【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜   作:ちょっつー

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前回のベリアルさん変身回では沢山の反応ありがとうございます。
今回はベリアルvsソロモンではなく、何故宮原博樹はベリアルさんに変身することが可能になったのか。
ナーサリー・ライムが仲間になった理由を深掘りしていく話。

キーワードとしては「宮原博樹は他マスター候補同様意識不明の重体であるということ」

感想、評価お待ちしてます。
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 ロイヤルメガマスターに変身したジードすらもベリアルアトロシアスは圧倒していく。カプセル一つに込められたキングの力と違い、アトロシアスが次々に吸収し強化しているキングの力はこの宇宙と同じだけの量がある。 そんな誰が見たって力の差は歴然だ。

 手も足も出ない、そんな矢先に光明が舞い降りた。ジードとの戦闘に集中していたアトロシアスの一瞬の隙をついたゼロがカレラン分子分解酵素を打ち込むことに成功した。それによってアトロシアスはキングの力の吸収は止まり、体内に留まっていた力もアトロシアスの身体から粒子となって放出された。

 

『私がこの場を引き受ける。 一旦引いて態勢を整えるんだ 』

 

『またオレの邪魔をする気か、ケン 』

 

 キングの力が無くなったとしても、アトロシアスの持つ力は強大だ。 ゼロは肩を貫かれ倒れ、ジードも基本形態へと戻ってしまう。 そこにやってきたのがウルトラの父もとい、ウルトラマンケンだった。 彼は別宇宙からアトロシアスの存在を感知し、抑え込むためだけにやってきたのだという。

 ケンは自分とベリアルさんを光の繭──ウルトラコクーン──を展開し、ジードたちが態勢を立て直すための殿を務め始めた。

 

 そうして、ジードの再変身が可能になる20時間が経ったのと時を同じくして、光の繭が消え去りその中からアトロシアスと疲弊したケンが姿を現した。

 

『老いたなケン。 お前にオレは止められない 』

 

 ずっと超えたいと思っていたケンと自分がこんなにも差がついていた事に落胆の声を漏らすアトロシアス。 これが最後の戦いだ、最大の覚悟を決めたリクくんがプリミティブへ姿を変えアトロシアスに背後から姿を現わす。

また邪魔をするのかと、ジードがなんて返してくるのなんて分かっているのに息子と呼びながら問く。

 

『僕はジード。 ウルトラマンジードだ! 』

 

 初めて息子と言われた時のような拒絶ではない。 自分がベリアルの息子であることを否定せず、受け入れた上で自分はウルトラマン何だって、みんなを守るヒーロー何だって堂々と答える。 そうして、ゼガンと作り出した次元の狭間へちベリアルさんを追放するための最大最後の戦闘が始まった。

 

 キングの力を失い、残っているのはカプセル込められたエネルギーと地力のみ。 だというのに、アトロシアスの強大な力はジードのひとつ上を行く。

 レッキングリッパーにはアトロスリッパーを、レッキングロアーにはアトロスロアーとジードの必殺技に対して瓜二つと言っていい技を繰り出し、その全てがジードの攻撃を超えている。

 

『所詮お前は実験体。 父親であるオレを超えられるわけがない。 諦めろ 』

 

『諦めない! お前との決着は僕がつける!! 』

 

 それで終わりか? お前の力はそんな物かと、何かを期待しているように挑発。安い挑発だ、けどそれに敢えて乗る。 絶対に諦めないんだという強い意志を現したリクくんに呼応するように他のウルトラカプセルが作用、起動した。

 それは、奇跡の輝き。 他の誰にも出来ない、『誰かの力と一緒に戦い続けた』朝倉リクが歩んできた軌跡が形となって発動した。

“ジードマルチレイヤー”ジード全てのフュージョンライズ形態が同時に実体化した。 同時に実体化したジードは、本体であるプリミティブの合図と共に戦闘を始める。

 

『ヒア、ウィー、ゴー! 』

 

 五体のジードのよる目まぐるしい攻防がアトロシアスを追い詰めていく。

ソリッドバーニングのストライクブースト

ロイヤルメガマスターのロイヤルエンド

プリミティブのレッキングバースト

マグニフィセントのビックバスタウェイ

アクロスマッシャーのアトモスインパクト

 アトロシアスを止めるために、全員の必殺光線が同時に放つ“ジードプルーフ”が襲う。アトロシアスはその技をウルトラマン三体の合体光線を受け止めたことのあるギガバトルナイザーで受け止めるが、ジードプルーフはその威力すらも超えギガバトルナイザーを破壊して光線を直撃させた。 それでもアトロシアスからベリアルさんの姿へと戻るだけ……規格外にもほどがあるけど、今までにないほど疲弊しているベリアルさんと最後の決着をつけるために、次元の狭間へ一緒に飛び込んでいった。

