【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜   作:ちょっつー

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ベリアルを倒すために本格的に動き出した魔術王。
立香ちゃんを人質に取るだけではなくて……?

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく。




3

────多くの悲しみを見た。

 

────多くの悲しみを見た。

 

 飢餓に苦しみ倒れる人々、食糧や新たな領地を求め争い沢山の血を大地が呑み込んでいく。

大切な人を失って嘆く人、苦しむ人、…………許さないと、憎しみを復讐の炎を燃やす人。

 

────ソロモンは何も感じなかったとしても。私、いや、()()は、この仕打ちに耐えられなかった。

 

 内から声が響いてくる。この地獄を見て何も感じないのか、この悲劇を正そうと思わないのかって……。

出来ることなら! ……そう思うけど、私ではない誰かは、そうは思わなかった。

 

────『特に何も。神は人を戒めるもので、王は人を整理するだけのものだからね、他人が悲しもうが(わたし)に実害はない。人間とは皆、そのように判断する生き物だ』

 

 動揺もせず、慟哭することなくただ黙々と言葉を返した。

言葉からも感じ取れる、その感情に善や悪といったものはない。何も望んでいない、無だ。

 

────そんな道理(はなし)があってたまるものか。そんな条理(きまり)が許されてたまるものか。

 

 世界が、視界の全てが怒りによって赤に染まっていく。人を思っているからこその、人間の行く末を案じているからこその怒り。

 

────私たち(われわれ)は協議した。俺たち(われわれ)は決意した。

 

 自分に害がないなら関係ない。そういう考えが誰にでもあるのは理解できる。自分の中にもその気持ちがあるのは知ってるから。

けど、瞳に映ってしまった絶望を見て見ぬふりはできない。自分にできることが何かあるんじゃないかって探すし、仲間がいるなら協力を仰ぐ。

 

────あらゆるものに訣別を。この知性体は、神の定義すら間違えた。

 

 進んでる道が間違いだったら、それは違うって言ってくれる人が傍にいる。

だけど、怒り()が歪んでいるって正してくれる人は、誰もいなかった。

 

 

 

 

「東部観測所、兵装舎、生命院、沈黙。西部情報室、管制塔、覗覚星、沈黙。……ベリアル、沈黙」

 

「…………ん」

 

 ベリアル。その名前を聞いて、朦朧としていた意識がはっきりと目覚めてく。

ええと、どうしてたんだっけ? 助けに来てくれた英霊たちと一緒に魔人柱を倒して回ってて…………それで、それで……。

 

「目が、覚めたようだな。カルデアのマスター」

 

「ッ!! 魔術王!! んっ、んっ、うご、けない……」

 

 そうだ、全部の魔人柱を倒すことに成功して、魔術王の玉座への道が開けたことに喜んでいた時だった。

突如として現れた2本の触手に両足を掴まれて地面に引きずりこまれたんだった。それで、意識を失ってたんだ……。

 

「英霊どもも思いの外やるじゃあないか。我々が消えることはないにせよ、あの忌まわしき存在ではない貴様らにここまで敗戦を重ねるとは、予想外だ」

 

「私を囚えて、どうするつもり?」

 

「なに、遠方からの客人をもてなすのは王の歓びだろう? 少々手荒な歓迎になってしまったがね」

 

 魔術王の言葉に耳を貸しながら、私の四肢を縛っている魔神柱のようなコレをどうにか外せないか身体を動かし続けるけど、私の力じゃどうすることも出来ない。

けどどうして? 魔術王が私を捕まえて生かしておく必要なんてないはず、すぐに殺してしまえばいいのに……なんで? 

 

「確かに、カルデアのマスターたる貴様を殺せば、この地に喚ばれた英霊たちはことごとく消滅するだろう。だが、それでは意味がないのだよ」

 

「意味が、ない?」

 

「元より、いくら抵抗したところで我々の大偉業の前では無意味でしかない」

 

 そうだった。魔術王はロンドンで初めて姿を現した時から私たちのことを脅威として捉えてなんてなかった。

いつでも私たちのことを排除することは出来るって、全ての特異点を周ることが出来ても自分たちを止めることは絶対に不可能だっていう大きな自信を持ってた。

 

 そんな魔術王にとって一番の誤算。立ちはだかる大きな壁として、絶対の脅威として排除しようと幾度も特異点で刺客を送り付けてきては全部徹底的なまでに破壊してきた絶対強者。

 

「────ベリアル、さん」

 

