【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜 作:ちょっつー
雨にも負けず作者も並んでますが、暇つぶしにでも読んでくれると幸いです。
『進め……』
『進め……』
『進め……』
『進めえっ……』
『『『『『進めっ!! ─────!』』』』』
────◇◆◇────
(…………何が………起きたのだろうか? )
うっすらと、ぼんやりとだが意識を取り戻した。
今にも意識が飛んでしまいそうなほど朦朧とした意識の中で、誰かに進めと、立ち上がれと言われた気がした私は、自分がどんな状況になってしまったのか思い出していた……
"人理継続保障機関フィニス・カルデア"
2016年をもって人類は絶滅する……らしく、その原因を解決するためにレイシフトと言うタイムマシンを使って過去に飛んで間違った歴史を正す。
そのために集められたうちの一人が私だった。 日本の都内で警察官として働いていた私は、署に来ていた献血サービスを興味本位で受けてみたところいつの間にかここ、カルデアに連れてこられていた。
どうやら献血サービスというのは名ばかりの真っ赤な嘘で、本当はタイムスリップをするための人材を探す適正試験だったのだ。その試験に偶然通った私は、担当の人に協力を要請された。
もちろん最初は丁寧に断らせてもらった。私には結婚してもうかれこれ20年になる妻に、今年で高校を卒業する娘、10才の息子というごく普通の家庭を持っているのだ。出世の話があっても自分の任された地域を守りたいという単なる我儘で巡査部長どまりのまま42とずいぶん歳を重ねてきたが、後悔はない。
小さな頃から憧れだった光の巨人─ウルトラマン─を、娘や息子と共有した趣味で楽しめるのはうれしいからな。
ギンガとビクトリーの後に続くウルトラマンはどんなウルトラマンなのか楽しみだというのも1つの理由だ。
だからと、断ったはずだったのだが…………
悪い癖なのだろう、相手が本当に困っているとつい手を差し伸べてしまう。このせいで警察でありながらなんど通販詐欺にあいかけ妻に叱られたか…………
まあ、そんなこんなで私は出張という扱いでこのカルデアにやってきた。
集められた適性者は合計で48人いるらしく、どうやら私は47番目らしかった。集められた殆どのメンバーが魔術や過去の英雄を召喚することに詳しく、まったく知らないのは私と48番目の娘と年の近い女の子だけで、私たちは数合わせとして呼ばれた補欠なのだとか……
48番ちゃんはカルデアについたばかりで疲れていたのか、ミーティング中に立ったまま眠るという器用なことをして実験のメンバーから外されてしまった。
私も知識が追い付いていないので辞退させて貰おうとしたが、なんでも私のタイムスリップするための適性率は非常に高かったので参加は強制なんだと……
あの時、無理にでも断っておけばこうはならなかったかも、知れないな…………
50が見えてきたおじさんには恥ずかしい体の線がハッキリと出る、月刊ヒーローズに連載してる「ULTRAMAN」に出てくるウルトラマンスーツみたいで少し興奮を覚えたが……
そんなスーツを来てタイムスリップするためのポットに入り起動を待っていると、聞いたこともない音と光に包まれていた……
気がついたときには体はピクリとも動かず、タイムマシンの割れた隙間から見えたのは炎に包まれる空間だった…………
目に映るのは炎、炎、炎。 熱さを感じないことからもう私は長くないんだと……そう予期させる。
(ああ…………私はこのまま死んでしまうんだな…………? )
天寿を全うしたいという気持ちはあったが、もう42だ。 充分生きたほうだろう。
綺麗に視界が開けたのは一瞬で、目の前の映る景色はおぼろ気で、いつ意識が飛んでもおかしくないような状態だ…………
『貴様は、そのまま死ぬのか? 』
何処からか、声が聞こえた…………
死ぬときは走馬灯というヤツを見ると聞いていたんだが、ああ最期だから幻聴でも聴こえてしまうようになったか
それともこの年になってまでウルトラマンが好きすぎて幻覚でも見ているのだろうか……?
