【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜 作:ちょっつー
ウルトラマンジード24話 ベリアルvsゼロ
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「まあ! ここからなら、この街を一望出来るのね、素晴らしいわっ!! 」
石造りの屋根の上、マリーが言うように市場、広場など、サーヴァントの目を持ってすればローマの都市が一望できるその場所にべリアルは座っていた。
「何をしに来たのかと、オレは聞いている 」
べリアルは、隣でキラキラとした顔を浮かべるマリーに睨みを利かせるが、なに食わぬ顔でマリーはべリアルを見つめる。
「やっぱり……。 ねえ、べリアル? 貴方はどうしてそんなにも悲しい目をしているの? 」
「…………キサマは何を言っている? 」
「だって、貴方のその目から……ひどく孤独を感じるもの 」
「孤独……こどくか…… 」
マリーの言葉を聞いたべリアルは、その腰を上げると、その指先をマリーの首に突きつけた。
「いいかマリー・アントワネット。 強さとは孤高の上に成り立つものだ。 友情だの愛情とかいう生温いものは弱点にしかなり得ない!! 」
オレの力ならお前の首を簡単に落とせると、断頭台によって死を迎えたマリーに向けて殺意を向ける。
けれどマリーは臆することなく、向けられたその手を両手で包み込むように掴む。
「貴方の言うとおり、愛は弱点になるのかも知れない……。フランスそのものしか愛せなかったから、だから私は愚かな王妃として生涯を終えた 」
「ならキサマは憎くないのか。乞うて王妃にしたにも関わらず、捨てられたキサマは民が憎くないと言えるのか 」
「ええ私は、私を殺した民を憎んでいません。 だってそれが望まれたことだもの 」
「望まれた……か。 ならそのレールの上にはなかった息子の死はどう説明する 」
揺るがない王妃の瞳に、陰りがさす。 聖女のような考えを語るマリーは、ベリアルの言葉を聞いて王妃ではなく、ひとりの親としての感情を露わにする。
王妃を処刑するために利用され、王子であることを否定され殺された“愛のキャベツ” 。 彼のことが脳裏に浮かんだのであろうマリーは、いつも浮かべる天真爛漫な笑顔を潜めた。
「ええ──それは、そうね。 ──ほんの少しだけ憎んでいるわ 」
「それが弱点だと言っている。 どんなに綺麗事を並べようと愛なんてものを持つからこそ、弱点を突かれ落ちていくことしか出来ない。 この国もそうだ、あの女の愛は民には理解されず、滅びゆく未来しかないなかで平然と笑っている。 」
「けれど──それは愛の中にある一側面でしかないわ。 愛には恐怖や不安、悲しみ、絶望から立ち上がる力をくれる。 だから私はこの首が落とされるまで毅然としていられたのだもの 」
「ああそうか。 それがお前か、
マリーに掴まれた手を払いのけると、べリアルはマリーに背を向けて離れていく。
「ふふふ、マリーとは呼んでくださらないのかしら? 」
「……その名は、このオレが最も嫌う名の1つのだ。 キサマをその名で呼ぶことは決してない 」
そう言ってべリアルは、マリーの視界から見えない場所まで一瞬の内に離れていった。
「愛を嫌うのは、その愛を知らないから……。 でも、貴方が彼女たちを見るあの目は……私があの子たちへ向けていたものに、とても近しいものよ。 べリアル 」
────────────
(これが、オレが望んでいた宇宙支配か? 終わってみれば呆気なかったが──何故だ? 満たされない……何かが足りていないのか? )
銀河皇帝を名乗り、各惑星を侵略していったベリアル。 カイザーベリアルとしてマントを羽織るようになったからか、その姿がどこかエンペラ星人と被る時がある。だけど、そんなベリアルの心は晴れていなかった。
空は厚い雲に覆われ、その下には雨が降り続いている。 やっと分かった、ベリアルの精神を私が共有しているなら、これは彼の心の形なんだ。
宇宙を支配しても、ベリアルの心は満たされない。 だからこそその飢えを満たすために、別宇宙へと侵略する装置を開発して、ダークロプスを光の国へ送り込んだんだ。
『陛下。 炎の海賊どもを始末しようとしている中、ダークロプスによく似た青色の戦士が邪魔を……陛下? 』
『ようやく、テメーもこの宇宙に来たかあ……。 疼く、疼くぜこの傷がああ!! 』
ダークロプスに込められた憎悪の念を辿って来たんだろう。 ダークゴーネの言葉から、ゼロがアナザースペースに足を踏み入れたことを理解したベリアルの心が荒ぶり始めた。
降りしきる強い雨の中に、怒りを現しているような黒い雷が鳴り始めた。
プラズマスパークの力によって受けた一撃、顔に出来た一生の傷を抑えながら、その憎悪の感情が増大していくベリアルは、今まで満たされる事のなかったなかった何かが満ちていく感覚に笑みを浮かべ興奮していた。
