【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜   作:ちょっつー

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6

「先輩っ!! 」

 

「マッ────っ!! 」

 

 私に向かって伸びてくるマシュの手がどんどんと遠ざかっていく。

 

 遂に始まったこの特異点最後の戦いは、聖杯の力を使い無限に沸いてくるシャドウサーヴァントを相手にしながらも優位はこちらにあった。

 

 ただ、戦況が変わったのは一瞬だった。 本当の敵はイアソンじゃなくてメディアだったらしく、彼女は聖杯の力を使ってイアソンのことを魔人柱へと変貌させて私たちに襲いかかってきた。

 

 前回の魔人柱との戦いでは他に邪魔してくる相手がいなかったから相手1体集中できたけど今回は違う。 シャドウサーヴァントに加えてどんなに魔人柱に攻撃を加えても魔術で回復してくるメディアがいる。 シャドウサーヴァントを呼び出しているのもメディアだから最初にメディアを倒そうにも、防御に徹したヘクトールの壁を越えることは難しくて苦戦を強いられる結果になってしまった。

 

 べリアルさんなら簡単に突発できた。 もしくは前見たいにジャンヌオルタのような高火力の攻撃があればって焦り始めてしまった。

 

 だからなのかな、現れたアサシンのシャドウサーヴァントに隙をつかれてしまったのは……。魔力強化で何とか腕を掴んで抑えてたけど、相手の蹴り技にまで対処できなくて、お腹に直撃した衝撃と共に海に放り飛ばされてしまった。

 

 シャドウサーヴァントを倒して助けに来てくれたマシュの手も届かなくって、ばちゃん!! と水に叩きつけられた私の身体は海の底に沈んでいく…………。

 

「────がはっ!! 」

 

 水面に上がろうにも、お腹に受けたダメージと叩きつけられた衝撃のせいかうまく力が出せず、一気に口から酸素が吐き出されてく。

 

(嫌……だ!! 死にたくない!! 誰か助けて!! 誰かっっ!! )

 

────(安珍さま)

 

 声が出ない、酸素が無くなって胸を締め付ける強い痛みが走ってくる。 礼呪を使って助けを呼ぼうにも、素人の私じゃ水の中で魔術を行使するなんて無理な話で、ただただもがくことしかできない。

 

 オルレアンで見た殺されてしまった人々、ローマで見た命を賭けて死んでいった兵士たち……そして何も知らずに爆発に巻き込まれてしまったマスター候補のみんなやカルデアの職員さんたち…………。

 

 嫌だ! 嫌だ嫌だ!! あんな風になりたくない!! 誰かが名前を呼んでくれるのに反応できないないなんて嫌だ! 先輩って笑顔で呼んでくれるその顔が見れなくなるは嫌だ!!

 

────────────────(安珍さま、さあお手を。)

 ────────────────(このわたくしめの手を掴んでくださいまし)

 

声? 声が……聞こえてくる……。 甘く蕩けて、絆されてしまいそうな魅惑的な声……。 誰かが、助けに来てくれたのかな?

 

でも、何を言ってるの? 全然……わかんないよ……。

視界もぼやけて誰なのかすらわかんないし、水の中だからなのかな? 苦しいから? 理由はよく分からないけど、何を言ってるのか私の耳には届かない。

 

────────────────(さあ、求めてくださいこの清姫を。)

 ────────────────(この手を熱く、蕩けるほどの愛を籠めて……)

 ────────────────(強く、つよく握ってください)

 ────────────────(あなた様は安珍さま、わたくしの愛しき人 )

 ────────────────(だからどうか、この手を掴んでください!)

 ────────────────(愛しているのだと証明してください!!)

 ────────────────(安珍さま、安珍さま、安珍さま、安珍さま)

 ────────────────(安珍さま、安珍さま、安珍さま、安珍さま)

 ────────────────(安珍さま、安珍さま、安珍さま、安珍さま)

 ────────────────(安珍さま、安珍さま、安珍さま、安珍さま)

 ────────────────(どうして手を握ってくださらないのですか!)

