機動戦士ガンダムLEGEND   作:黒光りするGさん

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今回から《ホワイトベース》を《WB》と略して書きます。



第7話 めぐりあい宇宙

「いいか、アムロ。さっきの戦闘でバルカンの銃身が焼けついて使えない。対空防御策が手持ちのライフルだけだ。気をつけろよ」

 

「了解しました。ハッチ閉じます。下がってください。オムルさん」

 

「おう。気をつけろよ」

 

 

 機体の状況説明を聞き終わり、アムロは《ガンダム》のコクピットハッチを閉じた。やがて起動し、出撃に備えて慌しく動き回る作業員がモニター映し出された。

 これから《WB》は港から出てジオンと交戦状態に入る。現状では《WB》は《グワジン》に対抗できるレベルの火力を持ち合わせておらず、援護するために出撃しなければならなかった。

 他の搭載されているMSはパイロットの不在、機体の状態から出撃することはできない。たった1機で出撃することとなってしまった。

 現在急ピッチで《G-3》の修復作業が進められており、完了次第出撃するとのことだ。だがそれまで持たせることができるか否かはアムロの手腕にかかっていた。

 実験場では油断した相手の隙を突くことでなんとか切り抜けることが出来たが、今度はそれがうまくいく保証はない。艦の皆の命を背負う戦いであることを認識しつつ、アムロはコクピット内で身構えていた。

 

 

『アムロ少尉。聞こえるか』

 

「はい。大丈夫です」

 

 

艦橋からの回線が繋がり、サブモニターに『ブライト・ノア』中尉が映し出される。

 

 

『説明はもう聞いているな。本艦はこれより港を出る。援護を頼む』

 

「了解」

 

 

 手短に会話を済ませ、その後ブライト『現』艦長は回線の向こうで指示を出し始めた。

 

 

『ミノフスキー粒子を戦闘濃度で散布、対空ブロックは各個に迎撃体勢をとれ!』

 

 

 本来の艦長である『パオロ・カシアス』中佐は《グワジン》の迎撃に加わり、負傷してしまった。今は艦橋にてブライト中尉の補佐を行っている。

 この混乱の中でも、たくさんの人が今できることを必死にやっている。その人たちのためにも、《WB》を守りきらなくてはならない。

 アムロはカタパルトへと《ガンダム》を移動させた。固定が完了し、出撃体勢に入る。

 

 

『ハッチオープン。射出10秒前』

 

 

 アナウンスが流れ、出撃へのカウントダンが始まる。

 緊張で心なしかレバーを握る手の力が強くなる。焦るなと心に言い聞かせる。

 そして――

 

 

『10、9、8、7、6』

 

 

 ――後5秒。

 

 

 覚悟を決め、ハッチの外に見える宇宙をしっかりと見つめる。

 

 

『5、4、3、2、1、どうぞ!』

 

「アムロ、行きまーす!」

 

 

 カタパルトが点火され、勢いよく《ガンダム》は宇宙へと飛び出した。

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

『少佐。白い奴が出てきましたよ』

 

「来たか。頼んだぞ、ドレン」

 

『了解です。後武運を』

 

 

 回線が切れ。シャアは《ザク》で出撃した。随伴機はなし。まさかこれほどまでに損害が出るとは予想していなかった。正体不明機からの攻撃があったとはいえ、これではドズル中将に面目が無い。

 若さ故のあやまち。とでも言えばいいのだろうか。勢いに任せて動くとよい結果はだせない。

 出撃と同時に2発の対艦ミサイルが発射された。真っ直ぐ連邦の艦へと向かっていく。それらは連邦のMSが1発を狙撃し、2発目も艦に直撃する寸前で撃ち落とされた。

 その様子をモニターで確認し、シャアは連邦の新型MS《ガンダム》へと接近していった。こちらに気づいたのか、手に持ったライフルをこちらへ向ける。そして放たれたビームを避けたその時――

 

 

「……?」

 

 

 ――奇妙な。とても奇妙な感覚が、シャアを襲った。

 

 

 よくは分からない。だが、何か懐かしい感じがする。

 知っているような、今知ったような。本当に奇妙な感覚。

 再び放たれたビームを避け、死角である真下から《ガンダム》、『アムロ』に接近していく。

 ふと気づく。『アムロ』。知るはずの無い《ガンダム》のパイロットの名が鮮明に頭の中に浮かび上がった。

 だが、何故パイロットがアムロであることをシャアはは疑問に思わなかった。あれにはアムロが乗っている。そうシャアは確信していた。

 急接近し、《ガンダム》のコクピット部分に蹴りを入れようとしたその時、決して忘れるはずのない声が響く。

 

