爽やかな光が窓から入り、清掃が行き届き清潔感が漂い、居心地がよいはずの学生食堂のはずなのに、そいはずなのに……
今僕は居たたまれない状況に陥っていた、まさに『針のむしろ』といえばよいのだろう。
こんな感覚を味わったのは、前世での高校一年生の時の三者面談以来だろう。
まああの時は成績はなかなか良かったからまだよかったのだが、今は違う、テーブルを挟んで、僕と僕の横に十六夜、対面にはシャルと雷真、そして、左右には逃さんとばかりにシグムントとなぜかイライラしているような夜々、まあ雷真のとなりにシャルが陣取っているからだろうとは簡単に推測できるのだが、今の僕にはそんな余裕さえ微塵もない。
対面の雷真は、言い方は悪いが、僕を値踏みするように、シャルは敵意をもった瞳で僕をじっと見つめている。
なぜこのような状況に僕が陥ったかというと、僕が講義を終え、そそくさと学生食堂に来て、食事を取っていた時に不意に
「ここいいかしら」
「ここいいか」
という男女の声が聞こえる。
僕はお得意の景色に溶け込むほどの影の薄さが常時発動スキルとしていたので、なぜ気付かれたと動揺しているうちにズンズンと二人が入ってきて、このような状況が出来上がっていたのだ。
たぶん、いや絶対に昨日の戦闘のことだろう。
二人とも、何かを探るような感じで僕の瞳を覗きこもうとしているのだから。
まあ目は口ほどに物を言うみたいなことも言われていた気もするし。
しかし、僕の外見デフォルトから、どこからどうみても僕の瞳は見れなくなっているのだから真意ははかれまい。
しかしながら、僕から見ると何故か前髪がスルーされて視界良好、まるでミラーガラス状態。
まあそれがいいのか、悪いのかは今の所分からないが。
そうこうしているうちに僕のほうがこの沈黙に耐えられなくなり、一番無害そうなシグムントに声をかける。
「昨日はかなり怪我をしていたようですが、大丈夫ですか?」
「ああ問題ない。少し痛む所はあるが」
前に読んだラノベでのシグムントと雷真の会話とは少し違ったが、会話を続ける糸口を見つけた。
「どこが痛むんですか?」
「ああ、この羽の部分だ」
シグムントが指し示した部分を見ると、
少し傷がついている。
たぶん、昨日鉄球を受けた所だったと思う。
「動かないでくださいね。ホイミ」
僕はシグムントの傷口に手を当て呪文を唱える。
僕の手が淡い緑色に発光して、シグムントの傷口を修復した。
これでこの世で何回目であろうか、僕が軽率な行動を取ったのは。
「!!!」
周りを見回すと、皆が一同に驚愕の表情を浮かべているのだ。
それは傷が癒されたシグムントが一番驚いているのが見てとれた。
「先に礼を言っておこう、ありがとう。そして、いったい君は何をしたのだ、魔力を流し込んで直していないことは一目瞭然だが…」
シグムントが渋い声で問いかけてくる。
「えーっと、回復呪文です……」
「嘘だろ!!」
「嘘でしょ!!」
僕の答えで再度固まる雷真とシャル。
(まずい、この世界では一つの魔法しか使えないんだった。アストロン以外にも使ったから驚かれたのか、それともこの世ではあまり知られていない回復魔法がいけないのか)
僕が頭の中で色々考えていると、雷真とシャルとシグムントが何かヒソヒソ話を始めた。
僕は耳を済ませたが断片的に「あり得ない」とか「つかえる」とか「夜会」としか聞こえない。
そそくさと逃げようとした僕であるが、いきなり肩を掴まれ引き戻される。
かなりの力に驚き振り返ると、爽やかな笑顔をたたえたシャルがその細腕からは考えられないほどの力で肩を掴んでいた。
「すいません、すいません、すいません」
僕はとりあえず謝ってみる。
前世でも謝ればなんとかなる場合が結構あったからだ。
「なに謝ってるのよ」
「へっ?いや怖かったから」
「なんですって!」
「ひっ!」
というやり取りを僕とシャルが繰り広げていると、
「シャルそこまでにしておけ」
シャルの保護者シグムントが彼女を諭してくれた。助かった。
「率直に言うが、お前は夜会に出るつもりか?」
雷真が重たい声で聞いてくる。
まだこの時点では雷真は夜会にはエントリーされていないため、その真意を伺えずに、あたふたしていると、
「夜会にあなたが出るとしたら、あなたとあなたの十六夜とはあまり最初のうちには戦いたくないのよね。最終的には戦うことになるけど」
そのシャルの発言で僕はやっと分かった。
僕が敵になるのか、そうではないのかを見ようとしているのだと。
二人の真剣な表情を見て、嘘をつくわけにもいかないので、率直に本意を話すことにした。
「僕は夜会には出るつもりです。でも二人ともいい人そうなので僕も戦いたくはありません。できるならば最初は一緒に戦いたいとも思っています。その……できればですが、友達として…いやならいいんです」
「フフフ」
「ハハハ」
いきなり笑い出す二人に呆然とする僕。
「何を笑ってるんですか。僕は本当のことを喋ったのに」
すこし憮然として話す僕に
「悪かった。まさかそう言うとは思わなくてな。まあ最終的には敵同士になるが、一緒に頑張ろうぜ」
「ふん、まあ今までのことは水に流してあげるわ」
とうまくまとまったのか、二人とは良好な関係を築けそうになったのでめでたし、めでたしとなるはずであった。
しかし、この後ラノベ通り、雷真はあの敵の顔を見るや否や、血相を変えて窓ガラスを突き破り、突っ込んでいったのだった。
その迫力は相当な物で、シャルはもちろん、そうなることがわかっていた僕でさえも、驚きながら、雷真を追いかけて外に出ることしかできなかった。
この時点ではシャルと雷真はこんなに仲良くはないのですが、私の技量不足のためこうなりました。
二次創作ということでお許しを。