ダンジョンにエルフを求めるのは間違ってるだろうか   作:遊真

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【奮闘】

「ひどいよユウマ」

 

「すまんすまん、豊穣の女主人で奢ってやるから許してくれ」

 

オレらはぐったりとしたベルと一緒にあるお店に向かっていた。あのあとベルは十五匹のゴブリンを倒し、そのままぶっ倒れて、ギルドで看病して、起きたのでそのまま向かっている感じだ。

 

豊穣の女主人、オレと母さんの行きつけで、かつて死んだ父さんもよく行っていた。半月ぶりなので少し緊張しているが、ぐったりとしたベルを元気付けるならここがいいだろう。

 

「ここだ、ベル」

 

「うわぁ、酒場だあ」

 

ベルは酒場というものが見たことないのか、うわぁって言って感動していた。何年も通ってるからわかるけど、やっぱり変わってないなこの店も。早く建て替えればいいのに。

 

オレが先頭で入っていく、入っていくと緑のエプロンをつけせかせかと忙しそうに働く女の子たちがたくさんいた。もちろんオレはみんな顔見知りだ。

 

この店では、冒険者たちが談笑に花を咲かせ、高笑いしていい意味で騒がしいお店だ。ベルはそんな光景が珍しいのか、驚きながらお店を回る。オレは父さんに初めて連れてこられたオレをベルに重ねてしまう。

 

そんな微笑みながらお店に入ると、緑のエプロンをきた店員がご案内に来る。

 

「いらっしゃい......って!?ユウマじゃニャいかニャ!?」

 

「こんばんはアーニャさん。お久しぶりです」

 

「半月どこ言っていたニャ!あれほど金を落とせと言ったじゃニャいか!」

 

「結局金かよ!」

 

アーニャさんも相変わらずだな、と思い少し微笑んでしまう。アーニャさんはオレが始めて来た頃から、働いていた店員さんだ。

 

ベルは先にカウンターに座っていてもらっていて、ミア母さんと今朝にあったシルと一緒にいて、次々と出る料理に圧倒されていた。

最初もオレも驚きまくったからね。

 

「あれ?ユウマじゃん!久しぶり!元気にしてた?」

 

「ルノアさんもお久しぶりです」

 

ルノアさんがオレの方をポンポン叩く、オレは久しぶりに見るみんながいるからとても幸せな気分だった。

 

「ニャ!少年ニャ!元気にお尻は育ったかニャ?グヘヘへへへへ」

 

「クロエさん、相変わらず変わってないですね」

 

変態のように手を開いたり、閉じたりしてオレに視線を向けていた。

 

「ほらユウマ、そこで連れの方が待っているでしょう、さっさと座ってあげなさい」

 

「あ、リューさん」

 

リューさんがオレに声をかける。リューさんはこの中で一番後に入った人物で、オレも15歳くらいの時に通った時は店員らしからぬ表情で、接客業をしていたが今となっては少し板についてきたみたいだ。

 

「ベル、待たせたな」

 

「う、うん。............ここすごいね」

 

オレはベルのカウンターの横に座り、ベルが食べていた。料理をオレも食べ始める。ベルはシルさんやミア母さんにやっぱり圧倒されてるらしく、ベルは料理をゆっくり食べ始めていた。

 

「ユウマさん、こんにちは」

 

「こんばんは、だろシル、久しぶりだな」

 

「はい、私ユウマさんがいなくて寂しかったんですよ?」

 

「はいはい、金を落とさなくて悪ぅござんした」

 

「ひどい!そんなこと私言ってないのに!」

 

シルはわざとらしくヨヨヨと、泣くふりをする。彼女がこういう性格をしているのは知っているし、慣れてもある。まあ長年の付き合いで、長く通ってるうちにオレがそういう対応をシルにしてしまっている。

 

突如、どっと数十人規模の団体が酒場に入店してきた。あらかじめ予約していたのか、オレ達の対角線上の、ぽっかりと空いた席の一角に案内される。オレとベルは団体客は誰だろうと見てみると、そこにいたのは【ロキ・ファミリア】の方達だった。その中に確かにいた、オレが憧れを抱いて止まらないあの人が、紛れ込んでいた。

 

リヴェリア・リヨス・アールヴさん............!

 

オレはアールヴさんを不躾にみるのは良くないと思い、前を向くと、ベルはオレの隣で顔を赤くして、うぅっとカウンターに突っ伏していた。あぁ、ヴァレンさんって確か【ロキ・ファミリア】だっけ?アールヴさんのことしか見てこなかったから、あんまり興味なかったんだよな。

 

「よっしゃあ、ダンジョン遠征みんなご苦労さん!今日は宴や!思う存分飲めぇ!!」

 

そこから【ロキ・ファミリア】は騒ぎ出す。料理と酒を豪快に口の中へ運ぶ。

 

【ロキ・ファミリア】の方がここによく来るのは知っていた。オレはその人達よりもここの、豊穣の女主人に通っている。この方達は、ダンジョン遠征の終わった時や、普通に趣味で来ていたりすることは知っていた。

 

