【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜 作:ちょっつー
インフェルノとの戦いの最中、彼女を守るように出現した怪獣に似た気配を持つ嵐に吹き飛ばされてしまった僕たち。相手の虚を突くことで一気に戦いを終わらせるはずだったのが不可能になってしまったその時に、それは起こったんだ。
「だから出来るぞ?その程度、このオレに任せなさい」
僕の甲に浮かんだ令呪が輝き出したと思ったら、その人は何もないところから姿を現した。白い竜に乗った女性。炎に包まれたこの場所には似つかわしくないローブを羽織った猫耳を生やし、その手にはメイスをもったその英霊が自信満々に出来るぞって。
「えっと……貴方は……」
「オレは"ドブルイニャ・ニキチッチ"。ドブルイニャでもニキチッチでも好きな方で呼びなさい」
落ち着いた話し方。どこかその話し方に懐かしさを感じながらも彼女、ニキチッチさんは僕たちがやろうとしていることを理解しているのか武蔵さんに話かける。
「あの女戦士の元へお前を連れていけばいいのだろう?乗れ、我が愛馬ならばそれができる!」
「へへへ、美人を背中に乗せるとなったら本気だしちゃうぜぇ!」
「ん〜〜。何だかんだわかってないけど了解しました!よろしくニキチッチさん!!」
今竜が喋っ……ってそんな場合じゃない!令呪が輝いたってことはニキチッチさんと契約してマスターになったのは僕だ。何が出来るのか、何をすればいいのかわからないからマスターの先輩に急いで聞きに行く。
「立香、僕はどうすればいい!」
「え?……そっか、最大限まで魔力を、ってそれも難しいよねう〜んとう〜んと……」
武蔵さんを背に乗せて高く飛び上がったニキチッチさん。そんな相手を見てすぐに迎撃するために弓を構え、無数の矢が迫る。だけど当たらない、地上と違って自由がきいて逃げる場所の多い空中だから炎の雨も直撃しない。直撃しそうになっても武蔵さんが刀で、ニキチッチさんがメイスで弾き飛ばしてる。
令呪があるっていうことやマスターやサーヴァントのことは聞いてたけど、魔力とかそういう細かい所の使い方とかはまだ聞けてないっていうか英霊を召喚出来てないからわからなかったって所が大きい。まさかこんな土壇場で召喚出来るなんて……。
「そうだ!」
「集中しろよ愛馬よ。少しでも間違えばお前の翼が蜂の巣だ」
「了解っす。呪いでこんなんなっちまいましたけど翼にも痛覚あるからナァ〜っと!!」
"ドブルイニャ・ニキチッチ"ロシアの英雄叙事詩ブィリーナに語られる
ロシアの英傑、この日の本にも朝倉リクとも縁もゆかりもないニキチッチが召喚されることは本来ならばあり得ない。だが、ニキチッチは聞いてしまった。
(
ベリアルの息子。必然的に父はベリアルである朝倉リクだが、本当は少しだけ違う。リクには父親と呼ぶべき人がもう1人いるのだ。その人物は、彼に"朝倉リク"という名前を与えてくれた
両親がいない中で育った朝倉リクにとっての父親像とはその2つが入り混じったものだ。自らの運命を乗り越えた後、ベリアルが助けてくれたような夢幻しを見るのもきっとそんな思いが混じり合っているから。そして今回も……。
「さあ行くぞ愛馬よ!!武蔵、目を閉じるなよ!!」
「ええ!任せるわよニキチッチさん!!」
【令呪を持って命ずる!!彼女の怒りを、怨みを、悲しみを!鎮めてくれ!!】
地上から届いた声、そしてその声に乗って届いた高濃度の魔力がニキチッチと竜の呪いによってその姿が竜へと変わった
「ああ、ああ!やるぞ!武蔵、我が愛馬よ!!」
(疾い!?ですが私には
インフェルノが矢を打ち終え次の矢を違えるその一瞬の隙を狙い、令呪によって強化されたニキチッチたちが風よりも疾く接敵する。流石のインフェルノもその速度に怯むが彼女には自らを守る嵐の障壁がある。
「そんなもの、このニキチッチの前では障害にもならんわ。はあっ!!」
「────ッ!?」
一振り。愛馬から飛び降りたニキチッチが全力の力で振るったメイスは嵐の障壁を完全に破壊し、インフェルノの甲冑の一部すら砕いて見せた。その大振りの一撃で隙が生まれてしまい蹴り飛ばされてしまったがしっかりと彼女を
「後ろか卑怯者よ!!」
「残念、こっちはハズレだぜ美人な姉さん?」
「────!?」
「本命はこっちよ!!」
背後から迫る愛馬に勘づいたが、その背に武蔵はもういない。彼女はニキチッチが飛び出したと同時に飛び降り、最初からこの一瞬だけを狙っていたのだ。後ろから迫ってくる竜に正面から迫ってくる武蔵。どちらを先に対処しようにも一手遅い。ニキチッチが砕いた甲冑の隙間から、武蔵の刀が振り下ろされた。
(手応えあった!!とったわよアーチャー・インフェルノ!!)
