機動戦士ガンダムLEGEND   作:黒光りするGさん

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第11話 作戦決行

 どうしてこんなことになってしまったんだろう。ただ静かに暮らしたかっただけなのに。そう思いを馳せた青年『キラ・ヤマト』は《ストライク》のコクピットでため息をついた。

 ジオンがヘリオポリスに襲撃してきたのが全ての始まり。トールやミリアリア達はシェルターに入ることができたが、満員でキラは入ることができず、別のシェルターの所へ向かう最中にジオンと連邦が繰り広げていた銃撃戦に出くわしてしまった。

 その際に女性士官の『マリュー・ラミアス』に声をかけられたので事情を説明したところ、キラの目指していたシェルターは既に扉だけになっていることを知らされる。これ以上このままでいるのは危険と判断したマリューは、キラと共に《ストライク》に搭乗することを決め動き出したのだ。

 援護の中マリューとキラがコクピットに入り、映し出されたモニターには先に起動した《イージス》から回線が繋がった。その回線越しにいたパイロットの顔を見て、キラは驚愕した。

 

 

「アス……ラン?」

 

『キラ……?』

 

 

 何故過去に分かれた親友がここにいるのか理解できずに、2人は混乱した。最後に会ったのは《フォン・ブラウン》だった。

 しばらく続いた無言をマリューの言葉がかき消し、我に返ったアスランは《ストライク》と共にその場から離脱した。

 その後、内部でのジオンとの戦闘の末、ヘリオポリスは崩壊した。その際、キラは先ほどの戦闘で傷を負ったマリューに代わりに《ストライク》を操縦し《ジン》3機を撃墜。パイロットとしての高い技量を発揮した。

 ジオンの目的は《ストライク》などの新型MSの奪取だったようだが、奇跡的に全ての機体を守り通すことに成功。キラはその技量を認められて、そのまま戦死した正規パイロットの代わり《ストライク》に搭乗することとなった。キラはこれをよく思ってはいなかったが、その後の戦闘中に回収したヘリオポリスの救命ポッドの中にミリアリア達が乗っており、彼らを守るため、そして親友であるアスランの頼みもあり、キラは戦うことを余儀なくされたのだった。

 追撃を振り切り、何とかルナツーへとたどり着いたのはいいものの、《WB》のMS部隊がジオンへと攻撃を開始しようとしているのと、もう片方は不明機と戦闘しているのを確認し、出撃。結局、あの不明機が何だったのかは分からないまま、ルナツー駐屯艦隊に拘引された。

 そして今、コロニー落下阻止のために動き出している。目まぐるしく変化する状況に嫌気を感じるものの、友のためにもこの艦を沈ませるわけには行かない。

 心身を蝕みつつある疲労に負けぬよう深呼吸して準備を整える最中で、回線が繋がる。

 

 

『ようキラ。大丈夫か?』

 

「あ、『ムウ』さん」

 

 

 《メビウス・ゼロ》のパイロット、『ムウ・ル・フラガ』だ。緊張しているのを感じ取ったのか、優しく話しかけてきた。

 

 

『大丈夫だって。ここまでやってこれたんだ。今回もうまくいくさ』

 

「……はい。ありがとうございます」

 

『そうやって甘やかすのは毎回どうかと俺は思いますが。大尉』

 

 

 回線に《デュエル》に搭乗している『イザーク・ジュール』が割りこんできた。あからさまに不機嫌な様子の彼に対し、ため息混じりにムウは告げる。

 

 

『いや~、俺はそんなつもりはないんだが』

 

『民間人とはいえ、もう何度かMSを操縦しているんです。彼も一人の軍人として扱うべきです!』

 

 

 このイザークとは《アークエンジェル》にいる間中ずっとこの調子でキラに食って掛かっていた。民間人がMSを動かすことに苛立ちを抑えられていないようだが、それ以外にも理由はもあった。

 

 

『まぁまぁ、落ち着けよイザーク。作戦前なのにまた一方的に攻め立てる気か?』

 

『ディアッカの言うとおりですよ。落ち着いてください、イザーク』

 

『お前達は黙っていろ! これはキラと俺の問題だ!』

 

 

 イザークをなだめようと回線を繋いできた『ディアッカ・エルスマン』と『ニコル・アマルフィ』だが、2人の助言を物ともせずイザークは一蹴し、そのまま続けようとする。しかし、次のディアッカの一言でその矛先が変わった。

 

 

『怒るなよ、シュミレーションでキラに8戦全敗したのまだ根に持ってるのか?』

 

『なっ、貴様ぁ! そのことはもう言わないと約束しただろうが!』

 

『おぉっと、今度はこっちかよ』

 

 

 そう言うとディアッカは回線越しにいるキラに向けてウインクをして回線を切った。イザークは任せておけという意味だろう。

 

 

『逃げるなぁ!』

 

 

 同時にイザークも回線を切った。恐らくディアッカに個別回線を繋ぐためだ。

 ディアッカのおかげで、キラは艦に所属する他のパイロットと打ち解けることができた。毎度騒ぎ出すイザークをなだめるのも彼の役割だ。

 

