【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜   作:ちょっつー

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今回は独自解釈強めかも知れません。

それでも良ければよろしくお願いします。

感想、評価貰えると嬉しいです。

誤字脱字、ご指摘ございましたら迷わずお送りください。


6

 剣と槍がぶつかり、火花を散らす。

 建国王 ロムルス

 第5代皇帝 ネロ・クラウディウス

 2人の王の戦いに迷いはなかった。 全てがローマだと謳うロムルスを前にしても、ネロは自身の愛すべきローマをその胸に秘めて、その思いを炎のように爆発させながら剣を振るう。

 一人で勝てるなど、ネロは最初から思っていない。 民あってこその国だと掲げるからこそ、共に戦ってくれる仲間を信じる。

 

「マシュ! ブーティカさん!! 」

 

「はいっ!! 」

 

「守ることなら任せなよっ! 」

 

 立香が率いるカルデアのサーヴァント、かつては敵でありながらも力を貸してくれる勝利の女王たちと一緒になってロムルスと戦っている。

 

「貴様が思い描いていたシナリオ通りには、ならなかったようだな 」

 

「…………キサマはああっ!!! 」

 

 嘲笑うベリアルに、聖杯を手に持つレフは憤怒の表情を向ける。 この特異点を作り出した原因、オルガマリー所長や他のマスターたちを亡き者にした元凶。

 そのレフだが、特異点Fでベリアルから受けた傷が癒えていないのか、帽子で顔の半分を隠すようにしながら言葉を口にする。

 

「無能な48番目のマスター、未熟なデミサーヴァント……。 カルデアのシステムは安定せず、人理の修復など不可能。……のはずだった!! 」

 

「キサマだっ!! 我らが同胞の名を騙るキサマさえいなければっ!! 完全なるイレギュラーであるキサマがいなければこんな問題にはならなかった!! 」

 

「だからこそここでキサマを殺すっ! そのためのサーヴァントの召喚は完了している!! 47番目のマスター共々死ぬがいいわっ!! 」

 

 レフが聖杯を掲げると、2人の間にサーヴァントを召喚する陣が浮き上がり、1体のサーヴァントが召喚される。

 輝く銀の髪、褐色の肌に白い礼装を纏ったその少女とも、女性とも見てとれる儚げな彼女は、召喚されたばかりだからか元々なのかは分からないが、虚ろな眼差しをしていた。

 

 レフは、そんな彼女が意識を覚醒させるよりも速く、背後から自分の持つ聖杯を取り込ませた。

 

「うっ! 」

 

「さあ! 破壊の大王“アッティラ”よっ!! このローマの地を破壊しろっ!! それが貴様に課せられた使命だっ!! 」

 

「……邪魔だ 」

 

 そう一言いって、ベリアルは動き出した。 何が邪魔だったのかは分からない。もしかすると、先刻ロムルスに向けて言った言葉を守るためだったのかは定かではないが、ベリアルは聖杯を無理矢理に埋め込まれ、身体から魔力が溢れ出しているアッティラのことを、黒き鋼から伸びたエネルギー状のロープのようなもので拘束すると、丁度立香が指示を出している真後ろの壁を、手のひらをそちらへかざしただけで破壊し、アッティラを外へと放り飛ばした。

 

「何っ!! ぐわっ!!!! 」

 

「アイツとの義理立てがあるんでな、貴様はそこでことの顛末を眺めていろ 」

 

 切り札として召喚したアッティラのことをいとも簡単に吹き飛ばして見せたベリアルに驚いたのもつかの間、ベリアルの超能力によってロムルスとの戦いが一番見やすい高さの壁に縛り付けられるレフ。

 

 超能力から抜け出そうとするレフに興味をなくし、アッティラを追って自身で空けた壁へと向かう途中、ベリアルはマシュと立香、2人の頭の上に手を置きながら言葉を残す。

 

「アイツとの決着は、お前たちがつけろ。 マシュ・キリエライト、藤丸立香 」

 

「「〜〜〜〜!! はいっ!!! 」」

 

 

 

 

 

 

 

『危険すぎる! レフのせいで取り込まれたあの聖杯は暴走を始めていた。 いくらベリアルでもあのサーヴァントを1人で止めるのは 』

 