【ロキ・ファミリア】の人たちがダンジョン遠征が終わったことは知っていたから、もしかしたらこの日くらいに来るかもしれないなんてことは思っていない。アールヴさんに会いたかったとかそんなことも思っていない。

 

「そうだ、アイズ!お前のあの時の話聞かせてやれよ!」

 

「あの話?............」

 

【ロキ・ファミリア】である、獣人の青年がお酒を煽りながら、気持ちよさそうに喋っていた。この人物をオレは知っていた。Lv.5の第一級冒険者であるベート・ローガ。よく冒険者から恨まれていて、かげ口みたいな言葉がオレの耳に届いていた。

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ?そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」

 

オレはその話を聞いて、すぐにわかった。5階層でミノタウロスにやられそうになって、憧憬となる人物に助けられることを、本人から聞いていた。そう———ベルのことだ。

 

「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて、返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出していった?」

 

「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に行きやがってよ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!」

 

この続きをなんと言うのか理解していた。ここで止めるべきなんだろうか、そんなことすれば、Lv.5の人物にオレが襲いかかってきたとしても、一撃で店の外まで吹っ飛ばされで、気絶して終わりだろう。そのことを頭で理解していたのか、オレは動けなかった。

 

「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえ冒険者(ガキ)が!」

 

「腹抱えて笑ったぜ、兎みたいに壁際に追い込まれて、可哀想なくらい震え上がってよ!顔を引きつらせてやんの!」

 

オレは歯をギリギリと音が立つくらい食いしばっていた。

 

「それで、その冒険者どうしたん?助かったん?」

 

「アイズが間一髪でミノを細切れにしてやったんだよ、なっ?」

 

「............」

 

「そいつ、あのくっせー牛の血を全身に浴びて、真っ赤なトマトみたいになっちまったんだよ!くくくっ、ひーっ、腹いてぇ.......!」

 

その笑い声を聞くだけで、神経と脳がブチ切れそうだった。オレを救ってくれたベル(親友)を馬鹿にする、あのベート・ローガの声に神経を逆撫でされている気分だった。

 

「それでだぜ?そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ............ぶくくっ!うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんの!」

 

その言葉を終えた瞬間、周りにいた団員が笑い出す。今すぐにも、飛び出したかった、「おい、いい加減にしろよ!」って叫び出したかった。けど動けなかった、ベルのために何かしてあげたかった。

 

オレの不甲斐なさに、体が動かず、頭が空っぽになっていく、さっきまで聞いていたベート・ローガの声も、他の団員の声も素通りしていく。

 

声が素通りしていく間にも、話は続いていく、オレは素通りしていく声の中で、ベート・ローガのある単語がオレの中に素通りせずに、大きく残った。

 

 

 

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

 

 

 

オレがその言葉に目を大きく見開いた。そのあと、ベルが椅子を飛ばして、立ち上がる。ベルはそのまま外へと飛び出していく。オレはそれを止めることもできずに、見逃す。けれど一番見逃せないことがあった。オレは火照りきった身体が動き始める。

 

「お前!いい加減にしろよ!」

 

「ああ?誰だテメェ」

 

オレは気づくとそんな言葉を出していた。オレが今どんな顔をしているのか、全く見当がつかなかったが、店の中が静寂に積まれる。

 

「オレはユウマ・アルセルドだ。さっきお前が馬鹿にしてた、トマト野郎の友達だ」

 

「はっ!お前トマト野郎の友達か!くっ、ははははははっっ!これは傑作だぜ!お友達を馬鹿にされて、自分がした愚かな行為を気付かず感情に任せて、やっちまったな!お前!」

 

ここから、ベート・ローガの雰囲気が変わる、自分の髪を右手でかき上げ、殺気を持った瞳をオレに向ける。

 

「覚悟はできてんだろうな?」

 

「ッッ!?」

 

「俺が誰か知らねえとは、言わせえねえ、もし本当に知らなかったとしても、実力も見極められねえ己自身を恨むんだな」

 

「お前が何者なのかも知っている、お前がオレよりも強いことも身体で理解している」

 

「ハッ!そのことがわかっておきながら、テメェは俺の前に出てきたのか?」

 

「あぁ」

 

【ロキ・ファミリア】の団員は口を閉じ、こちらを見つめていた。オレは今後悔も、恐怖も感じてはいない。これでオレが無様にやられたとしても、いいと思っている。このまま何もできずに帰っていたらオレは自分自身をひどく恨んでいた。

 

「じゃあ表でろ、覚悟はできてんだろうな」

 

「ベート、貴様は自分より弱い人物に喧嘩売って恥ずかしくないのか?」

 

「黙れ、ババァ!アイツが最初に喧嘩売ってきたんだ、オレが表に誘って、何が悪い」

 

「ベート、君は少し落ち着くべきだ。多分君は酔いが覚めたらきっと後悔するよ?」

 

「俺は後悔なんてしねえよ、フィン」

 

団員が口々に、ベート・ローガを止める。それはオレが弱者である証拠であった。オレはそんな事実は本当にどうでもよかった。ただベルをバカにされたことで頭がいっぱいだった。

団員達をまた沈黙にしたのは、またしてもオレだった。

 

