機動戦士ガンダムLEGEND   作:黒光りするGさん

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第4話 ジオン、侵攻

「急げ!! もうジオンはすぐそこまで来ているんだぞ!!」

 

「《ホワイトベース》への物資の搬送を急げ!!」

 

「ここはもう安全といえるところではない。とにかく急げ!!」

 

 

 突如のジオンの侵攻に、第三格納庫は混乱に陥っていた。

 本部からの連絡によれば、機動実験場の観測所が爆破されたという。その爆発音は第三格納庫にいたリィルにも聞こえていた。

 突如の襲撃発生から間髪入れず、旧実験場付近の隔壁を破ってジオンが侵攻してきたという情報も入ってきた。旧実験場に最も近いこの第三格納庫では、想定外の事態に騒然となっていたのである。

 リィナは非常時に備えて今、《イナクト》のコクピットの中にいる。幸い、まだ《イナクト》の武器類は《ホワイトベース》へ運ばれていなかったので、持てるだけの武器を装備させることができた。

 後は指令を待つだけ。そうリィナが思っていたその時、回線が繋がる。

 

 

『リィナ少尉。聞こえるか』

 

「はい」

 

 

 回線越しにいるのはエヴァン。彼からの回線が繋がったということは本部の方から指令が出たということ。身構えるリィナに対し、エヴァンは続ける。

 

 

『これから《G-3》を《ホワイトベース》へ搬送する。お前はその護衛を頼む』

 

「了解しました。ですが、ジオンはどうするんですか?」

 

『既に本部が足止めのための《フラッグ》の小隊をこちらに向かわせたそうだ。俺達は搬送に専念するぞ』

 

「了解しました。最善を尽くします」

 

 

 手短な応答が終わると回線は切られ、《イナクト》の横に立っていた《G-3》をキャリアカーへと運ぶ準備は始まった。

 ジオンが侵入してきた旧実験場に最も近いとはいえ、それなりの距離はある。

搬送するときには既にジオンがこの第三格納庫に到着してしまうか、到着する直前だろう。

 後は、足止めに差し向けられた小隊がどれだけの時間を稼いでくれるかになる。正直に言えば自分もジオンの足止めのために戦いたい。だが、それでは搬送中の《G-3》の警備が手薄になってしまう。それに、今の自分の力でどれだけジオンに対抗することができるか分からない。

 目の前で散ってきた仲間の仇を討ちたい。しかし、今はその時じゃない。耐えるしか、ない。歯がゆさを何とか心の奥底へと押し込み、搬送作業が着々と進められていく《G-3》をリィナはモニターから見つめ続ける。

 今まで試作されてきた連邦のMSの中でも桁違いの性能を秘めたあの機体。やはり搭乗するパイロットはそれなりの技量を持っているのだろう。緊迫した状況下で、リィナはそんなことを考えながら、《G-3》の搬送作業が終了するのを静かに待つのだった。

 

 

 

 

 

    ◆

 

 

 

 

 

 

「――父さん」

 

 

 アムロは《ガンダム》のコクピットに中でつぶやいた。モニターには赤く燃え、黒煙を吐き出し続ける観測所が映し出されている。一体何が起きたのか理解するのに少し時間がかかった。

 死んだ。父さんが、あそこにいた人が。やったのはジオンなのだろうか。思考がまとまらない頭でそう考えていると、本部の方から回線が繋がった。

 

 

『アムロ・レイ少尉。応答しろ』

 

「……はい」

 

 

 回線越しにいるのは上官なのだろうが、アムロは気の抜けた返事をしてしまった。消沈しているアムロの返答から心情を察しながらも、本部の上官は告げる。

 

 

『君のお父さんは残念なことになった。だが、今は気持ちを切り替えろ少尉。ジオンがコロニー内部に侵攻してきた』

 

「ジオンが……?」

 

『少尉はそのまま《ガンダム》を自力歩行で《ホワイトベース》がある港まで向かえ。以上だ』

 

