機動戦士ガンダムLEGEND   作:黒光りするGさん

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第24話 次の目標

「……」

ニューヤークにある軍事基地の惨状を画面越しに見て、ガウの艦橋でガルマはその場に立ち尽くしていた。

先日の戦闘で深手を負ったものの、松葉杖を使えば自分で動けるようにはなったガルマ。この基地が襲撃された時には、散発的に活動を続ける連邦軍の残党を叩くために出向いていた時だった。

「ガルマ様、よろしいでしょうか?」

「……ああ、頼む」

通信によって全容を確認してきた兵が戻ってきた。これほどまでのありさまだ、被害は相当のものだろう。

「基地の施設の約70%が機能を停止。車両やMS等にに関してはほぼ壊滅状態。かろうじて稼働できそうなのが数機残されているだけです。ですが……」

「…何だというのだ」

言葉に詰まった兵を不思議に思い、ガルマは問いかけた。その兵自身も困惑した表情のまま答えた。

「軽傷を負った者はそれなりにおりますが、死傷者はゼロです」

「これほどまでの惨状なのにも関わらず、死傷者がいないというのか!?」

「は、はい。全員の生存が確認できました」

まるで嵐が過ぎ去った後のようなこの惨状において死者が出ていない。そんなことがあるのだろうか。にわかに信じがたい。

「尚、基地の破壊活動を行った東方不敗マスター・アジアとその弟子とみられる人物は、連邦の≪ガンダム≫に似たMSに乗ったまま、北へ向かったそうです。現在は各中継拠点において捜索活動が行われています」

次々と語られる情報を聞いて、ガルマは頭が痛くなってきた。主犯は逃走し、それだけでなく地下基地から発見されたMSもどさくさに紛れてコソ泥に盗まれた。失態に次ぐ失態。木馬が来てからというもの、不幸が続く。

報告が終わった後、間髪入れずに慌てた様子の兵がやってきた。

「ガルマ様、偵察隊からの報告です! 連邦の残党と木馬に動きがあります!」

「何、このタイミングでか」

木馬に対してはこの前の戦闘以降複数回にわたって追撃を行ったものの、どれも有効打にはならなかった。現在この北米大陸において最も注意すべき戦力が、残党と手を結ぶとなれば厄介なことになるかもしれない。

兵は画面に映し出された北米大陸の図を指さしながら説明を始めた。

「これまでの間の戦闘と監視の結果、木馬はシアトルへと向けて進んでいることが分かっています。そして、木馬がちょうどシアトルに到着する頃にエッシェンバッハ氏によるパーティが開かれることになっているのはご存知かと思います」

「ああ。私も出席する予定だからな。あの男のことだ、動くのは今だと考えたのだろう」

「反抗を予想してある程度の戦力は配備しております。しかし、木馬が来るとなればこの戦力では……」

「その点についてはご心配することはないかと思われます」

兵の言葉を遮りつつ、艦橋にアランが入ってきた。

「私の第18独立部隊とシャア少佐も引き続き同行します。これであれば問題はないかと」

「すまんなアラン。そうしてもらえると助かる」

その後、これからの動きについてまとめ終わると、兵は艦橋から足早に去っていった。

本来であればアランが率いる部隊は北米大陸を抜け、反抗の規模が拡大しているオーストラリア大陸に向けて出発する予定だった。それを無理に変更してでも、シアトルについてきてくれるらしい。

「毎度毎度のことだが、助かるよ。北米侵攻の時から世話になってばかりだな」

「いえ、私がそうしたいと考えただけです。特に今回は嫌な予感がしましたので」

「いつもの『勘』か?」

「はい。いつものそれです」

ガルマは不思議な安心感を感じていた。それは士官学校においてシャアとともにいたときにも感じていた。これほど頼りになる存在に出会い、協力してくれることはとても嬉しい。

これまでとニュヤークの雪辱を晴らすためにも、今度こそは木馬を沈めてみせる。地図上に表示されるシアトルを凝視しつつ、ガルマは静かにつぶやいた。

「さあ来い……木馬!」

 

 

 

 

     ※

 

 

 

 

砲弾の雨を潜り抜けて突き進む。これまでのMSとは比べ物にならないほどの負荷が全身を襲う。何度も搭乗し、ようやく体も耐えられるようになった。最近ではこの圧倒的な追従性に内心喜んでいることをリィナは感じていた。

≪イナクト≫を遥かに凌ぐ推進力。≪ガンダム≫系MSと同等かそれ以上の火力。堅牢な装甲を持つMS、≪トールギス≫はリィナを乗せ、戦場を駆け抜けていた。

ドーバーガンから放たれた一発が≪ドム≫に直撃し、付近にいた≪マゼラトップ≫も巻き込みつつ爆散する。単機で突っ込んできたこちらにジオンは動揺しているようだった。

「まだ……まだぁ!」

超推力のバーニアを利用しためちゃくちゃな機動力を維持しつつ、確実に敵機を葬っていく。アムロが合流したときには、既にそこに動く敵は存在しなかった。

この≪トールギス≫があれば、戦うことができる。守ることができる。これを受領してからリィナは自分自身に自信が持てるようになってきていた。

『敵影確認できず。見事です、リィナさん。帰還しましょう』

「……了解」

アムロの呼びかけに答え、リィナたちは≪WB≫への帰路に就いた。

これまでの道中において何度も戦闘が行われたのだが、その激戦の中、ましてや敵地の中を『マチルダ・アジャン』中尉の補給部隊がジャブローからやってきてくれたことがあった。