「大丈夫ですドクター。 ベリアルさんならきっと、いいえ必ず聖杯を掴んで戻ってきます! 」

 

「そうよ、どうせ余裕綽々っていったムカつく顔して戻ってくるのよあの男は、だから心配するだけ無駄よ無駄。 その分白髪が増えるわよ 」

 

『んなっ!! 言っておくけど、僕はまだ白髪が生えたことはないからね! 』

 

 この特異点の最後の戦いだって言う時なのに、冗談が言えるくらいに落ち着いていられる。

 アイツとの決着。 目を閉じるだけで昨日のことのように思い出してくる。 照りつける炎の熱気、瓦礫に潰されながらも私に笑いかけてくれたマシュの笑顔。

 

 そして──所長、オルガマリーさんのこと。 確かに口調は刺々しくて、いつも怒ってるようなヒステリックな人なのかなって思ってたけど……本当は自分に自信が無くて、ほんのちょっと怖がりなところがある、どこにでもいる普通の女性だった。

 

 すごく短い時間だったけど、何にも知らない私に、マスターのことやサーヴァントのこと、色々な大切なことを教えてくれた。

 だから……だから……!! この機会を私たちにくれてありがとう、ベリアルさん。

 

「レフ・ライノール!! そこでじ〜っくり見てろ!! これが終わったらお前のこと、私たちがぶっ飛ばす!! 」

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

 

 ゼロを打ち倒したべリアルは、ゼロや他に戦っている敵を更なる絶望へと陥れるために、その姿を……ウルトラマンの姿を捨てた。

 

 アークベリアル────要塞に溜め込んだエメラル鉱石全てを吸収することでその姿を変貌させたベリアルの新たな姿。

 

 以前のような怪獣たちが合わさった化物というよりも、ベリアルがそのまま怪獣になったかのようなその姿……。 竜に似た容姿は、元々あった赤い血管のような部分が浮き出たように隆起していて、背中には大量に吸収したエメラル鉱石が露見してる。

 

 

 

『身体の底から力が漲ってきやがるっ! これで全宇宙はオレ様のものだっ!! 』

 

 

 降り続けていた雨は雷に変わり、先に何があるのか分からない闇の中……

 

 

 ウルトラ一族の誇りを捨てた。

 ウルトラマンである名前を捨てた。

 そして、最後に残っていた超人の姿すらも、捨ててしまった。

 

 闇の中で、勝利を、圧倒的な力を掴み取るためにもがいてもがいて、もがき続けたベリアルが出した答え……

 

 べリアル……確かに貴方は強い。 ゼロも、他の戦士たちも手も足も出ない絶望的な状況だ。

 

 

 

 

 だけどさ、それじゃあ、光を……希望を消すことは出来ない。

 

 

 

 

 

 

 ゼロから始まったベリアルへの反乱。 それは怯えていた人たちの心に勇気の火を灯していた。

 

  炎の海賊団、鏡の星、それ以外にもこの宇宙にある多数の星々に生きる者たちが立ち上がり、ベリアル軍に反旗を翻した。

 

 だからだろう。諦めない人びとの心は光になって、絶望に倒れそうになっているゼロに降り注いだのは。

 

 その光は、私がテレビの前で何度も、何度も見たことのある。 希望の光だ。

 

 ガタノゾーアの闇を打ち払ったみんなの光の結晶グリッターティガ。

 

 絆を重ね続け、みんなの声援によって本当の姿を取り戻したネクサス。

 

 それ以外にも何度も見てきた、闇に立ち向かうその姿が光になって、他の誰かを照らしている。

 

 ベリアルはその光が何なのかを知らない、だから、だから……貴方はゼロたちには絶対に勝てない。

 

 

 

『これが、俺たちの光だっ!! 』

 

 

 

 この宇宙の人々の心一丸とさせたゼロの元に集まったその光は、ゼロに新しい力を与えた。

 

 バラージの盾……確か、初代ウルトラマンに出てきたバラージには、ノアの神って呼ばれるウルトラマンによく似た存在がいた。

 この宇宙でもそれが伝わっていたのか、ウルトラマンノアの力が込められたその盾はゼロの鎧となってアークベリアルに牙を向いた。

 

 

 

