機動戦士ガンダムLEGEND   作:黒光りするGさん

13 / 29
第12話 恐怖の光

「この野郎!!」

 

 

 振り下ろされた『新型』のビームをシールドで受け止め、バルカンを放ちつつアキラは後退する。

 予想を遥かに超える性能を持つジオンの新型。この空域で数機確認されているところから見て、どうやら新たな量産型だと考えられる。地上に新たに配備された《ドム》も確認されていた。

 《ドム》が配備されてからまだ間もないのにこの時点での新たな量産型。それにかなりの高性能。ジオンのMS技術の高さは知ってはいたが、まさかこれほどとは。そう舌を巻きながら、アキラは迫る敵機の応戦を続けていた。

 既にルナツーで配備された《ジム》と《ダガー》は全滅。《WB》の戦力で残っているのはリィナ少尉の《イナクト》と《ガンキャノン》、《ガンタンク》。そしてアムロの《ガンダム》。

 《WB》の任された第1、第2破壊目標に近づくことすらできない。こちらも動きたいが守りが堅く、尚且つ《WB》の護衛も行わなければいけないため、攻め込めないのだ。

 《アークエンジェル》の方は先ほど突貫したムウ大尉が第3目標を破壊に成功。その爆発の光も確認した。この前の戦闘で凄まじい動きを披露したアムロに道を開いてもらおうとも思ったのだが、既に危険視されたのか、複数のMSに取り囲まれている。そちらの援護に行きたいが、こちらも眼前の敵に集中しなければならないために向かえずにいた。

 

 

『4つ!』

 

 

 《ガンダム》のビームライフルから放たれたビームが新型の腹部に直撃し、爆散した。その背後から《ドム》が接近するも、アムロは焦ることなく次なる一手を繰り出す。

 

 

『5つ!』

 

 

 すぐさま反転して行ったビームライフルの一射により、《ドム》も爆散した。まったく無駄の無い動き。そして驚嘆に値するほどの正確な攻撃。自分もあれぐらい動けたらいいのにと心の中でアキラは呟きながら、ジオンの新型の攻撃をかわしていた。

 コロニー進行方向にて待機しているワッケイン司令率いる本隊の支援砲撃可能域まであともう少し。この奇襲による挟み撃ちによって、このコロニーの護衛をしているジオンを殲滅する作戦だ。この大きさのコロニーならば、現在の本隊の火力をもってすればぎりぎり破壊することができる。

 それを予想して待ち受けるであろう本隊に対してジオンは攻撃を仕掛けると考えていたが、ジオンの大半、というかほぼ全てがこのコロニー後部に集結していたようで苦戦を強いられている。

 あの本隊を無視しても問題は無いのだろうか。事前に入手した情報にあった前方部分にも設置も気になる。とにかく早く目標の破壊し、後退して様子を見たい。

 そうアキラが考えていた矢先、コロニー後部で爆発の光を確認した。それと同時に艦橋からの回線が繋がる。

 

 

『《ストライク》が第4目標を破壊! 残りは私達が任された第1、2目標です!』

 

 

 緊迫したメイリンの声を聞いて、アキラは迷うことなく進言を行った。

 

 

「メイリン! クルーゼ隊に支援要請できるか!? こっちの戦力じゃ取り付けそうにない!」

 

『了解しました! 今要請を――』

 

『待ってください!』

 

 

 メイリンを遮って聞こえてきたのは女性の声。サイド7の避難民の中から空いていた戦闘管制の席の1つを任されていた『セイラ・マス』だ。

 その様子から、何かが起こったようだ。そのまま彼女は続けた。

 

 

『コロニー前方部分に設置されていたエンジンの起動を確認! 逆噴射しています!』

 

「逆噴射!? ということは……、止まるのか?」

 

『そのようです。現在急速に減速中。あと少しで完全に停止します!』

 

 

 急減速の最中で、気づけばジオンは後退を始めていた。先ほどまでの勢いがまるで嘘かとも思えるほど速い撤退だ。

 一体何をしようというのか。状況の変化に戸惑っていたアキラ達にブライトが指示を出した。

 