 

 

『これは……記憶なのか? 』

 

『力だ……力が欲しい………っ!! 超えてやる……!! オレを見下したアイツらを!! 』

 

『伝わってくる……怒りがっ、悲しみが………っ!! 』

 

『何度も何度もっ、あなたは生き返り……その度に、深い怨みを抱いて……っ!!』

 

『疲れたよね……っ。 もう、終わりにしようっ!! 』

 

『分かったようなことをいうなあああっ!!!!!!! 』

 

『レッキングバーストォォッッ!! 』

 

『ジーーードォォォォォッ!!! 』

 

 

────ああそうか、貴方が最後に呼んだのは唯一の肉親であるジードの名前だったんだな。ゼロやケンでもない、自分に最後をもたらしてくれた彼の、ヒーローの証である名前を。

そうして光が弾けたその先を歩いていくと私は、僕は3つに別れた道にたどり着いた。

 

「この場所は……? 」

 

「ここは選ぶ道によって未来が変わるふしぎなふしぎな道。 さあ、あなたの未来はどこかしら? 」

 

 楽しく、弾む声が聞こえてきた。 声のする方を振り向くとそこには誰もいないけど、声の幼さを考えて視線を下に向けるとその子が私に笑顔を向けて立っていた。 白いドレスを来た人形のように可愛らしい女の子。 私はその子がこの場所について知っている様子だから、目線を合わせるために腰を下ろして話しかける。

 

「私は宮原博樹。 よかったら、この場所について教えてくれないかな? 」

 

「ふふふ♪ わたしはありすよ。 ここに誰かがくるなんて思ってなかったら、と〜ってもうれしいわ♪ 」

 

 ここには、私とありすちゃん以外誰もいない。 こんな小さな女の子がひとりでいるのは明らかにおかしいんだけど。 ありすちゃんはそんなこと知らないといった笑顔を浮かべているから深くは聞かない方がいいんだろうと思い、ありすりゃんの言葉に耳を傾けることにする。

 

「ここから先はきらきらかがやく光の道。 まばゆい想いがきっとあなたを照らしてくれる♪ でも気をつけて、くるくる回るメリーゴーランドみたいに酔ってしまうかも 」

 

 可愛らしい足取りで右側にある道の前まで行くと、おもちゃを貰った子どものようなキラキラとした笑顔で光の道を教えてくれた。 光の道……その道を見続けると、奥の方で光が輝いて目を閉じると、女の子の姿がなくなっていた。

 

「ぐすっ……この先は、くら〜いくらい闇の道。 塗り返せない黒色はきっとあなたはつよくなる♪ けどけど、迷い込んでしまったら出られない迷子の道とも繋がってるわ 」

 

 気づくと、ありすちゃんは左側にある道の前で落ち込んでいるのが見てわかるように、足を組んで座っていた。 叱られて悲しくて泣いてる子どもみたいに涙をすすりながら教えてくれた。

闇の道……きっと昔の私なら、何も聞かず何も迷わず光の道を進んで歩いて行ってたのかもしれない。 けど今は違う、ベリアルさんという闇だけど、闇だけじゃない存在をしったから……無暗な選択はしない。

 

「ああよかった。 おじさまはさいごまでわたしのはおはなしを聞いてくださるのね 」

 

「うん。 最後まで聞いて、しっかり悩んで……決めたいんだ 」

 

「おじさまはとても良い人なのね。 それじゃあ、さいごの道へ行きましょう♪ 」

 

  はきはきとやる気の満ちた表情で真ん中の道に向かって行くありすちゃんの背中を追っていく。 その元気が伝わってくる幼さは、今までで一番子どもらしいと感じた。光の道では蝶よ花よと育てられた温室育ちのお嬢様のような立ち振る舞いで、闇の道では身内や友人からの心無い行動で無気力で、生きることを諦めてしまった……そんな子どもに見えてしまった。

だけど、今目の前を駆けているありすちゃんは違うように見える。 どこがと言うには当たり前すぎる、何度も見た元気に学校に通う子どもたちと同じ姿。

 

「う〜ん、この道の説明はむつかしいわ。 だって通る人で変わってしまうふしぎな道なんですもの 」

 

「変わる? 光と闇の道のように進むべき道が決まっている単純なものじゃないってことかな? 」

 

