【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜   作:ちょっつー

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「…………よし。もう、追ってこないかな?」

 

 ペンテシレイアが王城へ向かって駆け出した後、彼女を追うように他のアマゾネスも王城へと進軍していった。数人残ったけれど片手で数えるくらいの人数しかいなかったため対処することができた。立香ちゃんたちも城から抜け出した連絡を受けた私は、少年を連れて一足先に不夜城から脱出していた。

 

「怪我は、ないね?」

 

「う、うん。おじさんが助けてくれたから…………」

 

 身体は震えていて、涙が溢れるのを我慢している。「どうして危ないことをしたんだ!」「死ぬかも知れなかったんだぞ!」そう彼に叱るのは簡単だ。けど、そうじゃない、それじゃあダメなんだ。

 

「アマゾネスに襲われそうになって、怖かったろう?」

 

「…………うん。こわ、かった」

 

「それで何とかできるって、そう思ってたかい?」

 

「ぼ、ぼくにも何か出来ることあるんじゃないかって! だから一緒に戦おうとしたんだ!! だけど、ダメだった…………。大人たちとアマゾネスが戦って、血がドバッて出るのを見たら……怖くてなんにもできなかった…………」

 

 …………そう。それが普通なんだ。いくら追い詰められていたからって子どもを戦場に駆り出していい理由にはならない。過去にそういう時代があったのだとしても、この子の生まれた“今”はそうじゃない、そうあるべきじゃないことが当たり前の世の中なんだ。

 それでも、自分のことを守れるものがそれだけだからと、怖くても両手でぎゅっと小さなナイフを握り続ける彼の手を包み込むように握りしめる。

 

「立ち向かうことが正義じゃない。戦うことが1番正しいことじゃない。格好悪くても、逃げ出してでも、家族に『ただいま』って言えるように『おかえりなさい』って言ってもらうように生き延びることが……1番大切なんだ……!」

 

 ずっと、我慢していたんだろう。堪えていた涙が滝のように流れはじめて武器を捨てて、私に胸に抱きついて泣きはじめた。

 ────あれだけアマゾネスたちを倒してたヤツが何言ってるんだって話だけど、大人のやっている最低な行いを、子どもに引き継がせるのは絶対にやっちゃいけないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 刻み込まれた恐怖は、簡単には払拭できない。起きていても、眠っていても襲いかかる恐怖を超えるには生半可な覚悟じゃいけない、とてつもない勇気を奮い立たせなくちゃいけない。────なら逃げた方が簡単じゃない? 

 

「もう手伝わなくていいなんて……どういうことだよ相棒」

 

「────そのままの意味だよライダー。あとは私たちだけでやる」

 

 ライダーが慌てた顔をしてこちらに聞いてくるけど、私は迷わずに彼の目を見て迷っていないことを伝えながら口にした。不夜城は陥落して、魔神柱と繋がっていそうな黒幕候補はエルドラドのバーサーカー【ペンテシレイア】だけになった。残す所あと1騎となったから、ここにいる男性たちも合わせて全員で挑めばなんとかなるとライダーは言うけど、そうじゃない。

 

「────アイツらを殺しちまったって、それで怖気づいたか?」

 

「そうじゃない。そうじゃないよ……イース、不夜城、そしてここにいる人たちを見てきた。だからこそ信用できない、信頼できない。────あの人たちに私は自分の命を少しだって預けたくない」

 

 協力することになっても、この桃源郷に招かれた時も、誰一人も私のことを心からは歓迎していなかった。むしろ親の仇を見るような目で見られてもいた。

 不夜城からここに戻ってくる間だってそうだ。

 

『…………あんたの……せ……い……』

 

『あんたたちが一緒にいてどうして!』

 

 力尽きる人たちも、帰りを待っていた人たちも、憎しみの矛先を女性(わたし)に向けてきた。あの時はライダーが責任は自分にあるって周りを宥めてくれたけど、それでどうにかなるはずがない。ここに落とされた人たちはみんな、女性に虐げられてきた人たちだ。