私の目の前に、球体のようなものが浮かんでいるように見える。
『理不尽な死を貴様は受け入れるのか? 否定もせず、抗いもせず、生を放棄するか? 』
(ははは、こんな状況で奇跡が起こるわけでもないんだ……。 だてに42年も生きてきてないよ、現実ぐらいみえる)
『この惨劇を起こしたものに復讐したいとは思わないのか? 憎しみを、妬みを、恨みを抱かないのか貴様は』
(恨みっていっても…………誰が起こしたのかもわからないしな………。そもそもこれ、事故なんだろ? それならしょうがないだろ…………。 毎年事故でどれだけ人が死ぬのか知ってるからな………… )
『つまらない……。 偶然に呼ばれたかと思えば、オレの声が届いたのはこんなにもつまらない存在だったとはな。 ──興醒めだ 』
(ああでも………… )
『──なんだ、オレは気が長くもつほうではない。 言いたいことがあるならはやくしろ 』
(ははは、私の幻覚だというのに手厳しいものだな……そうだな、2017年以降の未来が訪れない、だったか…………? それは嫌だなと思ってな…… )
『────それは何故だ? 生を放棄した貴様に、未来など元より無いだろう 』
(娘の花嫁姿をまだ見ていないんだ。どんな人を連れてくるかは分からないが、絶対に一発殴ってやると、決意していたんだけどなあ…… )
『…………』
(しかもさ、娘は私のことを見て警察官を目指すっていってくれてな……。 警察官になった娘と並んで写真……撮りたかったな……
私はさ、ウルトラマンの宇宙警備隊ってあるだろ? あれに憧れて警察官になったからさ。 娘のおかげで、ようやく自分も憧れられる側になれたんだな~って……)
何でこんなに自分のことを語ってるのか、自分でも分からなかった。 けど、不思議と止める気にはならない。
(息子はさ、まだ10才だから将来の夢とかそういうのは明確じゃあないんだ。 けどさ、毎年ヒーローになりたいってそう言ってるんだ。まるで昔の私みたいにさ……。 ウルトラマンにはなれないけど、警察官や消防士、どんなヒーローを目指していいから、それを助けてやれたら、最高だろうな…… )
本当に些細なこと、自分がやり残したというよりは、思っていただけで口には出していなかったこと……
(私のせいなんだがな? イベントや劇場を見に足を運ぶことばかりで、夫婦2人の時間があまり作れていないんだ。 こんなウルトラマンをずっと諦めなかった男と、小さな頃からずっと一緒にいてくれた大切な人だからな、この仕事から帰ってきたら2人だけで旅行しようって話をしてたんだ……… )
何よりも大切な家族のこと……。 2017年以降の未来がないと言われた時、一番考えたのはやっぱり家族のことだった。 だから、そのことを一番に伝えたかったのかもしれない。
(姪や甥もな、ヒーローおじちゃんなんて言ってくるもんだから可愛くてついおもちゃを買い与えたりして、姉さんや兄さんによく怒られたりしてな…… )
(後輩のほうが役職が上なくせに、私に頭を下げたりするんだぞ? やめてくれと言うんだが皆やめてくれなくてな )
遺言のような、家族のこと伝えてからは、他愛もない話を続けることにした。
喋ることを止めてしまったらもう目覚められないと思って、私が見てる幻覚だっていうのに……
娘のこと、息子のこと、妻のこと……甥や姪、仕事の後輩のこと等たくさんのことを話続けた……
『…………ふっ、いいだろう。──貴様に見せてやる。──何の価値もない平凡で平和な未来とかいうつまらないモノをな 』
その声を聞いて、私の意識は閉じてしまった。
最期に感じたものは、火の手が自分の手を燃やし尽くす感覚と…………燃える炎よりも赤黒く輝く光の球体が私を包み込む熱さだった…………
「「英霊! カプセルナビ!! 」」
「記念すべき最初のサーヴァントは……こちら!! 」
「わたし、『マシュ・キリエライト』についての説明ですね。 頑張ります! 」
『マシュ・キリエライト 英霊と人間が融合したデミ・サーヴァントです。 身の丈以上の円形の盾を武器にして戦います』
「と、言っても私に力を貸してくれた英霊の真名もわかっていない未熟者なのがわたしです 」
「それでも、マシュは私のサーヴァント。 頼りにしてるよ!! 」
「はいっ! 先輩!! 」
「それじゃあ今日はこのへんで〜 」
「「次回も見てねえ〜(見てください! ) 」」