「ええそう。 そうなのだけど……ああっ! そうだわ、あの子がいたわ!! おじさまがず〜っと見てきた男の子!! ジーっとしてても! 」

 

「ドーにもならない! ……そうか、リクくんはこの道を進んでいったんだね? 」

 

 腕を組んで、身体を揺らしながらああでもないこうでもないと悩んでいたありすちゃんは、妙案が閃いたらしく私にリクくんが使っていたジードの言葉を求めてきた。

リクくんの物語を何でありすちゃんが知っているんだろうって疑問は関係ないと言わんばかりにありすちゃんは嬉しそうに話しかけてくれる。

 

「そうリク! 朝倉リク、ウルトラマンジード!! 彼が進んだ道がこの道なのよ!! 彼が進んだ道がこの道なのよ! 彼が選んだのは雨上がりの道、光と闇が溶け込んだ夕暮れの道! 」

 

「そうか、選んだ人によって未来が変わる。 その姿形を変える道がこの道なんだね? 」

 

「そう! そうなのよ! さあ、おじさまはどの道を進むのかしら? 」

 

 ありすちゃんは両手を身体いっぱいに広げながら、私がどの道を歩いていくのか問いかけてくる。

正しい行い、太陽のように輝き続ける光の道。

悪しき行い、暗い感情に呑み込まれやすい闇の道。

進む人によって在りようを変える、光と闇の両方を孕んだ道。

 どれを選べばいいのか分からなくなってきた私は、目を閉じてまぶたの裏にまで焼き付けた、憧れ続けたヒーローたちのことを思い出していく。

怪獣の侵略から何度も地球を、人間たちを守り続けてくれた沢山のウルトラマンたち。

生まれ落ちた時から運命を変える変えるそに時まで見続けたジード。

そして、そうして……。 始まりから終わりまで、私はあの人が歩んできた軌跡を見続けてきたんだ。

 

 

「うん。 決めたよ、私の進むべき道は──── 」

 

この先に何が待ち構えていても、私は……僕は絶対に後悔しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次元の狭間……。 何も存在しない、生物も存在しない。 あるとすれば偶然にも開いた穴から吸い込まれ浮遊した岩くらいなものだ。

ロンドンにいたはずのその男は、気がつくとその岩に上で目が覚めた。

 

「何故ここに戻ってきた……。 この身体は未だ宮原博樹と繋がっている…… 」

 

『簡単なことだ。 その繋がりも、貴様の全ても。 このオレがいただくためだ 』

 

 契約者である宮原博樹とのパスは繋がっている。それなのに男は自身が朽ち果てたこの地で目覚めたことに頭を悩ませる。 何か異常が起きていると察した彼は探索を始めようとしたが、聞き覚えのある声が届き、中断する。

鋭い目、凶悪な爪や牙。 漆黒の身体には這うように赤いラインが入っている。 そんな相手の姿を見て、彼はただただ驚くことしか出来ない。

 

「このオレだと……!? 貴様は誰だっ!! 何者だっ!! 」

 

『何者か、だと? それはは貴様が良く知って……いや知るはずもないか。 すでにお前の名はこのオレのものだ 』

 

「何っ? その姿はこのオレベ҉リ҉ア҉ル҉っ!」

 

 自分の名前、目の前に現れたソイツに本来の名前を叫ぼうにも声に出ない。 男は慌て、頭をフルに回転させて名前を思い出そうとするが、その名前は元からなかったもののようにどんなに思い出そうとしても思い出せなくなっていた。

 

『ここは名無しの森。 お前の名前も、その頭の中にある知識も、自我さえも全て、消滅する 』

 

「消滅する……このオレが? 」

 

『既に、知識の消失が始まっているだろう 』

 

 ベ҉リ҉ア҉ル҉の言う通り、どんなに知識を引き出そうにもその機能が失われた始めているのか、頭の中が真っ黒の石のようになっていく感覚が襲う。

今まで味わった事すらない現象に戸惑っていると、ベ҉リ҉ア҉ル҉が男の頭を掴み投げ飛ばした。

 

「ぐはっ!! 」

 

『本来ならば、貴様が消滅するまで姿を現さなければいい筈だった。 だが、その記憶だけは貴様を葬らないと手に入れられないようなんでな 』

 

 何とか態勢を立て直し、襲いかかるベ҉リ҉ア҉ル҉の攻撃を受け止める。 そこで男は気がついた、自分の腕が、身体が既に宮原博樹から借りた物ではなくなっていることに。

銀色の手に、縫合しているような赤い腕。 その一部分を凝視しベ҉リ҉ア҉ル҉の瞳に映る自分自身の顔を見て、自分が今どんな姿なのか理解した。

 