「あああああ未だ、まだ!!宝具展開……"
ガンッ!!最後の意地で立ち上がっているのか、インフェルノが残る力全てを使ってでも満身創痍の武蔵を葬ろうと宝具を放つため弓を違えた、その時だった。遠くから飛ばされたメイスが彼女の手に握られた弓にぶつかり、宝具の発動を防いだ。
「鎮めろという命だからな。そんな怒り狂った顔で思われても夫が悲しむぞ?オレも愛する妻には笑っていてほしいからな!」
「そうね。今の貴女にその言葉は言わせてあげられない、ねえ?"巴御前"様」
「……人を盾にし、愛馬を囮にする……ずいぶんと、卑怯な手がお好きなようですね」
「卑怯結構。アーチャー・インフェルノ、ここに成敗仕った」
「立香!リクくん!!」
「はあ、はあ……」
「なんとか…………勝てた……」
インフェルノを打ち倒したことで赤い月は晴れ、荒れ狂っていた炎も瞬く間に鎮火した。空を飛んだことで亡霊たちの狙いが立香とリクに集中していた中、武蔵たちに心配をかけさせまいと何とかギリギリの所で耐え抜いていた2人は今にも気絶しそうなほど疲弊していて立っているのもやっとだ。
「ありが……とう。ニキチッチさん……願い、叶えてくれて……」
「ん……。今は休みなさい、お前の優しい心は彼女に届いていたよ」
『感謝する。巴を止めてくれて……』
夢だ。インフェルノ────巴御前が土気の城下町に現れた時に僕の夢の中に現れた鎧武者。あの時は赤い面頬に兜を被っていたからその素顔までは分からなかったけど、今はその2つを外して素顔を晒している。
彼は僕に言ったんだ。『あいつを止めてくれ』自分は其方に赴けないから荒ぶる炎になってしまった彼女のことを、このままでは薪となり燃え尽きてしまう彼女のことを救ってほしいって。だから僕は願ったんだ、あの火を鎮めてほしい。
『あれはどうにも不器用な女だからな……』
"巴御前"────彼女、アーチャー・インフェルノの真名。愛する夫が討たれるその寸前まで連れ添い、その最期まで彼を想い真言を唱え続けた一騎当千の戦姫。そして僕の夢の中に現れたこの人は、そんな彼女が愛し続けた────
"義仲"さんは、怖くなかったんですか?
『む?』
彼女は、人じゃなかった。僕と同じまがいものだ。多様性だなんだ言われても、自分とは違うものがいたら遠ざけようとする。外国との交流すら絶っていた昔だったらその感覚はより強いはずだ。だけど義仲さんは、彼女を愛しているって曇りない眼で言い切った。
『リク殿。これは私の自論でしかないのだがな?血など関係はないのだ」
え?
『種族に関わりなく、人の世を乱すのならそれを討ち。平穏を望む善良なものならばそれが例え鬼だろうとも宙からの落とし子だろうとも誅するべきではない』
その言葉に嘘偽りは一つもない、彼はそれが普通であるかのように言い切った。宙からの落とし子、夢の中だからかな?彼には僕の迷いや悩みなんてお見通しだったみたいだ。
確かに、僕の身体に父さんのベリアルの血が流れていることは変える事の出来ない事実だ。だけど、どう進むのか、進めばいいのかを決めたのは僕自身だ。
『いい顔だリク殿。私はこれで失礼しよう。あまり待たせると巴が悲しむからな』
はは、そうですね行ってあげてください。ありがとうございます義仲さん、夢の中だったけど貴方に出会えて良かった。僕のことを受け入れてくれてる大切な仲間たちはいるけど、僕と同じような境遇を持つ人を心の底から信頼して、愛して、受け入れてくれるそんな貴方と偶然でも巡り会えてよかった。
『君に、旭の輝きがあらんことを』
ドブルイニャ・ニキチッチ
リクの呼び声に応じて召喚されたライダークラスのサーヴァント。史実は男性で本人も男性だと主張するがその姿はどこからどう見ても女性のもの。
本来この姿で現界するのはリクと同じような
立香はカルデアのバックアップがあるため契約した英霊たちのステータスが軒並み高いが、リクの場合は魔力以外にも普通の人とは特異な部分が多いためなのかニキチッチのステータスが大幅に上昇してる(士郎アルトリアと凛アルトリアくらい違う)。嵐の障壁を易々と破壊できたのもそのため。
木曽義仲
イケメン。顔だけじゃなく心すらも揺るぎないほどのイケメン。サムレムコラボの時一番望んでいたといっても過言じゃないほどにかっこいいお方。FGOでも巴さん関連でたびたび話題に上がっていた中で逸れのセイバーで参戦。今回下総に現界できなかったのはインフェルノが心の底から拒んでいたのとリンボが対策となる存在に対して抜け目なく用意していたから。異分子であるリクくんが巴さんと同じ混ざりものの人間だったのが幸いして夢の中に姿を現した。
虹の蛇神さんといい義仲様といい去年追加された面子が多いような気がするけど気のせい。きっと気のせいです。
インフェルノ戦が終わったのでここで一旦更新ストップです。次回パライソ戦でお会いしましょう