機動戦士ガンダムLEGEND   作:黒光りするGさん

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第15話 地球へ向けて

『《WB》、《アークエンジェル》、スタンバイOK。出力上昇中』

響き渡るアナウンス。それに対して《WB》艦長が答える。

『これより、連邦軍司令部の指示に従いジャブローに向かいます』

まだ若い士官の声。パオロ艦長死後、あの艦はブライト中尉に任された。

「了解。諸君の健闘とジャブローへの無事帰艦をせつに祈る」

管制室から回線越しにワッケインは伝えた。その後、メインゲートから《WB》が発進し、《アークエンジェル》もそれに続いてルナツーから出ていいく。サブゲートからは護衛としてサラミス1隻と地球へ行くことを望んだ避難民を乗せたシャトルが発進する。

その様子を管制室のモニターでワッケインやその他の面々が見ていると、その中の1人が呟いた。

「たどり着けますかねぇ……」

ルナツー周辺のジオンはPMCのMS部隊とルナツー駐屯MS部隊でひきつけているとはいえ、この宙域を抜け出した後どうなるかは分からない。全ては彼らに任せるしかないのだ。

「知るものか……」

一同がワッケインに注目した。この場において、まさかそんな一言がこの基地の司令官から告げられるとは思っていなかったからだ。

呆気にとられている周囲を気にすることなく、ワッケインは続ける。

「彼らの幸運を祈るだけだ。あの船達には連邦の命運がかかっているかもしれないのに。我々にできることといえば、サラミス1隻つけてやるだけ……」

モニターから視線を逸らさず、最後に一言、告げた。

「寒い時代だと思わんか……」

その言葉に、周囲は沈黙した。誰もが静かに、モニター越しに映る旅立った者達の姿を見つめた。

 

 

 

   ※

 

 

 

「各MSのエネルギー充填急げ!」

「装備の整備も入念に!」

「おいおい、もうじき大気圏突入だろ? 出撃するのか?」

「まだ整備完了してないけど、《G-3》は出すんですか?」

「知るか! 大尉に確認とってこい!」

気を抜いてる者を叱る上官の怒号、重機の稼動する音。大気圏突入間際なのにも関わらず出撃の準備を進める格納庫は騒然としていた。サイド7が襲撃された件もあることから油断はできないと判断したブライトが、いつでも迎撃に移ることができるようにと指示を出したのだ。

その格納庫に、アストナージと共に指示を出したり、作業を手伝うアキラがいた。左腕を失い、体の各部の傷も完全に癒えてはいないためMSに乗ることは出来なくなったが、指示や簡単な作業を手伝うことぐらいは出来るとして、しばらくは安静した方がいいといった意見を無視して格納庫にいるのだ。

各パイロットはMSに搭乗して待機している。準備は出来た。後は敵が来ないことを祈るだけ。作業の終わった格納庫の内の各部を確認して回っていると、《G-3》が目に入った。

あの爆発の衝撃で吹き飛んだ左腕と左脚、頭部。全体に突き刺さった破片と装甲の表面も所々が吹き飛ばされ、内部のフレームがむき出しになっている。あらためてこの惨状を見て、よく生きていられたとアキラは思った。

回収後修理することも考えられたそうだが、損傷が激しすぎるために修復するとなると残っている《ガンダム》系MS余剰パーツを大幅に消費することにもなり、パイロットも負傷していることから修復は見送られ、今はこの格納庫で放置されている。

「ガンダム……か」

連邦の持てるMS技術を結集し、コスト度外視で作られたG《ガンダム》シリーズ。そう。ガンダム系のMSは連邦しか所有していないはずなのだ。しかし、この前の戦闘で介入してきたPMCもこのGシリーズと似たMSを使用していた。それも、《ガンダム》や《G-3》以上の性能を持ったMSを。

情報の漏洩はないはず。たまたま似ていたと考えた方が妥当なのだろうか。何にせよ、Gシリーズの開発に関わっている身としてはあのMSの存在が不思議でしょうがない。

それと、アキラは何故かこのGシリーズから懐かしさを感じるようになっていた。何故だかは分からない。ずっと前からこの機体を知っているような、そんな気がする。自分とこのGシリーズは運命の赤い糸で繋がれているとでもいうのだろうか。そんなことを考える自分にアキラは苦笑した。