『やはりこのオレ様の心を満たすのは戦いと、ウルトラ戦士どもへの憎しみだけか!! 』
違う! 間違ってる!! それは埋め尽くされてしまっただけだ! 足りなかったものなんかじゃない!! 復活を果たして、ゼロに敗れた怒りを憎しみの力へと変えるベリアル。 止めたくても、私の声は……ベリアルに届かない……、こんなにも近くにいるのに……何も出来ない……ただ見ていることしか……出来ない……。
自分の不甲斐なさに涙していると、人間の身体を借りたゼロを捕らえることに成功したという報告が届いた。 セブンのようなメガネ型の変身アイテムを奪い、ウルトラマンへの変身することすら許されないゼロに対して、ベリアルはゼロがこの宇宙を渡っていく中で出来た仲間が消えていく様を見せていた。
『ベリアルの思い通りにはさせないよ! 必ず助けに行くからね!! 』
『ゼロ! 気をしっかり! 必ず助けますからね!! 』
けれど、ゼロとベリアルの目に映ったのは絶望なんかじゃなかった。 数えるのも億劫になるほどの帝国軍に襲われながらも、ゼロを助けることを諦めない希望だった。
ぽちゃん
憎しみで染まった暗闇の中に、一粒の雫が落ちてくるような、そんな感覚。 その雫は暗闇の中に波紋を広げ、大きく広がって行く。
希望は伝染する。 どんな小さな命でも、諦めず立ち向かう心があるなら、その希望は誰かの心に新しい希望の花を咲かせることができる。
『ずいぶん、探しましたよ 』
自分よりも小さな命、守らなければ行けない彼らが諦めずに、ゼロを助けようと死力を尽くしている。
人の持つ心の強さに感動し、どうしてセブンたちが人を守ろうとしたのか理解したゼロが流した一筋の涙。
それを見て、ベリアルの心が揺らいだ。
(何なんだ? 何故コイツらは諦めねえ。 疼きやがる……ゼロにやられた胸の傷じゃあねえ、これは……オレのカラータイマーか? )
その涙が起こした奇跡、ベリアルの闇に囚われたはずのミラーナイトが、帝国軍の包囲網を潜り抜けてきた2人の友達がゼロのこと助け出した。
絶対にありえないと、そう確信していたベリアルはその奇跡の連続を見せられ胸が苦しみだした。
何かを拒むように、ベリアルの心が、闇が暴れ出した……。
『ゼッテエ許さねえっ!!! 』
『地獄に堕としてやる!!! 』
カラータイマーの、心の疼きに目を向けることなく始まってしまったゼロとベリアルの激闘。 お願いだゼロ!! ベリアルを、この人を闇から解放してやってくれ!!
けど、私の声は届かず、その願いも叶わない。
ここに来るまでに、成長し、強くなったゼロの攻撃は怪獣墓場で戦った時よりも洗礼されていくが、ベリアルはその上を行っている。ギガバトルナイザーは失った状態でありながら、いや無くなったからこそ、ベリアル自身の本当の力の前にゼロは苦しみながらも立ち向かっていく。
『デエヤッ!!!! 』
『はっ! ゼアッ!! 』
ベリアルの前では必殺技──ツインゼロシュート──すらも届かない……。 ベリアルが腕をL字に、手のひらをゼロの方へと向けて放つ光線技──デスシウム光線──。復活した時に戦ったウルトラ戦士が使っていたのを見ただけで覚えたその技は、ゼロの必殺技すらも覆いゼロに襲いかかった。
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『ウオオオオ! ネエェロォオオ!!! 』
『こうして戦場の真ん中で話がしたかったんだ。 ネロ・クラウディウス、君とね 』
あれから私たちは、ネロの叔父さんだというバーサーカーの皇帝“カリギュラ”。ネロと話をするためだけに戦いを迫ってきた“アレキサンダー”と“諸葛孔明”という2人組のサーヴァントを打ち倒した。
完全勝利って言うには程遠いけど、勝つ事が出来た私たちがローマに戻ってくる頃には、次の進軍のための準備が整えられていた。
ステンノ様っていう女神様と出会えたお蔭で、今までどこにあるのか分からなかった連合帝国の首都がどこにあるのかが判明した。
そのこともあって、流れは完全にこっちに来てると確信したネロは、直ぐにでも進軍出来るようにした。
「皆の者!! ここまで良くぞ頑張ってくれた!! これで最後だ!! 連合ローマの首魁を討ち倒し、余のローマこそが真のローマであると知らしめようではないか!! 」
ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
みんな凄まじい熱気を帯びている。
けど、その熱気は打ち倒すべき相手、連合ローマの首魁が現れたことで急激に冷まされてしまった。
「過去、現在、未来。 すべてのローマがお前を愛している。 さあ、おいで 」
その声は、それが当たり前なんだって、自分に間違いはないんだって、そうネロに語りかけた。