 

『あ、あはは……、毎度毎度すいませんねキラ。それじゃあ、僕も行ってきます』

 

 

 その役割を担うもう1人の人物がニコルである。ニコルの説得が入り、ようやくイザークは静かになる。ちなみにこのやり取りをこれまでにキラは3回ほど見ている。

 3人がいなくなり、一気に静かになった回線の中でムウは笑った。

 

 

『賑やかだな。とても戦場とは思えないほどに』

 

「そう……ですね」

 

 

 キラは笑おうとしたがうまく笑えなかった。思えば、最近心の底から笑ったことがないことにキラは気づいた。

 もしかしたら、特に何も無く平凡でも幸せだと感じることができた日々に戻ることはできないのではないかと考えるようにもなっていた。戦争とは無関係なものだと思っていたが、巻き込まれたとはいえここまで来てしまった自分が再びあの生活を送ることが許されるのだろうか。

 守るため、生きるためにこれまでに何機もMSを撃墜した。もちろん、それに乗っている人たちは死んだ。その人たちにも大切な人や家族がいたはず。思い悩んでいるキラを、ムウやアスランは支えてくれたり、助言をしてくれた。

 

 

『君はできるだけの力をもってるだろ? なら、できることをやれよ』

 

『キラが優しいのは俺が一番良く知ってる。俺がお前の支えになる。それが、巻き込んでしまったお前に対する償いだと思う』

 

 

 こういった言葉を胸に、ここまでやってきた。だが、完全に吹っ切れることができるほど、キラは自分が気前のいい人物ではないというのを知っている。平和ボケとでも言われてもおかしくはない。でも、それが自分であり、『キラ・ヤマト』だ。

 静まり返っていた回線の中、《イージス》からの回線が繋がった。

 

 

『キラ……』

 

 

 回線の先に映ったのは心配そうな親友の顔。それを見たムウはわざと慌てたそぶりをしながら言った。

 

 

『おっと。大佐から個別回線が。それじゃ俺はこれで』

 

 

 そういって、ムウは回線を切り、繋がっているのはアスランとキラだけになった。

 静かで重い空気が漂う中、先に口を開いたのはアスランだった。

 

 

『……大丈夫か?』

 

「……うん」

 

 

 たった一言だったが、こちらを気にかけてくれているのは伝わった。

 気がつけば作戦開始まで後10分。恐らくあと少しで作戦内容の最終確認が始まる。2人きりの会話も残りわずか。しかし、その間で何をしゃべればいいのだろうと思い悩んでいるのか、お互い無言のままただ時間が過ぎてゆく。

 もう時間はない。キラはただ今考えていた気持ちを素直に、短く伝えた。

 

 

「生きて帰ろう。アスラン」

 

『……ああ。そうだな』

 

 

 お互いに回線越しに頷く。たったの一言に、短い返答。それだけであっても、想いを伝え合うのには十分だと2人は感じていた。

 その2人のやり取りが終わると同時に、作戦に参加する機体全てに対しての回線が繋がった。

 

 

『作戦開始まで10分をきった。これより最終確認を行う』

 

 

 そこに映し出されたのは『ラウ・ル・フラガ』大佐。《アークエンジェル》に所属するMS部隊、《フラガ隊》の隊長を務めており、ムウとは兄弟であり、彼の兄。搭乗機は《シグー》。北米撤退戦の際に鹵獲したジオンのMSであり、その前には《フラッグ》に乗っていたそうだ。

 全員との回線が繋がっているか再度確認し、ラウは続けた。

 

 

『私達は、《WB》と共にコロニーの後部へと迂回し、後部に設置された核パルスエンジンの破壊をするのが目標である』

 

 

 モニターには図が表示され、《WB》と《アークエンジェル》が艦隊から離れ、大きくコロニー後部へと回りこんでいる様子が映し出されている。

 

 

『ここでエンジンを止めるか破壊すれば、軌道がずれ、落下を阻止できる。だが、失敗すればあの惨劇が繰り返されることとなる。それは何としてでも阻止せねばならない』

 

 

 失敗は許されない。それを聞いてキラは息を呑んだ。

 

 

『大佐。ルナツーの艦隊の戦力は大丈夫でしょうか?』

 

 

 先ほど苛立っていたのが嘘のように思えるほど冷静に、イザークはラウに問いかける。

 

 

『大丈夫だ。先ほど援軍の艦隊が合流した。その中には《オーバーフラッグス》隊もいるそうだ』

 

『ほお。あの《最強のフラッグファイター》が来たか。これは心強い』

 

 

 援軍でやってきたMS部隊の名を聞いて、ムウが驚きの声を上げる。キラはよく知らないが、どうやら連邦の中でもかなりの腕を持ったパイロットがその部隊にはいるようだ。

 その後、図に表示された4基の核パルスエンジンの内の2つが赤く点滅する。

 

 

