技術科の建物の壁に寄りかかるように機能を停止した自動人形がもたれ掛かっている。
心臓部には丸い穴が穿たれており、『イブの心臓』が抜き取られたことがよくわかる。
自動人形は例え体を破壊されたり、四肢が欠損しようと、『イブの心臓』さえ無事であれば、死ぬことはない、しかし、逆に体がどんなに無事であったとしても『イブの心臓』が壊されたのならば、自動人形は『死』を迎えることになる。
つまり、この自動人形は『死』を迎えたのだ。
僕はこの殺人を止めることをしようとすればできたのだ。
だがあえてそれをしなかった。
この殺人は雷真が真犯人にたどり着く為の重要な手がかりとなる事件である。
なので僕はあえて止めなかった。
原作通り進ませるために。
しかし、実際に惨劇が起こってしまうと、被害者を見てしまうと、心が揺れ、自分を責めずにはいられなかった。
この事件を起こしたのは××××だ。
しかし、いじめと同様に理由があったとしても、傍観していたのならば、僕も事件に荷担しているのと同じではないのかと…。
頭の中がゴチャゴチャになりながら葛藤していると、
「大丈夫ですか零夜?」
と声をかけられた。
はっと我に帰り、振り返ると、無表情ではあるが、心配したように僕の顔を覗きこむ十六夜が。
「今零夜が何を考え、何を悔いているかは分かります。悔いることはけして悪いことではありません。しかし、私達は次にすることがあるのです。次のことを上手くはこぶためにも、悲劇を防ぐためにも前に一緒に進みましょう」
そう十六夜がいうと、僕の手を温かく包み込んでくれる。
それが嬉しくて、感情のままに抱き締めてしまおうかと血迷っていると、眼鏡をかけた気難しそうな女性『リゼット·ノルデン』に連れられた、雷真とフェリクスが現れた。
風紀委員の主幹と主幹補佐、そしてこの事件を解決するのに手を貸して欲しいと頼まれた雷真がここにくるのも当然のことだ。
しかしながら、僕はここには居たくはなかった…。
下手をすると茶番に耐えられず、感情に任せて何をするか分からないからだ。
僕は、何も言わずにその場を立ち去ろうとする。
「ちゃっとどこいくのよ?待ちなさいよ!」
とシャルに声を掛けられたが、心の中でも謝罪し(後に実際に謝罪することになるが)三人に見つかる前にその場を立ち去った。
翌日のことだった。
かなり朝早くに扉を控えめにノックする音が。
普通であれば、居留守を使うか、他には………、この一択だけか。
なんだが、目が覚めてすぐのことであり、思考停止状態のために、ごく自然に開けてしまった。
「ふぁ~い、誰ですか」
扉を開けると男子寮にいてはならない女性徒シャルがいる。
「ほんとに間抜けな顔ね。顔洗ってきなさい」
いきなりの暴言。
「ふぅ。お休みなさい」
再び寝に戻ろうとしたのだが、扉を開けたのが運のつきであった。
閉めようとした扉はシグムントが手をかけて閉めれない状態に、
「少し顔を貸しなさい」
とシャルが言うや否や襟首を掴まれて引き摺られるようにして、雷真の部屋に連れていかれた。
雷真はまだ就寝中のようであるが、ズカズカと入りこむシャル。
寝込みドッキリじゃないんだから不法侵入じゃないかとも思ったが、口は災いのもとと散々味わったので、我慢すると。
急に夜々が現れる。
夜々は驚いた表情で固まり、持っていた水差しを落とす。
部屋に広がる陶器が割れる音。
そして、覚醒する住人(雷真)。
シャルと僕を見た雷真は目を擦り夢か現かを確かめた後に問いかける。
「………何やってんだ、お前たち?」
まあ、当然の質問である。
朝起きたら、いきなり自室に知り合いがいる。WHY?なぜ?
うん、当然の疑問だ。
シャルは赤くなりながら、何度か深呼吸を繰り返す。
そして、出た言葉が。
「あんたたち、デートしてあげてもよくってよ!」
今になってそうか!と合点がいく。
この時、ラノベ本編では雷真のみが知り合いだったが、今回は僕も知り合いである。
ということで、僕と雷真の二人を囮として使おうと考えているらしい。
そりゃあ一人より二人の方がいいのは分かるが。
そうか、そうかと考えていると、ガラスのコップが握り潰され砕ける音が。
夜々がそんな状態であるのに、気が動転しているためか、気にも止めずシャルが続ける。
「デートしてあげるから、今日の放課後開けておきなさいよ!分かった!」
どうやら強制らしい。
いつもなら、「はい」という了承の一言以外選択肢がない僕であるが。
今回は違う。
「デートは一対一でするものだよ。シャルと雷真で行ってきなよ。僕は今日どうしても抜けられない用事があるから」
そう、今日は絶対にしないといけないことがある。
普段の僕からは考えられない力強さを言葉から感じたのか、シャルは何も言わない。
雷真は僕の意向を感じ取ってくれたのか
「分かった。俺がシャルに付き合うからお前は自分のすべきことをしろ」
っと言ってくれた。
気配りもできるしいいやつだと思いながら礼を言って自室に戻る。
その数分後に恩人の断末魔がトータス寮に響き渡ったのは言うまでもない。
僕が自室に戻ると、十六夜が待っていた。
「先ほどゴミ出しから帰ってきたらいませんでしたが、何かあったのですか?」
「ん、ちょっと野暮用があってね。気にしなくてもいいよ」
普段ならこれで話は終わるはずなのに、突っ込まれた。
「野暮用とは?早朝に野暮用とはなんなんでしょう」
無表情で問い詰めてくるのが余計に恐ろしい。
ということで、臆病でヘタレな僕は先ほどの出来事を洗いざらい話すにいたった。
話した後も無表情ではあったが、なにか安心したよいな感じがする無表情であった。
時は流れて、日が暮れ、闇が少しずつ広がる言わば逢魔時(おうまがとき)と言われる時間帯になっていた。
逢魔時と言えば、魔が現れる時間帯とも言われている。
いい得て妙とでも言うのか、ちょうど学院にも本当の魔が現れていた。
闇が広がる庭園に追う影と追われる影が、追う影が追われる影を取り押さえ、いつも通りのことをしようとした時である。
黒い影が現れたと視認した時に追う者はとてつもない衝撃を受け遥か後方にぶっ飛んだ。
ただし、金属の鎧を身に纏っているためにそこまでのダメージは受けていない。
そして、追われる者を守るように二つの影が前に立ち塞がっていた。
中間試験が来週からなので、更新が滞るかもしれません。
息抜きにするかもしれませんが。
ということで滞ってもご容赦のほどを。