 

 そう告げられると、回線は切られた。とにかく、今は命令通りに動くしかない。

アムロは港へ向かう前に、もう一度観測所の方を見た。

 分かってはいたつもりだった。戦争に関わるのだから、こういったことが起きてしまうということを。だが、こんなにも早くこんな事が起きるなんて思いもしなかった。

 

 

「……さようなら。父さん」

 

 

 逝った父に向けてアムロは別れの言葉を告げ、《ガンダム》を港へ向けて動かしはじめる。

 だが、その時。

 

 

「……ん?」

 

 

 レーダーがこちらに急接近してくる三機のMSをとらえた。レーダーに表示された機体名は、《イナクト》だ。

 護衛に来たのだろうか。だが、本部からそんなことは聞いていない。一体どういうことだろう。そうアムロが考えていた矢先、信じがたい光景が視界に映りこんだ。

 

 

「……!?」

 

 

 先頭を飛んでいた青い塗装が施された《イナクト》が、その手に持っていたライフルで攻撃を仕掛けてきた。いきなりの出来事に驚きながらも、アムロはシールドでそれを防ぐ。

 三機の内の二機はの左右に展開し、残りの青い《イナクト》が正面から《ガンダム》に向けて突っ込んでくる。接触する直前に、青い《イナクト》との回線が繋がり、回線の向こうにいる男は《ガンダム》に向けて言った。

 

 

『結構いい性能なんだろ? 楽しませてくれよ、《ガンダム》さんよぉ!!』

 

 

 

 

 

    ◆

 

 

 

 

 

「どういことだ……?」

 

 

 非常時のために実験場で待機していた装甲車両に乗って港に着いたアキラは、双眼鏡越しに目にした異様な光景の感想を思わずつぶやいた。

 実験場にて、《イナクト》と《ガンダム》が戦闘を繰り広げている。いくら《ガンダム》の性能がいいとはいえ、三対一では分が悪すぎる。

 それに、三機の内の一機の青い《イナクト》は完璧に《ガンダム》を翻弄している。アキラの知っている《イナクト》は、あんなアクロバティックな動きなどできなかった。というか、することができなかった。

 おそらくは独自の改造がされているのだろうが、それ以前にパイロットが相当の技量を持っているのがその動きから分かった。

 事態はいい方向には進んでいない。旧実験場からジオンが侵攻してきたという情報も入ってきた。《G-3》はこちらに向けて搬送され始めたとのことだが、ここまでたどり着くかは分からない。それに今現在、港に避難民が押し寄せてきており、《ホワイトベース》へ避難させている。非常事態だからしょうがないとはいえ、その数にアキラは驚いていた。

 混乱に陥っている現場にいて、アキラもつられて混乱してしまいそうだった。だが、そんなことは言ってはいられない。やれることはやらなければいけない。自らを鼓舞するように前向きに思慮を巡らせる中で、声がかけられた。

 

 

「アキラさん!」

 

 

 避難民の誘導を手伝っていたメイリンが、急いでアキラの方へと駆け寄ってきた。そして、慌てた様子で情報を伝える。

 

 

「《G-3》を搬送していたキャリアカーが脱線したとのことです!」

 

「脱線!? こんな時に限って!?

 

「そ、それと第五格納庫がジオンの攻撃を受け、通信が繋がらないそうです!」

 

「……最悪だな」

 

 

 第五格納庫にはG-01《プロトタイプガンダム》がある。

 もしジオンに強奪されたら、ビーム兵器の技術があちらに知られることになる。そうなれば、死んだ親父に顔合わせすることができない。

 

 

「メイリン。装甲車両で脱線した現場に行くとすると、どれくらいかかると思う?」

 

「えぇっと、大体5分ぐらいだと思います」

 

 

 もしかしたら、ジオンが到着する前《G-3》にはたどり着けるかもしれない。せめて《G-3》だけでも、ジオンの手に渡るのを防がなければ。

 最悪の状況を僅かでも好転させるため、アキラは避難民の誘導を行っている下士官に向けて言い放った。

 