 ノア──キングに並ぶほどの力を有した神と呼ばれるウルトラマン。 その力が込められた鎧を纏ったゼロの力は圧倒的で、アークベリアルはその光によってその身体は消滅してしまう。

 

 

 

(なんだ……この光は……。 なんで雑魚が集まっただけでこの光を生み出せる……。 この力だ……オレはこの力が欲しいんだ!! なんで、アイツが持ててオレにはねえんだぁあああああああ!!!! )

 

 

 

 光に包まれながら消えゆくベリアルの、後悔や嫉妬の籠った叫びが響いてくる。

 

 

 王国を作って、王様になれたとしても……貴方は何処まで行っても独りぼっちだったんだ。

 

 自分のことしか見れない、他の誰かの為の気持ちを持たない貴方に、その力は絶対に宿ることはないんだ。

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

「う、うううう!! 破壊……全てを破壊する!! 」

 

「まさか、破滅を齎す存在である貴様が、欠片の一部ではあるにしても人として召喚されるとはなあ 」

 

 聖杯から供給される無尽蔵と言っても過言ではない魔力の渦。 その渦によって意識が保てないのか、アッティラは、レフが願った“破壊”という一文字を成すだけの兵器になってしまっていた。

 

 連合首都より離れた荒野に降り立ったベリアルは、アッティラのことを知っているのか面白い者を見るような目で見ていた。

 

「破壊……する!! 破壊……破壊……破壊!! 」

 

「来い、破壊を招く貴様ごときでは破壊できないものがあることを、その身をもって知るがいい 」

 

 まるで4足を走る獣のような、地面に顔がついてしまうのではないかと思う前傾姿勢でベリアルに向かっていくアッティラは、手に持った三色に輝く剣が尻尾のように伸び上がり意思を持っているかのように襲いかかる。

 

「があああああああ!!! 」

 

「どうした、貴様の力はそんなものか!! その内に埋め込まれた聖杯の力をもっと引き出せ!! 」

 

 鞭のように連続で放たれるアッティラの剣。 それら全てをベリアルは黒き鋼を使わず素手だけで対処していく。

 ベリアルから先に攻撃することはなく、右肩に攻撃が向けられたのなら相手の右肩を狙い、腕を狙われたのならば腕といった感じで、攻撃してきた場所を寸分狂わずアッティラに返していく。

 

 破壊しようとしても、ベリアルは剣が届くよりも速く弾いているため身体には傷一つ付いていない。

 逆にアッティラの方は、自分が狙ったはずの人間の部位が逆に傷ついていくという理解出来ない状況が作られていく。

 

「あ、あああああああ!!!! 」

 

「そうだ!! もっと引き出せ!! 根源を破滅させるその力の片鱗を、このオレに見せてみろ!! 」

 

 アッティラの叫びとともに、アッティラの瞳、そして身体の紋様に変化が生じ始める。

 目の色彩は赤く染まり、瞳孔の周りは白に。 身体の一部分にだけ見えていた紋様は全身に広がっていき、発光を見せ始める。

 

 その変化によって、目に見えた魔力の波動が、大地を、地に張る植物たちを無作為に破壊していく。

 

「そうだ!! その力だ!! その力でこのオレを破壊して見せろ!! 」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!! 」

 

 突きの構え、軍神の剣の鋒をべリアルさんに向けると、宝具の解放なのか刀身部分が回転を始め、アッティラの出す破壊の魔力と混ざり合い、虹色の魔力光が溢れ始める。

 

 それを見たべリアルは愉しそうに、嬉しそうに、()()()()()()()()()()()ように笑顔を浮かべ、両手を包み込むように鋭い紅い爪をもった黒いオーラのようなものを出現させる。

 

「あ、ああああ【フォトン…………レイッッッ!!!!!!!】 」

 

「……………… 」

 

 螺旋の軌跡を描き、大地を抉りながらベリアルに向けて突進を開始するアッティラ。

 流星の如き力の塊が迫って来ている中で、ベリアルは構えるのではなく自然体でただ立っているだけだった。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。 オレが求めていた“力”は、ここまで弱く儚いものだったか……。 アイツらに勝てないわけだ。 フンっ!!! 」

 

