【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜   作:ちょっつー

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隣の芝生は青い。
それを本人が知るのは誰かが教えてくれた時。

正直、7つの裁きの門全てやるとなると全7話なんか軽く超えちゃうんで、漫画版監獄塔をリスペクトしたような形でパパッと進めていきたいと思います。

感想、評価お待ちしてます。
誤字脱字、ご指摘いつもありがとうございます


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『本日付けでマスターの1人として復帰? しました宮原博樹です。 至らぬ点ばかりだとは思いますがよろしくお願いします! 』

 

 宮原博樹さん……。 私と同じカルデアに呼ばれたマスター候補生の1人。 日本出身で、魔術のことはカルデアに来るまで何も知らなかった私と同じ境遇の一般人。 だけど、違う所は確かにある。

 

 年齢、人生経験の差という決して覆すことの出来ないもの……。

博樹さんは今42歳と私の2倍以上の歳を重ねてきた人生の先輩、それに仕事の方も警察官という正しい人生を歩んできましたよっていうお手本のような人だ。

 

 もちろん人柄も良くて、目覚めたばかりだけどカルデア職員の人たちとは直ぐに打ち解けたし、サーヴァントのみんなとも関係も概ね良好みたい。

 

 私も合わせてこれからの特異点ではマスター2人態勢で行われるからマシュやみんなの負担も減っていい事三昧! で、喜ばなきゃいけない筈なんだけど……。

 

朝起きて、博樹さんがマシュや職員のみんな、私が契約したサーヴァントのみんなと仲良く話してる姿を見て、何故だが胸を奥がチクっと痛んだし、謎の不安が押し寄せてきてた……。

 

そんな折だった、私がこの監獄島に閉じ込められたのは……

 

 

「…………? 」

 

「どうかしましたか立香さん? 」

 

「ううん、何でも……。 今誰かと繋がったような……誰かが手を握ってくれてるような、そんな温かいものを感じた……ような気がして 」

 

「クハハハ! マスター、お前の魂は此処に囚われているが、身体は以前カルデアに存在している。 大方可愛い後輩が先輩のことを想って手を握り、お前の身を案じているのかも知れないな 」

 

 今私は、監獄塔を脱出するのを協力してくれるこのクハハハと特徴的な笑い方をする深緑のコートを羽織った、クラスをジャンヌ・オルタと同じ『アヴェンジャー』を名乗る英霊と、この監獄とうで記憶を無くし行き場を無くしてたアヴェンジャーに“メルセデス”って名前を名乗れと言われた女性と一緒に行動してる。

 

 第三の裁きへ向かって歩いている最中に、アヴェンジャーが私に問い掛けてきた。

 

『────怠惰を貪ったことはあるか?』

 

 って、そりゃあカルデアに来る前の普通の女子高生だった時は、宿題をサボったり、授業中に眠ったりそういう抗えない誘惑的なのに負けたことはあるけど、こっちに来てからは毎日が大変で、休むなんてこと考えたこともなかった。

 

『だけど今は? 今は博樹さんがいる。 私一人が頑張んなくたって、大人の博樹さんが何とかしてくれる。 だってあの人は、べリアルさんと契約してるんだもん 』

 

「っ!!!? 」

 

「どうした、幻覚でも見えたか? 監獄の中に囚われ、絶望に伏した者どもは在りもしない幻想に囚われる。 お前も奴らと同類かマスター 」

 

────────っ!!!! 違う、違うちがうちがう!! 私はそんなこと考えてない!! 今のはきっと私の魂をこの監獄塔で殺そうとしているヤツの罠だ!!

 

『サーヴァントのみんなは個性的で、指示はちゃんと聞いてくれるけど日常会話とかするのに時間がかかった人たちの少なくなかった。 そんなサーヴァントのみんなとも直ぐに打ち解ける博樹さんを見て羨ましいと思った』

 

耳を閉じていても聞こえてくるその声から逃げるように監獄の中を走り抜けていく。 確かにそう思った、けどそれは良い方向で!! みんなと博樹さんが仲良くなって良かったって思ったんだ!!

 

『このまま行けば、私がわざわざレイシフトする必要もなくなる。 魔術もロクに出来なければ戦術も何もわからない、そんな私が行ったって邪魔なだけ。 これからもっと辛くなる事が予測されてるのにレイシフトするなんて死にに行くようなものじゃん!! だったら博樹さんが行ったほうがいい!! だってあの人にはベリアルさんが付いてるんだもの!! 』

 

 思った! 思ったよ!! このまま全てが終わるまでカルデアに籠ってた方が安全だって!! 全部博樹さんとベリアルさんに任せておけば大丈夫だって思ったよ!!