 

『各機、後退しろ。相手の手の内が分からない今、こちらから仕掛けるのは危険だ』

 

「『了解』」

 

 

 急な事態とはいえ艦長を務めているブライトだが、焦らずに的確な指示を出している。彼には艦長としての才能があると考えてもいいだろう。

 コロニーを気にしながら後退を開始したアキラ達。その時。

 

 

『……まさか! そんな! 早すぎる!』

 

 

 回線の向こうから聞こえてきたのは、驚きを隠せないアムロの声。それを不思議に思いアキラが聞き返そうとしたが、それはメイリンの声によって遮られた。

 

 

『停止したコロニー内部に高エネルギー反応!』

 

「内部!?」

 

 

 知らされた情報にアキラが驚きの声を上げる。それにアムロが続けた。

 

 

『だめだ! 本隊がやられる! 早く後退要請を!』

 

『は、はい!』

 

 

 明らかにアムロが取り乱しているのをアキラは回線越しからでも感じ取ることができた。

 何をそこまで恐れているのかと問いかけようとした刹那、コロニー前方部で爆発を確認した。すぐさま詳細がメイリンから告げられる。

 

 

『オーバーフッラグス隊の『グラハム・エーカー』大尉が前方部分のエンジンの1つを破壊! それによってコロニーの前方部分が本隊から少しずれる模様!』

 

 

 事態を察知して動いたのだろう。さすがは《最強のフラッグファイター》と呼ばれるだけはある。

 これで状況は好転するかとアキラが考えていたその時。

 

 

『間に合わない!』

 

 

 アムロがそう叫んだ次の瞬間、コロニーの先端から大出力のビームが本隊に向けて放たれた。その光によってまるで昼間のように辺りが明るく照らされる。

 その光景にこの場にいる誰もが圧倒されていた。コロニーは落下させるための物ではなかった。あれ自体が兵器だったのだ。

 やがて光は消え、あたりは再び静かで暗い宇宙に戻った。呆然としていたアキラだったが、メイリンの報告で我に返った。

 

 

『本隊の4割が消滅! ワッケイン司令のマゼランは健在です! 全滅は免れましたがかなりの損害が出ています!』

 

 

 何とか全滅は避けられたか。しかし4割を失った。これは今回の戦闘よりも、それ以上に今後の宇宙での戦いに影響が出てくることになる。

 ただでさえこれまでの戦いで宇宙での戦力が足りなくなってきている今、この損害はかなりの痛手。ジオンは確実にこちらの戦力を削るためにこれを用意したのだろう。

 あれほどの出力を連発することはできないはず。残った本隊と合流すればおそらくこれを制圧できるほどの戦力はぎりぎりある。だが、あちらもそれは予想しているだろう。あんな物をここまで運んできた奴等であるからこそ、次はどんな動きをするのか注意する必要がある。

 そうアキラが思慮を巡らせる中、残っていた後部エンジンが再び起動し、コロニーが動き出した。残っている本隊へ向かって。

 

 

「まさか落とすつもりなのか!? メイリン!」

 

『少し待ってください! 計算が終わるまで……、結果出ました! この軌道なら地球に落下することはありません!』

 

 

 地球には落ちない。だが向かっている先には本隊。まさか自爆特攻でもするつもりなのだろうか。目まぐるしく行動するジオンに苛立つアキラ。

 計算結果の報告の後、ブライトが指示を出す。

 

 

『全機帰艦! 急いでくれ!』

 

「『了解!』」

 

 

 出された指示に従い、《WB》へと向かった。その途中でジオンから攻撃を受けることは無く、直ぐに着艦することができた。

 間髪いれずに推進剤とエネルギーの補給が行われ、ブライトがこの後の動きに関して説明を始めた。

 

 

『補給後直ぐに出撃してもらう。何としてでもこれ以上の損害を出すのは阻止しなければならない』

 

『阻止するって言ったって、あれを破壊しようってのかい? この戦力じゃ厳しいんじゃないの?』

 