『第1から4まで確認できた目標の内、私達が狙うのは第3と第4の2つだ。連中も馬鹿ではないはずだ、かなりの抵抗が予想される。各機注意を怠るなよ』

 

 

 図が消え、大まかな作戦内容の確認が終わったが、ラウは続けた。

 

 

『確認は終わりだが、気になる情報が2つ入った』

 

 

 そうすると、モニターに2つの画像が映し出された。かなり画質が悪く、ぎりぎり判断できる物だったが、片方には補給作業中の艦隊と数機のMS。もう片方にはコロニーの前方部分が映し出されていた。

 

 

『たまたま現場を通りかかった旅客機の乗客が撮ったものだ。この写真から、移動しているコロニーの前方部分にも核パルスエンジンが取り付けられているのを確認した』

 

『前方にも? また何だってそんなところに』

 

 

 誰もが思った疑問をムウが口にする。落下させるだけならこんな部分にエンジンを取り付ける必要はないはずだからだ。

 

 

『理由は不明だ。だが、どんな状況になったとしてもいいように注意をしたほうがいいだろう』

 

 

 そうして画像が1つ消え、MSが映っているものがモニターに残された。

 よく見れば、《ザク》や《ジン》とは別の種類のMSが2つ映っている。1つは黒と紫っぽい色で、もう1つは灰色と緑を基調としているのが判別できた。

 

 

『これは……、大気圏内にジオンが新しく配備した《ドム》と……もう1つは新型ですか?』

 

『ああ、その通りだ。補給艦からの搬出作業を捉えたものだ。特に新型は性能が未知数だ。各機警戒するように』

 

 

 イザークの問い掛けにラウが答え、全員に注意を促す。ここまでの戦いの中でキラは《ザク》や《ジン》と戦ったが、このMSとはまだ出会っていない。

 《ストライク》などの《Xナンバー》と呼ばれるMSの《PS(フェイズシフト)装甲》は実弾、実体剣にはほぼ無敵といえるほどの性能を発揮するが、ビームには耐えられない。あのジオンの新型がビーム兵器を搭載しているとなれば、これまでの戦闘以上に苦戦することが予想される。緊張で鼓動が早くなるのがキラは自分でも分かった。

 その後、ほどなくして作戦開始時刻になり、手はずどおりにムウとラウが先に出撃した。

 

 

『ラウ・ル・フラガ。《シグー》。出る』

 

『ムウ・ラ・フラガ、《メビウス・ゼロ》。出るぞ!』

 

 

 次の出撃は《ストライク》と《イージス》。カタパルトへと移動する中、艦橋からの回線が繋がった。

 そこには、人員不足のために戦闘管制を担当していた親友の『ミリアリア』が映し出された。

 

 

『キラ……頑張ってね!』

 

「……うん!」

 

 

 やがてカタパルトに固定され、《ストライク》に装備される《ストライカー》の換装作業に入る。

 

 

『《ストライク》、発進シークエンスを開始します。装備はエールを選択』

 

 

 《エールストライカー》の装備が完了し、出撃待機状態に入る。

 既にカタパルトからは、目標であるコロニーの後方部分が見えていた。キラは操縦桿を握り締める。そして、ミリアリアの声が響き渡った。

 

 

『システムオールグリーン。出撃、どうぞ!』

 

「キラ・ヤマト。X-105、《ストライク》、行きます!』

 

 

 コロニー落下阻止のため、《ストライク》は宇宙へ向けて飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

 

 

「議長。連邦が動き出すのを確認しました」

 

「うむ」

 

 

 報告を聞き、中年の男が立ち上がった。それを見てその場にいた者達が立ち上がり、注目する。

 コロニーを防衛する艦隊とも回線が繋がると、男は息を整え、話し始めた。

 

 

「諸君。今作戦は我々ジオンの勝利に向けての大きな一歩となる作戦である」

 

 

 そして、大画面のモニターに表示されているコロニーを指差す。

 

 

「あれを奴等に撃てば、ルナツーの艦隊は大打撃を受けることとなる。成功すれば宇宙はほぼ我らの手中に収まる。例え失敗したとしても、奴等に我々の力を見せ付けるには十分だろう」

 

 

 周囲を見渡し、男はさらに続ける。

 

 

「見せ付けるのだ、我々の力を。世界に刻み付けるのだ、我々スペースノイドこそが正義なのであると」

 

 

 男の言葉に周囲の機運が高まっていく。そして、男は告げた。

 

 

「『パトリック・ザラ』の名の下に、作戦決行を宣言する! ジークジオン!」

 

 

 その言葉を聞いて、周囲と回線越しから歓声が上がるのだった。

 

 

「「「「『『『『ジークジオン!!』』』』」」」」




今作ではクルーゼさんやクルーゼ隊の面々が連邦側にいます。
イザークやディアッカなどの親も連邦の議会に所属しています。
クルーゼがいることからこれを読んでくれている皆様はお察しかと思いますが、《彼ら》も連邦側にいます。後々登場する予定です。
設定改変により、人類に対して憎悪に満ちていないクルーゼさんとその他ですが、よろしくお願いします。
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