 

『させるかっ!』

 

 

 回線は繋がっていない。頭の中に響いた声とともに、必要最低限のブーストで《ガンダム》は蹴りを避けた。

 すぐさまビームライフルをシールドに格納し、ビームサーベルを引き抜いて《ガンダム》は反撃に移ろうとした。それを察知してシャアはブーストでその場から急速離脱する。

 

 

「やるな、アムロ!」

 

 

 楽しんでいるのか、怒りがこみ上げているのか。自分でもよく分からない感情が渦巻いている。

 だが、1つだけよく分かるものがあった。自分は望んでいた。彼と。アムロとの再開を。

 遠距離からマシンガンを放ちつつ、シャアはアムロに語りかける。

 

 

「まさか、こんな形で再開することになるとはな!」

 

『僕も……『俺』もそう思っていたところだ!』

 

 

 直撃はしない。たったの一発も。逆にその中を掻い潜ってこちらに接近してくる。

 そうでなくては。この感触。これこそがアムロ・レイだ。

 

 

『何故俺達が戦う必要がある! お前は見たはずだ、あの光の中で。人の可能性を!』

 

「ああ、見たさ! 見させてもらった! だが!」

 

 

 振り下ろされたビームサーベルをスラスターを駆使した急速回転で避け、そのままの勢いを利用して蹴りを繰り出す。それをシールドで受け止め、アムロは後退しつつ取り出したビームライフルで牽制する。

 寸でそれを避け、クラッカーを投げつけて《ガンダム》の目の前で起爆し、生じた爆煙を利用して煙幕を作り出す。

 だが、視覚を奪うのは一瞬の時間稼ぎにしかならない。直ぐにその場から移動すると、先ほどまでシャアがいたところに煙幕の向こうからビームが放たれた。

 お互いに距離をとる。見せなくてはいけないのだ。戦っているという様子を。私達が意思疎通をしていることを気づかれないためにも。この戦闘を見ている者達に。

 

 

「現状を理解しろ! 『今』は戦うしかないのだ! 『今』は!」

 

『分かってはいる! だが、いつまでだ。俺達はいつまで戦わなければいけない!」

 

「この戦争がひと段落するまでだろうな!」

 

 

 不思議だった。何もかもが見えるようになった気がする。今まで見えなかったものが、全て。そしてそれを理解している。

 2人は射撃をしつつ、間隔を保ち続ける。やがて、マシンガンの弾薬が尽きかけたその時、一筋の輝きが視界に入り込んできた。

 

 

「!」

 

 

 《WB》の主砲が放たれ、シャアの近くを通り過ぎたのだ。確かあの艦はまだ補給艦という立ち位置だったはず。とてもそうとは思えない武装を積んでいるが。

 潮時か。《グワジン》へと後退をしようとしたその時、主砲発射と同時に出撃していた《G-3》の狙撃を感知し、寸での所でそれを避ける。

 《G-3》のパイロットが悔しがる感情を感じる。立て続けに放たれるビームをシャアは全て避けてみせた。

 最後のクラッカーを投げつけて煙幕の代わりにし、後退しつつシャアはアムロに呼びかけた。

 

 

「私の予想が正しければ、この後もあの時と似たように事は進むはずだ。分かっているな、アムロ」

 

『ああ、うまくやってみせるさ』

 

 

 頼もしい返事を聞き、シャアは《グワジン》へと後退して行く。その最中で回線を繋ぎ、ドレンに呼びかけた。

 

 

「新手も出てきた。潮時だ。後退するぞ」

 

『了解しました!』

 

 

 アムロも《WB》の方へと遠ざかっていくのを感じた。また直ぐに会うことにはなる存在へと向ける思いは、”かつて”のものとは違って温かなものだった。

 

 

 ――私は負けた。アムロ・レイに。

 

 そしてあいつは見せてくれた。人の可能性を。私もそれを信じよう。

 罪滅ぼしにはならない。それをするには何もかも遅すぎてしまった。

 だが、『今』を私は確かに生きている。ならば自らが成せることを成すしかない。

 

 

 

 回線を切り、かつてと今に想いを馳せながらコクピットのモニターに広がる宇宙を眺める。その何処かにいるはずの存在に向け、シャアは静かに呟いた。

 

 

「『ララァ』。もう導いてくれとは言わん。見守っていてくれ。私と、アムロを」

 

 

 再び始まった。

 シャア・ズナブルの。キャスバル・レム・ダイクンの。アムロの。

 新たな戦いが。

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