「この姿は……ジードかっ!! 」

 

『フハハハハっ!! 貴様を倒し、このオレは完全なる復活を果たす! そして、そしてオレはありすに会う!! 」

 

「──くっ!! 」

 

『クハハハっ!! そんなものかっお前の力は!!』

 

 ウルトラマンジードとウルトラマンベリアル。 両者の激しいぶつかり合いは、時間が経てば経つにつれてベリアルの方が優勢になっていった。

最初は、戦闘経験の差からジードの方が優勢だった。 相手の攻撃を読み、それに合わせた最適の攻撃を浴びせ攻め込んでいった。 その戦闘は知らず知らずのうちに逆転していった。

 

「(抜け落ちていく……今まで積んできた闘いに知識が、記憶が……オレはどう戦っていた!? )」

 

“知識を引き出す機能”の消失。それは、戦闘にも影響を及ぼしていた。拳の突き出し方、蹴りの放ち方、相手の攻撃の避け方すらも。 時間をかければかけるほど、今まで積み重ねてきた戦闘の知識が引き出せず、苦戦を強いられていく。

今のジードは戦闘の初心者。そんなジードがベリアルに勝てる見込みは……ゼロだ。

 

『叶えるべき願いがあるわけでもない。 貴様ごときが何故闘い続ける!! 大人しくその記憶をオレに明け渡せ!!! 』

 

「ガハッ!! 」

 

 闇を集結させ、どんな物をも切り裂くその爪によってジードは胸を貫かれる。どうにか反撃するために胸を貫いた腕を掴むが、長きに渡る闘いで数万年に及ぶ知識は消失しているジードに反撃の手立てはなく。 腕を引き抜くために蹴り飛ばされたジードは無様に岩を転がっていく。

 

『早く捨てろ、いつまで息子の記憶にこだわっている 』

 

「渡す……っ、ものか………っ!! 」

 

 貫かれた胸の空洞から、光が泡にように飛び散っていても、ジードは顔を苦痛に歪ませながらも立ち上がり、目の前に立つベリアルに戦意を失っていないことを証明する。

どんなに時間が経ってもジードから抜け落ちない記憶。絶対に切れないように雁字搦めに結んでいるその記憶を、ベリアルは求め続ける。

 

「この記憶は……っ! 光はっ!!!! このオレが触れても、唯一拒絶しない温もりだ!! このオレの全てを貴様が手に入れたとしても……この光を渡してなるものかあああああ!!! 」

 

『ならば跡形もなく消してやる!!貴様は何処にいようと迎える結末は決まっている!! 貴様のゴールは、いつもいつまでもバットエンドだっっ!!!! 』

 

 二人のウルトラマンの身体から、滲み出るほどのエネルギーが放出される。ジードからは青と赤が混じった光線と、ベリアルの闇の光線がぶつかりある。

ジードに至っては自我はもう殆ど残っていない状態で出している正真正銘の最後の一撃。 けれど、光線同士のぶつかり合いは拮抗することすらなく、ベリアルの光線が完全にジードを勝り呑み込んでいく。

 

「がああああああっ!!! 」

 

『ハハハハハっ!! 消えろ!! 消えてしまえ! これで貴様は終わりだ!!! 』

 

 ジードは闇に呑み込まれ、完全に光の粒子となって消滅を始めてしまう。完全なる敗北、自我も、知識も、自分の名前も思い出せないジードは諦め、目を閉じてしまう。

 

 

「終わりなんかじゃない。 そうですよね、()()()()()()

 

 

知っているようで知らない、そんな温もりを持つ光と言い切るには覚束ない明かりが、拒絶され続けたオレの事を、掴んだ。

 

 

 

 

 

 




「名無しの森」こそがサーヴァントの中で唯一と言っていいほどベリアルさんに抵抗できる力。
4章はモーさんの他にもライムこそが最大の敵で、最後の道しるべになるから

「僕はジード。 ウルトラマンジードだ」
ジード全25話の中で一番好きなセリフ。
その後のアトロシアスの目が楽しそうに笑っているような印象を受けることも一因しているかもしれない。

結構勘違いしている人が多い“ジードマルチレイヤー”
演出的にキングが起こした奇跡のように見えるけど、本当はジードの個人技というチート技。
ジードプルーフもあって最強レベルなんだけど……ベリアルさんは耐えるという凄さ。

次回「選んだ道。 ベリアル、覚醒の時!! 」

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