 

「明日には発つよ。協力してくれてありがとう、ライダー」

 

「まっ────。ちっ……」

 

 ライダーが何か言おうとしているけど、その言葉を聞く前に小屋の外へと出る。熱くなったなっていう自覚もあるし、少し落ち着きたかったから。

 

『時代が近い、というのもあるのかも知れないね』

 

「時代……?』

 

『今までのレイシフト先は時代も環境も遠く離れた地ばかりだっただろう? そこで触れた死も言ってしまえば未知の世界で起きた出来事だ』

 

 ああ、そうか。明確なボーダーのようなものがあったんだ。この人たちは過去の人たちだって、私とは何もかも違う生き方をしてきた人たちなんだって、だけど彼らは違う、2000年代って時代で生きる人たちの価値観や考え方は私や博樹さんに近しいもので、戦いとは無縁の人たちだった。

 

『戦いが当たり前だからこそ感情の隠し方なんかが上手かった。人の死や理不尽な扱いに不慣れで、感情の扱いに慣れていないのは当たり前だ。まあ、だからって君が我慢しなくてもいい』

 

「ありがとう、ダ・ヴィンチちゃん」

 

 だから逃げたくなったんだ。同じようになってしまうんじゃないかって、呑まれてしまうんじゃないかって思って……。────これで、良かったよね? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「物語を継ぎ接ぎしたような世界、か……」

 

「死にたくない」その一心でこちらに寝返った語り部のキャスター【シェヘラザード】。この世界が伝承や物語を下地として作られた特異点である可能性から、物語と最も関係の深いシェヘラザードが黒幕なのでないかと問いかけると、継ぎ接ぎの世界だからこそ間接的に自分は召喚されたと彼女はそう答えた。

 

「ウルトラマンも、この世界では空想上の物語だ」

 

 本来ならこの地球にウルトラマンも怪獣も存在しない物語の中の存在だ。私とベリアルさんが繋がったことで、遠く離れたウルトラマンや怪獣が存在する宇宙が近づいた。それが原因で怪獣たちもこの世界に来ているんじゃ……。

 そしてここアガルタに2体の怪獣が現れたのは、物語の世界に引き寄せられたから? 

 

「じゃあなんで2体とも不死身怪獣なんだ? ああ〜考えてもわからないな〜!」

 

「すみません。すこし、話をしてもいいですか?」

 

「っと、フェルグスくんか。ああいいよ、どうにも行き詰まっちゃってたからね」

 

 怪獣の関係性に頭を悩ませていると、話があるとフェルグスくんがやってきた。怪獣たちの動向も気になっていたから桃源郷の外にテントを張っていたから側の丸太に座ってもらう。

 

 

「それで、どうしたんだい?」

 

「話を、してみたかったんです。大人である、貴方と。今の世界を生きている貴方と」

 

 自分はどのような王になればいいのか、その答えを見つける道半ばの記憶をもって召喚され、イースと不夜城どちらも別々の志向を持った王が敷いた国を見てきた。

 

「堕落に溺れてはいましたが、見方を変えると明日を夢見ないことによる永続を。猜疑心を強め、正直者だけを残し陰ることのない不夜の永続を求めていました」

 

「どちらも、その国が永遠に続くようにと動いていた」

 

「自分も王になるのなら勿論、国の在り方が永遠であればとそう思います。ですがあの2つの国の在り方は、確かに間違いだと思いました……」

 

 ────理想の国とはどういうものであるか。王位継承権を持って生まれたからこそ、王とはどうあるべきなのか、民をどのように導かなければいけないのか……か

 

「私が背負っていた少年がいただろう? ……私にとって、あれくらいの……年齢の子供はとても身近な存在なんだ」

 

「博樹さんはたしか子どもがいるんでしたっけ?」

 

「ああ、娘と息子がね……。それだけではないんだ」

 