「そうだ! ベリアル、ウルトラマンベリアル! 我らが同胞の名を騙る憎き存在! 存在しうるはずのないヤツの存在が全てを狂わせた!! 我らの宿願のために、ヤツは、ヤツだけは必ず排除しなければならない!」

 

「でも、それと私を囚えるのと関係なんてないでしょ?」

 

 魔術王がベリアルさんを最大の脅威として見てるのは分かる。だからこそベリアルさんを倒すことが最善で、その為の準備を怠らなかったんだと思う。

けどそこで一番疑問に思うのが私という存在だ。別に私はベリアルさんのマスターってわけじゃないのに、魔術王は私を殺さずに囚えてる。

 

「フ、まさか貴様自身も知り得ていないとはな。まあいい、今に役者が揃う。答えを示す合わすのはその時だ」

 

 結局魔術王は私に答えを教えてくれることはなく、マシュ、そしてベリアルさんが来ることを心待ちにしているような笑みを浮かべながら玉座に腰を深くおろした。

 

 

 

「先輩っ!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

⦅クハハハハハッ! 所詮使い魔程度しかない貴様らの力などその程度しかないことが理解できたか⦆

 

「くっ……」

 

「ます、た──」

 

「………………(これは……!)」

 

 魔術王の玉座。立香ちゃんが攫われたという凶報を受けた私たちはベディヴィエールたちにその場を任せ、急ぎ足でこの玉座へと駆けつけた。

玉座へと辿り着いた私たちが見たのは、先に向かったマシュちゃんたちが化物へと姿を変えた魔術王に倒されてしまったその姿だった。

 

「は、はあ。ドクターの見解通り、ソロモン王の遺体を巣とし、その内部で受肉を果たした“七十二の魔神の集合体”。彼らは、自らの名を“魔神王ゲーティア”と名乗り、ました……」

 

「へっ、お前が言ってた蛆虫ってのもあながち、間違いじゃ、なかったみてーだな……」

 

 ボロボロになりながらも、私たちが来るまでに得た情報を伝えてくれるマシュちゃん。

ベリアルさんが前から蛆虫だって言ってたから、そういう身体の中に巣食う寄生虫とかそういう存在なのかとあたりを付けてたけど、本当にそうだったみたいだ。

 

 ソロモンの姿を捨てた相手、ゲーティアの姿はシルエット自体は人のソレかも知れないけど怪物と呼ぶに相応しい姿へと変貌を遂げている。

レッドキングのような筋骨隆々とした肉体は白と黄金色をしていて、大きく口を開いたように陥没した胸部には真っ赤に染まる大きな目玉を覗かせている。

 

⦅歓迎しよう、我らが同胞の名を騙る不届き者、ウルトラマンベリアル⦆

 

「…………」

 

《おっと、私を攻撃しては駄目なことぐらい、貴様はとっくに理解できているはずだ》

 

 ゲーティアに囚われている立香ちゃんを助けるため、ベリアルさんはその手に力を溜めて攻撃を喰らわせようとしたけれど、幾重にも声が重なって聞こえるゲーティアの言葉を聞いてその手を下ろしてしまう。

 

⦅くくく、ハーッハッハッハッハッ! そうだろうベリアル? 私を攻撃してしまえば、この女は命を落としてしまうからな⦆

 

「「「『!!!!!』」」」

 

「それって、どういうこと……!?」

 

 みんなの驚きようから、先程までゲーティアと戦っていたマシュちゃんたちもその言葉の意味が理解できていないようだ。 ただ一人、ベリアルさんだけは理解しているみたいだけど。

 

 想定していたとおりの反応をしてくれたことへなのか、ベリアルさんが手を下ろしたことへの喜びなのか、ゲーティアの全身が裂けそこから覗かせる無数の目玉たちと一緒に喜びの声を上げる。

 

⦅クハハハハハハッ! 愉快、実に愉快だ! いいだろう、低脳な貴様らでも理解できるよう、実際に見せてやろう⦆

 

 そう言ってゲーティアは自らの手から作り出した魔力の塊を自分の顔に向かって放つ。その突飛な行動に困惑するけれど、右腕が動いた感覚と共に何が起きたのかすぐにわかった。

 

「────え?」

 

⦅ク、クハハハハハ!! 寸での所で抑えて見せたようだが、衝撃まではどうにもできなかったようだなベリアル!! ⦆

 

 見えない何かに殴られたような強い衝撃。それを受けて鼻血がツーと流れるが、立香ちゃん本人から何が起こったのか理解できていない声が上がる。数秒して痛みが脳に伝わってきたのか、痛みに顔を歪ませるがそれを遮るようにゲーティアの声が響く。

