 僕はそう思い、歩きだそうとした時だった。

 後方から爆発音がしたと思った直後に、頭に鈍痛が走り視界が暗転し、意識を手放した。

 ここからは後に十六夜に聞いた話である。

 十六夜は自分に覆い重なる木々を軽々と弾き飛ばすと、何事もなかったかのように緩やかな動きで服の埃を払うようにパタパタとはたき、身なりを整える。

 十六夜が見ると、大の字で倒れる僕の姿が視界に入る。

 十六夜は初めは慌てたが、雷真達が僕を攻撃するようなことはないと判断し、なんらかの理由で倒れたのだろうという結論に達し、雷真達に頭を下げお礼を述べた後に僕を抱えて保健室に向かったらしい。

 僕が目覚めたのはそういう理由で保健室のベッドであった。

 

◇◆◇◆◇◆

〈こぼれ話〉

 十六夜が去った後、雷真と夜々、シャルとシグムントが集まり話をしていた。

「まさかあそこまで強いとはな。それにまだ力を隠しているようだった」

「ほんとね。ただ、術者はたいしたことなかったわね。私はあんなやつをずっと追っていたなんて……」

「確かに、自分の自動人形の弾き飛ばした破片が頭に当たり気を抜かすとはな…」

雷真の発言にシャルとシグムントは頷きながらも、苦笑いで苦言も呈していた。

「ただ悪いやつには思えないし、少しあいつに興味が湧いたのも事実だ」

「まあ確かにね…」

「そうだろうな」

僕の知らない所で、雷真達に興味を持たれるという好結果?が生まれていた。

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