機動戦士ガンダムLEGEND   作:黒光りするGさん

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第17話 目覚める刃

増援到着まであと少し。大気圏突入も近いがジオンは攻撃を続けてくる。切迫する状況にキラは焦りを隠せなかった。

ついさっき《サラミス》の大気圏突入用のカプセルが被弾し、《WB》がそれを回収したのを確認した。避難民を乗せたシャトルに対しても攻撃を行おうとしたのを確認したため、今キラとアスランはシャトルの防衛を行っていた。

あのシャトルには戦争とは無関係のフレイや民間人が乗っている。絶対に撃墜されることは許されない。

『《WB》がジオンの攻撃によって大幅に予定進路をずらしています! このままでは……!』

『誰か《WB》の援護に回れないの!?』

回線越しからミリアリアの状況報告とマリューの焦る声が聞こえてきた。それにムウが返す。

『無理だ! こちらの方が敵の数が多い。残念だが……』

『そんな。見捨てなければいけないというの……』

あちらも劣勢だが、こっちもそれに変わりはない。これほどまでの戦力をこの戦闘で送り込んできたところからみて、ジオンがこちらの存在をどれだけ危険視しているかが分かる。

それに、キラたちが苦戦している理由はもう1つある。

「くっ……!」

《ゲルググ》の放ったビームを《ストライク》のシールドで受け止める。そう。ジオンのMSは射撃用のビーム兵器を所有しているのだ。実弾に対しては絶大な効果を発揮する『フェイズシフト装甲』(以下『PS装甲』)だが、ビームに対しては無力であり、直撃を受ければひとたまりもない。

コロニー兵器での戦闘で《X-ナンバー》の情報を回収したジオンは、《アークエンジェル》を襲撃するMSには優先的に射撃用ビーム兵器を装備させているらしい。《WB》の方では今のところ装備しているのは1機しか確認されていない。こちらを確実に仕留めるための措置だと思われる。

機体自体の性能も互角かそれ以上。稼動限界時間では間違いなく勝つことは出来ないだろう。

『うおっ!?』

耐久力の限界を超え《イージス》のシールドが大破し、アスランはその衝撃でバランスを崩してしまった。それを見逃す訳も無く、《ゲルググ》がライフルの銃口を《イージス》へと向ける。

「アスラン!」

すぐさま2機の間に割って入り、代わりにビームをシールドで受け止める。その後次の行動に移ろうとした《ゲルググ》の僅かな隙をつき、キラはビームを直撃させた。

目の前で爆散する《ゲルググ》。またこれで人を1人殺した。仕方がない。仕方がないんだ。と、自分の心にキラは言い聞かせた。

「……! あっ!」

《ゲルググ》1機に突破されてしまった。すぐさま追撃に向かうキラ。だが射線にシャトルが重なってしまい、ライフルのトリガーを引けなかった。外せばシャトルに当たってしまうかもしれない。

どうすればいい。撃たなければいけない。でももしかしたら……。レバーを握る腕が震えているのが自分でも分かる。時間はもうない。

ふと、頭の中に浮かんできたのは、フレイとシャトルに乗っている避難民の女の子。守らなきゃ。いや、守れなかった。何故だろう。この状況に似たことを自分は過去に体験したことがある。そして次の瞬間、時が止まったような感覚とともに頭の中に膨大な量の『記憶』が流れ込んできた。一瞬戸惑ったキラだったが、不思議と心の中から不安と焦りが消えていく。

自分の中で何かが弾け飛ぶのを感じた。もう迷いは無い。助けてみせる。フレイも、あの女の子も。

《ストライク》のライフルから放たれたビームが《ゲルググ》の背後から右肩を貫き、そのまま右腕を吹き飛ばした。貫通したビームはシャトルの真横を通り過ぎる。

体勢を立て直し、応戦するためにも急旋回を行った《ゲルググ》の目の前には、既に距離をつめた《ストライク》の姿があった。咄嗟にシールドで攻撃を防ごうとしたが、それよりも速く振り下ろされたビームサーベルが左腕を切り落とした。

為すすべがなくなった《ゲルググ》は後退していった。キラはそれを追撃することはなく、新たに接近してきた敵と交戦しているアスランの下へと向かった。

《イージス》と交戦しているのは2機の《ドム》。こちらの接近に気づいて振り向こうとした2機の腕に向けてビームを打ち込み、内1機は両腕に直撃させることに成功したが、もう1機は一発はずれて右腕が残った。

