自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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 学年末テスト一日目をなんとか切り抜け、息抜きがてら更新です。
 明日から休みにまでまた更新はできないと思います。


魔力残滓を追って

 鳥の囀ずり、そして夏の代名詞と言っても過言ではない蝉の合唱によって目が覚める。

 そして、目を開けると、目の前には静かな寝息をたてている十六夜が…。

 そういえば昨夜十六夜が気を遣って添い寝してくれたんだ……

 い、いかん、十六夜のかわいい寝顔に加えて、朝特有の男の衝動というか、整理現象が。

 僕が危機的状況を打破すべく、十六夜から離れようと薄い夏布団をはね除けた時だった。

「おはようございます。よく眠れましたか零夜」

「あ、お、おはよう。よ、よく眠れたよ。昨夜はありがとう」

「いえ、どういたしまして。どうしたんですか。急に飛び起きて、前屈みになって?」

十六夜から離れて、ある部分を隠すために前屈みになったことを不信に思ったのだろう、十六夜が近づいてくる。

 優しさから気を遣ってくれた十六夜に対して、僕は三大欲求の一つが反応しているなんて不謹慎なことは許されない。

「と、トイレに行きたくて。ルーラ」

いつでも役にたつルーラで危機を回避と思ったのだが…。

「ふぅ。十六夜に失態を見られなくて良かった。ついでに用を足そうか、ってウワッ!!」

お食事中の人には申し訳ないが、約半年放置していたトイレはとんでもない状況に。

 それは現代でもそうなのだから、ましてや水洗じゃないトイレなのでその荒れよう尋常じゃない。

 Gやベルゼブブが大量に発生していた。

「どうしたんですか零夜。敵襲ですか」

あまりの光景に腰を抜かしている僕の元に十六夜が走ってくる。

「零夜!……ごっ、ごめんなさい」

僕を見た十六夜が真っ赤に赤面し、誤り逃げていった。

 一体十六夜はどうしたんだ。十六夜もGが苦手なのか?と思ったのだが、違った。

 用を足そうと下半身を露出していたのを失念していた。

 先程のことから、マリ〇がキノコを食べたようになっている状態なのを。

 その後十六夜は僕から目を背けて謝罪を繰り返すという、とても気まずい状態が続いた。

「十六夜。もう謝らなくていいから、朝のことはお互いに忘れて、行動に移そうよ」

「はい…」

まだぎこちない気はするが、なんとか状態を動かすことに成功し、装備を整えて家をあとにした。

 十六夜が先頭を迷いなく先に進んでいく。

 まるで何かに引っ張られるように、そして黙ったまま。

 まさか操られているなんてことはないよな。

 以前魔術〈絶対王政〉の件があったので、十六夜であってもやはり心配になる。

「で、忍びこんだ泥棒がどこに行ったか分かる?」

思い付いたことをそのまま聞いてみる。

 質問が本題ではなく、十六夜が気になってだ。

「ええ、昨夜言いましたが、金庫を破壊しようと魔術を使ったことにより、魔力の残滓が薄くですがあったので、今はそれを追っている状態です」

十六夜は振り向くことなく答えた。

 多分魔力残滓から目を離すことができないほど僅かなものなのだろう。

 十六夜のことは確認できたので、邪魔をしないように黙ってついていくことにした。

 歩き続けて約一時間、今は見知らぬ森の中の獣道を歩いている。

 熱さと疲れから汗が止まらない。

 体力的にもそろそろヤバくなってきた時だった。

「零夜あちらを見てください」

十六夜が急に立ち止まり、指を指す。

 指の先には自然の森の中に不釣り合いな、人工物の建物が。

 蔦に覆われ、かなり古くからあると思われる建物。

 建物の規模から、家などではなく、基地のような感じである。

 前世の世界であったら、DQNがたむろしていたり、肝試しが盛んに行われていそうな雰囲気が漂っている。

 あまり入りたくはないのだが…

「あの建物に魔力残滓が続いています。気配は感じられないのですが、どうしますか?」

