【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜 作:ちょっつー
「見て小太郎。声が聞こえる」
「そうですね、主殿」
最後の決闘。燃え盛る厭離穢土城の中で行われた武蔵ちゃんと佐々木小次郎の一騎討ちを見届けた私は、元の土気城の残骸から抜け出すと町の方から聞こえてくる歓声に驚いた。
視界を遮る大きな建物もないこの時代、見渡せば木々や山々が一望出来ていたのにそれすらももう無くなっている。妖術師が神と呼んでいたあの怪獣が引き起こした大嵐によってこの土気の町の以外は全部更地に変えられてしまった。
ベリアルさんが怪獣を倒してくれたお陰で嵐は収まったけどその傷跡はものすごい。洗い流されなかった土気の町も、屋根は吹き飛ばされ、ひどいところは小屋ごと吹き飛ばされてしまった場所もある。復興するのにも時間がかかるだろうに、それでも彼らは笑っていた。
「みんな強いね。こんなに絶望的な状況でもめげずに立ち上がって、明日に向かって進もうとしてる」
「それは主殿も同じかと」
この謎の特異点の異常が終わって、後数分もしないうちにこの夢は覚める。私はこの場所での出会いを忘れないように振り返っていた。武蔵ちゃんと再会して、村正さんやおぬいちゃんたちと出会って、リクくんとも……。
「そういえばリクくんも元の世界に帰れたのかな?」
「彼も主殿と同じように引き寄せられた者。であるなら、この地の異常が収まったのなら自然とそうなるのでは?」
「そっか。もっとお話したかったな……」
リク、朝倉リク。歳が近いしなんだか落ち着く雰囲気もあったしもっと話してみたかったような……。どうしてマスターになったのか〜とか戻ってダ・ヴィンチちゃんに説明したな何かわかるのかな。
「彼は武蔵殿。縁は結ばれました、主殿が歩き続ける限りいつか何処かで巡り合うかもしれませんね」
「うん。そうだね、その時はみんなでうどん食べよっか! 武蔵ちゃん食べたいって言ってたのに結局食べれてなかったし!」
「ン、ン、ン。ンンン────」
土気の町よりも外。ニジカガチによって全て洗い流され更地になった土地を、その者は歩いていた。英霊剣豪が一騎キャスター・リンボを名乗り、最期は立香たちに引導を渡されたはずのその男が何故。
「おのれ、おのれ、おのれえええええええ!! 下総に集った刃の者共だけではなく、この私手ずから妖術師へ導き申した神すらも破れるとは!!!」
憤慨していた。子どものように地団駄を踏んで怒りをあらわにしながら。この地へ降り立ち、ニジカガチの伝承と腕輪を見つけ妖術師に吹き込んだのは彼だったのだ。
英霊剣豪も、ニジカガチ降臨も、失敗することなどないこれ以上にない最高の策略だった。それをあろうことか全て、尽く踏み潰された男の怒りは計り知れない。
「星見の展望台も観測できぬ地。先の見えぬ行き止まりの異聞の地、ここならば或いは! マスター一人の介入は許しても彼の巨人も、怪獣も介入出来ぬと踏んだのが…………ンンンンンン──────!!!」
男にとって立香がこの地に迷い込むことは想定済みだった。むしろ夢の中というもっとも無防備な魂の状態でこの場所に来てくれることは願ってもいないこと。彼の計画の何よりも異分子は朝倉リク、ウルトラマンジードだった。
「魔術王の企みを阻止した闇の巨人ではない神々しい迄の輝きを放つ忌まわしき巨人!! 此奴は危険すぎます、ええさしもの我が神の喉元にすら届いてしまう程の脅威!!」
妖術師に仕えていたのではない。寧ろ操る側に立っていた男は、自分を従えている神にすら届きえないとジードに脅威を感じていた。最後に見せたあの姿、ウルティメイトファイナルは危険すぎると……。
「あの者は必ずや邂逅するでしょうええしますとも!! ですがご安心ください我が神よ!! この私────
あの棍を封じるのです。そしてもう一つは…………」
芦屋道満。男の両手には術式によって護られた、封じられた別々の何かがあった。片方はその中で嵐を起こしているその様子からニジカガチの何かに違いないだろうが、もう一方は……。
「虹の神の残光も、彼の巨人の血液も!! この私の手の中に!! ン、ン、ン、ン、ン、ン。ンンンン────!!!」
「あっ! よかったぁ、目が覚めたんだねリク!」
「ペ……ガ……? ペガ!!