 魔力弾から上がった爆発が晴れると、ゲーティアの手と顔の微妙な間に、ベリアルさんが作ったであろうウルトラ文字で書かれた障壁のようなものが出来ている。

 

 ベリアルさんがゲーティアの事を守ったなんて、ここにいる誰も思ってない。

 

「テメー、マスターに何しやがった?」

 

⦅ふっ、礼儀がなっていないが今の私は最高に気分がいいのでね。教えてやろう、()()()()()だよ⦆

 

 死痛の隷属。サーヴァントのみんなやカルデアのみんなもそれが何なのか知っているみたいで驚き表情を隠せない。

私のほうもベリアルさんから知識が流れてきて、それが一方的な痛覚共有の呪いであることが理解できた。

 

 つまりはゲーティアが自身に向けて放ったあの魔力弾、あのダメージを立香ちゃんも味わったてことになる。

 

『だ、だが! 痛覚共有といっても痛みが伝わる閾値が存在する、まして死すら伝わるなんてただの世迷言でしかない!』

 

⦅それは一般的な魔術師が使ったとしたらの話だ。しかし我らは違う、魔術の祖とされるソロモンより生み出された我らにとって呪いを強化するなど容易いことだ⦆

 

 ゲーティアの言っていることはハッタリなんかじゃない、それはベリアルさん自身が起こした行動が示している。

ゲーティアに向けた攻撃を止めたのも、障壁を作り出したのもどちらも立香ちゃんにダメージが向かわないための行動だ。

 

 もし伝わる痛みに閾値があって、死を共有しないのならばベリアルさんは迷いなく攻撃していた。けど今それをしないそれこそが立香ちゃんの命がゲーティアと繋がっている証明に他ならない。

 

⦅貴様がこの地球に降りたったばかりの時ではこの方法は使えなかっただろうな。フハハハハ、ベリアル。貴様はこの地球(ほし)にきて()()()()()

 

「ああ?」

 

瞬間、ゲーティアは魔術か何かで私たちの目の前に急接近し、その剛腕をもって連続で殴りかかってきた。

普段ならその動きを予測して反撃をするベリアルさんだけど、避けたりして立香ちゃんに被害が向かないようにその攻撃を甘んじて受ける。

 

「ベ、ベリアルさっ、身体が……」

 

「────っ、ベリアルお前!!」

 

⦅邪魔が入らないように動きを封じたか、懸命な判断だ。この快楽を邪魔されては我らは彼女に何をするか分からなかった⦆

 

 楽しんでる。ベリアルさんがマシュちゃんたちの動きを封じ、誰の邪魔も入らずに私たちに攻撃出来ている今のこの一瞬をゲーティアは楽しんでいる。

並の英霊だったら数発受けたら倒れてしまうんじゃないかという重い一撃。ベリアルさんだから耐え続けていられるけど、それよりも前に私の身体のほうに限界が来てしまうんじゃないかって不安が脳裏に過る。

 

「ひ、きょう……もの」

 

⦅────何か言ったかな? カルデアのマスター、いや……私のサーヴァントと言ったほうがいいかな? ⦆

 

「卑怯者って、言ったんだ!!」

 

⦅────口を慎め、お前の命は私の手の内にあることを忘れるほどの馬鹿だったか? ⦆

 

「ぐうッ、ガッ! ……ぞ、ぞんな ごど言ったって……あなだは 私を、殺せない……ガハッ!」

 

 卑怯者と立香ちゃんに言われたのに腹が立ったのか、自分の首を片手で握ることで伝わるその痛みで強制的に立香ちゃんのことを黙らせようとしたゲーティアだったけど、吐血しながらも立香ちゃんは言葉を止めない。

 

「もう、もう話さないでください先輩!」

 

「わだしが、死んだら……あなだば 唯一の盾をうじなう……。人間を 人類史を ひでいじてる ハア、ハアくぜにッ!! や゛っでる゛ ごどば!! に゛ん゛げん゛と  がわらない!! ぞんなおばえを……ひぎょうぼの(卑怯者)って いっで だにがばるい(何が悪い)!!」

 

⦅────そうだ。そうだともッッ!!!! ⦆

 

 マシュちゃんの制止の声も聞かずに叫んだ立香ちゃんの言葉を聞いたゲーティアは、先ほどまで喜喜一色だった表情を一変させ怒りを爆発させた。

 