必要とされるであろう各種物資の搬入、傷病者とリード大尉を含むサラミスの乗員の移乗といった支援を行ってくれた。ジャブローは≪WB≫を見捨てたわけではないという中尉の言葉に多くの者が励まされた。

送り込まれてきた搬入物の中に、現在リィナが乗る≪トールギス≫があった。これに関しては予想外過ぎてアキラが驚きの声を上げていた。

「G作戦」開始当初において、量産性度外視。単機による一騎当千。重装甲かつ大推力&高火力。そういった要素を、所有している情報を最大限に活用しつつ≪フラッグ≫や≪ティエレン≫と同時進行でジャブローにて秘密裏に製造されたのがこの≪トールギス≫らしい。ある意味連邦初のMSともいえるそうだ。

しかしながら作り上げたはいいものの、ジャブロー内において行われた1回目の機動実験において大事故が発生。その圧倒的な推力を制御することができず、機体は壁面に衝突。機体に大きな損傷はなかったものの、テストパイロットが死亡してしまった。それ以降、この機体はお蔵入りになった。

その問題児ともいえるこの機体を、戦力になると判断した本部が再調整を施して送ってきた。パイロットに関しては指定されていなかったが、≪イナクト≫の性能に限界を感じていたリィナが選ばれた。アキラが危険だとして反対していたが、リィナの必死の説得で乗ることが許された。

最初の出撃の際にはその負荷に耐えきることができず、戦闘中に失神してしまい、多大な迷惑をかけることになったが、今ではそれなりに動かせることができるようになった。これでもう、自分の無力さに悩まされることはないことに、リィナは安堵していた。

≪WB≫に着艦し、≪トールギス≫を固定したのちコクピットからでた。格納庫内では作業員が慌ただしく動き回っている。

「≪ガンダム≫に関しては後回しでいい! 今は腹を空かせて疲れ切ってる≪トールギス≫が先だ! おう、ご苦労さんリィナ少尉!」

「お疲れ様です、アストナージさん。整備の方、よろしくお願いします」

「ああ、少尉可能な限り休んでな。太平洋が目前だからといっても、敵さんはまた仕掛けてくるかもしれないからな」

そうしたやり取りの終えると、アストナージは作業に取り掛かっていった。どうやらアムロも作業を手伝うようなので、リィナは状況の確認と整理のために艦橋へと向かった。その途中で、

『お帰り、少尉。気分は大丈夫か?』

回線や艦内放送ではなく、脳内に直接響いてきたのはアキラの声。顔は見えずとも、こちらの身を心配しているのが分かった。

「ただいま、です。大尉。気分、体調ともには良好です。心配しすぎなんですよ。私はもう大丈夫です」

『それならいいんだが……無理はするなよ?』

「はい。分かっています」

前からそうだが、こうしてアキラとつながっているだけでリィナは不思議と安心することができていた。「好き」だとかそういった感情はない。ただ一緒にいてくれればそれでいいと感じている。

その後リィナが艦橋に到着したとき、そこは妙にざわついていた。既に来ていたアキラがブライトと話し終えると、画面に映し出されている地図を訝しげに眺めていた。

「大尉、どうしたんですか?」

「少尉か。太平洋に抜け出すためにシアトル近辺を通過する予定だったんだが、ちょいと厄介なことに巻き込まれそうだ。ほい、これ読んでみて」

アキラはそういって、解読された文書が印刷された用紙を手渡された。それは、シアトルにて決起する部隊を≪WB≫の戦力で支援することを要請するといったものだった。

「先日にニューヤークでドンパチがあってそっちに戦力が少し流れているとはいえ、かなり厳しいことにはなると思う。というか皆この要請事態がジャブローの方からのものかどうか疑ってるのが現状だ」

「では、これは無視していくのですか?」

「いや、一応要請には応える。その時はその時。もし何もなければ多少被害は出るが、無理矢理突破するさ」

「了解しました。次の目標はシアトル、ですね」

敵地の中を進むことにはなるが、ここまでくると最早恐怖といった感情が麻痺しているようで、そこまで難しく考えることはなかった。それに、どれだけの敵が来ようと今の戦力があれば何とかなってしまうのではないかと、よくわからない自信もあった。

守るために戦う。この≪WB≫を。アキラ大尉を。そう胸に刻み込み、リィナの瞳は地図上にある次の目標の地であるシアトルを捉え続けた。

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