身の安全を取ったり、できるならば引き下がりたいのではあるのだが、気配はないというし、敵の情報が少しでもあった方がいい。

 自分に鞭をうち決意して話す。

「警戒しながら入ろうか」

「はい。零夜は私から離れないでくださいね」

十六夜は背にかけた大鎌『刻死大鎌』に手をかけ慎重に歩を進めていく。

 離れていてもかなりの雰囲気を醸し出していたのが分かる建物だが、目の前には立つと更に迫力が増した感じがする。

「行きますよ」

この時代の日本ではあまり見かけない鋼鉄でできた扉をゆっくりと十六夜が開く。

 ギギギと不気味な音を建てて扉が開かれる。

 日に照らされた内部はボロボロに朽ち果てていて、破片や埃が辺りに広がっている。

 空気も淀み、カビ臭く、鉄錆びのような臭気も漂っている。

 前にもどこかで嗅いだことがあるような…

 嫌な予感がヒシヒシとするが、十六夜は先を進んでいくので僕も続く。

 開け放たれた扉から日光は入るのだが、少し先に進んだだけで、その日も届かなくなる。

「どうしようレミーラ使う?」

「一応慎重を期したいので零夜には申し訳ないですが、このまま行きましょう」

「分かった」

僕は十六夜の裾を握りしめ、視界の効かない闇の中をついていくことになった。

 次第に闇にも慣れてきたのか、うっすらと回りが見え始めてきた。

 いくつにも分けられた個室、扉が外れた所やひしゃげた扉もある。

 ただ奇妙なのは、どの部屋も窓すらなく、物も何もなく生活感が全く感じられないものである。

 ゾンビや霊がどこから現れてもまったくおかしくない。

 辺りには僕と十六夜の足音だけが響き渡る。

 まあ、別の足音や物音がしたら気を失いそうだが。

 あまりの恐怖に目を閉じて歩いていた、女の子に前を歩かせた挙げ句自分は目を閉じているという、とんでもないヘタレ具合ではあるが、背に腹はかえられない。

 しばらく足音だけが響いていたが、急にその音も止み、僕は十六夜にぶつかった。

「あ、ごめん。どうしたの急に止まって」

「前方から微かに光が見えます」

「誰かいるの?」

「依然として気配はありませんが、より警戒して行きましょう」

十六夜の声にも緊張が混じっているような気がする。

 足音を消し、気配すらも十六夜は消した。

 目の前にいるのに、まるでいないのではないかとさえ錯覚する。

 袖に触れている部分だけが、十六夜の存在を確信させる。

 歩みを進める度に、明かりが大きくなってくる。

 明かりが漏れている扉に十六夜は手を当て、僕に振り向く。

 僕は覚悟を決め頷く。

 十六夜は気で扉を弾き中に飛び込む。

 鋼鉄の扉は弾丸のように飛んでいき、十六夜も同様に部屋に入る。

 僕は影に隠れながら中を見ると、明かりは人工物ではなく、屋根が壊れた所から射し込むもので、部屋の中は、今まで見てきた個室ではなく、大広間といった所であった。

 ほっと胸を撫で下ろした刹那、

「来ないでください!」

十六夜の怒号が響く。

 何もなかったはずの所から、何体もの自動人形が十六夜を囲むように飛び出してきた。

 ある自動人形は剣に炎を纏い、ある自動人形は両拳に雷を纏い。

 風をきりながら十六夜に攻め込む。

「草薙!」

十六夜の鎌が円上に闇を切り裂く。

 自動人形が鎌の一閃により両断され、第二陣の衝撃波によって粉々にくだけ散る。

「やった!……えっ!?」

十六夜が全ての自動人形を破壊したその時、背後から何者かに押さえ込まれ、僕の首すじに、冷たい金属状のものが当てられ、どすのきいた声で

「一言も喋るな!」

と一言だけ告げられた。

 背後から現れた者は、僕だけならまだしも、十六夜にも気づかれずに僕を取り押さえていた。

 そして、そのまま僕を羽交い締めにしながら部屋に入る。

 部屋の中には、またしてもどこから現れたか分からない兵士達が、銃口を僕に向けて十六夜を取り囲んでいた。

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