機動戦士ガンダムLEGEND   作:黒光りするGさん

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今回からMSを2つの主動力機関別に区別して書いていきます。
バッテリー駆動型のMSをB型。
熱核反応炉を主動力に使用しているMSをN型。
とします。
ちなみに、《フラッグ》、《イナクト》は原作と同様水素エンジンです。

ある程度話が進んだら、今作で登場したMSの設定を書く予定です。



第20話 もう1人の赤

《ガウ》の艦橋へと向かう途中、すれ違う士官達が2人の姿を見て驚きと興奮した様子でつぶやいていた。

「《赤い彗星》と《赤翼》(せきよく)だ……!」

「すげぇ。生で見たのは俺はじめてだよ」

「格納庫行ってみようぜ。こんなの滅多には見られないだろうから」

後少しで到着するというところで、シャアの横を共に歩いてきた男が言った。

「のんきなものだ……」

ため息交じりのその一言にシャアは返答する。

「既に北米での連邦軍の残党は孤立し、その一部が散発的に行動を起こしているだけ。彼らの気が緩むのは無理もありませんよ、『アラン』大佐」

シャアの横を歩くのは『アラン・ヴィアッジ』大佐。ルウムでの戦闘において当時先行配備された《ジン》を駆ってシャアと同等の戦果を挙げたMSパイロットだ。

青い瞳に黒茶色の髪、三十路を超えて落ち着いた雰囲気。ジオン、連邦の間では《赤翼》と呼ばれており、彼の乗るMSが赤く塗装されて翼に似た大型のスラスターを装備しているのがその名の由来とされている。

北米侵攻作戦にも参加し、『ガルマ・ザビ』からの信頼も厚い。廃コロニーを利用した巨大兵器『アトゥム』の護衛にも任命されていたが、新型MSの受領のために合流が遅れた。しかし、追撃を行っていた圧倒的な性能を誇るPMCのMS部隊をたった1機で撤退まで追い込み、多くの将兵を救ったことから評判はさらに上がった。その後ガルマの指名で再び地球へ舞い降り、現在に至る。

艦橋へ到着した2人。それに気づいた青年、ガルマが出迎える。

「よく来てくれた、シャア」

「久しぶりだな、ガルマ。いや、北アメリカ方面軍司令ガルマ・ザビ大佐とお呼びすべきでしたか?」

「士官学校時代と同じに、ガルマでいい。アラン、君も案内ご苦労」

その一言にアランは一礼する。それを見てガルマは笑った。

「相変わらず固い奴だな、お前は」

「階級は同じと言えど、その役割の重さから見れば私は司令には遠く及びません」

「まぁいいさ。お前のそういうところが私も気に入っているのだからな」

アランのガルマからの信頼の厚さはシャアの予想を超えているようで、ここまで心を許している彼の姿を見てシャアは驚いた。

艦橋に設置されている大型モニターにはシャアによって軌道が逸れ、北米に降下してきた《WB》が映し出される。

「てこずるとは思っていたが、まさかどちらとも壊滅には追い込めずに片方だけしかこちらに誘導できないとは。君らしくないな、シャア」

「いうなよガルマ。それほどあの艦には予想以上の戦力があるということさ」

「なるほど、心しておこう。ところでアラン、機体の整備状況はどうだ?」

「残念ながらまだ完璧ではありません。地上用への調整が予想よりも手間取っておりまして。シャア少佐よりも2日早くここへたどり着いたのにもかかわらず、申し訳ありません」

現在のアランの乗機はB型動力機関の新型MS《ゲイツ》。しかし、先行量産された中でも試験的に兵装の一部や動力機関をN型に変更された特別な機体であり、整備にも時間がかかっているのだ。

「それならば仕方ないな。今回は私が出よう」

「きみが出るのか?」

「ああ。僕には姉、キシリアに対する立場というものがある。それに、あれを実戦で使ってみたいという気持ちもあるしな」

「では、私も行こう」

思いがけないシャアの一言にガルマは驚きつつも返した。

「いいのか、シャア? 宇宙疲れは大丈夫か?」

「心配要らないさ。戦場へ赴く友の補佐、心強いものとなると思うが」

「助かるよシャア。では、先に格納庫へ行ってくれ。私はここで今入っている情報の整理をしてから向かう。アランはどうする?」

「少佐と共に格納庫へ向かいます。乗機の整備の手伝いに加わりたいので」

「わかった。後でまた会おう」

そうして、シャアとアランの2人は艦橋を後にして格納庫へと向かった。

その道中、何ともいえない違和感をシャアは感じていた。『前』にはいなかったアランという存在に。これは、案内役としてこの《ガウ》で出会ったときからだ。

まるで自分自身に似た何か。見た目などそういう問題ではない。何故か初対面である彼からシャアは懐かしさのようなものを感じていた。複雑な心境のまま2人は会話を交えることなく、格納庫の通路へと続くエレベーターに乗り込む。扉が閉まる直前にアランが口を開いた。