 

 ブライトの指示に対して《ガンキャノン》に搭乗していたカイが不満気な声を上げたが、それをセイラが叱責する。

 

 

『今はそんな屁理屈を言っている場合ではないの! 集中なさい!』

 

『おー怖。分かりましたよセイラさーん』

 

 

 その態度に回線を聞いていたアキラ達も怒りを覚える。民間人とはいえ戦闘に参加しているのだから、覚悟を持って欲しい。

 後少しで、補給作業が終了する。出撃後の作戦についてブライトが指示を出そうとしたが、それをメイリンが遮った。

 

 

『コロニーに急速に接近する機体を確認! 所属は……PMC?』

 

 

 

   

 

 

    ◆

 

 

 

 

 

 

「よーし、間に合ったか。いや、ちょっと遅かったか?」

 

 

 そういうと赤髪の男、サーシェスはコクピットの中で大きなあくびをした。戦争は好きだが、ここのところ休みが一切ないためかさすがに疲れが出始めている。

 少し前まではジオン側にいたが、今度は連邦側につく。優秀な傭兵ともなれば両軍から引っ張りだこになる。人気者はつらいね、とでもいえばいいだろうか。

 楽しい限りの現状に笑いを堪えることなく口元を緩ませ、今回の戦闘で共に行動するメンバーに回線を繋ぎ、作戦の確認を開始した。

 

 

「確認するぞ。《ウイング》、《デスサイズ》はコロニーの破壊を狙って暴れる」

 

『了解』

 

『了ー解』

 

「返事はちゃんとしろよ『デュオ』。『ヒイロ』を見習え、ヒイロを」

 

『いいじゃねぇかよ。どうせこれが終わったらまた解散するんだから。指揮官気取りはよせよ、旦那』

 

 

 サーシェスの指摘に『デュオ・マックスウェル』はため息混じりに答えた。そのやり取りを気にすることなく、『ヒイロ・ユイ』は既にモニターに映し出されていたコロニーを見つめている。

 

 

「それ以外は俺と一緒に周辺の邪魔な奴等の掃討だ。いいな?」

 

『了解』

 

『了解だ』

 

『了解しました』

 

 

 冷静に返答する『張五飛』と『トロワ・バートン』。丁寧に返答したのは『カトル・ラバーバ・ウィナー』。

 こうしてあらためて見てみると、本当に個性的な奴等ばかりだとサーシェスは思った。それがこれらの機体がご指名付きで渡された理由の1つに含まれているのだろうか。至極どうでもいいとは思いつつも現状を再確認しつつ、サーシェスは最後に皆に向けて告げた。

 

 

「分かってはいると思うが、お前達の機体はスペアが少ない。壊すんじゃないぞ」

 

『そりゃ旦那も同じだろ? でもよぉ、余程のことがない限り、こいつらは壊れないと思うが』

 

「まぁ、確かにな。感謝しとかないとな、えーっと、ソレスタルなんたらに」

 

『《ソレスタルビーイング》(以下《CB》)な。いい加減覚えろよ旦那』

 

「そうだ、それそれ。《CB》に感謝しないとな」

 

 

 破格の性能を持つこのMS。そのどれもが最近連邦で開発されたMSの名を持っている。そう、《ガンダム》。ついこの前にサイド7で戦ったあれだ。サイド7での潜伏中に本部には俺の分の《ガンダム》も届けられていた。その少し前にこの5人には届けられたそうだ。

 《CB》の真意は分からないが、これがあればしばらくの間はMSに困ることはない。素直な感謝の意を胸中では示すサーシェスだが、操縦桿を握る手は驚異的な性能を駆使して暴れたくてうずうずしていた。

 そしてサーシェスは目前に迫ったコロニーを見て、気分を高揚させながら最後の指示を出した。

 

 

「各機作戦通りに行動しろよ! 以上、戦闘開始!」

 

 

 サーシェスの乗る《アルケーガンダム》とそれに続く5機の《ガンダム》がコロニーとその周辺を警護するジオンに対して攻撃を開始した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。