 ────────────────(極限の中でこそ芽生えるものこそが真の愛!)

 

 

 

 

 ──────────────────(わたくしを愛して……)

 ──────────────────(どうかわたくしに愛をくださいまし!)

 

 

 声が聞き取れないまま、こほっと身体に残った最後の酸素が身体から吐き出されて、私の意識も遠のいていく。 むしろ、私にしてはよく頑張ったほうじゃないかな?

 

マシュやドクターは誉めてくれるかな? べリアルさんは……誉めてくれると嬉しいなあ……

 

『────っ!? 』

 

「…………………!!!!! 」

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 プラズマスパークの光すらも届かない宇宙の果て……その光に蝕まれていても、光がなければ活動出来ない身体になってしまったべリアルは、今にもカラータイマーの光が消えてなくなりそうなほどに弱っていた。

 

『力を求めて……何が悪い……全宇宙の平和を望んで……何が悪い…… 』

 

 悪くない……べリアルのその真っ直ぐな目標は何も悪くないんだ……。

 

 ただ闇を拒絶する光の国と、力の為なら光でも闇でも関係ないという考えを持ってしまったから……

 

『光の国が憎いか? 』

 

『だ、だれだ……っ? 』

 

『私はレイブラッド。 全宇宙を支配する者 』

 

 レイブラッド……本人!?

べリアルがレイオニクスだってことは知ってたけど、亡霊の身となったレイブラッドがべリアルの前に姿を現した。

 

『お前に力をくれてやる。 全宇宙を征服する、支配する力を…… 』

 

『ぐ、ぐああああああ!!! や、やめろおおおおおお! 』

 

 亡霊がべリアルの身体の中に入り、闇の力をその手にしたべリアルは、銀の巨人を黒の巨人へと変えた。今まで私が良く目にしてきた姿、光の国を恐怖のドン底に落とし、アナザースペースを侵略して見せた闇の姿……。

 

 

『身体の支配が出来ないだと!? まあいい、精神だけは……抗えまい……ハハハハハハハ!!! 』

 

『コイツは…… 』

 

 如何にレイブラッド星人でもべリアルの身体を乗っ取ることは不可能だったらしい。

 

 自分の中に秘めていた力を闇によって目覚めさせたべリアルに反応したのか、宇宙の彼方からギガバトルナイザーが、主人を認めたかのように現れ、べリアルはギガバトルナイザーの力すらも自分の物とした。

 

 

 

 そうして、無敵の力に加え100の怪獣軍団を操れることが出来るようになったべリアルは、光の国への復讐を開始した。

 

『(そうだ、宇宙を支配するためには光の国が邪魔だ。この宇宙から消し去るのだ) 』

 

『べリアル!! ゼアッ!! 』

 

『ゾフィー!! 』

 

『宇宙を支配するのに、テメーら雑魚は邪魔なんだよ!! 』

 

 まだ胸にスターマークがないことからまだ新米なんだろうけど、レイブラッドに精神を汚染され宇宙平和を宇宙支配に塗り替えられたべリアルは、果敢に挑んできたゾフィーを一蹴し側にいたウルトラウーマンマリーも簡単に倒した。

 

 …………けど、そうだよな。 誰よりもべリアルの未来を心配していた貴方が出てこないわけないよな。

 

『やめろべリアル!! ここはお前の故郷だぞ!! 』

 

『故郷? 知らねえな。 そんなもの滅ぼしてやる、オレはお前ら復讐の為に帰ってきたんだ!! 』

 

 友としての情なのか、ケンは覚醒しているはずの超戦士の証を使わずにべリアルを止めようと挑む。

 

 けど無理だ! 今のべリアルを止めることが出来る戦士は光の国にはいない。 たとえケンが覚醒したとしても倒せない……

 

『があっ!? テメーはっ!! キングゥゥッッ!!! 』

 

『べリアル、光の国を汚すな 』

 