「お待ちしておりました。『大佐』」

扉が閉まり、動き出すエレベーター。沈黙が続く。先に口を開いたのはアランだった。

「私はあなただった。いや、あなたに限りなく近く、最も遠い別の何かになりきっていたといった方が正しいかもしれません」

シャアは振り返った。真っ直ぐとこちらを見つめるアランの瞳。冗談を言っているわけではないのはそれを見れば理解できたし、シャア自身も何故か彼のことを疑う気持ちもなかった。

会ったことがある。で済むような話ではない。私は彼を、『自分』を迎えに行き、そして2人と共に再び旅立った。アクシズでの出来事以降曖昧だった『前』の自分の記憶。その一部が蘇った。

「君は……」

「はい。『前』ではあなたを模して人体の強化を施され、あなたの一部が宿った者です」

奇妙な運命とでも言い表せばいいのだろうか、この出会いにシャアは今、何の疑問も持っていなかった。

目的地に到着したエレベーターの扉がゆっくりと開き、アランが先を行き、その後をシャアが着いていく。格納庫に到着すると、こちらに気づいた青年士官が声をかけてきた。

「大佐!」

「『アンジェロ』、機体の状態はどうだ?」

青年士官の名は『アンジェロ・ザウパー』。階級は大尉。アランが指揮する第18独立部隊の一員で、ルウムでの戦いよりも前からアランに付き従っている。

「最短で整備が完了したとしても、出撃には間に合いそうにありません。歯がゆいですが……」

報告の途中でアンジェロはシャアを見て、言葉を止めた。その様子からシャアは彼が自分に対して敬意と共に嫉妬に似たようなものを向けているのを感じ取った。周囲を見渡せば他にも複数の士官がシャアを見つめていた。

傍から見れば異様な雰囲気の中、戸惑うシャアに対してアランは言った。

「……私はあなた、そして『彼』に対しての恩があります」

「恩?」

アランの口から出てきた単語にシャアは疑問を持った。そしてアランは続けた。

「希望を……人の可能性を。まだ人間の中には暖かいものがあるということを見せてもらいました。これは、あなたに触れ、彼と出会うことがなかったなら知ることができずにいたでしょう」

先ほどの瞳が再びシャアに対して向けられる。決意と敬意が入り混じったその様子を見て思わずシャアは息を呑んだ。

「私はあなた、いえ、あなた達がこの世界を良き未来へ導くことを確信しています」

「過大評価ではないか? それは」

シャアからのその一言にアランは笑みを浮かべた。その様子を見てアンジェロは眉間にしわをよせる。

「過大評価などではありません。人はさらに先へと進み、何にも縛られない所へ行くことができることをあなた達から見せてもらったのだから」

するとアランは一歩前に進み、シャアとの距離をつめる。

「人は進まねばなりません。そこへ行く力も既に持っている。しかし、彼らには導き手が必要なのです。具体的にどうすればいいかはあなたも分かっていないかもしれない。ですが、あなたはそれを成せる。何度でもいいましょう。私はそう『確信』していると」

「……善処しよう。私ができる限りな」

「私も可能な限り力を貸します。あなたの障害となる物は排除してみせましょう」

アランは右手を差し出してきた。それに応えてシャアは固い握手を交わした。

その後、その場にいた者達はそれぞれの持ち場へと戻っていった。去り際にアンジェロから鋭い視線を向けられていたことにシャアは気づいていたが、気にすることは無く乗機への元へと向かった。

赤く塗装された《ゲルググ》。大気圏突入直前でのアムロとの戦闘などで久しぶりにこの機体に乗ったが、そのときに『前』のことを思い出した。

「ララァ……、私は……」

あの期待に応えることがどれだけ難しいことかをシャアは分かっていた。本当に自分達が人を導くことができるのだろうか。迷いが心で渦を巻こうとしていたその時、

『大丈夫です。大佐』

背後からの声。急いでシャアは振り返るものの、そこには誰もいない。しかし、その声の主は間違いなく彼女だった。

見守っていてくれる。その気になれば直ぐにでも会えるところに彼女はいる。それを理解したシャアの心の中に迷いはなくなっていた。そして自然とシャアはその場で笑みを浮かべていた。

「みっともない姿を見せることなどできんか」

その後、出撃待機命令が出されてシャアは《ゲルググ》への搭乗準備をはじめた。

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