⦅ベリアル!! 我らが大偉業を阻む最大最悪の障壁!! 如何な力を以てしても阻めず、如何に知恵を絞った所で止められない! そんなベリアルを打ち倒す方法とは何か!? 我らは模索し続けた! 探求し続けたんだ! その結論がコレだ! 人間に窶す。それこそはベリアルを倒す唯一無二の手段であると結論づけた!! 我らが切り捨てた人間に、否定すべき愚かで卑しい行為でなければ彼の者を止められないと!! ⦆

 

 人間にしかベリアルさんは倒せない。ゲーティアが用いた手段は卑劣な物ではあるけれど、あながち間違いじゃない気がする。

 

 ウルティメイトゼロの時もジードとの最終決戦の時も、人の心の繋がりが強固ものとなったことでベリアルさんの命を終わらせていた。だから、人間の力がなければ倒せないっていうのは間違いじゃないと思う、ただその方法が最低だってこと以外は

 

⦅この結論に至らせてくれたことには感謝しよう、ベリアル⦆

 

「なんだと?」

 

⦅我ら72柱は完璧で完全だ! 欠点など有りはしない、本来ならば人間に窶すなどという愚かな方法など考えもしなかった。だが!! 我らが同胞66柱であるキマリスを貴様が完全に消滅させたことで、我らに穴が生まれた! その答えに至るだけの穴がな!! ⦆

 

 外からの影響を受けない究極の真円。その円はベリアルさんによって破壊され一つの穴が生まれた。

その穴があったからこそゲーティアは、立香ちゃんのことを人質にとるなんて人間臭い卑怯な真似に手を染めるに至ったと、過程はどうあれそれに至れたのはベリアルさんがその魔人柱を完全に消滅させたことに他ならない、この最悪の事態を作り出したのはお前自身だと嘲笑ってくる。

 

⦅そんな貴様にチャンスを与えてやろうベリアル。魔神王として、いや人間なんぞに身を窶した愚か者としてな⦆

 

「チャンスだと……?」

 

⦅ああそうだとも! このまま同じ事を続けていてはただ無意味に時間だけが過ぎていくだけだ。貴様も我らのサーヴァントを助けたいだろう? ⦆

 

 

 チャンス。完全に自分の勝利は揺るがないからとゲーティアはこちらのことを見下しながらそう提案してきた。

絶対に何か罠が仕掛けられているはずだけど……、今の私たちが立香ちゃんのことを救い出すにはその提案を聞きいれるしかない。

 

⦅なあに、簡単なことだ。実に、じつに簡単だ。くくく、クハハハハハッ!! ⦆

 

「もったいぶらずにさっさと話せ、面倒なんだよ」

 

⦅そうつれないことをいう物ではない。これが最後の別れとなるのだからな!! さあベリアル、彼女を! 藤丸立香のことを救いたいと言うのならば!⦆

 

 

 

 

 

────いつか来るかも知れない、だから覚悟はしてた。けど、それは今じゃない。ゲーティアが示した来たのは最低最悪の選択。命をただの交渉材料としか見てない。

 

 

 

 

 

その男とのサーヴァント契約を解除しろ

 

 

 

 

 

私の命と立香ちゃんの命、二つの命が天秤にかけられた。

 

 

 

 

 

 

 




ゲーティアのベリアル対策その3、死痛の隷属
プリヤでイリヤとクロとの間で施された魔術のゲーティア超強化版。それを立香と自分を死痛の隷属で繋げる。
やってることは余りにも小物だが、本人が言ってるようにベリアルさんに勝つにはこの方法しかない。

実際ゼロがベリアルさんを完全に倒せたのはあの宇宙にいる人間たちの光を束ねたノアの力を使った時だけ。逆にジードが彼を終わらせることが出来たのは仲間との絆を背負った上での最終決戦だったから。
ゲーティアの選択は卑怯極まりないものかも知れないけれど、人間の力を借りるなんて出来やしない存在なのでこういう方法でしか倒せないんです。許してやってください。

ゲーティアが人に窶す原因は自分で作ってしまったし、立香ちゃんを人質に取られてなんで動けないのかベリアルさん本人もわかってないのもこのピンチに陥った理由だしで、何だかんだ詰めが甘いのがベリアルさん。

ゲーティア
七十二柱揃って全能だったが、ベリアルの手によって一柱欠けたことによって穴ができた。そのため人間に窶すという行動が取れた。

簡単に言えば10枚のコアメダルだったのが9枚になってグリードになったようなもの。
感想でゲーさんが『人間』くさいって言われてうれしかったりした作者です。
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