アストナージの所へ戻ろうとしたその時、格納庫にブライトの声が響き渡った。

『ジオンの接近を確認。アキラ大尉は至急艦橋へ。各員、所定の位置につけ!』

来てしまった。周囲の作業員が慌しく動き回る。アストナージにこの場を任せ、アキラは指示通り艦橋に急いだ。

ちょうどアキラが艦橋へとたどり着いたその時、ブライトが艦内放送で告げた。

「救援部隊がこちらに向かっている。彼らがこちらに合流した後、我々は《アークエンジェル》と共に大気圏突入に専念する。それまで耐え抜け」

「救援? このタイミングで」

驚きで思わず声を出してしまった。周囲のジオンを陽動するためにルナツーにいる戦力はほとんどがそれに導入されたはずだ。休むまもなくこちらにやってきたと考えられるが、よくもまあ追いついたものだ。

アキラの声に気づいたメイリンがこちらをちらりと見た。ちなみにメイリンはアキラが格納庫で手伝いをすることに猛反対した者の1人だ。その他にはリィナと医療班の人たち全員。反対を押し切って手伝いをしていることに怒っているのと同時に心配してくれているようだ。

「大尉。お疲れ様です」

「救援にも驚いたけど、それまでどうやって耐えるんだ?」

艦長席に座るブライトの横にまで来たアキラがそう問いかけた時、回線越しからアムロの声が聞こえてきた。

『アムロ、《ガンダム》、行きます!』

その声の後、カタパルトから射出された《ガンダム》の姿が見えた。勢いを落とさず、ジオンの方へ向けて進んでいく。

あの爆発の直前、アムロが話しかけてきたことをアキラは気になっていたが、目覚めた後色々とあったために結局話しかけることができなかった。爆発前のあの言葉から、アムロも嫌な何かを感じたのは間違いない。戦闘が始まりまたその機会を失ったことに少し落胆するアキラ。だが、これが終わった後にでも聞くことは出来る。

ふと、アキラは気づいた。何故かこの戦闘の後にアムロが無事に帰ってくることを自分は疑問に思っていないのだ。まるでそれが当然、必然であるかのように感じる自分がいる。不思議としかいいようがない。

そんなことを考えながらも、アキラはブライトに問いかけた。

「ここで《ガンダム》を出すか……まあ、しょうがないとはいえ心配だな」

「救援到着までの間だけです。リィナ少尉も出します」

「あいつも出るのか。それなら……」

戦闘管制を担当して指示を出していたセイラにアキラは近づいて、回線を使わせてもらえるように話しかけた。少し驚き戸惑ったセイラだったが、アキラにインカムを貸した。

「出撃準備よろしいですか少尉殿」

『……大尉ですか』

あきれたといった感じの声が聞こえてきた。モニターの向こうではため息をつくリィナが映し出されている。

「あの時の約束どおり、俺の分も頑張ってくれよ。俺もできる限りサポートはするから」

『……じゃあ1つお願いを聞いてもらえますか?』

「おう。言ってみろ」

『安静にしてください』

「それは無理だな」

『……ですよね』

再びため息をつくリィナ。だがその顔からは先ほどの様子とは違い、安心したといった感じの笑顔があった。

『じゃあそこでおとなしくしていてください。……守りますから。絶対に』

「ああ。頼んだぞ」

 

 

 

   ※

 

 

 

回線の向こうから姿を消したアキラ。それを確認して、リィナは三度目のため息をついた。

コクピットからアキラを助け出したときのことを思い出して、リィナは身震いした。あの時は本当にもう駄目だとも思った。今では動けるようになったが、本当なら安静にした方がいいはずなのに。

自分にできることを頑張ればいい。その言葉の通りに動くのならば、今自分は戦闘に集中した方がいいのだろう。彼も、アキラ大尉も立場が反転していたらそうするはずだ。

あの時庇ってくれなければ自分は恐らく死んでいた。救われ、約束を守るためにも《WB》は絶対に守ってみせる。それが今自分にできること。《イナクト》がカタパルトに固定されたのを確認し、リィナは深呼吸をする。

『出撃準備完了。出撃、どうぞ!』

回線から聞こえてきたメイリンの声。リィナはレバーを強く握り締める。

「リィナ・ブリジス、《イナクト》、出ます!」

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