自動人形〈オートマトン〉と生きる第二の人生   作:寅好き

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視点が零夜から葵に変わります。ご了承を。


一難去ってまた一難

 ヴァルプルギス王立機巧学院学院長エドワード·ラザフォードは、私たちを見逃してくれた。

 私たちは、あの驚異から逃れ、先に進むことを許されたのです。

 そのまま私たちは皆でまとまり階段を降りていく。

「なあ、あんたは何者なんだ?零夜には姉さんって言われていたようだが」

雷真君が探るような目付きで聞いてくる。

 でもその言い方は…

「雷真君だよね。いきなり初対面の女性にあんたって聞き方は感心しないわね」

「す、すまない」

雷真君はばつが悪そうにポツリと呟くように謝る。

素直でしかも、なかなかからかいがいありそうな可愛いこみたい。

 雷真君を見て笑っていると、後ろの自動人形の女の子が半眼で私を睨み付け、髪を逆立てて、どす黒い妖気をこちらに叩きつけてくる。

 嫉妬してるのかしらこの娘も可愛い。

「素直でよろしい。雷真君が言う通りかな。私は零夜の姉…でいいのよね?」

「なぜ疑問調なんだ?聞いているのはこっちなんだが…」

「大丈夫よ。そう私は零夜の姉よ。言葉で言うよりこれからお互いのことは知っていけばいいじゃない」

私は軽くウィンクをする。

「ラ~イ~シ~ン~」

「ま、待て夜々、落ち着け!」

「こんな女狐にー」

「く、首を絞めるな!話の流れで分かれ!!」

あらあら、ここまで嫉妬深いなんて…とんでもなく可愛いわ。

「それぐらいにしとかんと話が進まんぞ」

二人の微笑ましいやり取りを喜んで見ていると、いつもは場を喜んで荒らす翁が珍しく正論を言う。

 なにか悔しいわね。

「ゴメンね、冗談よ私は雷真君のことは零夜の友達としか見ていないから」

「本当ですか…」

首を閉められ真っ青な顔色をしている雷真君を宙に浮かせながら、涙で目を潤ませながらこちらを見つめてくる。

 ダメだわ…可愛すぎる。でも冷静にしないと、第一印象は大事だし。

「まったく、不用意な発言は勘弁してくれ」

絞められ、首に青く残った手のあとを撫でながら雷真君は呟く。

「ゴメンね。お二人さんが可愛くてついついからかいたくなっちゃって」

雷真君は疲れたような顔をして項垂れた。

 結構苦労しているみたい。

「で、なんで俺たちについてくるんだ?」

そりゃそうよね。いきなり初対面の零夜の姉と、以前刃を交えた翁がついてくると言えば疑問というか、不審に思うのも当然よね。

 私は雷真君たちに怪しく思われないために、間を置かず即答する。

「零夜の意思を汲んでね」

「零夜の意思?」

「そう零夜の意思。零夜は話したと思うけれど、訳あって零夜はあなたたちとの関係を無かったことにしようとしているの。でもね、築き上げてきた関係は簡単には無くせない。ついつい危機に陥っている雷真君たちを助けてあげたくなってしまう。でも表だって助けるなんて言えない。そんな零夜の葛藤を私と翁は読み取って少しでもあなたたちを助けられたらなってついてきたの」

「まさか零夜が……」

雷真君は私の話を聞いて少し複雑な表情をしていた。

 なんとなく雷真君の気持ちが分かるような気がする。

「あ、それと安心して。こう見えても私は零夜よりも近接戦闘だったら数段上だから」

「そりゃあ頼もしい。嫌なら言わなくてもいいんだが、もしかして……」

雷真君はいいよどんでいる。

 雷真君が聞きたいことは容易に想像がついた。女の身で零夜より強いと聞いたらそう思うと思うし。

でも、確かに聞きづらいことよね。

「私は自動人形ではないけれど、半分は自動人形の体よ」

「…すまない」

「……私と一緒…」

雷真君の隣の可愛らしい女の子がポツリと呟いた。

 そうか、この女の子も私と一緒なんだ…大きく親近感が湧く。

 ただ雰囲気は暗く沈んでいた。

 思い話だから仕方ないことだけど。少し雰囲気を良くしないと。

「気にしないで。望んでなったことだし。あと付け加えだけど、生身の人間だった時でも私は零夜より強くて負けたことないのよ」

「そ、そりゃあ心強いな」

「任せてね。夜々ちゃんとアリスちゃんだっけ。二人もよろしくね」

「は、はい」

「ええ、こちらこそ」

二人もぎこちない感じだけどなんとか自己紹介は成功した。

 翁は、まあいいか。

階段を降りていくと、なにやら巨大な飛行船のような物が見えてきた。

 そして、それが見えると同時にこちらに問いかけが聞こえてくる。

「あなたたちは何者ですか?」

黒いゴスロリチックな様相で、顔の前に『火』とかかれた布のような物を着けた女の子。

 顔は見えないけど、声から察するに10代前半ぐらいの女の子が、飛行船の上に腰かけている。

「マグナスか」

怒りが込められた声色で雷真君が吐き捨てるように呟いた。

 その凍てつくような殺気のこもった視線の先には、仮面をつけ、黒いコートを着こんだ男が立っていた。

「あれは?」

「あの男はマグナス。一番魔王に近い男だよ」

アリスちゃんが教えてくれる。

 その表情は曇っている。

「前途有望そうな青年じゃな。あの年で魔術師の禁忌に手を突っ込むとは……わしが言ってよいことではないが…」

「翁…」

女の子を見た後、男を見て翁は苦い顔をしている。

 何かが分かったみたいだけど、聞ける雰囲気ではない。

「しかし、それ以上に見所があるぞ、あやつは」

「え、それは?」

「たいした肝をしておる。あのような出で立ちで人前にでれるんじゃからの。真性のへ――」

「マスターへの侮辱は許さない」

翁の前の空間が歪み、突然鎌を持った女の子が現れ、鎌を降り下ろした。

「危ない!」

私は瞬時に愛用の薙刀で翁に降り下ろされた鎌を受け止めた。

 まったく気配を感じなかった…まるで零夜の転移呪文『ルーラ』のようね。

 私はそのまま鎌を受け止めている薙刀を振りきると、女の子は吹き飛びながら、宙で宙返りすると、マグナスという男の元に見事に着地した。

「助かったぞ。葵よ」

緊縛感などまったくなく余裕ある感じで礼を言ってくる。

 助けなくても大丈夫だったかも。

「余裕ありますね。でも口は災いの元ですよ翁」

「いや危なかったぞ。そうじゃの今後は気を付けるでの。で刃を交えてみてどうじゃった?」

それまでの、軽い感じではなく、真面目な顔に変わっている。

「空間転移は厄介ですが、戦闘力だけならなんとか。今なら条件的に魔術をつかえるので、使えば十分戦えますね」

「そうか」

考え込んでいる翁はそのままにしておき、私は薙刀を構える。

 どうやら雷真君と夜々ちゃんも既に戦闘体勢に入っている。

雷真君の表情はかなり鬼気迫るものだから、何かあのマグナスという男と、相当な因縁があるみたいね。

「手を貸したほうがいいかしら」

「ありがたいがまだいい。最初は俺と夜々だけでやらしてくれ」

「分かったわ」

雷真君とマグナスが火花が散るのではないかと思われるほどにらみ合っている。

 場の空気は緊縛感に包まれていた。

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