 キング……エンペラ星人が攻めてきた時ですら姿を現さなかったウルトラマンキングがべリアルのことを抑えた。

 

『闇のなかで永遠に罪の報いを受けるがいい 』

 

 …………如何にべリアルでもキングの力に抗うことは出来ず、高密度に圧縮した怪獣たちの亡骸を使い、宙にべリアルただ一人を封じ続けるための監獄『宇宙監獄』を造り出した。

 

 こうして、ザラブ星人によってその封印が解かれるまでの数万年の間、べリアルは監獄の中で憎しみを募らせることになった…………。

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 霧が晴れていく。 今までで真実から逃げ続け、自分の愛するまま想うままの世界しか見ようとしなかった狭いせまいわたくしの世界……。

 

 怖かったのです……。 安珍さまがわたくしから逃げてしまった時と同じように拒絶されることが……。 だからわたくしは、この心を灼いた感情に自分が最も嫌う『嘘』を付くことにした。

 

 あの方は、わたくしが名前をどんなに愛おしく呼んでも、笑顔を見せてはくれなかった、頬を赤らめてはくれなかった。 恐怖で強張った顔をして、まるで生気を感じられないほど青い顔をしてわたくしを拒絶した。

 

 だから、あの方と同じこの想いを抱いたますたあの、その名前を呼べば拒絶されると思ったのです。

拒絶されるのならば、いっそ狂ったほうが楽だ。 彼女を初恋の人(安珍さま)として見て、接すれば、きっと怖がらせなくて済む、わたくしに微笑むを向けてくれる。

 

 けど違った。 あのお方は、安珍さまとは違かった。 こんなにも愛に、恋に、憎しみに狂ったわたくしのことを正面から受け止めようとしてくれた。

 

 どんなに求めても届かなかったこの手を、あの方は、マスターは、立香さまは……強く握り返してくれた。

 

嬉しい、嬉しい。 うれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしい!!!

 

あの方は安珍さまではありません。 立香、藤丸立香さま……。 わたくしは、あなた様に恋をしているのですね……。

 

 

 

◇────

 

 

 

「かはっ!!! 」

 

 身体の中に入ってきた水が一気に口から吐き出される。

風を感じる、呼吸ができる。息を整えながら私は、自分が生きてるんだって実感から目から涙が溢れてくる。

 

『大丈夫だったかい立香ちゃん!!?』

 

「ドクター、私どうやって助かったんですか? 誰かに名前を呼ばれて……その手を掴んだことまではうっすらだけど覚えてるんですけど………… 」

 

『あああ立香ちゃん!! 今説明する時間はないんだ、目の前の彼女に抱きつくんだ!! 』

 

「へっ!? こ、こうですか!! 」

 

 ドクターに言われて反射的に目の前に見えた白色の何かにギュッと強く抱き着いた。 それは、私が両手を広げても全体の半分にも満たないくらい大きな円柱形の何かで、モゾモゾと動き出したかと思ったら、重なるように連なっていたひし形の何かが広がって……って彼女?

 

「わっ!! わああああああああ!!! 」

 

『ふふふふ、わたくしのこと強く抱き締めて離さないで下さいましね。 ますたぁ 』

 

 水面を高速で、這うように動き出したそれに振り落とされないように身体全体に力を入れていると、頭の中に響いてくる……この声って清姫? あれ抱き締めてってことは……。うねるように動くその動きに慣れてきたから顔を上げてみると……

 

 

 そこにいたのは大きな蛇。 先端部分が青みがかった白色の鱗をした大きな蛇が魔人柱相手に焔を吐いて攻撃してた。

 

「え!? き、清姫なの!! 」

 

『はい。 本来ならここまでの力は出せない筈なのですが…………これもますたあとの愛の力でしょうね 』

 

 言ってる理由はよく分かんないけど、本来なら清姫はこの蛇の姿にはなれないのかな?

 

んーーーなんだか理解が全然追い付いてないけど!!