「ベート・ローガ、早く表に出ろよ」

 

******

 

「殺されてもテメェを恨めよ」

 

「オレは駆け出しの冒険者をそんな風にいうお前が許せない。誰もが通る道だ、それを酒の肴にする必要はなかっただろ」

 

「ハッ、そんなことでキレてんのかよ、雑魚を雑魚と言って何が悪い、誰もが通る道?笑わせんな。誰もが通る道なら酒の肴にしちゃいけねえのか?」

 

外はオレには暑く感じた、それとも自分が熱くなっているのか自分では分からなかったが、たった一言いえる。

 

「熱い」

 

「あァ?」

 

今ベート・ローガに何言っても、無駄な気がする。そして逆もしかり、オレに何を言われようがもう止まらない。ここで、蹂躙されることがわかってる、ここで怪物(モンスター)のように屠られることもわかっている。けれどもうオレは止まらない。

オレは地面のアスファルトを砕きながら、爆走した。

 

******

 

「うぉぉおおおおおおああ!!!」

 

「馬鹿が!」

 

ユウマはベートに飛びかかる、そのままベートに拳を顔面にもらい吹っ飛んでいく、けどユウマは諦めない、ベートの一撃をもらっただけで意識がそのまま吹っ飛びそうになる。

 

この拳が本気じゃないとわかっていてもLv.差というのは大きい。吹っ飛び、突っ込み、殴られ、突っ込み、鼻血を出しても、突っ込む。5度目吹っ飛んだ時、ユウマは鼻血をぬぐい、冷静になる。

 

(思い出せ、オレは今まで鍛錬してきたんだ。その技術を使わずにどうやって勝つんだオレは)

 

ユウマが6度目の勝負を挑む時、彼は歩いた。ベートの周りを今まで食らってきた間合いを計算し、自分が反応できる間合いのギリギリを図る。

 

「お前が今更何企んだところで結果は変わらねえ!」

 

ベートが間合いを詰めてくる。ユウマは即座に反応し、一歩引くのではなく、飛びかかる。

 

ベートは一瞬の不意を突かれ、拳を素早く出す。それをユウマは勘で右にかわす、ユウマの左ほほには少しかすっただけだが、赤い色の液体が滲み出る。

 

そのまま、顔面めがけて右拳を突き出すが、ベートは軽々しく左手で弾く、ここで団員達もベートもここで勝負は決したと思った。だが一人諦めてない人物がいた。

 

(ここで無様に負けてもいい!けど一発こいつを殴る!!)

 

「はぁぁああああああああ!!」

 

弾かれた右拳を捨て、弾かれた威力を生かして左足の回し蹴り、それも右手で塞がれる。

 

「まだ!!」

 

弾かれて、素早く着地してしゃがんで右拳で(アッパー)を狙う。それも後ろに一歩下がりかわされる。

 

「まだ!!!」

 

左足の後ろ回し蹴り、防がれる、そのまま右足でかかと落とし、防がれる、顔面めがけた拳、カウンターを食らう。ユウマは諦めない、決して諦めない、一発殴るその想いだけをのせて強者に立ち向かう。

 

「クソが、テメェそろそろ諦めやがれ!!もう遊びはしまいだああああっ!」

 

「ッッ!?」

 

ベートの蹴りを間一髪で躱す、だがベートの蹴りが絶大すぎたゆえか、この場所は整備されていたが、紛争地帯と化したのでそこらへんに瓦礫が落ちている。ベートの蹴りで、後ろにいたリヴェリアの方角へ瓦礫が飛んで行く。

 

「リヴェリア様!!」

 

団員の誰かが叫んだ声が聞こえた。その声を聞き、ユウマは唇を切りながらも、爆走する。地面の瓦礫を粉砕し、飛んで行く。リヴェリアはLv.6そんな瓦礫が飛んできたところで防げる。だがユウマにはその考えに至ることがなく、体が守りたいという気持ちに心を震わされた。

 

「馬鹿者!!」

 

「ッッハ.......!!」

 

ユウマは自らその瓦礫に自ら体当たりし、そのまま口からゴポォと血を吐きながら意識を落とす。リヴェリアがユウマを止めに声をかけるが、それも遅くユウマが倒れる様を見ていた。

 

「フィン、あとは私に任せてもらおう、先に帰っていてくれ」

 

「.................わかった。みんなホームに帰ろう」

 

さっきまで大所帯だった【ロキ・ファミリア】の面々が消え、ベートはガレスに髪の毛を掴まれ、「お前は後で説教じゃ」「離せ!クソジジィィィ!!」と叫んでいた。

 

ずっとあの戦いを見ていた、【豊穣の女主人】の連中も駆け寄ろうとするが、リヴェリアがユウマを背中に背負い、「私に任せくれないか?」と頼み、ミア母さんは「私の顧客に変なことするんじゃないよ」と告げ、みんなで中に入っていく。

 

リヴェリアはその様子を見送った後、後ろを振り向き、今も辛そうに意識を落としている彼の顔を見つめた後、「嬉しかったぞ」と呟いた。




どうせならこの続きを書きたかったのですが、文字数が多くなったのでそれは次回という形にすることにします。
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