――宇宙世紀0078 1月10日
人類は増えすぎた人口を月軌道周辺にあるラグランジュに浮かぶスペースコロニーに居住させていた。
宇宙移民が始まって半世紀あまりが過ぎたとき、地球からもっとも遠いコロニー、サイド3はジオン公国を名乗り地球連邦に自治権獲得のための独立戦争を挑む。
数で圧倒的な連邦軍の勝利と思われたが、ジオン公国軍の開発したMSにより、戦線は一変。逆に連邦軍が押される形になってしまう。
戦争は泥沼化し、この事態に戦争の早期決着を目指すジオン公国軍はある作戦を決行した。
それは、コロニーを地球連邦軍の本拠地、南米大陸にある『ジャブロー』に落とすという前代未聞の作戦だった。
連邦艦隊は総力を持ってこれを阻止しようと試みるも破壊には至らず、軌道を変えることはできたものの、最も大きいコロニー先端部はオーストラリア大陸に直撃した。
一瞬にしてオーストラリア大陸全土は死の荒野へと変わり、残る破片が飛来した衝撃は世界各地にも甚大な被害をもたらし、地球全土が大混乱する事態となった。
この出来事を境に両軍の戦いはさらに激化。
僅か開戦から三ヶ月で地球の総人口の半分を死に至らしめるという、今までに無いほどの大戦となっていた。
さまざまな混乱が地球と宇宙で渦巻く中、戦争は終わることなく続いていた……
――そして、開戦から約五ヶ月。
地球連邦軍はジオン公国軍に対抗するために、「G作戦」を発動。
MS技術開発局を新たに設立し、『テム・レイ』、『レギル・ユウ』を筆頭に、MSの開発を開始。
その後約一ヶ月で、かねてより開発が進められていた《フラッグ》と《ティエレン》の二機のMSを戦線へ投入させることに成功する。
これにより、「G作戦」は第二段階へと以降した。
戦艦に搭載されている主砲。この大出力のメガ粒子砲を第二段階では縮小し、MSに装備させるということと、ジオンの《ザク》を遥かに凌ぐ性能を持つMSの開発することが目標であった。
しかし、装甲の素材、開発環境などからの理由で、開発は地球連邦軍の軍事コロニー「サイド7」にて開発することが決定。
地球連邦軍のジオンに対しての大反抗作戦は着実に進んでいた……
◆
「どうやら、上手くいっているようだな」
薄暗い室内の中、作業服を着た中年の男が椅子に座り、モニターを眺めている男に告げた。
それを聞いて男は深く溜め息をつく。
「ああ。だが、この後が問題だ」
男は立ちあがりモニターに触れる。
すると空中に小さなサブモニターが現れ、パスワード入力画面に切り替わった。
「『今』の連邦軍にこの技術が解明することができるかが心配だ」
そういって男は手を止め、再び溜め息をつく。
「なに、大丈夫さ。俺達と同じぐらいの頭を持つ奴がいたら『フェイズシフト装甲』の原理も簡単に解明してくれるさ」
中年の男は笑いながら男の背中と軽く叩いく。それを聞いた男は鼻で笑う。
「確かにな。だが、他にも心配なことは山積みなんだよ、『イアン』」
すると男は手早くパスワードを入力する。複数の小さなサブモニターが展開し、それにはさまざまな場所が映し出された。
男はそれぞれの映像を見て、さらに険しい表情に変わっていく。その様子を隣で見ていたイアンは苦笑いをしながら言った。
「お前のそのネガティブな発想は等分続くだろうな、『カラジャ』」
「そうかもしれないな……」
ロック解除画面のOKボタンを押しながら再びカラジャは深く溜め息をついた。
――終わらせる。
条件も整っているし、準備も万端だ。
今まで蓄えてきた全てを使い、奴を撃墜する。
耐えてきた。ずっと。でも、今回で終わり。
今度こそ私は『世界』を、『地球』の未来を救ってみせる。
カラジャは改めて自分に言い聞かせ、決意を強固なものとしたところでイアンの方へと向きなおる。
「俺は、この世界の未来を切り開く。もう少し手伝ってくれるか?」
真剣な面持ちでイアンに向けてカラジャは手を差し伸べた。
それに対しへへっと笑い、イアンは差し伸べられたカラジャの手を思いきり強く握りしめる。
「今更そんなことか? 俺はとっくの昔にお前に着いていくって言ったぜ?」
痛いぐらいに手を握るイアン。頼もしく感じれられる彼に、カラジャは笑顔を向けた。
「ありがとう。これからも頼むよ」
「おうよ。任せとけ!!」
◆
――これは、世界の可能性に全てを賭け、戦い続けた男の物語。