兵たちを鼓舞するネロの声、その声に反応するように堂々と現れたのが、そのサーヴァントだった。
手に持っていた槍のような武器を地面に突き刺し、両手を大きく広げなら、大地を噛みしめ、ゆっくりと歩き、戦場の中心でそのサーヴァントはネロに語りかけた。
ローマを守る必要なんてない、永久に続くことが約束された連合帝国に来いって
行く必要なんてない、そうしたら今までの戦いが無駄になる。 私でもそれが分かっているけど、私の隣に立っているネロはその言葉に耳を傾けてしまう。
神祖“ロムルス” あの英霊は、連合帝国を統べる首魁、そしてローマそのもの。 ローマという国を建国した王であるロムルスの声は、その姿はローマに生きる人々にとって絶対的な存在感を示してみせた。 現にネロはロムルスの姿を見ただけで怯え、震えてしまってる。
ブーティカさんが言った虫が集まる光のようだって、まさにその通りでロムルスの存在そのものが抗うことの出来ない誘惑になってる。
何とか動ける私たちだけでもって思って、駆け出そうとした。
「え!? なんで…… 」
「身体が……動きません!! 」
「何だってのよ……!! 」
突然として、私たちの身体が動かなくなった。 ロムルスの威圧感に圧されて動けなくなってしまったとか、怖くて足がすくんで動けないとかそんなんじゃない。
まるで金縛りにあったみたいに、動かそうとしても指の一本も動けなくない。
こんなことできるのって……。 頭の中である人のことを思い浮かべていると、私の肩に誰かが手を置く感触が伝わってきた。
「お前たちは邪魔だ。 そこを動くな 」
「ベリ……アルさんっ!? 」
やっぱり、私たちのことを動けなくしたのはベリアルさんだったんだ。 ベリアルさんはロムルスの方へ1人歩いていく中で、いつも持っている黒き鋼を後ろに向かって放り投げた。
「持っていろ 」
「え!? ちょ、ちょっとベリアルさん!? 私動けない!! あれ? 動ける!! ってわあああああ!!! 」
「先輩!! 大丈夫ですか!? 」
「な、何とか……キャッチ出来た…… 」
「何用だ。 愛しき我が子の1人を殺めたお前が、我が前に立つその意味分からぬわけでは無いだろう 」
「当たり前だ。 だがな、貴様にこのオレを殺すことは不可能だ建国王。 だが、貴様の邪魔をする気はない、ただこの問いに答えるだけでいい 」
ネロではなく、ベリアルが現れたことで溢れんばかりの殺気が漏れ出すロムルス。 現に、その殺気を浴びたローマ兵の集団が一度に倒れてしまうほどの殺意。
そんなことなど御構い無しといった様子で、ベリアルは余裕綽々にロムルスに語りかける。
「只の人間から神にまで至り、始まりの王となった貴様だからこそ答える義務がある。 貴様にとって光とはなんだ? 闇とはなんだ? 」
「……ふ、フハハハハハハハハハハハ!!!!!! そうか、そうであったか!! 」
笑い。 ベリアルの問いに対するロムルスの返答は大きく口を開けて笑う事だった。
貶しているのではい、蔑んでいるのではない、
「他者の身体にやどり木としたその魂、黒く澱み、醜い物だと思っていたが……そうか、汝もやはりローマであったか 」
「……残念だな健国王。 オレは貴様の言うようなローマではない、貴様が愛する人間。 それを超越した存在。 ローマを脅かす絶対の強者だ 」
「「いや、ローマだ 」
「如何に人の身を超えたとしても、その根源は変わらず人である。 ならばそれはローマに他ならない。 見誤るな、
「ククク、クハハハハハハハハハ!!!! 」
理屈じゃない、ロムルスがローマである。 だからこそ出せるその言葉を聞いて、今度はベリアルが大きく笑い声をあげた。
「
ベリアルはロムルスの在り方に納得したのか、攻撃するでもく、無防備に背中を向けて立香たちのいる方へと歩いて行く。
「王たるもの、玉座に構え待っていろロムルス。 お前が望む……あの女のローマはそこで見ろ。 邪魔者はこのオレが蹴散らしてやる 」
「フッ、お前が言うのならそのようになるのだろうな。 いいだろうベリアル。玉座で、我が愛しき子を待とう 」
そう言って、ロムルスも同じように背中を向けて消えていった。
「「英霊! カプセルナビ〜!! 」」
「前回出来なかった分、今回は多めに行くよ!! それ!! 」
「勝利の女王、とても暖かいブーティカさん。 叛逆の剣闘士、スパルタクスさん! 歴史を変えていたかもしれない暗殺者 荊軻さん! 若き日の征服王 アレキサンダー3世 !! 」
「ん? ねえマシュ、この諸葛孔明だけなんか現代っぽいてかスーツ着てるんだけどなんで? 」
「はあ、はあ、その方は擬似サーヴァントなようで、デミ・サーヴァントである私に近い。 召喚する際に自分と相性のいい現代の誰かに憑依して召喚されたサーヴァントだそうです」
「へ〜ってもう時間がないよ!! 今回はこのあたりで!! 」
「次回もよろしくお願いします!! 」
「マシュ、よく頑張った!! 」