ニジカガチを倒した後、空に飛び立つといつの間にか意識を失っていて、目が覚めるとそこにはペガの顔があった。
起き上がって辺りを確認するとそこは下総国じゃなくていつもの秘密基地の中、宇宙船の中だった。
「リク、ずっと眠ってたんだよ?」
「眠ってた?」
『はい。リクが眠りについてから目覚めるまで3840時間48分経過しています』
「へ? それって……」
160日……。そんなに長い時間眠っていた? 下総での日々は一月ちょっとだったはず……それだけ時間にずれがあったってことなのかな。
う〜ん考えても仕方ない、今はそれよりもだ!
「ペガ、レム。二人に聞いてほしい話があるんだ」
「なに?」
『それよりもまずリクの健康状態を』
「そっちは後でいいよ。今話しておかないと、言わないで逃げちゃいそうだし……」
改まって言うの、何だか恥ずかしいな……。けど! 言うって決めたんだ、ジードだ僕!!
「実はさ、ベリアルがいるかも知れない宇宙。彼処へは僕一人で向かおうとしてたんだ」
「えっ!? なにさそれ!」
『聞き捨てなりません」
ペガとレムの怒号が響いてくる。そりゃあそうだよね、二人は着いてきてくれる気満々だったんだからそんなこと言われたら怒るに決まってる。だから、黙って向かおうとしてた。
ウルトラマンヒカリに作って貰ったウルトラカプセル。あのカプセルの力を使えばワームホールを作り出してあの宇宙の壁だって超えることができる。だから僕がジードになって向かえばいい〜なんて思ってたんだよね。
「ふたりとも落ち着いてよ! 今はもうそんなこと思ってないから!!」
「『本当に(ですか)?』」
「うん。夢の中の出来事だったかもしれない。だけど、とても大切なことを思い出したから」
一人でも、大丈夫だと思ってたんだ。今の僕ならなんとかなるって自信があった。けどその自信は驕りだったんだ。
「僕は中途半端で、悩むし迷うし間違える。ダメダメな僕には二人が必要なんだ。だからお願い! この先も一緒に行って欲しいんだ!」
「はあ。まったく、君は変わらないね」
『はい。考え過ぎて直ぐにうじうじとするのはとてもリクらしいと言えます』
「な、なんだよそれ!」
「こ〜んな遠くの宇宙まで一緒に来たんだよ? どこまでだって一緒に着いていくさ! リクに断られたってペガ、影の中にこっそり忍び込んじゃうから」
『私も、リクにつけている発信機をもとに追いかけましょう』
は、発信機!? い、いつの間にか付けたんだよ! どこだ、服の裏とか? それとも…………こっそり身体の中に……!
『冗談です』
「な、なんだ。びっくりさせないでよ……。よ〜しっ! それじゃあみんなで行こう! ジーッとしてても、「ああ待ってリク!」ドー……したんだよペガ」
折角覚悟を決めて出発だ! ってなったのに邪魔してくるんだから……。へ? あっち? あっちってお風呂場だけど……。
「いや〜! すごいわね現代のお風呂って! お湯がバシャーっと出てきたり石鹸なんてすごい泡立っちゃって! あ、リクくんお風呂使わせてもらったわ」
「へ? むむむむ、
しかも着てるの僕のドンシャインの限定Tシャツ!! ああドンシャインの顔が歪んじゃってる!! あれ激レアなのに……。
そそそそ、そんなことよりどうして武蔵さんがここに!? どうやってきたの?
「いや〜あの後穴にポンっと入ったらここに繋がってたのよね。そこのレムちゃんに最初攻撃されて焦りましたがリクくんのことをお話して何とかって感じ?」
「は、はあ〜」
『にわかには信じられませんでしたが、彼女はリクのこともウルトラマンジードの事も知っていました。それに悪意は感じられませんでしたし』
「リクがもう少しで目を覚ますって教えてくれたのも彼女なんだ」
「あ、ああ。うん……」
「よぉ〜し! それじゃあ改めまして立香たちのいる宇宙へ出発進行よ!!」
「あ! ちょっとそれ僕の台詞!! とらないでよ〜!!」
英霊剣豪七番勝負、終幕です。ありがとうございました。
リンボが何か企んでたり一番渡しちゃいけない遺伝子手に入れてしまったりと危険が危なかったり、何の因果かリクたちの宇宙船に武蔵ちゃんが迷い込んできたりしてますが無事に!終わらせることができました。
次はセイレムなんですが、もしかしたらダイジェスト気味に終わらせるかも?
アビーちゃん→扉の先のあれ→ウルトラ世界のあれ→邪神降臨
とかいうヤバ過ぎるあれだし、あのセイレムの事象面倒くさいんですよね……