『キラ!?』

かなり正確な射撃にアスランは驚きの声をあげた。確かにキラの操縦技術は確かなものであったが、これほどまでに高かったとは考えていなかったからだ。その後、《イージス》の追撃をかわした2機の《ドム》は後退を始めた。

エネルギー残量のことを考えても、これ以上戦闘を続けるのは厳しい。まだジオンが攻めてくるのならばかなりの苦戦を強いられることになるだろう。

敵の接近を警戒していた2人。そこに《アークエンジェル》から回線が繋がった。

『援軍の到着と敵本隊へ攻撃を開始したのを確認。こちらに展開していた敵MSは撤退していきました。大気圏突入準備のため、各機は帰艦してください!』

ミリアリアの指示に従い、キラとアスランは《アークエンジェル》へと向かった。

守ることができた。今度は。落ち着き始めた状況にキラは安堵すると同時に、『今』の自分のこれまでの人生と『前』の自分を照らし合わせていた。

もしかしたらあったかもしれない自分の人生。この戦いに巻き込まれなければ、戦争に直接関わることなく『平和』に暮らすことができたのだろうか。そうキラが考えていたとき、知らず知らずのうちにある女性の名を呟いた。

「……『ラクス』」

『前』ならばここまでの間で出会っていたはずだった彼女がいない。これまでの記憶が正しければ、この世界に『コーディネーター』と『ナチュラル』といった人種の差別がないし、そういったものが存在しないことも同時に思い出した。だが、今自分はここにいるし、かなり状況は違うがアスランたちもいる。

『キラ? どうしたんだ?』

回線越しに独り言が聞こえたのだろう。アスランが心配して声をかけてきた。

「いや、何でもないよ」

『ラクスって言ったよな。シャトルに乗ってたあの女の子ことか? 良かったな。守ることができて』

「……!! う、うん」

『今』のアスランはラクスを知らない。もしかしたら、『今』この世界にはラクスはいないのであろうか。

大切な人のことを考えていると、《アークエンジェル》が見えてきた。全く変わらないその姿を見て、キラは心の中で呟いた。

(想いだけでも……、力だけでも……)

彼女はもしかしたらいないかもしれない。一体何故こんなことになったのかも分からない。それでも、今は自分にできることを精一杯やりとおすことを心の中でキラは決意した。

 

 

 

   ※

 

 

「まずは挨拶代わりといったところか。各機、機体の状況は?」

『良好です隊長』

『いつでもいけますよ』

何とか敵の目をこちらに引き付けることには成功した。後は敵の目をこちらに釘付けにし続け、大気圏突入の援護を行う。

だが、予想していたよりも敵の戦力が多いことに『グラハム・エーカー』は驚いていた。しかも、その中にはかの有名なエースパイロットがいるとの情報も入ってきている。

『隊長。どうやら報告どおりのようで、《赤い彗星》がいるようです』

「そのようだな。だが、それを知ったとして私が引かないのは分かっているだろう」

『ハワード・メイスン』の報告に対するグラハムの返した言葉には、彼がこの状況に恐れることなく逆に高揚しているのが感じ取れる。それを聞いて『ダリル・ダッジ』はいった。

『お供しますよ、隊長』

「ああ。遅れるなよ」

先行したグラハムを含む3機による攻撃で《ドム》1機と《ムサイ》1隻の艦橋を破壊することに成功した。ほぼ奇襲に近かったためにこちらは一切の損害を出さずに済んだ。だが、次は真正面から戦うこととなる。

最近投入され始めたジオンの新型、《ドム》や《ゲルググ》は確かに性能が高い。しかし、まだパイロットはまだそれに慣れておらず、使いこなせていないことにグラハムは感づいていた。コロニー兵器での戦いにおいて新型の動きがぎこちなかったからだ。

《オーバーフラッグス》のパイロットの腕ならば十二分に《フラッグ・カスタム》の性能を発揮でき、ジオンの新型に遅れをとることはないだろう。そう信じているし、確信しているグラハムがいた。

『隊長、後続が追いつきました』

「いいタイミングだ」

追いついた後続の隊員にも回線を繋ぎ、グラハムは言った。

「モビルスーツの性能差が、勝敗を分かつ絶対条件ではない。当てにしているぞ、フラッグファイター!」

『『了解!!』』

そうして、グラハム率いる《オーバーフラッグス》は大気圏突入援護のために攻撃を開始した。

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