 

「やっちゃえ清姫!! 」

 

『…………怖くは、ないのですか? 今の私のこの姿が 』

 

「え? 」

 

 頭に直接語りかけてくれるお陰かな、清姫が喋ってても戦闘に支障はないっぽいけど……怖い?

 

『この姿は、わたくしが愛憎の果てに安珍さまを灼き殺した醜き姿……あなた様も、灼き殺してしまうかも知れないのですよ? 』

 

「…………な~んだ、そんなことか 」

 

『そんな……こと? 』

 

「清姫、醜いって言うのは今目の前にいる魔人柱見たいなヤツのことを言うんだよ。 今の清姫は醜くなんてない、むしろ綺麗だよ! 」

 

 黒い巨大な柱、その柱を内側から喰い破るように幾筋もの裂け目から覗かせる無数の赤い目玉が観察するかのように私たちのことを狙っている。

 何を考えているのかわからない、だから私は魔人柱のことを怖いって思うんだ……。

 

 それは……少し前の清姫も同じだった。 私のことを安珍さまとしか見てくれない清姫、どんなに熱のこもった瞳で見つめられても、何を考えているのか分からない。 そんな清姫が私は怖かったんだ。

 

 だけど、今は違う。

 

「ねえ清姫。 私の名前……呼んでみてくれない? 」

 

『え?……あの、その…………立香……さま 』

 

「よっし行こう清姫!! 魔人柱を倒して、この特異点を終わらせるんだ!! 」

 

(ああ……こんなにも、簡単な事だったのですね。 燃えるような、灼くような恋を知っていても、わたくしは愛というものが何なのか理解していませんでした……。 ふふふ、これでは本当に子どもですね )

 

 話をしながら清姫の身体の上を移動して、首元までやって来た私は、清姫の頭を撫でながらこの戦いを終わらせるための指示を出す。

 

(恋を知り、愛を持っていた育む。 それが恋愛!! 恋だけに焦がれていたわたくしは幼稚でしかなかったのですね。 立香さまのお陰で気づくことが出来ました、焼けるようなこの恋の焔を燃やし、その焔が消えないように愛を作る……ああっ、ああっ!! なんと素晴らしい事なのでしょうか!! あのお方との出会いはとても衝撃的でした……ですが、これはそれと同じ、いいえ越えていく強く熱く溶けてしまう感情の波!! ああ立香さま。 恋しい愛しいわたくしの番……。 一緒にいたい、はしたないと思われようとあなた様のことがもっと知りたい!! わたくしの事ならどんなことでもお教えします!! ああ、ああっ!! )

 

『いつまでも、この身が滅びようとも……あなた様をお慕いし続けます、立香さま 』

 

 

 

 




・清姫の白蛇転身
 FGOの宝具『転身火生三昧』は竜へ転身を果たすが、その姿は短時間しか維持できないため青い炎の竜にしかなれない。 ある要因と、精神的な成長がキーとなり長時間の転身を可能にした。大きさ的にはモンハンのガララアジャラと同等かそれより一回り大きいくらいのサイズ。

・ギガバトルナイザーについて
 ジードの映画にてクシア人の発明したギガファイナライザーのプロトタイプということが判明した万能武器。 ギガファイナライザーがリクくんの想いに反応してその力を目覚めさせたことから、ギガバトルナイザーはべリアルがレイオニクスに目覚めたことに反応して目の前に出現した。
 攻撃武器としては担い手の力を通しての使用なためヒカリやザラブ星人でも扱うことが可能。 怪獣使役はレイオニクスの力が必要、だからレイバトスはタイラントを復活させることが出来た。
100体使役、ウルトラマンを倒す程のエネルギーはべリアルにしか不可能。

 バトルナイザーはべリアルが封印されたため、レイブラッドが開発。 全知全能でも数万年の時間を費やした。


・ジャンヌオルタを連れていく→ジャンタ生まれなくなっちゃうからダメ。 アステリオスのことEX進化させるんだからもう1体→清姫。 清姫に立香って呼ばせたいという願望から今回の同行メンバーは清姫オンリーに

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