 ほんの僅か、長さにしたら5cmにも満たない。 それが、アッティラの剣がベリアルに届いた距離だった。

 アッティラの発動した宝具を、回転し続ける軍神の剣をオーラを纏った左手で握りしめ、自力て止めて見せた。

 完全には止められなかったからか、胸の中心には確かに軍神の剣がほんの少しではあるが突き刺さっている。

 

 痛みを感じないのか、ベリアルは何かを悟ったようなことを口にすると、空いている右手で躊躇なくアッティラの心臓部(霊基)を貫いた。

 貫かれたその手にはアッティラに埋め込まれた聖杯が握られており、力を無くしたアッティラは剣を握っている力すら無くなり、ベリアルの肩に頭を預けるようにして倒れる。

 

「何故……だ。 何故、お前は破壊……されない 」

 

「……お前もオレと同じだ。 運命を変える力を持たない、だからこそ破壊できない 」

 

「運命を……変える……ちから? それは……どうやれば……手に入る…… 」

 

 

 掴んでいた聖杯を投げ捨て、アッティラの血で染まったその右手を彼女の頭の上に置きながら答える。

 

「ヒトを知り、人間(ヒト)になれ。 お前は、破壊を招く兵器ではあるが……破壊するはずの存在から愛情とやらを貰っているだろう 」

 

「愛……情…… 」

 

 彼女の記憶は、ある遺跡で眠っていたところをフン族の人間たちに拾われたことから色づいた。

 何も知らない、覚えていない。 ただ持っていた剣で破壊することしか出来なかった彼女を、確かにフン族は愛情を持って育てた。

 

 そうでなければ、よそ者であるはずの彼女が王になることなどあり得ない。

 その事を、薄れゆく意識の中でうっすらとだが思い出したアッティラは、涙を流しながらベリアルに訴える。

 

「わた……しは……私は! 破壊だけ知って……終わりたくない!! 花嫁のような煌びやかな衣装で、着飾ってみたい!! おいしいものだって……食べてみたい!! 作ってみたい!! ……もっと! もっと……愛が……知りたい……。 壊すだけの運命を……変えたい…… 」

 

人間(お前)がそれを望むのなら、叶わない道理はない。 ────運命は変えられる。 その様を誰よりも見ていたオレが証言する 」

 

「ああ……なら……消えるまえに1つ……人間(ひと)のように、わがままを言っても、いいだろうか 」

 

 もう、身体の殆どが消えかけているアッティラは、子どものような甘い願いを言って、消えるその最後にわがままを言う。

 ベリアルはそれを否定することなく、アッティラの口が開くのを待つ。

 

「アルテラと……呼んでくれ。 アッティラという名前は……響きが可愛くないから…… 」

 

「ふっ……。 眠れ()()()()、次に目覚める場所は、お前が人間(ひと)になれる場所だ 」

 

 可愛くない。 女の子らしいわがままを聞いてもらったアルテラは、ベリアルの胸の中でその顔をくしゃっと歪ませながら消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・アルテラ=根源的破滅招来体

どちらも宇宙から飛来する、文明を破壊しようとするシステムのようなもの。
ゾグ(第1形態)と◯◯◯◯の巨人がどこか似ていると感じたことから来た独自解釈。
ガイアの世界とFate世界では天の川銀河に現れる周期が違ってくる。
◯◯◯◯の巨人は神々をも破壊するため66m〜の大きさを誇る、ゾグに至っては敵が地球の大地、海の化身に加え、怪獣たちも相手だったため最初の姿から127mという、対処する相手によって送り出す尖兵のレベルが変わってくる。

まあ、根源的破滅招来体の正体が不明だからこそ使えたと言ってもいいです!!

・なぜネロとベリアルの対話が無いのか
そも、セプテムで出会うネロは完成されていない。
この時のネロは、自分がローマの民を愛しているから、ローマ市民も自分を心から愛していると信じてやまない。 それは愛を知らないベリアルにとっては何よりも不快なことであるため、ベリアルと相容入れない。
マリーやカエサルといった裏切りや策略によって転落しながらも、誰かを愛せる存在であったからこそベリアルは認めることが出来た。
ベリアルと対話するとすれば『暴君』として完成したネロで無ければ難しい(認めるかどうかも分からない)

しかも、暴君ネロは◯◯◯◯適性があるかも知れないと噂されてるため対話出来るかすら怪しいところ

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