私はまるで私が蓋して隠していた本心、弱い心の部分を真正面からぶつけられてるこの幻聴から早く逃げ出したくて、監獄の中をあてもなく走り続ける。

 

「はあ……はあ……はあ……。 誰かが戦ってる……? 」

 

 運が良かったって言うのかな? 走り続けていたら偶然にも第三の裁きが待ち構えている場所に来ていたらしく、呼吸を落ち着かせながら歩いていくと、戦闘が行われている音が聞こえてくる。鉄格子の扉を開けて入ってみると、人の形をした赤黒い物体がキャスターのジル・ド・レェが心臓部を貫いていた。

 

「堕落するがままに魂を腐敗させた存在。 それが怠惰か……。 なら、こと罪においてこのオレを越えられるヤツはいないだろな 」

 

「グハッ!! ……まさか、帰還叶うものと希望に満ちた魂……眩き輝きをもった魂の姿すら拝めず、地獄へ向かうとは……。 ああ、まるであの時のようだ…… 」

 

 その相手にジル・ド・レェの霊核は完全に潰され、核を潰した相手はその消えゆく霊基のような物を身体に取り込ませると、実態が形成されていく。

黒と赤が占めるその強靭な身体、鋭い爪。 胸に紫に輝く結晶を持った離れていても感じる絶大な力を持った存在。 そんな人、私は1人しか知らない!

 

「べリアルさっ!! 」

 

「貴様……どうやって此処へ来た。────そうか、貴様があの男が最も危惧していた…… 」

 

 私がべリアルさんの名前を叫ぶよりも速く、雷のごとき速度でいつの間にか追いついていたアヴェンジャーがべリアルさんへ迫っていった。 ここは私のシャトー・ディフだってアヴェンジャーは言っていたから、べリアルさんがこの監獄塔にやって来たことに驚きが隠せないようだ。

 

 そんなアヴェンジャーの蹴りも、防御する価値すらないと判断したのか避けようともせず、右肩に直撃したべリアルさんだったけど、攻撃を受けてダメージを負った様子も無ければ、そのままアヴェンジャーの足を付かんで地面に叩き付けた。

 

「グハッ!! 」

 

「どうした巌窟王。 貴様の憎悪は、怨念とやらはそんな者か? 」

 

 巌、窟王……。 アヴェンジャーをそう呼んだべリアルさんは私の方へと歩み寄ってくる。 助けに来てくれた安堵から私もべリアルさんへと駆け足で向かう。

 

「がっ!? はっ!! べリ……アル……さん……!? 」

 

「藤丸立香。 オレは言った筈だぞ、歩みを止めるなと 」

 

────首を絞めて、持ち上げられた。

誰に? 誰が? 頭がパンクしそうになるくらい混乱していくけど、その凶悪な爪に持ち上げられてることで必然的に首から血が流れていくことが理解できて不思議と冷静でいられる。

目の前に立っているのはべリアルさんで、私の大切な仲間。 その彼が片手で私の首を絞めたまま簡単に私の身体が持ち上げられた。

 

 

 

 




ベリアルさんが立香ちゃんを助けに来たと思った?
残念、ベリアルさんによるスパルタ教育でした!!

【現在のベリアルの状態】
博樹さんと繋がっている状態で、無理矢理立香ちゃんとのパスを作り監獄塔に侵入している。
その為、デメリットが存在している。「 赤黒い人型をした物体」だったのもジルを倒して【怠惰の罪】を吸収したのもそのデメリットがあるから。

【二人目のマスターのを存在。藤丸立香の嫉妬】
 唯一無二のマスターという重圧では無くなったからこそ生まれた心の余裕。 ゲーム本編では殆ど見せることが無い負の感情。アルジュナ的に言えば“悪”の部分。
宮原博樹は、既に社会に出て、家庭を持ち、それを支える父親という存在という高校生だった立香にとっては学校の先生以上に大きく見える存在&ベリアルと契約しているというのが楔となって嫉妬の感情が見えてしまった。
 命を預けると決めたマスターと、隣の言ってしまえば他人である博樹とでは見せる顔が違うけど、一般人で高校生の立香はそれを気づけない。 例をあげるとお客に良い顔してるクニキとマスターに見せる主従の顔は別やでって感じ。

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