 私の働く駐在署は小学校のすぐ近くにあった。だから、毎日子どもたちの「おはよう」と「さようなら」で彩られた世界だ。それが当たり前で、そんな当たり前の毎日がずっと続くと思っていた。

 

「だから、私にとってそんな『おはよう』と『さようなら』の声が響く世界こそ、永遠に続く理想なんじゃないかなって思う」

 

「おはようと、さようならの声が響く世界……」

 

 答えになったかどうかはわからないけど、これが私が生きてきた世界だ。伝えるだけは伝えた、あとはフェルグスくん自身が答えを出すしかない。

 

「──────っ!!!」

 

「博樹さん? なにか?」

 

「フェルグスくん! 桃源郷のみんなを起こすんだ! ここにリンドンたちがくる!」

 

 隣で眠るプロテアちゃんを抱き上げ、すぐさま桃源郷へ向かって走る。隣を走るフェルグスくんも事態を理解すると飛ぶように走っていった。よし、アリスちゃんはシェヘラザードのところだったな。

 

「カルデアのみんな! 今すぐ2体の怪獣の位置を調べてくれ!!」

 

『既にやっているよ。すごいな博樹くんビンゴだ!!』

 

 2体の怪獣はこの土地の中心部のどこかで戦う。それがここのルール、()()()()()()()。破壊された町が修復されなかったんだ、ルールが変わっていてもおかしくないんだ!! 

 全力で走りながら、ナイザーから光弾を出して木々にぶつけ大きな爆発音を上げさせる。これで眠っているみんなを無理やり起こす。

 

「お、おい! あんた怪獣がくるって本当か!?」

 

「逃げる準備をしろ! 急がないと間に合わなくなる!!」

 

 怪獣がくる。まるでオオカミ少年のように叫ぶ。まだ来てはいないから起こされた人達は半信半疑だけどそれでも言わないよりマシだ。

 そうやって声を上げながら、私は立香ちゃんたちが寝泊まりしている小屋へと走る。

 

『!! おいおい嘘だろ!?』

 

グガアアアアアッッッ?! 

 

 高い岩壁によって隠されていた桃源郷。その岩を破壊しながら、グロマイトが飛んできた。リンドンとの戦闘でたまたま偶然この場所に吹き飛ばされた……訳ないよな。

 まるでここに来いと、そう設定された機械のように正確にこの桃源郷に来るように動かされたように思える。

 

『立香ちゃんたちも避難をはじめた! 君はどうするんだい!!』

「1人でもいいから助けます! 荷物はいい!! 早く逃げるんだ!!」

 

 リンドンも桃源郷へと辿り着き、今日の戦場はここだといわんばかりに両者とも暴れ始める。リンドンの吐き出す炎はここの人たちの食糧源であった果実のなる木々を燃やし、当たり一面すぐに火の海へと変えてしまう。その炎に怒ったグロマイトの吐き出した巨大な岩石は地面に落ちれば大きな揺れを起こし地形を変えていく。

 

「うわあああああああ!!!!」

「た、たすけっ!!!」

「────っ!!」

 

 そんな中、1人でもいいからと救出活動にあたるけれど……。不規則に降ってくる岩石に潰されてしまう人、灼熱の炎に呑み込まれ一瞬で消し炭になってしまう人。あと一歩だった、もう少し早ければ助けられたのに……。

 

『もう限界だ! これ以上は君自身にも危険が及ぶ!! 君もすぐに避難するんだ!!』

 

「っ…………。わかり、ました…………」

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ……これ」

 

 夜が明け、怪獣たちの死闘が終わりを遂げ、踏み入った桃源郷はもう理想郷と呼ぶにはほと遠い。見るも無惨な荒地へと、変わり果てていた。

 

 

 

 





ゲーム本編も漫画も男主人公前提で話が進むので避けては通れない差別問題。
女尊男卑の世界であるアガルタで、奴隷のように扱われ女性に恐怖心を抱く彼らが立香ちゃんに何の感情も抱かないはずもなく……。


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