 

「誰かそん中でここら辺の道詳しい奴いないか!?」

 

 

 いきなりの問い掛けに下士官は驚きながらも、その内の一人が手を上げる。

 

 

「よし。じゃあお前運転してくれ。場所はメイリン軍曹に聞いてくれ」

 

 

 そう言って、アキラは先に装甲車両に乗りこんだ。

 中に入っても、避難民の慌ただしい声とそれを誘導する《ホワイトベース》の船員の声が聞こえてくる。この長蛇の列に並ぶ避難民を全員収容するとなると、かなり時間がかかるだろう。

 戦争をしている。切迫した装甲車両の外の景色を見て、アキラは改めてそう思った。

 

 

「お待たせしました。行きましょう」

 

「頼む。あ、ちょっと待ってくれ」

 

 

 出発の直前、思い出したかのようにアキラは装甲車両の窓から顔を出し、乗りこもうとしていたメイリンに向けて告げた。

 

 

「お前はここで待機。避難誘導に従事してくれ」

 

「で、でも……」

 

「向こう行ってもやれることは限られる。メイリンが誘導後、すぐに通信管制に入れば現場の助けになるはずだ。分かってくれるか?」

 

「……了解しました。ご武運を」

 

 

 的確な指示を出すアキラの姿からは、寝坊したときのだらしなさは微塵にも感じられない。大尉としての真面目な側面を見せた彼に従い、メイリンは少し残念そうな顔をしながらも避難民の誘導の方へ戻っていくのだった。

 彼女が再び避難民誘導に尽力し始めたのを確認した後、アキラは自分と同じぐらいの年だと思われる男性下士官の方を向き、問い掛けた。

 

 

「お前の名は?」

 

「『ハリー・レントン』曹長であります!」

 

 

 狭さを感じる社内の中、こちらに向けて敬礼して答えるハリー曹長にアキラは手早く告げた。

 

 

「よし曹長。脱線現場まで最短ルートで頼む」

 

「了解しました!!」

 

 

 ハリー曹長の元気な返事と共に、装甲車両は脱線現場へ向けて動き出していった。

 

 

 

 

 

    ◆

 

 

 

 

 

「これが……、連邦の新型か」

 

 

制圧した第五格納庫の中にあったMSをモニター越しに見て、シャアはつぶやいた。

『ブラッドファング』の情報通りならば、黒を基調としたこの機体の名は《プロトタイプガンダム》。初のビーム兵器搭載、強固な装甲、量産はコスト的な面から考えて出来ないとはいえ、凄まじい性能を有している。

 Gシリーズ最初の試作機であり、この機体はその後の実験も兼ねて4機が建造されたという。その内1機がこのコロニーにあったというのも情報どおり。

 これを持ち帰れば、さらに《彼ら》に近づくことができる。仇を討つまで、後少しの辛抱だ。

 するとシャアは現在コロニーに侵入している味方全員に向けて回線をつなぎ、言った。

 

 

「私と『スレンダー』と『アッシュ』は、発見した連邦の新型とその新型の武器をグワジンへ運ぶ。他は行動を続けろ。以上」

 

 

 直ぐに回線を切ると、シャアを含む3人はそれらをグワジンへ運ぶための準備を始める。

 現在このコロニーに侵入しているのは、全員で6人。今は二手に分かれており、残りは別の新型の方へ向かっている。コロニーの外ではジェリドとカクリコンが待機している。そして、潜伏していた『ブラッドファング』が実験場で連邦の新型と戦闘中であり、新型の全てを強奪、破壊するのも時間の問題といったところだ。

 こうも容易く侵入を許し、自分達が開発したMSを強奪される。連邦には相も変わらず《腑抜け》という言葉が似合うかもしれない。

そう思いながら、シャアは準備を着々と進めていくのだった

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