自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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前回同様今回も分かりづらいかもしれません。
あと、一人称「私」を使用しているのは零夜になりますので、悪しからず。
そしてもう一点、零夜がチート化しています、この話に限りですが。


夜会第50夜の幕開け

 360度見渡す限り全て人で埋め尽くされている。

「蔕零夜参戦する」

私がなんの前触れもなく、突如舞台に現れ、参戦表明したことに、会場はざわめきたつ。

「やはり会場入り口から入った方が良かったかもしれんな」

翁が隣で後悔したように呟くが、別段気にするつもりもない。

 今回の戦いで〈魔活性不協和の法則〉を万人の前で覆すのだ、その前座にすら足り得ない。

「零夜じゃないか久しぶりだな」

「……ああ……」

「つれないな」

雷真と久しぶりに会えたのだ。

語り合いたい気もするが、その一時の思いもなんとか抑え込み、つれなく返す。

「あ、あの十六夜はどこに?」

「…………」

私はその問いに返すことはしない。

いや違うな、返事を返さないのではない、返せないのだ。

 口を開かない私を取り巻く雰囲気が悪くなる。

 その時だった、金髪を風になびかせて、皆の衆目の前にたった、学生総代〈金色のオルガ〉ことオルガ·サラディーンが、ざわつく場を治める。

「あの者大したものだな。一瞬でこの場を治めおった。若いのになかなかやるのお」

翁が感心したように呟く。

 その言葉には頷かざるを得ないが、なぜだか分からないが、何かしら違和感あの総代からは感じる。

 今回は目の前の戦いに集中するために、些細な違和感は封印する。

 学生総代オルガ·サラディーンが周りを見回し、腕を挙げた瞬間、夜会始まりのベルが会場に鳴り響き、夜会第50夜が開幕した。

 会場は興奮の坩堝と化し、敵方の後衛舞台が遠距離攻撃を繰り出す。

飛び交う火炎や雷撃をもものともせず雷真とロキが全線に飛び出す。

 こちらにも攻撃は飛んでくるが、全て黒刀『烏アゲハ』で切り払う、火炎は黒い輪分のように煌めき霧散した。

「舞台の人間及び保険として進行方向の観客にアストロン」

私が効果範囲を指定し、呪文を唱える。

 舞台上の学生そして一部の観客が金属の人形と化した。

 会場はその異様な光景に息を飲む。

 夜会では学生自体を攻撃することが許されていない、そして今回行使する呪文は広範囲に渡る、そのための準備だ。

「さあ終わらせよう。全ての経験値は私がいただく。ベギラゴン!」

極大閃熱呪文ベギラゴン。

ギラ系最上位の呪文にあたる、ある代償を経て夏休みに習得した唯一の呪文にして、今放てる私の最強の呪文。

 私が向けた手のひらから魔力が迸る。

 視界に入るだけで、網膜を焼き尽くす程の、苛烈かつ破壊的な閃光が舞台を走り、全てを灰塵と化す桁違いの熱量が狂気の乱舞を繰り広げる。

 ある自動人形は一瞬で塵も残さず消し飛び、ある自動人形は灰と化し、またある自動人形は融解した。

 地獄のような凶宴が幕を閉じるとき、辺り一面は焦土と化していた。

 ただ金属と化していた人間を残し。

 会場の観客は目の前で起こったことを信じることができずに静まり返る。

 私の手のひらは皮膚が爛れ、火傷のようになっている。

 まだ制御はできないか…さすがに最上位の呪文では抑えが利かないか……

 しばらく経た後にざわめき、巻き起こる喧騒を無視し、手のひらを見つめ考えていると、『アストロン』が解けた学生たちが我に返り、呆然とする。

 今まで隣にいたはずの自動人形はそこにはなく、変わり果てた光景、焼け焦げた舞台、所々に残る火などに、何があったのかと混乱している。

「ど、どういうことだ!?お前何をした」

敵方の大将だろう、知的な眼鏡をかけた男が、私に怒りの形相を向け怒鳴りつけてくる。

 いけすかないやつだ。

「対戦相手に敬意を表して今放てる全力の呪文を放った。それだけだ」

「ふ、ふざけるな!お前は魔術から身を守る魔術を使うのではなかったのか」

私が初めて夜会に参戦した時に宣言したことを覚えていたらしい。

「人は進化するんだよ。さあお前たちの自動人形はもう倒した。手袋を捨てろ」

「ぐっ…」

男は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、抗う術もなく手袋を地面に叩きつける。

 大将が手袋を捨てたのを見た、仲間の学生たちも、同様に手袋を外し、地面に手袋を叩きつけた。

 夜会第50夜は一瞬にして終わりを告げるはずであった。

 しかし、納得していない者が。

「零夜お前いったい…」

雷真である。

 いきなり、金属にされ、気がついた時には光景が一変していて、勝負がついていた。

 当然、疑問に思って当然だ。

「雷真。もう私には関わるな。私に関われば、雷真の未来はなくなるだろう。それに私と雷真は遠からず命をかけて戦うことになるはずだから」

「お前……いったい…何を…」

私の答えに絶句する雷真。

 雷真たちに背を向け立ち去ろうとする私の前に立ちはだかる者が。

「零夜あなたどうしちゃったの?夏休みに何が」

シャルが心配と困惑が交じりあった表情をしている。

 シャルをこのような表情にしてしまったことに心が痛む。

 しかし、あのようなことを起こさせないために、私は覚悟を決める。

「シャル君もだ。私に関われば、君の希望は叶わなくなる。そして最悪な場合…君は命を失うことになる」

「えっ……」

シャルも言葉を失う。

 真実ではあるが、罪悪感に苛まれる。

「そういうことだ。私に関われば皆が不幸になる。もう以後関わらないでくれ」

そうこれでいいんだ……。

「待ってください。夜々は十六夜のことを聞くまでは引き下がれません」

さすがに夜々は引き下がらないか…ならば……

「そんなに聞きたいなら力付くでくるといい。夜会はまだ終わってはいないのだから」

「分かりました。雷真お願いします。私は姉として十六夜のことを知らなければならなんです」

夜々の真剣な眼差しを受けた雷真も静かに頷く。

「ああ、俺も零夜お前には色々と聞きたいことがあるからな」

前哨戦か…

雷真の体から発せられる研ぎ澄まされた魔力を感じ、戦いになることを確信した。

「ワシはどうする?」

「翁は好きにしていい。それに翁は戦闘タイプではないしね」

「そうか。では好きにさせてもらおう」

翁が一歩下がる。

 初めて雷真に出会ったあの日を思い出す。

 今回は私自らが戦うのだが。

「そろそろ始めようか」

私は抜刀の構えを取る。

「夜々行くぞ!」

「はい雷真!」

夜会第50夜はまだ終わらない。

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